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第205回 子会社の第三者割当増資ゼロ入門:持分比率の希薄化・非支配株主持分・資本剰余金を仕訳で整理(5日練習付き)

第204回では、親会社が子会社株式を一部売却する場面を扱いました。今回は、親会社は株式を売らず、子会社が外部投資家へ新株を発行します。

現金を受け取るのは親会社ではなく子会社です。親会社の個別財務諸表では仕訳がなくても、連結財務諸表では非支配株主持分と資本剰余金が動くことがあります。

1.一部売却との違い

項目 親会社による一部売却 子会社による第三者割当増資
株式を動かす会社 親会社が保有株式を売る 子会社が新株を発行する
現金を受け取る会社 親会社 子会社
発行済株式数 変わらない 増加する
親会社の個別財務諸表 投資を減額し、売却損益を計上する 引受けも売却もしなければ仕訳なし
子会社の個別財務諸表 原則として仕訳なし 現金と払込資本が増加する
支配継続時の連結処理 持分変動差額を資本剰余金とする 持分変動差額を資本剰余金とする

持分比率が下がっただけでは、売却とはいえません。誰が株式を発行し、誰が現金を受け取ったかを先に確認します。

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」第30項は、支配関係が続く場合、子会社の時価発行増資等に伴う親会社の払込額と親会社持分の増減額との差額を資本剰余金としています。移管指針第4号第47項では、従来の持分比率でいったん新株を引き受け、その後に追加取得または一部売却をしたものとみなして考えます。

2.設例:親会社が新株を引き受けない場合

S社の発行済株式数 100株
P社の保有株式数 80株
P社の持分比率 80%
S社の修正後純資産 9,000
P社個別貸借対照表上のS社株式の会計簿価 7,200
P社が保有するS社株式の税務簿価 設例では提示しない
外部投資家への発行株式数 20株
1株当たり払込金額 150
払込総額 3,000
P社の引受株式数・払込額 0株・0

払込金額150は、必要な株価算定を経た価額であると仮定します。増資前の1株当たり純資産額90を上回るという理由だけで、時価と判断するものではありません。

増資後の持分比率

80株÷(100株+20株)=66と3分の2%

株主 増資前 増資後 増資後の比率
P社 80株 80株 66と3分の2%
非支配株主 20株 40株 33と3分の1%
合計 100株 120株 100%

P社は議決権の過半数を維持しているため、本設例では支配が続きます。

3.子会社と親会社の個別仕訳

会社法第199条・第445条により、募集株式の払込金額などを定め、株式発行時の払込財産を資本金とするのが基本です。ただし、払込額の2分の1を超えない額は資本金に計上せず、資本準備金にできます。

本設例では、払込額の半分ずつを資本金と資本準備金にします。

S社の個別仕訳

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 3,000 資本金 1,500
資本準備金 1,500
合計 3,000 合計 3,000
科目 増資前 増加 増資後
資本金 5,000 1,500 6,500
資本準備金 1,000 1,500 2,500
利益剰余金 3,000 0 3,000
合計 9,000 3,000 12,000

P社の個別仕訳

仕訳はありません。P社は保有株式を売却せず、新株も引き受けていないためです。P社の個別貸借対照表にあるS社株式の会計簿価は7,200のままです。

4.連結上の持分変動

増資前後の修正後純資産を、それぞれの時点の持分比率で配分します。

項目 増資前 増資後 増減
S社の修正後純資産 9,000 12,000 +3,000
親会社持分 9,000×80%=7,200 12,000×80株÷120株=8,000 +800
非支配株主持分 9,000×20%=1,800 12,000×40株÷120株=4,000 +2,200

持分比率は80%から66と3分の2%へ下がりました。一方、親会社持分の金額は7,200から8,000へ増えています。新株の払込金額が増資前の1株当たり純資産額を上回るためです。

この800は、P社の個別財務諸表にあるS社株式を評価替えする金額ではありません。連結上の持分配分から生じた差額です。

親会社持分の増加800-P社の払込額0=資本剰余金800

非支配株主持分の増加=4,000-1,800=2,200

増資分に関する連結修正仕訳

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
資本金(S社増資分) 1,500 非支配株主持分 2,200
資本準備金(S社増資分) 1,500 資本剰余金 800
合計 3,000 合計 3,000

これは連結精算表上の修正です。P社やS社の個別帳簿には記帳しません。

外部から増えた現金 3,000
資本剰余金の増加 800
非支配株主持分の増加 2,200
検算 800+2,200=3,000
増資後の純資産配分 親会社持分8,000+非支配株主持分4,000=12,000

支配が続いているため、800は連結損益ではなく、のれんも計上しません。連結会計基準第28項から第30項までの処理の結果、期末の資本剰余金が負の値となる場合は、同基準第30-2項により資本剰余金をゼロとし、その負の額を利益剰余金から減額します。

5.親会社の引受割合による違い

新株20株のうち、P社が16株を引き受ければ従来の80%を維持できます。

P社の引受け 増資後の持分比率 連結上の見方
16株 (80株+16株)÷120株=80% 従来の比率どおりの引受け
16株未満 80%より低下 不足分を一部売却に準じて考える
16株超 80%より上昇 超過分を追加取得に準じて考える

増資でも、親会社が多く引き受ければ持分比率は上がります。

6.支配が続くかを先に判定する

資本剰余金として処理できるのは、増資後も親会社と子会社の支配関係が続く場合です。

増資後の関係 処理の入口
支配が続く 連結を続け、持分変動差額を資本剰余金とする
支配を失い、重要な影響力が残る 連結範囲から外し、持分法の適用を判定する
支配も重要な影響力も失う 連結範囲から外し、金融商品会計による処理を検討する

議決権の過半数は重要な目安ですが、会計上の支配は比率だけで決まりません。連結会計基準第7項では、40%以上50%以下の場合でも、同一内容の議決権を行使する者、役員構成、重要な方針を支配する契約などを含めて判定します。

7.法人税上の処理

法人税法第22条は、資本金等の額の増減を生ずる取引を資本等取引として、通常の損益取引と区別しています。資本金等の額と有価証券の取得価額については、法人税法施行令第8条・第119条を確認します。

当事者 基本的な整理
発行法人S社 払込額3,000は資本等取引による受入れであり、通常の収益として益金に算入するものではない。資本金等の額は合計3,000増加する
既存株主P社 株式を取得も譲渡もしていないため、増資時の株式譲渡損益は生じない。本設例の前提では、既存のS社株式の税務簿価総額は増資直前の税務簿価から変わらない。ただし、増資直前の税務簿価は提示していないため、会計簿価と同じ7,200であるとは断定できない
新株を引き受ける法人 有利発行に該当しない本設例では、払込額に取得のため直接要した費用を加えた金額が取得価額となる

連結上の資本剰余金800を、P社の法人税申告でそのまま益金800とするわけではありません。連結修正と各法人の所得計算を分けます。

有利発行は本設例の外

払込金額が株式の取得に通常要する価額に比べて有利な場合は、法人税法施行令第119条による取得価額や経済的利益の検討が必要です。会社法上の「特に有利な金額」と税務上の有利発行は、根拠規定と目的が異なります。非上場株式では、帳簿上の1株当たり純資産額だけで結論を出さず、発行条件、株価算定の前提、当事者間の関係を確認します。

8.税効果会計

税効果会計では、P社個別貸借対照表上のS社株式の会計簿価7,200と、その税務簿価を混同しないことが重要です。本設例では増資直前の税務簿価と、増資前から存在する投資に係る一時差異の有無を示していません。そのため、増資後の投資に係る一時差異の総額を800と断定することはできません。

項目 本設例で確認できる金額
P社個別貸借対照表上の会計簿価 7,200
P社が保有するS社株式の税務簿価 提示なし
増資後の連結上の親会社持分 8,000
増資後の税務簿価との差額 8,000-増資直前の税務簿価。税務簿価が未提示のため金額は確定できない

仮に、増資直前の税務簿価も7,200であり、増資前から存在する投資に係る一時差異がないという追加前提を置く場合に限り、増資後の8,000との差額800を、本件増資に伴う連結財務諸表固有の将来加算一時差異として整理できます。この条件を置かない場合は、実際の税務簿価と既存の一時差異を確認して計算します。

企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」第23項・第27項によれば、親会社が投資の売却等を自ら決めることができ、予測可能な将来に売却等を行う意思がないなどの要件を満たす場合は、繰延税金負債を計上しません。要件を満たさず、時価発行増資等に伴う親会社の持分変動差額に係る繰延税金負債を計上する場合、その相手勘定は資本剰余金です。

本設例では、税務簿価、既存の一時差異、売却方針および適用税率の前提を置いていないため、一時差異の総額と税効果額は計算しません。

9.よくある誤り

誤り 正しい確認
P社が現金3,000を受け取る 現金を受け取るのは新株を発行したS社
P社の個別帳簿で売却益を計上する P社は株式を売却していない
非支配株主持分を3,000増やす 本設例では4,000-1,800=2,200増やす
差額800を連結利益にする 支配継続中の持分変動差額は資本剰余金
P社個別のS社株式を8,000にする 8,000は連結上の親会社持分。個別の会計簿価は7,200のまま
会計簿価7,200をそのまま税務簿価とする 税務簿価は税務上の取得価額やその後の調整を確認する。本設例では金額を提示していない
1株当たり純資産額を税務上の時価と決める 発行条件や株価算定の前提を別に確認する

10.5日で定着させる練習

日 練習内容 確認点
1日目 一部売却との違いを説明する 現金を受け取る会社を区別できるか
2日目 増資前後の株式数と持分比率を計算する 分母に新株数を加えたか
3日目 親会社持分と非支配株主持分を計算する 増資前後の純資産を使い分けたか
4日目 S社個別、P社個別、連結修正の仕訳を書く 個別と連結を混ぜていないか
5日目 確認問題を解く 借貸と純資産残高を検算できるか

確認問題

S社の修正後純資産は6,000、発行済株式は100株です。P社は70株を保有しています。S社が外部投資家へ25株を2,500で時価発行し、P社は引き受けません。増資後も支配は続くものとします。

  1. 増資後のP社持分比率
  2. 親会社持分の増減額
  3. 非支配株主持分の増減額
  4. 連結上の資本剰余金
解答と検算

P社持分比率は70株÷125株=56%です。

増資前の親会社持分 6,000×70%=4,200
増資後の純資産 6,000+2,500=8,500
増資後の親会社持分 8,500×56%=4,760
親会社持分の増加 4,760-4,200=560
増資前の非支配株主持分 6,000-4,200=1,800
増資後の非支配株主持分 8,500-4,760=3,740
非支配株主持分の増加 3,740-1,800=1,940
資本剰余金 親会社持分増加560-P社払込額0=560
最終検算 560+1,940=2,500

