第220回では、通常清算が終わった後の清算結了登記と帳簿保存を確認しました。
今回は、株主が解散を決めていないのに、長期間登記をしなかったため解散したものと扱われる「みなし解散」です。
最後の登記から12年が過ぎただけで、直ちに解散するわけではありません。法務大臣の公告後2か月以内に必要な登記または所定の届出をしなかったとき、解散したものとみなされます。
1.12年・2か月・3年・2週間を分ける
法務省の2026年度案内と会社法472条・473条をS社の日程へ当てはめます。
| 段階 | 日付・期間 | 意味 |
|---|---|---|
| 休眠会社の判定 | 2026年10月15日 | 最後の登記から12年を経過しているため、整理作業の対象となる |
| 官報公告・通知発送 | 2026年10月15日 | 2026年度の実際の公告日・通知発送日 |
| 対応期限 | 2026年12月15日 | 必要な登記または所定の届出を行う期限 |
| みなし解散 | 2026年12月16日 | 期限までにどちらも行わなければ、この日付で解散したものとみなされる |
| 継続できる期間 | みなし解散後3年以内 | 清算結了前に株主総会の特別決議を行う。S社は2027年1月20日に決議する |
| 継続登記 | 継続決議から2週間以内 | S社の申請期限は2027年2月3日 |
12年は整理作業の対象を決める期間です。2か月はみなし解散を避けるための対応期間、3年はみなし解散後に会社を継続できる期間、2週間は継続決議後の登記期間です。
なお、会社法472条による整理作業の対象は株式会社です。特例有限会社は含まれません。
2.営業や税務申告を続けていても防止策にはならない
会社法上の「休眠会社」は、営業実態や税務申告の有無ではなく、最後の登記からの期間で判定されます。
| 会社の行動 | 防止できるか | 注意点 |
|---|---|---|
| 必要な役員変更等の登記を申請する | できる | 登記内容と必要書類を事前に確認する |
| 「まだ事業を廃止していない」旨を届け出る | その年度はできる | 未登記の事実は解消されず、必要な登記をしなければ翌年度も対象になり得る |
| 実際に営業や取引を続ける | できない | 事業実態だけでは会社法472条の手続に代わらない |
| 法人税の申告・納付を続ける | できない | 税務署への申告と商業登記は別の手続 |
| 登記事項証明書や印鑑証明書を取得する | できない | 証明書の交付請求は新たな登記ではない |
| 登記所からの通知が届かなかった | できない | 通知の不着にかかわらず公告後の期限が進行する |
法務省の整理作業案内も、実際に事業を続けている場合や通知が届かない場合であっても、期限内の登記または届出が必要であると説明しています。
所定の届出をしてみなし解散を回避しても、登記を怠った事実まで消えるわけではありません。必要な登記と過料の可能性は別に確認します。
3.みなし解散だけでは資産・負債は消えない
会社法475条・476条により、みなし解散後のS社は清算株式会社となり、清算の目的の範囲内で存続します。
したがって、職権で解散登記がされても、現金、売掛金、買掛金、資本金などの帳簿残高がゼロになるわけではありません。法的地位が変わったという事実だけでは、資産、負債または純資産の増減がないため、その事実だけを原因とする仕訳もありません。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 1,000 | 買掛金 | 200 |
| 売掛金 | 300 | 資本金 | 500 |
| ― | ― | 繰越利益剰余金 | 600 |
| 合計 | 1,300 | 合計 | 1,300 |
S社は清算中に売掛金を回収し、会社継続後に買掛金を支払います。
| 日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年12月20日 | 現金 | 300 | 売掛金 | 300 | 帳簿価額どおり回収 |
| 2027年1月25日 | 買掛金 | 200 | 現金 | 200 | 会社継続後に帳簿価額どおり支払 |
取引後の現金は、1,000+300-200=1,100です。売掛金と買掛金はともにゼロとなり、借方の現金1,100と、貸方の資本金500+繰越利益剰余金600=1,100が一致します。
額面どおりの債権回収と計上済み債務の支払であるため、本設例では収益も費用も生じません。登記費用、専門家報酬その他の支出が実際に発生したときは、請求書や納付記録に基づく実額を別途仕訳します。
4.3年以内と2週間以内は別の期限
みなし解散後の会社継続には、次の条件を順番に確認します。
| 確認事項 | S社の扱い |
|---|---|
| 清算の状況 | 清算結了前である |
| 継続可能期間 | みなし解散後3年以内である |
| 会社の意思決定 | 株主総会の特別決議を行う |
| 継続日 | 決議で2027年1月20日と定める |
| 登記期限 | 決議から2週間以内の2027年2月3日 |
| 会社機関 | 継続後の取締役、代表取締役、取締役会の有無などを定款と決議に合わせる |
