第196回では、子会社の資産・負債・収益・費用を取り込む連結会計を学びました。今回は、関連会社などへの投資を一つの投資勘定で表す「持分法」です。
最初に覚えるのは、「利益で投資勘定が増え、配当で減る」という動きです。個別財務諸表で計上した受取配当金は、連結上、投資の回収として投資勘定の減額に振り替えます。
1.持分法は「一行連結」
企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」は、持分法を、被投資会社の資本と損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、連結決算日ごとに投資額を修正する方法と定めています。
子会社の連結では各科目を合算します。持分法では、原則として貸借対照表の投資有価証券と、損益計算書の持分法による投資損益に集約します。この表示の特徴から、移管指針第7号「持分法会計に関する実務指針」では「一行連結」と説明されています。
「一行」は表示上の特徴です。連結修正仕訳が一つだけになるという意味ではありません。また、以下の仕訳は投資会社の連結決算上の修正であり、被投資会社の帳簿に記帳するものではありません。
| 比較項目 | 子会社の連結 | 持分法 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 連結子会社 | 非連結子会社と関連会社 |
| 貸借対照表 | 資産・負債を科目ごとに合算 | 原則として投資勘定を修正 |
| 損益計算書 | 収益・費用を科目ごとに合算 | 持分相当額を持分法による投資損益に集約 |
| 受取配当金 | 内部取引として消去 | 投資の回収として投資勘定を減額 |
| 持分法による投資損益 | 該当なし | 営業外収益または営業外費用に一括表示 |
2.「議決権20%」だけでは決まらない
関連会社とは、出資、人事、資金、技術、取引などを通じて、子会社以外の企業の財務・営業・事業方針の決定に重要な影響を与えることができる場合の、その相手企業です。代表的な判定ルートを整理します。
| 議決権の状況 | 判定の考え方 |
|---|---|
| 自己の計算で20%以上を所有 | 原則として該当する。ただし、重要な影響を与えられないことが明らかな場合を除く |
| 自己の計算で15%以上20%未満を所有 | 役員等の派遣、重要な融資・技術提供・取引など、基準所定の事実がある場合に該当する |
| 緊密な関係者や議決権行使に同意する者と合わせて20%以上 | 役員等の派遣、重要な融資・取引など、基準所定の事実がある場合に該当する |
非連結子会社と関連会社への投資には、原則として持分法を適用します。ただし、適用しても連結財務諸表に重要な影響を与えない場合は、適用会社としないことができます。試験問題では持分割合が明示されることが多いのですが、実務では関係の実態も確認します。
3.計算の軸
期末投資額 = 取得原価 + 取得後利益の持分相当額 - 取得後損失の持分相当額 - 受取配当金相当額 - のれん償却額 ± その他の修正
実際の計算では、会計方針の統一、取得時の時価評価、税効果、未実現損益、その他の包括利益なども検討します。未実現損益は取引の方向によって修正する科目が異なるため、上の式だけで処理を決めることはできません。まずは利益、配当、のれんの三つを確実に押さえます。
4.のれんがない基本設例
取得は期首に行い、利益剰余金を原資とする金銭配当を期中に受け取ったものとします。評価差額、未実現損益、税効果、減損、源泉所得税等は考慮しません。
| 項目 | 前提 |
|---|---|
| P社の議決権割合 | 30%。重要な影響があり、A社は関連会社に該当 |
| A社株式の取得価額 | 3,000万円 |
| 取得時のA社修正後純資産 | 10,000万円 |
| 取得後のA社当期純利益 | 1,200万円 |
| A社の配当総額 | 400万円 |
取得価額3,000万円と純資産持分10,000万円×30%=3,000万円が一致するため、のれんはありません。
個別財務諸表の仕訳
| 取引 | 借方科目 | 金額(万円) | 貸方科目 | 金額(万円) |
|---|---|---|---|---|
| 株式取得 | 関係会社株式 | 3,000 | 現金預金 | 3,000 |
| 配当受領 | 現金預金 | 120 | 受取配当金 | 120 |
配当受領額は400万円×30%=120万円です。この設例では減損がないため、個別財務諸表の関係会社株式は3,000万円のままです。
連結修正仕訳
A社利益の持分相当額は1,200万円×30%=360万円です。
| 修正内容 | 借方科目 | 金額(万円) | 貸方科目 | 金額(万円) |
|---|---|---|---|---|
| 利益の持分相当額 | 投資有価証券 | 360 | 持分法による投資利益 | 360 |
| 受取配当金の振替 | 受取配当金 | 120 | 投資有価証券 | 120 |
どちらの仕訳も借方と貸方が一致しています。連結上は受取配当金120万円が投資の回収に振り替えられ、当期の成果として持分法による投資利益360万円が残ります。
期末残高を二方向から検算する
投資勘定から:3,000+360-120=3,240万円
A社純資産から:(10,000+1,200-400)×30%=3,240万円
二つの計算が一致しました。この検算で、配当の控除漏れや転記ミスを見つけられます。
5.のれんがある場合
前の設例の取得価額だけを3,300万円に変更します。取得時の修正後純資産持分は3,000万円なので、差額300万円がのれんです。持分法ののれんは独立した資産として表示せず、投資勘定に含めます。
日本基準では、のれんは20年以内の効果が及ぶ期間にわたり、定額法その他の合理的な方法で規則的に償却します。本設例では効果が及ぶ期間を5年と仮定します。5年は設例上の前提であり、一律の年数ではありません。
ASBJでは、のれんの会計処理と関連する開示が検討テーマとして追加され、今後、検討を開始する予定です。2026年9月29日現在、現行の償却処理を変更する会計基準は公表されていません。