連結修正仕訳は、借方のS社払込資本2,500に対し、貸方が非支配株主持分1,940と資本剰余金560です。

まとめ

  • 現金は新株を発行した子会社に入る
  • 親会社が引受けも売却もしなければ、親会社の個別財務諸表では仕訳をしない
  • 支配が続く場合、連結上の持分変動差額は資本剰余金とする
  • 持分比率が下がっても、親会社持分の金額が増えることがある
  • 非支配株主持分は増資前後の残高差で検算する
  • 会計簿価と税務簿価を区別し、税務簿価が未確認なら一時差異の金額を断定しない
  • 連結会計、法人税、有利発行、税効果会計を分けて考える

「株数、支配、個別仕訳、持分配分、資本剰余金」の順に確認すると、売却との混同を防げます。税効果会計まで検討するときは、これに税務簿価と既存の一時差異の確認を加えます。

第204回 子会社株式の一部売却ゼロ入門:支配継続・支配喪失と資本剰余金を仕訳で整理(5日練習付き)

第203回では、株式交付によって会社を子会社にする場面を確認しました。今回は、その子会社株式の一部を売却します。

最初に見るのは売却益ではありません。売却後も支配が続くかどうかです。

個別財務諸表では株式の売却損益を計上します。一方、連結財務諸表では、支配が続く一部売却を非支配株主との資本取引として扱います。

1.売却後の関係を判定する

売却後の関係 個別財務諸表 連結財務諸表
支配が続く 売却した株式の簿価を減らし、売却損益を計上する 売却持分を非支配株主持分へ振り替え、売却価額との差額を資本剰余金とする
支配を失うが重要な影響力が残る 売却損益を計上し、残存株式を関連会社株式として保有する S社を連結から外し、残存投資に持分法を適用する。個別上の売却損益には連結上の修正が入ることがある
支配も重要な影響力も失う 売却損益を計上し、残存株式を金融商品会計に従って扱う S社を連結から外す。残存投資は連結除外時に個別貸借対照表上の帳簿価額で評価する

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」第29項は、支配が続く一部売却について、売却持分と売却価額との差額を資本剰余金とするよう定めています。支配を失う場合を含む具体的な計算は、移管指針第4号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」第41項以下で確認できます。

以下の「80%から60%なら支配継続」「80%から30%なら関連会社」という区分は、各設例の前提です。実務では議決権割合のほか、役員構成、契約、意思決定機関への影響なども確認します。

2.個別では、売却した株式の簿価を外す

企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第17項では、子会社株式と関連会社株式を個別財務諸表上、取得原価で評価します。減損が必要な場合は別途処理します。

同一種類の株式を比例的に売却する単純な設例では、次の順に計算できます。

売却株式の簿価=売却前の株式簿価×売却した持分比率÷売却前の持分比率

個別上の売却損益=売却価額-売却株式の簿価

複数回取得した株式がある場合は、会計上の帳簿価額の算定方法と税務上の一単位当たりの帳簿価額を、それぞれ確認します。

設例1:80%から60%へ売却する

P社の売却前持分 80%
P社個別上のS社株式簿価 800
売却する持分 S社全体の20%
売却価額 260
売却後持分 60%。支配は継続する
売却時のS社連結上純資産 1,000

S社全体の20%を売ることは、P社が保有する80%のうち4分の1を売ることです。

  • 売却株式の個別簿価:800×20%÷80%=200
  • 個別上の売却益:260-200=60
  • 売却後のS社株式残高:800-200=600
借方 金額 貸方 金額
現金預金 260 S社株式 200
― ― 関係会社株式売却益 60
合計 260 合計 260

借方と貸方は260で一致します。仕訳後のS社株式残高は600です。

3.支配が続けば、連結上の差額は資本剰余金

売却後もP社はS社を支配しています。連結上は事業を手放したとは考えず、親会社株主と非支配株主との間の資本取引として処理します。

  • 売却持分:S社連結上純資産1,000×20%=200
  • 非支配株主持分:売却前200から売却後400へ増加
  • 親会社持分変動差額:売却価額260-売却持分200=60

開始時の投資と資本の相殺消去を引き継いだ連結精算表では、法人税等相当額を考慮する前の修正を次のように表せます。

借方 金額 貸方 金額
S社株式 200 非支配株主持分 200
関係会社株式売却益 60 資本剰余金 60
合計 260 合計 260

第1行は、個別で減額した株式簿価200を非支配株主持分へ振り替える修正です。第2行で個別上の売却益60を消去し、法人税等相当額控除前の資本剰余金へ振り替えます。この仕訳は連結精算表上の修正であり、P社の個別帳簿へ追加記帳するものではありません。

項目 増減
受取現金 +260
非支配株主持分 +200
資本剰余金(法人税等相当額控除前) +60

現金の増加260=非支配株主持分の増加200+資本剰余金の増加60となります。

支配が続く一部売却では、支配獲得時に計上したのれんの未償却額を売却割合に応じて減額しません。売却手数料等は売却時の費用です。

実際の連結決算では、親会社持分変動差額に関連する法人税等相当額を資本剰余金から控除します。原則的な計算は、持分変動差額に法定実効税率を乗じる方法です。本設例では税率を置いていないため、資本剰余金60は法人税等相当額控除前の金額です。会計処理の結果、連結会計年度末の資本剰余金が負の値となる場合は、資本剰余金をゼロとし、その負の額を利益剰余金から減額します。

4.支配を失えば、連結上も売却損益を認識する

設例2:80%から30%へ売却する

設例1とは別の取引です。

売却前持分と個別簿価 80%、800
S社の連結上の資産・負債 資産1,400、負債400、純資産1,000
売却する持分と価額 S社全体の50%を650で売却
売却後持分 30%。支配を失うが重要な影響力は残る
その他の前提 非支配株主持分200。のれん、取得後の投資修正額、その他の包括利益累計額はない

個別財務諸表の計算は次のとおりです。

  • 売却株式の簿価:800×50%÷80%=500
  • 売却益:650-500=150
  • 残存する関連会社株式:800-500=300
借方 金額 貸方 金額
現金預金 650 S社株式 500
― ― 関係会社株式売却益 150
合計 650 合計 650

連結では、支配喪失日までのS社損益を取り込んだうえで、S社の資産・負債と非支配株主持分を連結から外します。残存する30%は持分法による投資へ切り替えます。

本設例には取得後の投資修正額がないため、残存投資は個別簿価と同じ300です。連結上の売却益も次のように150となります。

受取現金650+残存投資300-売却前の親会社持分800=売却益150

借方側の増減 金額 貸方側の増減 金額
現金の増加 650 S社資産の連結除外 1,400
残存投資の計上 300 連結上の売却益 150
S社負債の連結除外 400 ― ―
非支配株主持分の取崩し 200 ― ―
合計 1,550 合計 1,550

これは支配喪失前後の増減をまとめた検算表です。P社の個別仕訳へそのまま追加する連結修正仕訳ではありません。

実際には、支配獲得後の利益剰余金、評価差額、その他の包括利益累計額、のれん償却累計額などがあるため、個別上と連結上の売却損益が一致しないことがあります。関連会社になる場合は、残存株式の個別簿価へ売却後持分に対応する投資の修正額を加減し、持分法による投資評価額へ直します。残存持分に対応する未償却のれんも、持分比率の推移などを踏まえて算定します。

支配も重要な影響力も失う場合、連結除外時の残存投資は個別貸借対照表上の帳簿価額で評価します。日本基準では、支配喪失時に残存持分を一律に時価へ再測定するわけではありません。

5.法人税と消費税は連結処理から分ける

論点 取扱い 設例1
法人税上の譲渡原価 一単位当たりの帳簿価額に譲渡株式数を乗じて計算する 800×20%÷80%=200
法人税上の譲渡利益 通常得べき対価の額から譲渡原価を控除する 260-200=60
計上事業年度 原則として譲渡契約日の属する事業年度 契約日と引渡日が同日の前提
消費税 株式の譲渡は非課税取引 売却価額に消費税を上乗せしない
課税売上割合 株式など特定の有価証券等の譲渡対価は、原則として対価の5%相当額を分母へ算入する 260×5%=13

法人税法61条の2第1項では、有価証券の譲渡利益額または譲渡損失額を、通常得べき対価の額と譲渡原価との差額として計算します。譲渡原価は、一単位当たりの帳簿価額に譲渡した株式数を乗じた金額です。計上時期は、法人税基本通達2-1-22により、原則として譲渡契約の成立日です。

したがって、設例1の差額60を連結上の資本剰余金とすることと、P社の法人税上の譲渡利益60を認識することは別の処理です。税務簿価が会計上の簿価と異なる場合や、通常得べき対価と異なる価額で譲渡する場合は、税務上の金額も変わる可能性があります。

消費税について、国税庁のタックスアンサーNo.6209は、有価証券の譲渡を非課税取引として示しています。また、タックスアンサーNo.6405では、課税売上割合の分母へ加える特定の有価証券等の譲渡対価を、その対価の5%相当額としています。5%は消費税率ではありません。いずれも2026年4月1日現在の法令等に基づく国税庁資料です。

6.間違えやすい五つの点

誤り 直し方
持分比率だけで支配喪失を決める 議決権、契約、役員構成なども含めて判定する
80%から20%分を売ると、保有株式の20%を売ったことになる S社全体の20%は、保有する80%の25%に当たる
支配継続時も個別上の売却益を連結損益に残す 売却価額と売却持分との差額を資本剰余金とする
支配継続時にのれんを売却割合だけ減らす 支配獲得時の未償却のれんは減額しない
株式の売却価額へ消費税を上乗せする 株式の譲渡は非課税。ただし課税売上割合の分母計算は別に確認する

7.5日で定着させる練習

日 練習 確認点
1日目 80%から60%、30%、10%へ売却する例を分類する 設例の前提に従い、支配継続、持分法、両方の対象外に分ける
2日目 設例1の個別仕訳を作る 売却簿価200、売却益60、残高600
3日目 設例1の連結処理を計算する 売却持分200、非支配株主持分の増加200、資本剰余金は法人税等相当額控除前60
4日目 設例2の支配喪失を検算する 残存投資300、売却益150、増減合計1,550
5日目 設例1の法人税と消費税を分けて説明する 法人税上の譲渡利益60、課税売上割合の分母算入額13
5日練習の答えを確認する
  1. 設例の前提では、80%から60%は支配継続、30%は支配喪失後に持分法、10%は連結と持分法の対象外です。
  2. 個別仕訳は、借方・現金預金260、貸方・S社株式200、関係会社株式売却益60です。
  3. 連結では非支配株主持分が200増え、売却価額260との差額60を法人税等相当額控除前の資本剰余金とします。
  4. 設例2は、650+300+400+200=1,550、1,400+150=1,550で一致します。
  5. 法人税上の譲渡利益は60です。株式譲渡は消費税の非課税取引ですが、課税売上割合の分母には260の5%である13を算入します。

まとめ

子会社株式を一部売却するときは、売却後の支配関係から判定します。

支配が続けば、個別上の売却損益を連結上は資本剰余金へ振り替えます。支配を失えばS社の資産・負債を連結から外し、残存投資を持分法または金融商品会計へ切り替えます。

連結上の処理、法人税上の譲渡損益、消費税上の非課税判定は別々に確認します。この順序を守れば、一部売却の処理を整理できます。

第203回 株式交付ゼロ入門:子会社化・個別と連結・親会社株式80%要件を整理(5日練習付き)