3年間は申告や登記を保留できる期間ではありません。会社を継続できる上限期間です。継続を決議した後は、2週間以内に登記を申請します。
法務局の商業・法人登記申請書様式には、みなし解散後の株式会社継続について、継続後の機関設計に応じた記載例があります。必要な登記事項が複数あれば登録免許税の合計も変わるため、継続登記だけの金額を全案件へ一律に当てはめないことが大切です。
会社継続は新会社の設立ではありません。同じ法人が続くため、現金、債権、債務、資本金などをゼロから計上し直す仕訳は行いません。
5.法人税の事業年度は三つに分かれる
法人税法14条1項1号・6号により、事業年度の中途で解散した場合は解散日で区切り、清算中の法人が継続した場合は継続日の前日で再び区切ります。
法人税基本通達1-2-4によれば、株主総会で継続日を定めたときはその日、定めなかったときは継続決議の日が法人税上の継続日です。継続登記の完了日を機械的に区切りの日とするわけではありません。
| 区分 | 期間 | 区切る理由 |
|---|---|---|
| 解散前の事業年度 | 2026年4月1日~12月16日 | みなし解散の日で終了する |
| 清算中の事業年度 | 2026年12月17日~2027年1月19日 | 会社継続日の前日で終了する |
| 継続後の事業年度 | 2027年1月20日~3月31日 | 継続日から定款上の通常の決算日まで |
帳簿残高は同じ法人の中で連続しますが、法人税の所得または欠損は三つの期間ごとに計算します。
国税庁「法人税法」教材は、確定申告書の提出期限を原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内と説明しています。本設例の前提では次のとおりです。
| 対象期間 | 終了日 | 申告期限 |
|---|---|---|
| 2026年4月1日~12月16日 | 2026年12月16日 | 2027年2月16日 |
| 2026年12月17日~2027年1月19日 | 2027年1月19日 | 2027年3月19日 |
| 2027年1月20日~3月31日 | 2027年3月31日 | 2027年5月31日 |
三つの日はいずれも本設例では休日による繰下げがなく、申告期限の延長もない前提です。実際には承認済みの延長、災害、通算制度その他の事情を確認します。納付税額が生じない場合でも、申告義務まで当然になくなるわけではありません。
6.登記・会計・税務を一枚で管理する
| 時点 | 登記 | 会計・税務 |
|---|---|---|
| 2026年12月15日まで | 登記事項証明書で最後の登記日と未登記事項を確認し、必要な登記または所定の届出を行う | 通常の帳簿と申告を継続する |
| みなし解散後 | 登記記録と解散日を確認し、清算を続けるか会社を継続するかを決める | 解散日で帳簿を区切り、清算開始時の書類と申告準備を進める |
| 会社継続時 | 特別決議、役員等の整備、2週間以内の継続登記を行う | 継続日前日で清算中の事業年度を締め、継続日から通常の事業年度へ戻す |
| 各決算後 | 登記事項と実態の一致を確認する | 各事業年度の所得・欠損と申告期限を別々に管理する |
税務署には、法人の解散などが生じた場合、異動届出書を異動後速やかに提出します。会社継続に伴って事業年度、代表者その他の届出事項が変わる場合も該当事項を確認します。都道府県や市区町村への届出は、所在地の自治体が示す様式と期限を別途確認してください。
7.5日で定着させる練習
| 日 | 取り組む内容 | 確認できればよいこと |
|---|---|---|
| 1日目 | 12年・2か月・3年・2週間を一行ずつ書く | 四つの期間の目的を区別できる |
| 2日目 | 営業、税務申告、証明書取得、届出、登記を分類する | みなし解散を防ぐ行動だけを選べる |
| 3日目 | S社の売掛金回収と買掛金支払を仕訳する | みなし解散・会社継続そのものは仕訳なしと判断できる |
| 4日目 | 三つの事業年度と申告期限を書き出す | 解散日と継続日前日で区切れる |
| 5日目 | 自社または練習会社について、最後の登記日、通常の決算日、対応期限を一枚にまとめる | 登記と申告を同じ予定表で管理できる |
確認問題:S社が12月15日までに何もしなかった場合の解散日は12月16日です。1月20日に会社を継続する場合、清算中の事業年度は1月19日で終わります。仕訳後の現金は1,100、売掛金と買掛金はゼロで、借方・貸方はいずれも1,100です。
8.まとめ
- 最後の登記から12年の経過は整理作業の対象要件であり、それだけで直ちに解散するわけではない
- 2026年度は12月15日までに必要な登記または所定の届出がなければ、12月16日付で解散したものとみなされる
- 営業や法人税申告を続けていても、会社法上の届出や登記の代わりにはならない
- みなし解散後も資産・負債は残り、法的地位の変更だけを原因とする仕訳はない
- 会社継続はみなし解散後3年以内の特別決議で行い、決議後2週間以内に登記する
- 法人税の事業年度は、解散日と継続日の前日で区切って申告期限を管理する
登記の日付、帳簿、申告期限を順に並べると、みなし解散という例外的な場面でも落ち着いて整理できます。