| 計算項目 | 計算 | 金額(万円) |
|---|---|---|
| 取得時のれん | 3,300-10,000×30% | 300 |
| 当期のれん償却額 | 300÷5年 | 60 |
| 利益の持分相当額 | 1,200×30% | 360 |
| 持分法による投資利益 | 360-60 | 300 |
| 受取配当金 | 400×30% | 120 |
連結修正仕訳
| 修正内容 | 借方科目 | 金額(万円) | 貸方科目 | 金額(万円) |
|---|---|---|---|---|
| 利益の持分相当額 | 投資有価証券 | 360 | 持分法による投資利益 | 360 |
| のれんの償却 | 持分法による投資利益 | 60 | 投資有価証券 | 60 |
| 受取配当金の振替 | 受取配当金 | 120 | 投資有価証券 | 120 |
投資勘定から:3,300+360-60-120=3,480万円
純資産とのれんから:修正後純資産持分3,240+未償却のれん240=3,480万円
持分法による投資利益も、貸方360万円-借方60万円=300万円となります。
6.損失が投資残高を超える場合
期首投資残高が800万円、当期純損失の持分相当額が1,200万円だったとします。関連会社の欠損を負担する責任が投資額の範囲に限られ、貸付金、損失分担契約、契約上または事実上の債務保証もない場合、投資価額がゼロになる800万円まで損失を計上します。
| 借方科目 | 金額(万円) | 貸方科目 | 金額(万円) |
|---|---|---|---|
| 持分法による投資損失 | 800 | 投資有価証券 | 800 |
ただし、投資残高がゼロになれば必ず処理が終わるわけではありません。設備資金・運転資金等の貸付金があれば、投資有価証券をゼロにした後、その貸付金等を減額します。ここには、返済期限の延長を繰り返し、実質的に運転資金となっている営業債権も含まれます。さらに負担すべき額が残る場合は、「持分法適用に伴う負債」などの適切な科目を計上します。負担範囲は契約と実態に基づいて判断します。
7.持分法と法人税は別に考える
持分法による投資利益は、連結決算上の会計処理です。被投資会社の利益を投資会社が現金で受け取ったことを意味せず、通常、投資会社の個別帳簿には同額の投資利益を計上しません。
| 項目 | 会計上の扱い | 法人税での確認点 |
|---|---|---|
| 持分法による投資利益 | 連結財務諸表上の投資損益 | 実際の配当とは区別し、各法人の個別所得と税法上の調整を確認する |
| 実際の配当 | 個別では受取配当金、持分法上は投資勘定を減額 | 株式等の区分、保有関係、保有期間などから益金不算入を判定する |
| 持分法適用後の投資価額 | 利益、配当、のれんなどで増減 | 税務上の株式簿価と一致するとは限らず、一時差異の検討が必要になることがある |
法人税法第23条は、内国法人から受ける一定の配当等について、株式等の区分に応じた益金不算入を定めています。会計上の持分法適用割合だけでは、税務上の株式区分や益金不算入額を確定できません。
2026年4月1日以後終了事業年度分については、国税庁が別表八(一)「受取配当等の益金不算入に関する明細書」を公表しています。外国法人から受ける配当には別の規定や別表が関係するため、国内法人からの配当と同じ処理とは限りません。
また、グループ通算制度は、一定の完全支配関係にある企業グループを対象とする法人税の制度です。会計上の連結や持分法とは、適用要件も計算目的も異なります。
取得後の留保利益に係る税効果は、将来の配当見込み、予測可能な将来の売却・清算の方針、追加税負担の有無などを踏まえて検討します。本稿の設例では、必要な前提を置いていないため税効果の金額を計算していません。
8.問題を解く順番
- 持分法の適用対象か確認する
- 取得日と持分割合を確定する
- 取得日の資産・負債を必要に応じて時価評価し、税効果を反映する
- 投資原価と修正後純資産持分の差額から、のれんまたは負ののれんを判定する
- 取得後の修正済み純損益に持分割合を掛ける
- のれん償却、評価差額、未実現損益などを調整する
- 受取配当金に相当する額を投資勘定から減らす
- 投資勘定と純資産持分の二方向から期末残高を検算する
- 個別仕訳、連結修正、税務申告を混同していないか確認する
9.5日練習
| 日 | 練習内容 | 終了時の確認 |
|---|---|---|
| 1日目 | 子会社の連結と持分法の違いを3点書く | 「全科目」と「一行」の違いを説明できる |
| 2日目 | 20%以上、15%以上20%未満、緊密な関係者等との合算という判定ルートを整理する | 持分割合だけでは決まらないと説明できる |
| 3日目 | のれんなしの設例を見ずに計算する | 投資利益360万円、期末投資額3,240万円になる |
| 4日目 | 取得価額を3,300万円に変更して仕訳する | 投資利益300万円、期末投資額3,480万円になる |
| 5日目 | 損失超過時の負担範囲と法人税との違いを整理する | 投資額までの場合と、貸付金・保証等がある場合を区別できる |
一度にすべてを覚える必要はありません。まず「利益で増える、配当で減る」を押さえ、最後に期末投資残高を検算してください。
まとめ
- 持分法は、被投資会社の資本と損益の持分相当額を投資勘定に反映する
- 利益の持分相当額は投資勘定を増やし、受取配当金相当額は投資勘定を減らす
- のれんは投資勘定に含め、20年以内の効果が及ぶ期間にわたって規則的に償却する
- 投資額を超える損失の負担範囲は、貸付金、損失分担契約、債務保証などの実態によって変わる
- 持分法による投資利益、実際の配当、法人税の益金不算入は別々に判定する
本稿は日本基準を前提とする一般的な学習資料です。実際の財務諸表作成や法人税申告では、適用時点の会計基準、法令、契約、持株関係、申告書様式を確認し、必要に応じて公認会計士・税理士等の専門家へ相談してください。