第202回では、発行済株式の全部を取得する株式交換・株式移転を確認しました。今回は、全部を取得せずに他社を子会社にできる「株式交付」を扱います。

会社法上の議決権割合、会計上の支配、税務上の親会社株式80%要件は、別々の判定です。まず、ここを分けます。

1.三つの判定を分ける

判定 確認するもの 意味
会社法 株式交付後の議決権保有割合 議決権の過半数を取得し、新たに子会社とすることが株式交付の前提
会計 財務・営業・事業方針の決定を支配しているか 企業結合の分類、取得企業、取得日を決める
税務 各株主が受け取る対価に占める株式交付親会社株式の価額 80%以上かどうかが株主側の課税繰延べの要件になる

会社法の「50%超」は議決権の割合です。税務の「80%以上」は受取対価の構成割合です。S社株式の60%を取得しても、税務上の対価割合が60%になるわけではありません。

2.株式交付とは何か

会社法2条32号の2、774条の2以下による株式交付は、株式会社が他の株式会社を子会社とするため、その会社の株式を譲り受け、譲渡人に自社株式を交付する制度です。

会社法施行規則4条の2は、株式交付で用いる子会社判定を同規則3条3項1号の議決権過半数基準に限っています。役員構成や契約などによる実質的な支配だけでは、会社法上の株式交付を利用できません。

項目 株式交付 株式交換 株式移転
親会社 既存の株式会社 既存の株式会社または合同会社 新設する株式会社
取得する株式 子会社化に必要な株式。全部でなくてもよい 発行済株式の全部 発行済株式の全部
対象会社 国内の株式会社 完全子会社となる株式会社 完全子会社となる一社または複数の株式会社
既存子会社の追加取得 新たに「子会社とする」取引ではないため対象外 完全子会社化する場合は利用を検討できる 新設親会社の下に完全子会社として置く

株式交付計画には、譲り受ける株式数の下限、交付する親会社株式の数または算定方法、資本金・準備金に関する事項、申込期日、効力発生日などを定めます。取得下限は、効力発生日に対象会社が子会社となる数でなければなりません。

3.親会社の個別仕訳

ここからは、P社とS社に従前の支配関係がなく、株式交付によりP社が会計上もS社の支配を獲得し、P社が取得企業となる場合を考えます。

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」23項と企業会計基準適用指針第10号38項では、取得企業の株式を対価とする場合、取得の対価を原則として企業結合日における交付株式の時価で算定します。

設例:P社がS社の議決権60%を取得する

項目 前提
取得前 P社はS社株式を保有していない
S社株式 議決権のある株式は100株
取得株式 60株。取得後の議決権割合は60%
交付するP社株式 新株3,000株
P社株式の時価 1株2
取得対価 3,000株×2=6,000
増加する株主資本 資本金3,000、資本準備金3,000

会社計算規則39条の2に基づく株主資本等変動額を6,000とし、株式交付計画の定めに従って資本金と資本準備金へ半分ずつ振り分ける前提です。

借方 金額 貸方 金額
子会社株式 6,000 資本金 3,000
資本準備金 3,000
合計 6,000 合計 6,000

P社の子会社株式と株主資本が、それぞれ6,000増えます。この設例では取得日に現金は減りません。

S社自身には、既存のS社株式が株主からP社へ移ったことだけを理由とする仕訳はありません。S社株主の会計・税務は、S社自身の帳簿と分けて考えます。

4.連結ではのれんを計算する

S社の取得日時点の帳簿価額と時価が等しく、識別可能な資産・負債が次のとおりだったとします。

項目 金額
識別可能資産 15,000
負債 6,000
時価純資産 9,000
資本金 4,000
資本剰余金 1,000
利益剰余金 4,000

P社持分相当額:9,000×60%=5,400

のれん:取得対価6,000-5,400=600

非支配株主持分:9,000×40%=3,600

借方 金額 貸方 金額
資本金(S社) 4,000 子会社株式(P社) 6,000
資本剰余金(S社) 1,000 非支配株主持分 3,600
利益剰余金(S社) 4,000
のれん 600
合計 9,600 合計 9,600

消去するのは、S社の取得日時点の資本とP社の子会社株式です。P社が株式交付で増加させた自社の資本金・資本準備金は消去しません。のれん600は連結上の金額であり、P社の個別帳簿には計上しません。

日本基準では、のれんを原則として20年以内の効果が及ぶ期間にわたり規則的に償却します。実務では、識別可能な無形資産、時価評価差額、税効果などを検討してから金額を確定します。

5.税務の80%要件は取得割合ではない

株式交付の税務特例は、適格合併や適格分割とは別の制度です。個人株主については租税特別措置法37条の13の4、法人株主については同法66条の2に規定されています。

国税庁「No.1545 株式等を対価とする株式の譲渡に係る譲渡所得等の課税の特例」は、個人株主について、受取対価に占める株式交付親会社株式の価額が80%以上である場合、親会社株式に対応する部分の譲渡がなかったものとみなす取扱いを示しています。

この割合は、株式交付子会社の株主ごとに判定します。法令上の要件を満たす場合に適用される規定であり、株主が課税と繰延べを自由に選ぶ制度ではありません。

確認事項 内容
法的形式 会社法上の株式交付による譲渡か
対価割合 受取対価に占める株式交付親会社株式の価額が80%以上か
親会社の属性 株式交付直後の親会社が、対象外となる一定の同族会社に該当しないか
繰延べの範囲 親会社株式だけなら原則として全部、混合対価なら親会社株式に対応する部分
取得価額 旧株式の取得価額のうち、親会社株式に対応する部分を引き継ぐ

2023年10月1日以後に行われる株式交付では、株式交付直後の親会社が一定の同族会社に該当すると特例の対象外です。ただし、いわゆる非同族の同族会社は一律に除外されません。名称だけで決めず、株主構成を確認します。範囲は国税庁の措置法66条の2関係通達の趣旨説明で確認できます。

税務設例1:親会社株式だけを受け取る

S社株主Aが、取得価額2,400のS社株式を譲渡し、時価6,000のP社株式だけを受け取ります。P社は対象外となる一定の同族会社に該当せず、株式の交付を受けるための費用はないものとします。

項目 計算
通常の譲渡益相当額 6,000-2,400=3,600
親会社株式の対価割合 6,000÷6,000=100%
株式交付時の譲渡損益 特例により0
取得したP社株式の取得価額 2,400
繰り延べられる含み益 6,000-2,400=3,600

利益3,600が消えるわけではありません。Aが将来P社株式を譲渡するときは、引き継いだ取得価額2,400を基礎に譲渡損益を計算します。

税務設例2:親会社株式80%、現金20%を受け取る

Aが時価4,800のP社株式と現金1,200を受け取る場合を考えます。対価総額は6,000です。

株式交付割合:4,800÷(4,800+1,200)=80%

除外されるのは80%に満たない場合です。ちょうど80%なら割合要件を満たします。ただし、他の要件は別に確認します。

項目 計算 金額
課税部分の収入金額 6,000×20% 1,200
課税部分へ配分する取得価額 2,400×20% 480
今回認識する譲渡益 1,200-480 720
取得したP社株式の取得価額 2,400×80% 1,920
P社株式へ繰り延べる含み益 4,800-1,920 2,880
検算 認識する利益720+繰延べる利益2,880 3,600

この計算方法は国税庁の措置法37条の13の4関係通達に沿ったものです。親会社株式の割合が80%未満なら、この特例は全体に適用されず、通常の譲渡損益計算に戻ります。

割合計算に使う親会社株式の価額は、原則として株式交付日の価額です。ただし、80%要件の判定については、課税上の弊害がない限り、株式交付計画の算定基準日の株価を基礎に合理的に算定した価額を使える取扱いがあります。評価日と根拠を残しておきます。

6.間違えやすい点

誤りやすい理解 正しい整理
S社株式を80%取得しなければ特例を使えない 80%は取得割合ではなく、各株主の受取対価に占める親会社株式の価額割合
議決権50%で株式交付を利用できる 単純な過半数基準では50%を超える必要がある
のれん600をP社の個別帳簿にも計上する 個別帳簿は子会社株式6,000。のれん600は連結上で認識する
S社も資本金を増やす 既存のS社株式が移るだけなら、S社自身にその移転仕訳はない
課税繰延べは非課税である 親会社株式に旧株式の取得価額を引き継ぎ、将来の譲渡時に利益が表れる
会社法上の株式交付なら必ず課税が繰り延べられる 80%要件、一定の同族会社からの除外、株主属性などを別に確認する

7.5日で定着させる

日 練習 答え
1日目 株式交付、株式交換、株式移転を「既存・新設」「全部・一部」で分ける 株式交付は既存の株式会社による一部取得が可能。株式交換・株式移転は全部取得
2日目 議決権100個の会社を子会社にする場合、50個と51個のどちらが必要か考える 単純な過半数基準では51個以上
3日目 取得対価6,000、資本金3,000、資本準備金3,000の個別仕訳を書く 借方・子会社株式6,000、貸方・資本金3,000、資本準備金3,000
4日目 時価純資産9,000、持分60%、対価6,000から、のれんと非支配株主持分を求める のれん600、非支配株主持分3,600
5日目 取得価額2,400、親会社株式4,800、現金1,200から税務計算をする 割合80%、今回の譲渡益720、親会社株式の取得価額1,920

8.まとめ

  • 株式交付は、既存の株式会社が自社株式を対価として、他の国内株式会社を新たに子会社とする制度です。
  • 株式交換と異なり、対象会社の発行済株式全部を取得する必要はありません。
  • 親会社の個別財務諸表では子会社株式を計上します。
  • 連結では投資と資本を相殺し、のれんと非支配株主持分を計算します。
  • 会社法上の議決権50%超と、税務上の親会社株式80%以上は別の判定です。
  • 税務特例は非課税ではなく、親会社株式に対応する利益を将来へ繰り延べる仕組みです。

問題文に「株式交付」とあったら、会社法上の子会社化、会計上の支配獲得、株主税務の対価割合の順に分けます。この順番で十分です。

第202回 株式交換・株式移転ゼロ入門:完全親子会社化の個別・連結と税務を整理(5日練習付き)

第201回では、独立企業が共同で会社を支配する「共同支配企業の形成」を確認しました。今回は、会社を消滅させずに完全親子会社関係をつくる株式交換と株式移転を扱います。

株式交換・株式移転は会社法上の形式です。会計では、取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取引等のどれに当たるかを別に判定します。単独株式移転は、企業結合に該当しない取引です。

1.株式交換と株式移転の違い

会社法2条31号・32号、767条から774条を基に整理すると、違いは「既存会社を親会社にするか、新会社を設立するか」です。

形式 完全親会社 取得する株式 特徴
株式交換 既存の株式会社または合同会社 完全子会社となる株式会社の発行済株式の全部 株式交換契約を締結する。本稿の設例では株式会社を親会社とする
株式移転 株式移転により新設する株式会社 一社または複数社の発行済株式の全部 株式移転計画を作成し、新設会社の下に既存会社を置く
株式交付 既存の株式会社 他社を子会社とするために必要な株式 全株式の取得を要しない。本稿の対象外

株式交換や株式移転では、完全子会社となる会社は消滅しません。その会社の事業用資産・負債も、個別帳簿に残ります。親会社が取得するのは、原則として完全子会社の株式です。

2.六つの順序で判定する

順序 確認事項
1 株式交換か株式移転か
2 取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取引等、企業結合に該当しない取引のどれか
3 会計上の取得企業はどの会社か
4 各社の個別財務諸表で何を計上するか
5 連結財務諸表で何を消去・調整するか
6 株主の課税関係と法人税上の適格性を、それぞれ判定する

法的な親会社が、そのまま会計上の取得企業になるとは限りません。議決権比率、株主構成、経営陣などを総合して判定します。

3.取得となる株式交換

A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とし、会計上もA社が取得企業となる例です。

項目 金額
A社が交付する自社株式の時価総額 1,200
A社で増加させる払込資本 資本金600、資本剰余金600
B社の資本金 500
B社の利益剰余金 300
B社の帳簿上の株主資本 800
B社の土地の時価評価差額 200
B社の識別可能純資産の時価 1,000

土地の評価差額に関する税効果は、計算の流れを明確にするため除外しています。税効果を考慮する設例では、評価差額200をそのまま純資産の増加額とはしません。

A社の個別財務諸表

企業会計基準適用指針第10号の第110項・第111項によれば、取得となる株式交換では、完全親会社は取得対価を基礎として子会社株式を計上し、新株の発行額を払込資本とします。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
子会社株式 1,200 資本金 600
- - 資本剰余金 600
合計 1,200 合計 1,200

A社の個別財務諸表で取得する資産はB社株式です。B社の土地や負債を直接計上しません。子会社株式とB社の純資産との差額を、A社の個別財務諸表でのれんにすることもありません。

実際に取得に直接要した付随費用がある場合、個別財務諸表では子会社株式の取得原価に含める一方、連結財務諸表では取得関連費用として発生時に費用処理する点にも注意が必要です。本設例では付随費用をゼロとしています。

B社の個別財務諸表

B社では株主がA社へ変わりますが、B社自身の資産・負債は移転しません。この株主変更だけを理由とする仕訳はなく、土地も時価へ書き換えません。

新株予約権の処理やB社自身が負担した費用などがあれば、別途検討します。

A社の連結財務諸表

連結では、A社の投資と取得日におけるB社の資本を相殺します。適用指針第116項に従い、消去差額をのれんまたは負ののれんとして処理します。

項目 計算 金額
取得対価 A社が交付した株式の時価 1,200
B社の帳簿上の株主資本 500+300 800
土地の時価評価差額 - 200
識別可能純資産の時価 800+200 1,000
のれん 1,200-1,000 200
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
B社資本金 500 子会社株式 1,200
B社利益剰余金 300 - -
土地 200 - -
のれん 200 - -
合計 1,200 合計 1,200

借方と貸方は1,200で一致します。B社は100%子会社となるため、この設例に非支配株主持分はありません。

4.単独株式移転で持株会社を設立する場合

C社が単独株式移転により、新しい完全親会社H社を設立する例です。C社の資本金は400、利益剰余金は500、適正な帳簿価額による株主資本は900とします。

適用指針第258項・第259項では、単独株式移転について、第239項・第240項のうち旧親会社に関する処理に準じるとしています。設例では、会社法に基づいてH社の資本金を300、資本剰余金を600とすることが決定済みと仮定します。

H社の個別財務諸表

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
子会社株式 900 資本金 300
- - 資本剰余金 600
合計 900 合計 900

子会社株式900は、C社の株式移転日前日の適正な帳簿価額による株主資本を基礎にしています。C社では、株主がH社へ変わったことだけを理由とする仕訳はありません。

H社の連結財務諸表

まず、H社の子会社株式とC社の株主資本を相殺します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
C社資本金 400 子会社株式 900
C社利益剰余金 500 - -
合計 900 合計 900

このままでは、H社個別の資本金300と資本剰余金600だけが残ります。株式移転前のC社の利益剰余金500を連結上で引き継ぐため、株主資本項目を調整します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
資本剰余金 500 利益剰余金 500
合計 500 合計 500

調整後の連結株主資本は、資本金300、資本剰余金100、利益剰余金500、合計900です。子会社株式900とC社の株主資本900の消去差額はゼロであり、単に新しい親会社を上に置くこの設例では、新たなのれんは生じません。

5.複数社の株式移転は分類が先

形態 判断の中心 処理の方向
一社だけの単独株式移転 企業結合には該当しない 旧会社の適正な帳簿価額による株主資本を基礎とする
独立した複数社の株式移転で、一社が取得企業となる どの既存会社が会計上の取得企業か 取得企業となる会社の株式は帳簿価額を基礎とし、被取得企業となる会社には取得の会計処理を適用する
共同支配企業の形成となる株式移転 共同支配契約などの判定要件を満たすか 共同支配企業の形成として処理する
既存の親子会社が共同で行う株式移転 最終的な支配が継続しているか 共通支配下の取引等として帳簿価額を基礎に処理する

新設された会社が法的な親会社だからといって、会計上の取得企業になるとは限りません。株式移転完全子会社となった既存会社が、会計上の取得企業になることがあります。

6.税務は株主と法人を分ける

居住者である個人株主

国税庁のNo.1526「株式交換により株式を譲渡した場合の譲渡所得等の特例」とNo.1527「株式移転により株式を譲渡した場合の譲渡所得等の特例」は、いずれも令和8年4月1日現在の法令等を基準としています。

株式交換では、一定の場合に、株式交換完全親法人または同親法人との間に所定の完全支配関係がある法人の株式だけを受け取ると、旧株式の譲渡がなかったものとみなされます。株式移転では、株式移転完全親法人の株式だけを受け取ることが要件です。法令上除外される金銭等は別に扱います。

この特例を受けた新株式の取得価額は、原則として旧株式の取得価額を引き継ぎ、取得に要した費用があれば加算します。一株未満の端数に対応する金銭には、その端数株式の譲渡として課税関係が生じます。法人株主や非居住者には別の規定があります。

完全子法人の法人税

法人税法2条は、適格株式交換等と適格株式移転を定義しています。この適格判定は、個人株主について旧株式の譲渡がなかったものとする所得税の判定とは別です。

確認事項 注意点
交付する対価 所定の親法人株式以外の資産が交付されていないか。法令上除外される金銭等は区別する
再編前の資本関係 完全支配関係、支配関係、いずれもない場合で要件が異なる
再編後の関係 完全支配関係や支配関係の継続見込みを確認する
事業・従業者等 資本関係の区分に応じ、主要事業や従業者の継続、事業関連性などを確認する
株主による継続保有 資本関係や株主数などにより要件となる場合がある
無対価・参加会社数 無対価取引や単独株式移転には個別の要件がある

表の項目がすべての取引に一律に必要になるわけではありません。再編前の資本関係などに応じて、適用する要件を選びます。株式だけを対価としたという理由だけで、適格とは決められません。

また、「非適格なら必ず全資産を時価評価する」とも限りません。法人税法62条の9の対象となる非適格株式交換等では、完全子法人が直前に有する時価評価資産の評価益または評価損を所得計算へ反映しますが、同条の適用対象から除かれる取引や、法人税法施行令123条の11により時価評価資産から除かれる資産があります。国税庁の法人税基本通達12の2-3-1も併せて確認します。

法人税上の時価評価が必要でも、それだけを理由に完全子会社の会計帳簿を時価へ書き換えるわけではありません。会計上の帳簿価額と税務上の金額に差が生じた場合は、申告調整と税効果会計を別に検討します。

7.よくある誤り

誤り 正しい整理
株式交換でB社の土地をA社個別に計上する A社個別が取得するのはB社株式。土地の時価評価は、取得となる場合の連結手続で行う
A社個別で子会社株式との差額をのれんにする 株式取得によるのれんは、連結上の投資と資本の相殺消去で計算する
B社の資産・負債をすべて時価へ書き換える 株主が変わっただけなら、B社個別では従来の帳簿価額を引き継ぐ
新設H社を必ず会計上の取得企業とする 法的な親会社と会計上の取得企業を分けて判定する。単独株式移転は企業結合に該当しない
株式対価だけなら税務上も適格と考える 資本関係、支配の継続、事業・従業者等の該当要件も確認する
個人株主の課税関係と法人税上の適格判定を同一視する 株主、完全子法人、完全親法人の課税関係を分けて確認する

8.5日で定着させる

日 練習内容 到達点
1日目 株式交換、株式移転、株式交付の違いを書く 既存親会社と新設親会社を区別できる
2日目 A社、B社、旧B社株主の間で何が移るかを書く B社の資産ではなくB社株式が移ると説明できる
3日目 A社個別の仕訳を再現する 子会社株式1,200と払込資本1,200を一致させられる
4日目 連結修正仕訳とのれんを再計算する 1,200-(800+200)=200を説明できる
5日目 会計上の分類、個人株主の課税関係、法人税上の適格を別々に説明する 三つの判定を混同しない

9.まとめ

  • 株式交換では既存会社、株式移転では新設株式会社が完全親会社となる。
  • 会社法上の形式と、会計上の取得・共同支配・共通支配等の分類は別に判定する。
  • 完全親会社の個別財務諸表では子会社株式を計上する。完全子会社では、株主の変更だけを理由とする仕訳は行わない。
  • 取得となる株式交換では、連結上、投資と取得日資本を相殺し、差額をのれん等として処理する。
  • 単独株式移転では旧会社の帳簿価額が継続し、連結上は株主資本項目を調整する。
  • 個人株主の課税関係と法人税上の適格判定は別である。株式対価だけで結論を出さない。

問題では、法的形式→会計上の分類→取得企業→個別仕訳→連結修正→税務判定の順に進めます。一つずつ分ければ、組織再編の問題も整理できます。

第201回 共同支配企業の形成ゼロ入門:4要件・帳簿価額・持分法を仕訳で整理(5日練習付き)

第200回では、同じ最終支配の中で行う共通支配下の取引を確認しました。今回は、複数の独立した企業が事業を持ち寄り、共同で支配する会社をつくる「共同支配企業の形成」を扱います。

50対50で出資しただけでは、共同支配企業の形成とはいえません。独立企業、契約、対価、その他の支配という4要件を確認してから、共同支配企業、投資企業の個別財務諸表、連結財務諸表の順に処理します。

1.取得・共同支配・共通支配を分ける

区分 支配の状態 会計処理の中心
取得 一つの企業が他の企業または事業への支配を獲得する 時価を基礎とするパーチェス法
共同支配企業の形成 複数の独立企業が契約等に基づいて共同で支配する 共同支配企業は適正な帳簿価額を引き継ぐ。共同支配投資企業は連結上、共同支配企業への投資に持分法を適用する
共通支配下の取引 結合の前後で同じ株主による最終的な支配が続く 個別では帳簿価額を基礎とし、連結では内部取引として消去する

共同支配企業の形成は、独立企業間の共同事業です。共通支配下の取引のように、企業集団内の取引としてすべて消去するものではありません。

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第8項、第11項、第12項が、共同支配、共同支配企業、共同支配投資企業を定義しています。

2.4要件を順に確認する

企業会計基準適用指針第10号第175項では、次の4要件をすべて満たす企業結合を共同支配企業の形成としています。

要件 確認内容
独立企業要件 共同支配投資企業が複数の独立した企業で構成されているか
契約要件 共同支配の契約等が文書化され、事業目的、各社の重要な役割、重要事項に全投資企業の同意が必要であることが定められているか
対価要件 共同支配投資企業に支払われる対価のすべてが、原則として議決権のある株式か
その他の支配要件 いずれか一社による実質的な支配を示す一定の事実がないか

独立企業要件では、投資企業とその子会社、緊密な者、同意している者を単一の企業として扱います。

契約要件では、予算、事業計画、重要な人事、多額の資金調達、重要資産の取得・処分、事業の拡大・撤退などについて、すべての共同支配投資企業の同意が必要かを確認します。契約書に役割が書かれていても、実態が伴わなければ足りません。

議決権比率そのものは判定要件ではありません。50対50でも契約要件を欠けば共同支配企業の形成にはならず、議決権比率が異なっていても4要件を満たすことはあります。

対価要件の補足

企業結合会計基準の注7では、議決権のある株式による対価と認めるため、単一の取引または原則として一事業年度内に完了する取引であること、議決権の行使制限がないこと、企業結合日に対価が確定していること、償還・再取得の取決めなどがないことも求めています。

その他の支配要件では、特定の投資企業の役員・従業員またはその経験者が意思決定機関の構成員の過半数を占めていないか、特定の投資企業だけが重要な契約上有利になっていないか、企業結合日後2年以内にいずれかの投資企業が投資した大部分の事業を処分する予定がないかを確認します。

3.共同新設分割の設例

A社とB社は互いに独立しており、関連する事業を共同新設分割によってJ社へ移転します。両社はJ社の議決権を50%ずつ取得し、重要事項には両社の同意が必要です。対価はJ社の議決権株式だけで、会計上の4要件を満たすものとします。

税務上の適格要件を満たすかどうかは、まだ仮定しません。

項目 A社 B社 合計
棚卸資産 250 300 550
有形固定資産 750 600 1,350
資産合計 1,000 900 1,900
買掛金 180 120 300
長期借入金 220 180 400
負債合計 400 300 700
株主資本相当額 600 600 1,200

A社の株主資本相当額は1,000-400=600、B社は900-300=600です。

4.A社とB社の個別仕訳

共同支配投資企業が受け取るJ社株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額を基礎に計算します。

A社

借方科目 金額 貸方科目 金額
買掛金 180 棚卸資産 250
長期借入金 220 有形固定資産 750
共同支配企業株式 600
借方合計 1,000 貸方合計 1,000

B社

借方科目 金額 貸方科目 金額
買掛金 120 棚卸資産 300
長期借入金 180 有形固定資産 600
共同支配企業株式 600
借方合計 900 貸方合計 900

負債を借方に記入するのは、A社・B社の帳簿から移転した負債を取り除くためです。どちらも移転損益を計上しません。

移転事業に繰延税金資産・負債が含まれる場合、適用指針第196項に従い、共同支配企業株式の取得原価を算定する際に、移転事業に係る株主資本相当額から当該繰延税金資産・負債を控除する点に留意が必要です。

組織再編に伴う支出額については、適用指針第91項により、事業分離に要した支出額は分離元企業で発生した事業年度の費用とします。一方、受取株式の取得に係る付随費用は、金融商品会計に関する実務上の取扱いに従って株式の取得原価へ加算します。本設例では、これらの支出額を除外しています。

5.J社の受入仕訳

J社は、A社とB社から移転された資産・負債を、それぞれの移転直前の適正な帳簿価額で引き継ぎます。払込資本1,200のうち、資本金を600、資本剰余金を600とすることは、分割計画等に基づく設例上の仮定です。

借方科目 金額 貸方科目 金額
棚卸資産 550 買掛金 300
有形固定資産 1,350 長期借入金 400
資本金 600
資本剰余金 600
借方合計 1,900 貸方合計 1,900

J社の純資産は1,900-700=1,200です。A社とB社が計上したJ社株式600ずつの合計とも一致します。J社は移転された資産・負債を時価へ評価替えせず、形成の受入仕訳でのれんも計上しません。

6.個別と連結を混ぜない

作成主体 処理
J社の個別財務諸表 移転された資産・負債を適正な帳簿価額で引き継ぐ
A社・B社の個別財務諸表 移転事業の株主資本相当額を基礎にJ社株式を計上する
A社・B社の連結財務諸表 共同支配企業に対する投資へ通常の持分法を適用する

共同支配企業について比例連結は行いません。A社とB社がJ社の資産・負債を50%ずつ科目ごとに取り込む処理ではありません。

企業結合会計基準第39項(2)と適用指針第197項・第431項・第432項により、共同支配投資企業は連結財務諸表上、共同支配企業への投資について通常の持分法を適用します。したがって、共同支配企業に対する投資の取得原価と、共同支配企業の資本のうち持分比率に対応する額との差額があれば、通常の持分法に従って分析し、処理します。差額を処理しない取扱いは、2008年改正前の基準によるものです。

本設例の形成時には、A社の投資取得原価600と、J社の形成時純資産1,200の50%である持分相当額600が一致します。B社についても同じです。このため、設例の前提では形成時に処理すべき差額はありません。共同支配企業の形成では常に差額やのれんが生じない、という意味ではありません。

形成後にJ社が120の当期純利益を計上し、配当を行わなかったとします。A社の持分相当額は120×50%=60です。

借方科目 金額 貸方科目 金額
共同支配企業株式 60 持分法による投資利益 60
借方合計 60 貸方合計 60

A社の連結上の投資残高は600+60=660です。J社の期末純資産1,200+120=1,320の50%とも一致します。この持分法仕訳はA社の個別帳簿には記帳しません。B社も同額です。

7.共同支配企業の形成にならない例

状況 確認すべき点
50%ずつ出資したが、共同支配契約が文書化されていない 契約要件を満たさない
A社の役員・従業員またはその経験者が、J社の意思決定機関の構成員の過半数を占める A社による支配を示す事実に該当しないか確認する
重要事項を多数決だけで決められる 全共同支配投資企業の同意を求める契約になっていない
対価に通常の現金が含まれる 原則として対価要件を満たさない
結合後2年以内に、一方が投資した大部分の事業を処分する予定がある その他の支配要件を満たさない

8.税務上の適格分社型分割は別に判定する

本設例ではJ社株式をA社とB社自身が受け取るため、法人税法上は分社型分割に当たるかを確認します。会計上の「共同支配企業の形成」と、税務上の「適格分社型分割」は別の判定です。

A社とB社がそれぞれJ社株式の50%を保有する本設例では、各社とJ社との間に50%超の保有関係があるとはしていません。そこで、共同事業要件による適格判定を検討します。

要件 確認内容
対価要件 原則として、J社または一定の分割承継親法人の株式以外の資産が交付されないこと
事業関連性 A社とB社が移転する事業が相互に関連すること
事業規模または特定役員 所定の事業規模の割合がおおむね5倍を超えないこと、または特定役員引継要件を満たすこと
主要資産等の移転 各分割事業に係る主要な資産・負債がJ社へ移転していること
従業者の引継ぎ 各分割事業の従業者のうち、おおむね80%以上に相当する数が分割後にJ社の業務へ従事する見込みであること
事業継続 関連する各分割事業がJ社で引き続き営まれる見込みであること
株式継続保有 分社型分割で各分割法人に交付される所定の株式の全部が、継続して保有される見込みであること

「おおむね5倍」や「おおむね80%」は税務上の要件です。会計上の共同支配要件へ置き換えてはいけません。また、分割時から具体的な株式売却計画がある場合は、株式継続保有要件に影響します。

本設例では、事業関連性、事業規模、役員、従業者、事業継続などの事実を与えていません。したがって、適格分社型分割に該当するとは断定できません。

区分 移転時の基本的な取扱い
適格分社型分割 税務上の帳簿価額による譲渡として、移転時の譲渡損益を繰り延べる
非適格分割 時価による譲渡として、原則として譲渡損益を所得計算へ反映する

適格分社型分割の基本規定は法人税法第62条の3、非適格分割の基本規定は同法第62条です。適格分割で用いる帳簿価額は税務上の帳簿価額であり、減価償却超過額などがあれば会計上の帳簿価額とは一致しません。

9.間違えやすい点

誤りやすい理解 正しい整理
50%ずつ持てば必ず共同支配になる 文書化された契約と実態を含む4要件で判定する
共同支配企業は各投資企業の子会社である 一社が単独で支配するものではない
J社の資産・負債を50%ずつ比例連結する 比例連結は行わず、連結上は共同支配企業への投資に持分法を適用する
形成時は投資原価と持分相当額の差額を処理しない 通常の持分法により差額を分析して処理する。本設例では両者が600で一致するため差額がない
事業分離に要した支出額は受取株式の取得原価になる 事業分離に要した支出額は発生時の費用とし、受取株式の取得に係る付随費用は金融商品会計に関する実務上の取扱いに従う
会計上の共同支配なら税務上も適格になる 法人税法上の要件を別に判定する
移転元では負債を貸方に記入する 移転元の帳簿から負債を取り除くため借方に記入する

10.5日で確認する

  1. 1日目:4要件を言う
    独立企業、契約、対価、その他の支配です。

  2. 2日目:A社の投資原価を計算する
    資産1,000-負債400=600です。

  3. 3日目:J社の残高を検算する
    資産1,900-負債700=純資産1,200です。

  4. 4日目:持分法を計算する
    形成時は投資原価600と持分相当額600が一致します。形成後の利益については120×持分比率50%=60となり、A社の連結上の投資残高は600+60=660です。

  5. 5日目:税務との違いを説明する
    会計上の4要件を満たしただけでは、適格分社型分割とは断定できません。税務上の共同事業要件などを別に確認します。

順番は、「4要件で分類する→J社は帳簿価額で引き継ぐ→A社・B社の個別では株式へ振り替える→連結では通常の持分法を適用する→税務は別に判定する」です。

確認した一次資料

国税庁の質疑応答事例は、同ページに記載された令和7年8月1日現在の法令・通達等を基礎としています。本稿では2026年10月3日を基準日として、企業会計基準委員会、e-Gov法令検索および国税庁の公表資料を確認しています。

第200回 共通支配下の取引ゼロ入門:グループ内合併・帳簿価額引継ぎ・非支配株主との取引を仕訳で整理(5日練習付き)

第198回では支配を新たに獲得する企業結合、第199回では事業を手放す側の事業分離を確認しました。今回は、同じ企業集団の中で会社や事業を組み替える「共通支配下の取引」を扱います。

最初に押さえる結論は、最終的な支配が変わらない組織再編では、原則として資産・負債を移転元の適正な帳簿価額で引き継ぐことです。ただし、個別財務諸表と連結財務諸表、共通支配下の取引と非支配株主との取引、会計上の判定と法人税法上の適格判定は分けなければなりません。

まず3種類の取引を区別する

区分 支配の動き 会計処理の中心
取得 他の企業・事業への支配を新たに獲得する 取得日の時価を基礎に取得原価を配分し、のれん等を計算する
共通支配下の取引 企業結合の前後で、同じ株主による最終的な支配が一時的でなく続く 個別では移転元の適正な帳簿価額を基礎とし、連結では内部取引として消去する
非支配株主との取引 支配を維持したまま親会社の持分比率が変わる 個別では子会社株式の取得・売却、連結では親会社株主と非支配株主との資本取引として処理する

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第16項は、共通支配下の取引を、結合当事企業または事業のすべてが企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、その支配が一時的でない場合の企業結合と定義しています。

親会社と子会社の合併、同じ親会社が支配する子会社同士の合併などが代表例です。「同一の株主」には企業だけでなく個人も含まれます。一方、投資会社とその関連会社との結合は、支配関係がないため、それだけでは共通支配下の取引になりません。

1.判定は5段階で進める

順序 確認すること 間違えやすい点
1 結合当事企業・事業を特定する 株主だけでなく、実際に移転する会社や事業を確認する
2 取引前の最終支配者を確認する 直接の株主だけでなく、企業集団の最上位までたどる
3 取引後も同じ支配が続くか確認する 一時的な支配や、直後の売却が予定された支配を機械的に含めない
4 非支配株主との持分取引を分ける 親会社がすでに支配している子会社株式の追加取得は、新たな「取得」ではない
5 個別・連結・法人税を別々に判定する 会計上の共通支配下の取引が、税務上も当然に適格となるわけではない

2.個別と連結では見ている単位が違う

財務諸表 見ている単位 基本処理
移転先企業の個別財務諸表 法的に独立した一社 受け入れた資産・負債を移転元の適正な帳簿価額で計上する
株主である親会社の個別財務諸表 親会社自身 交付・受領した株式や、消滅した子会社株式を処理する
親会社の連結財務諸表 企業集団全体 共通支配下の取引を内部取引として消去する

企業結合会計基準第41項から第44項では、企業集団内を移転する資産・負債を原則として移転直前の適正な帳簿価額で計上し、共通支配下の取引を連結上すべて消去すると定めています。

ここでいう「適正な帳簿価額」は、記帳されている数字を無条件で写すという意味ではありません。吸収合併消滅会社は合併期日の前日に決算を行い、減価償却、引当金、評価損など必要な決算整理を反映した残高を確定します。

3.設例1:100%子会社同士の吸収合併

P社はS1社とS2社の株式をそれぞれ100%保有しています。S1社を存続会社、S2社を消滅会社とする吸収合併を行い、P社にはS1社株式のみを交付します。合併後もP社がS1社を100%保有します。

S2社の合併期日前日の貸借対照表は次のとおりです。時価純資産は5,200ですが、会計処理には下表の適正な帳簿価額を使用します。

資産 金額 負債・株主資本 金額
現金 1,000 買掛金 1,800
売掛金 2,000 借入金 2,200
棚卸資産 1,600 資本金 2,500
機械装置 3,400 利益剰余金 1,500
合計 8,000 合計 8,000

受け入れる資産と負債の差額は、8,000-4,000=4,000です。設例では、会社法上の手続に基づき、この4,000をその他資本剰余金として処理するものとします。

S1社の個別仕訳

借方 金額 貸方 金額
現金 1,000 買掛金 1,800
売掛金 2,000 借入金 2,200
棚卸資産 1,600 その他資本剰余金 4,000
機械装置 3,400 ― ―
合計 8,000 合計 8,000

検算:増加資産8,000=増加負債4,000+増加株主資本4,000です。時価純資産5,200との差額1,200を評価益や新しいのれんとして計上しません。

株式のみを対価とする子会社同士の合併では、原則として消滅会社の株主資本額を払込資本として処理します。一定の場合には、消滅会社の資本金、資本準備金、利益剰余金などの構成を引き継ぐ方法も認められます。具体的な内訳は、合併契約と会社法上の手続を確認します。

P社の個別仕訳

P社における合併直前のS2社株式の帳簿価額を3,600とします。受け取ったS1社株式の取得原価は、引き換えられたS2社株式の適正な帳簿価額を基礎にします。

借方 金額 貸方 金額
S1社株式 3,600 S2社株式 3,600

交換損益は計上しません。S2社への投資がS1社への投資に置き換わったと考えます。

連結財務諸表での見え方

企業集団全体では、合併前からS2社の資産・負債を連結していました。合併によって資産の置き場所がS2社からS1社へ変わっても、外部から新しい資産を取得したわけではありません。P社の投資勘定、S1社・S2社の資本、合併に伴う内部取引を消去するため、合併そのものによって連結上の資産・負債・純資産の総額は増えません。

ただし、登記費用や専門家報酬など外部に支払った組織再編費用は、内部取引ではありません。企業結合に要した支出額は、原則として発生した事業年度の費用として処理します。

4.帳簿価額引継ぎにも例外と注意点がある

場面 注意点
親会社が子会社を吸収合併する 親会社の連結上、子会社資産・負債を時価評価していた場合は、原則としてその修正後の帳簿価額を親会社の個別財務諸表へ引き継ぐ
連結上の既存のれんが残っている 親会社による子会社の吸収合併では、のれんの未償却残高を親会社の個別財務諸表へ引き継ぐことがある
同一株主に支配される子会社同士の合併で、現金等のみを対価とする 消滅会社の株主資本額と、対価として支払った現金等の適正な帳簿価額との差額から、存続会社の個別財務諸表にのれん等が生じる場合がある
企業結合直前の取得と合併が一体である 形式だけで共通支配下の取引とせず、一連の取引として支配獲得時の会計処理を検討する

したがって、「共通支配下なら、どの会社でも未修正の簿価を使う」「共通支配下では、のれんが絶対に出ない」と覚えるのは危険です。組織再編の当事者、対価、親子関係、既存の連結修正を確認します。具体的な形式別処理は、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第200項以降に示されています。

5.設例2:非支配株主から子会社株式を追加取得する

P社はS社株式の80%を保有し、すでにS社を支配しています。P社が非支配株主から残り20%を現金3,000で取得します。追加取得日の連結貸借対照表における非支配株主持分は2,400とし、取得関連費用やその他の包括利益累計額は考慮しません。

P社の個別仕訳

借方 金額 貸方 金額
S社株式 3,000 現金 3,000

個別財務諸表では、外部の株主から取得した子会社株式を取得原価で追加計上します。

連結修正仕訳

支配は80%取得時にすでに成立しています。残り20%の取得は、企業集団の支配獲得ではなく、親会社株主と非支配株主との資本取引です。

借方 金額 貸方 金額
非支配株主持分 2,400 S社株式 3,000
資本剰余金 600 ― ―
合計 3,000 合計 3,000

検算:追加投資額3,000-減少する非支配株主持分2,400=600です。この600は連結上の新しいのれんや費用ではなく、資本剰余金の減少となります。取引後の非支配株主持分はゼロです。

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」第28項は、追加取得持分と追加投資額の差額を資本剰余金とする処理を定めています。連結会計年度末に資本剰余金全体が負の値となる場合は、資本剰余金をゼロとし、その負の値を利益剰余金から減額します。

6.法人税は会計と別に適格性を判定する

会計上の「共通支配下」と法人税法上の「適格合併」は、目的も要件も同じではありません。法人税では、合併当事法人の資本関係、交付する対価、合併後の関係継続見込みなどを、法令上の区分に従って判定します。

設例1では、P社による完全支配関係が合併前から存在し、合併後も継続する見込みで、P社へS1社株式以外の資産を交付しないものと仮定します。この前提では、法人税法上の適格合併に該当します。完全支配関係にある法人間の適格要件は、国税庁「合併法人と被合併法人との間に『当事者間の完全支配関係』と『法人相互の完全支配関係』のいずれにも該当する関係がある場合の適格判定について」でも確認できます。

税務上の区分 移転資産・負債の基本的な扱い 移転時の譲渡損益
適格合併 税務上の帳簿価額による引継ぎ 原則として繰り延べる
非適格合併 原則として時価による移転 原則として認識する

根拠となる現行法は、e-Gov法令検索「法人税法」第62条および第62条の2です。

会計上の簿価と税務上の簿価は一致しないことがある

設例1の機械装置について、会計上の帳簿価額は3,400ですが、過年度に減価償却超過額300があるため、税務上の帳簿価額は3,700だったとします。

項目 会計上の帳簿価額 税務上の帳簿価額 差額
機械装置 3,400 3,700 300

適格合併でS1社が税務上の帳簿価額として引き継ぐのは3,700です。会計仕訳の3,400をそのまま税務上の帳簿価額として扱ってはいけません。国税庁の「被合併法人等から引継ぎ等を受けた帳簿価額の修正」も、適格合併でいう帳簿価額は会計上の帳簿価額ではなく、税務上の帳簿価額であると説明しています。

この3,700は、減価償却費の計算の基礎となる税務上の取得価額ではありません。取得価額は帳簿価額とは別の概念です。適格合併で移転を受けた減価償却資産の取得価額は、原則として、被合併法人が合併日の前日の属する事業年度において償却限度額の計算の基礎とすべき取得価額に、合併法人がその資産を事業の用に供するため直接要した費用を加えた額です。ただし、採用する償却方法や中古資産の耐用年数を適用する場合には取扱いが異なることがあります。詳細は、国税庁の「適格合併により移転を受けた減価償却資産に係る耐用年数」を確認してください。

この差額300は、税効果会計上、将来減算一時差異となる可能性があります。ただし、適用税率、解消見込み、繰延税金資産の回収可能性を設例で定めていないため、税効果額は計算しません。

また、適格合併で資産・負債を帳簿価額で引き継げても、被合併法人の欠損金を無条件で全額利用できるとは限りません。欠損金の引継制限や特定資産の譲渡等損失の制限は、適格性とは別に確認します。

7.よくある誤りを整理する

誤った処理・考え方 修正のポイント
同じグループなので、時価で資産を計上する 共通支配下の取引では、原則として移転元の適正な帳簿価額を使う
親会社の持分が80%から100%になったので、新たにのれんを計上する すでに支配しているため、連結上は非支配株主との資本取引として差額を資本剰余金にする
子会社の試算表残高をそのまま引き継ぐ 合併期日前日の決算整理後の適正な帳簿価額を確認する
会計上の簿価を税務でも使用する 減価償却超過額などを反映した税務上の帳簿価額を別に確認し、減価償却計算の基礎となる取得価額とも区別する
会計上の共通支配下なら必ず適格合併である 法人税法上の資本関係、対価、継続見込みなどを独立して判定する
関連会社との合併も共通支配下である 関連会社への重要な影響力と、子会社への支配を区別する
グループ内再編は連結上まったく影響しない 外部へ支払う再編費用や、非支配株主との取引による資本剰余金の変動は残る

8.問題を解くときの答案メモ

  1. 取引前後の資本関係図を作る。
  2. 最終支配者が同じで、その支配が一時的でないかを確認する。
  3. 共通支配下の取引と非支配株主との取引を分ける。
  4. 個別仕訳か連結修正仕訳かを明記する。
  5. 移転資産、移転負債、株主資本相当額、対価をそれぞれ計算する。
  6. 借方合計と貸方合計、処理後の投資残高・非支配株主持分を検算する。
  7. 法人税は、法的形式ごとに適格性と税務上の帳簿価額を判定する。

9.5日で定着させる練習

日 15分程度の練習 確認点
1日目 取得・共通支配下・非支配株主との取引を3行で比較する 支配が新しく生じたか
2日目 設例1の資産8,000、負債4,000から株主資本相当額を再計算する 8,000-4,000=4,000
3日目 S1社とP社の個別仕訳を何も見ずに再現する 会社ごとに仕訳を分けたか
4日目 設例2の連結修正仕訳を再計算する 3,000-2,400=600をのれんにしていないか
5日目 会計上の簿価と税務上の簿価が違う理由を説明する 減価償却超過額などの申告調整を引き継げるか

仕上げ問題

P社はS社株式の75%を保有しています。追加で15%を1,800で取得しました。追加取得直前の非支配株主持分25%の残高は2,500です。取得関連費用等はありません。

取得した15%に対応する非支配株主持分は、2,500×15%÷25%=1,500です。取引後に残る非支配株主持分は2,500-1,500=1,000となります。

借方 金額 貸方 金額
非支配株主持分 1,500 子会社株式 1,800
資本剰余金 300 ― ―
合計 1,800 合計 1,800

まとめ

  • 共通支配下の取引は、企業結合の前後で最終的な支配が変わらない取引である。
  • 個別財務諸表では、原則として移転元の適正な帳簿価額を引き継ぐ。
  • 連結財務諸表では、グループ内の移転を内部取引として消去する。
  • 支配獲得後の子会社株式の追加取得は、連結上、のれんではなく資本剰余金を使う。
  • 親会社による子会社吸収合併では、連結上の簿価修正や既存のれんの引継ぎにも注意する。
  • 会計上の共通支配下の判定と、法人税法上の適格判定は別に行う。
  • 適格合併で引き継ぐ税務上の帳簿価額は、会計上の帳簿価額と一致しないことがあり、減価償却計算の基礎となる取得価額とも別の概念である。

難しい組織再編でも、「支配は変わったか」「誰の個別仕訳か」「連結では何を消すか」「税務上の簿価はいくらか」の4点に分ければ、計算の順序を保てます。

第199回 事業分離会計ゼロ入門:移転損益・株主資本相当額と適格分社型分割を整理(5日練習付き)

第198回では、事業を取得する側から、取得原価の配分とのれんを確認しました。今回は反対側です。事業を手放す分離元企業の会計処理を整理します。

最初に判断するのは、移転した事業への投資が清算されたか、分離先企業の株式を通じて継続しているかです。ただし、共同支配企業の形成に該当する場合は別区分として扱います。

1.事業分離とは何か

企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」は、事業分離を、企業を構成する事業を他の企業へ移転することと定めています。

用語 意味
事業 企業活動を行うために組織化され、有機的一体として機能する経営資源
分離元企業 事業を移転する企業
分離先企業 事業を受け入れる企業
事業分離日 事業が移転される日。会社分割では通常は分割期日、事業譲渡では譲渡期日

機械や土地を一つ売っただけでは、必ずしも事業分離になりません。人員、設備、契約などの経営資源が、一体として事業を構成しているかを確認します。

2.処理を決める順序

順序 確認すること
1 移転対象が事業に当たるか
2 受取対価が現金等か、分離先企業の株式か
3 共同支配企業の形成に該当するか。該当しない場合は、分離後の分離先企業が子会社、関連会社、またはそれら以外のいずれになるか
4 個別財務諸表と連結財務諸表のどちらを処理しているか
5 会社分割では、法人税法上の適格要件を満たすか

会計上の投資の清算・継続、共同支配企業の形成、法人税法上の適格・非適格は、それぞれ区別して判定します。

3.受取対価ごとの基本処理

受取対価 分離後の関係 基本処理
現金等のみ 子会社・関連会社以外 原則として投資の清算。受取対価の時価と株主資本相当額との差額を移転損益とする
現金等のみ 子会社 個別財務諸表では共通支配下の取引として処理し、差額は原則として移転損益とする。連結上は未実現損益の消去に準じて処理する
現金等のみ 関連会社 個別財務諸表では原則として移転損益を認識する。連結上は持分法の未実現損益の消去に準じて処理する
分離先企業の株式のみ 子会社または関連会社となる 投資の継続。個別財務諸表では移転損益を認識せず、受取株式の取得原価を株主資本相当額に基づいて算定する
分離先企業の株式のみ 共同支配企業の形成 別区分として扱う。共同支配投資企業の個別財務諸表では、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて共同支配企業株式の取得原価を算定し、連結財務諸表では共同支配企業への投資に持分法を適用する
分離先企業の株式のみ 子会社・関連会社以外で、共同支配企業の形成にも該当しない 原則として投資の清算。移転事業または分離先企業株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定できる時価に基づいて株式を計上し、移転損益を認識する
現金等と株式 各区分 分離後の関係に応じた規定を適用する。現金と株式へ単純に割合配分する処理ではない

共同支配企業の形成は、企業会計基準第7号第23項が「子会社や関連会社以外」となる場合の原則から明示的に除外しています。株式だけを受け取り、子会社にも関連会社にもならないという理由だけで、投資の清算と判断してはいけません。分類と処理は、企業会計基準適用指針第10号第97項、第196項および第197項で確認します。

現金を受け取っても、買戻条件がある場合や、長期購入契約を通じて移転事業のほとんどすべてのコストを負担する場合など、重要な継続的関与が残るときは移転損益を認識できないことがあります。詳細は企業会計基準適用指針第10号第96項を確認します。

4.株主資本相当額を計算する

移転損益と受取株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額を基礎にします。

株主資本相当額=移転資産の適正な帳簿価額-移転負債の適正な帳簿価額-移転事業に係る評価・換算差額等-新株予約権

事業分離日の前日における適正な帳簿価額を、移転事業へ合理的に区分します。

項目 区分 金額
棚卸資産 資産 3,000
機械装置 資産 7,000
買掛金 負債 2,000

移転資産10,000から移転負債2,000を差し引くと、株主資本相当額は8,000です。

5.設例1:現金11,000で外部企業へ事業譲渡する

A社は、共通設例の事業を資本関係のないB社へ移転し、現金11,000を受け取ります。重要な継続的関与はないものとします。

移転利益=現金11,000-株主資本相当額8,000=3,000

借方科目 金額 貸方科目 金額
現金 11,000 棚卸資産 3,000
買掛金 2,000 機械装置 7,000
事業譲渡益 3,000
合計 13,000 合計 13,000

買掛金はA社の負債から外れるため、借方に記入します。仕訳後、移転した棚卸資産、機械装置、買掛金の残高はゼロです。借方合計と貸方合計はいずれも13,000で一致します。

6.設例2:株式だけを受け取り、B社が子会社となる

A社は同じ事業をB社へ移転し、対価としてB社株式だけを受け取ります。A社は事業分離前にB社株式を保有しておらず、分離後にB社がA社の子会社となるものとします。

A社はB社株式を通じて事業投資を続けています。個別財務諸表では移転利益を認識せず、子会社株式を株主資本相当額8,000で計上します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
子会社株式 8,000 棚卸資産 3,000
買掛金 2,000 機械装置 7,000
合計 10,000 合計 10,000

移転事業の純額8,000が子会社株式8,000に置き換わりました。この取引だけではA社の純資産は増減しません。仕訳後、移転した棚卸資産、機械装置、買掛金の残高はゼロで、子会社株式の残高は8,000です。

関連会社株式だけを受け取る場合も、個別財務諸表では同じ考え方です。B社が子会社にも関連会社にもならない場合は、共同支配企業の形成に該当するかを先に確認します。共同支配企業の形成でなければ、原則として投資の清算となり、より高い信頼性をもって測定できる時価に基づいて株式と移転損益を計上します。

7.個別と連結を混ぜない

状況 連結上の確認
子会社へ事業を移転し、個別上で移転損益を認識した 企業集団内部の損益として、未実現損益の消去に準じて処理する
関連会社へ移転して個別上で移転損益を認識した 持分法における未実現損益の消去に準じて処理する
株式対価により分離先企業が新たに子会社となった 分離先企業の従来の事業には取得の会計処理を適用する。移転事業に関する差額は、個別仕訳とは別に連結上の処理を行う
会社分割が共同支配企業の形成に該当した 共同支配投資企業は共同支配企業への投資に持分法を適用する

個別財務諸表で利益を計上したからといって、その全額が連結損益に残るとは限りません。第196回の連結会計、第197回の持分法、第198回の企業結合会計とつながる部分です。

8.法人税では適格・非適格を判定する

適格分社型分割は、分社型分割のうち法人税法上の適格分割に該当するものです。事業譲渡に適格・非適格の判定をそのまま当てはめるものではありません。

税務上の区分 分割法人の基本的な取扱い
適格分社型分割 移転資産・負債を分割直前の税務上の帳簿価額で譲渡したものとして所得を計算し、譲渡損益の計上を繰り延べる
非適格分割 移転資産・負債を分割時の価額で譲渡したものとして、譲渡利益または譲渡損失を所得計算へ反映する

根拠は、e-Gov法令検索「法人税法」第2条、第62条および第62条の3です。

適格要件は、分割法人と分割承継法人の資本関係などによって異なります。株式以外の資産が交付されないという共通要件だけでなく、資本関係に応じて主要な資産・負債、従業者、事業継続、株式の継続保有などの要件を確認します。100%グループ内であることや、株式だけを受け取ることだけで適格と断定してはいけません。

要件の構造は、国税庁「いわゆる三角分割(分社型分割)に係る適格要件について」および国税庁「法人税基本通達 第4節 組織再編成」で確認できます。

設例2の会計上の移転利益はゼロですが、それだけでは税務上の譲渡損益もゼロとは判断できません。分社型分割に該当するか、適格要件を満たすか、移転資産・負債の税務上の帳簿価額はいくらかを別に確認します。非適格分割では資産調整勘定や負債調整勘定が関係することもあるため、事業全体の時価だけで申告調整額を決めることはできません。

9.見落としやすい点

誤りやすい考え方 確認すること
会社全体の純資産を使う 移転事業に属する資産・負債を合理的に区分する
株式の時価が高ければ必ず利益を計上する 子会社・関連会社となるか、共同支配企業の形成に該当するかを先に判定する
子会社・関連会社にならなければ必ず投資の清算と考える 共同支配企業の形成は、子会社・関連会社以外となる場合の原則から除外される
現金対価なら無条件で利益を計上する 重要な継続的関与が残っていないかを確認する
個別上の利益を連結でも残す 子会社・関連会社への移転では消去の要否を確認する
会計上の利益がゼロなら課税もないと考える 適格要件と税務上の帳簿価額を別に確認する
事業分離に要した支出をすべて受取株式へ加算する 事業分離に要した支出は発生時の事業年度の費用とする。ただし、交付された株式等の取得原価には、金融商品会計実務指針に従って株式等の取得に係る付随費用を加算する

最後の取扱いは企業会計基準適用指針第10号第91項に基づきます。事業分離に要した支出と、交付された株式等の取得に係る付随費用を区別する必要があります。

10.5日間の練習

日 練習内容 確認する答え
1日目 分離元企業、分離先企業、事業分離日を説明する 誰が事業を移転し、誰が受け入れるかを区別できる
2日目 共通設例の株主資本相当額を計算する 3,000+7,000-2,000=8,000
3日目 現金11,000の場合と現金7,000の場合の仕訳を作る 前者は利益3,000、後者は損失1,000。借貸はいずれも一致する
4日目 株式だけを受け取り、子会社となる場合を仕訳する 子会社株式8,000を計上し、移転損益は認識しない
5日目 会計判定と税務判定を別々の欄に分ける 投資の清算・継続、共同支配企業の形成、適格・非適格を区別して確認する

まとめ

  • 事業分離では、移転事業の株主資本相当額を先に計算する。
  • 現金等の対価は原則として投資の清算となり、移転損益を認識する。
  • 子会社・関連会社となる分離先企業の株式だけを受け取る場合は、原則として投資が継続する。
  • 共同支配企業の形成は別区分であり、子会社・関連会社以外という理由だけで投資の清算としてはいけない。
  • 個別財務諸表で認識した損益が、連結または持分法上で消去されることがある。
  • 法人税法上の適格・非適格は、会計処理とは別に判定する。

問題を解くときは、「受取対価」「分離後の関係」「共同支配企業の形成の該当性」「税務上の適格判定」を分けて書きます。一度に結論を出さないことが大切です。

第198回 企業結合会計ゼロ入門:取得原価の配分(PPA)・のれん・負ののれん発生益を仕訳で整理(5日練習付き)

第197回では、関連会社への投資を持分法で評価しました。今回は、その会社や事業への支配を獲得した日の会計処理です。

第196回では、連結手続の中でのれんを計算しました。本稿では、その一つ前にある「取得対価を、どの資産・負債へ配分するか」に重点を置きます。この手続が取得原価の配分、実務でいうPPAです。

本稿は、2026年9月30日現在の日本基準および法令に基づく一般的な学習用解説です。実際の処理は、契約内容、企業結合の形式、支配の判定、税制適格要件、時価評価などによって変わります。個別案件は、公認会計士・税理士などの専門家へ確認してください。

まず、計算の順序を決める

順序 確認すること
1 企業結合が「取得」に該当するか
2 取得企業と企業結合日を決める
3 取得対価を測定する
4 取得原価を識別可能な資産・負債へ配分する
5 残額を、のれんまたは負ののれん発生益として処理する

1.法的な形式だけでは処理を決めない

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」では、企業結合を、企業または事業が一つの報告単位へ統合されることとしています。株式取得、合併、会社分割、事業譲受といった法的形式だけで、会計処理が決まるわけではありません。

会計上の分類 基本的な状況 処理の考え方
取得 ある企業が他の企業または事業への支配を獲得する パーチェス法を適用する
共同支配企業の形成 複数の独立企業が契約等に基づいて共同支配する 所定の要件と処理を確認する
共通支配下の取引 企業結合の前後で、同じ株主による最終的な支配が一時的でなく継続する 適正な帳簿価額を基礎とする

共同支配企業の形成と共通支配下の取引以外の企業結合は、原則として「取得」です。以下では、取得に該当する場合を扱います。

2.取得企業と企業結合日を決める

取得企業

取得企業は、被取得企業または取得した事業への支配を獲得する企業です。現金などを引き渡す企業結合では、通常、その現金などを引き渡す側が取得企業になります。

株式を対価とする場合は、株式を交付した企業が必ず取得企業になるとは限りません。結合後の議決権比率、主要株主、取締役会の構成、当事企業の相対的な規模、株式の交換条件などを総合して判定します。株式を交付した側が会計上の被取得企業となる「逆取得」もあります。

企業結合日

企業結合日は、被取得企業または取得した事業への支配が移転した日です。契約締結日や代金支払日と一致するとは限りません。

取得対価と識別可能資産・負債は、この日を基準に測定します。計算問題では、まず「いつ支配が移ったか」を確定させます。

3.取得対価と取得関連費用を分ける

取得原価は、原則として、取得対価となる財の企業結合日における時価で算定します。

項目 基本的な扱い
取得対価として支払う現金 取得原価に含める
対価として交付する市場価格のある自社株式 原則として企業結合日の株価を基礎に測定する
取得のために外部アドバイザーへ支払う特定の報酬・手数料 取得関連費用として、発生した事業年度の費用にする
子会社株式の購入に直接要した付随費用 親会社の個別財務諸表では、金融商品会計に従い子会社株式の取得原価に含める
個別上の子会社株式に含めた付随費用 連結財務諸表では、発生した連結会計年度の費用にする

同じ支出でも、個別財務諸表と連結財務諸表で扱いが異なることがあります。「M&Aに関する支出」というだけで、すべてをのれんに含めることはできません。

4.取得原価の配分(PPA)

PPAは、取得原価を企業結合日の識別可能資産・負債へ配分する手続です。配分には、それぞれの時価を基礎として使います。

確認対象 PPAで行うこと
棚卸資産・固定資産 被取得企業の帳簿価額をそのまま使わず、企業結合日の時価を確認する
特許権・商標権など 法律上の権利など、分離して譲渡可能な無形資産は、のれんと分けて認識する
引受負債 企業結合日に認識する負債を、純資産の計算から控除する
税効果 会計上の価額と税務上の価額との差を検討し、必要な繰延税金資産・負債を反映する

被取得企業の貸借対照表に計上されていなかった項目でも、会計上の認識要件を満たせば、識別可能資産・負債に含めます。無形の価値をすべてのれんへまとめないことが大切です。

5.事業譲受の仕訳でのれんを計算する

次の学習用設例を使います。金額単位は万円です。

  • A社はB社の事業を現金1,200で譲り受けた
  • 企業結合日の時価は、棚卸資産300、建物600、商標権200である
  • 買掛金350を引き受けた
  • 取得関連費用、条件付取得対価、消費税および税効果は考慮しない
  • 取得前のA社は、普通預金2,000と純資産2,000だけを有する

識別可能純資産とのれん

項目 計算 金額
識別可能資産 300+600+200 1,100
引受負債 買掛金 350
識別可能純資産 1,100-350 750
のれん 取得対価1,200-識別可能純資産750 450

取得日の仕訳

借方科目 借方 貸方科目 貸方
棚卸資産 300 買掛金 350
建物 600 普通預金 1,200
商標権 200
のれん 450
借方合計 1,550 貸方合計 1,550

取得直後の残高を検算する

資産 残高 負債・純資産 残高
普通預金 800 買掛金 350
棚卸資産 300 純資産 2,000
建物 600
商標権 200
のれん 450
資産合計 2,350 負債・純資産合計 2,350

取得対価1,200は、識別可能純資産750とのれん450に分かれました。仕訳の借貸だけでなく、取得後の貸借対照表も一致しています。

6.のれんは取得日から規則的に償却する

日本基準では、のれんを資産に計上し、20年以内の効果の及ぶ期間にわたり、定額法その他の合理的な方法で規則的に償却します。重要性が乏しい場合は、企業結合年度に費用処理できます。

設例ののれん450を、効果の及ぶ期間10年、残存価額ゼロ、定額法で1年間償却する場合は、次のとおりです。

450÷10年=45

借方科目 借方 貸方科目 貸方
のれん償却額 45 のれん 45

のれん残高は405です。他の収益・費用、減価償却および税金を考慮しなければ、資産合計2,305、負債350、純資産1,955となり、貸借は一致します。

のれんの償却は企業結合日から始めます。したがって、期中取得では、単純に1年分を計上するとは限りません。のれんの当期償却額は販売費及び一般管理費に表示し、未償却残高は減損処理の対象にもなります。

7.事業譲受と株式取得では、のれんが現れる場所が違う

取引形態 取得企業の個別財務諸表 のれんを認識する場所
事業譲受 取得した資産・負債を直接計上する 原則として個別財務諸表
株式取得による子会社化 子会社株式を計上する 原則として連結財務諸表

先ほどと同じ事業を営む会社の全株式を現金1,200で取得した場合、購入付随費用を考慮しない親会社の個別仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方 貸方科目 貸方
子会社株式 1,200 普通預金 1,200

個別財務諸表に、のれん450を直接計上するわけではありません。連結手続で子会社株式と子会社の資本を相殺し、取得日の時価評価差額とのれんを認識します。100%取得、取得対価1,200、識別可能純資産750、税効果なしという前提なら、連結上ののれんは450です。

株式取得の付随費用

同じ連結会計年度に、株式購入へ直接要した付随費用30を支払い、親会社の個別財務諸表で子会社株式の取得原価に含めたとします。

借方科目 借方 貸方科目 貸方
子会社株式 1,230 普通預金 1,230

連結上は、付随費用30を取得関連費用として発生時に費用処理します。簡略化した連結修正は次のとおりです。

借方科目 借方 貸方科目 貸方
取得関連費用 30 子会社株式 30

連結上の取得対価は1,200であり、付随費用30はのれんに含めません。

8.負ののれんは、配分を見直してから利益にする

取得対価が識別可能純資産を下回っても、すぐに利益を計上してはいけません。識別可能資産・負債の認識漏れ、時価、取得原価の算定、配分の適否を見直します。

設例の識別可能資産が1,100、引受負債が350、取得対価が650で、見直し後も金額が変わらなかったとします。識別可能純資産750と取得対価650との差額100が負ののれん発生益です。

借方科目 借方 貸方科目 貸方
棚卸資産 300 買掛金 350
建物 600 普通預金 650
商標権 200 負ののれん発生益 100
借方合計 1,100 貸方合計 1,100

負ののれん発生益は企業結合年度の利益とし、原則として特別利益に表示します。

9.段階取得では持分法評価額を使う

株式を追加取得して支配を獲得する取引を、段階取得といいます。個別財務諸表では、個々の取得取引の原価を合計します。連結財務諸表では、支配獲得前から保有していた持分も企業結合日の時価で測定します。

持分法適用関連会社を子会社にした場合を考えます。

  • 既存の30%持分の個別上の取得原価:240
  • 支配獲得直前の持分法による投資評価額:270
  • 既存持分の企業結合日の時価:300
  • 追加取得する70%持分の対価:900
計算項目 計算 金額
個別上の子会社株式 240+900 1,140
連結上の取得原価 既存持分の時価300+追加対価900 1,200
段階取得に係る差益 既存持分の時価300-持分法評価額270 30

比較するのは、個別上の取得原価240ではなく、支配獲得直前の持分法評価額270です。識別可能純資産が750で、税効果などを考慮しないなら、連結上ののれんは1,200-750=450です。

10.PPAが決算までに終わらない場合

取得原価は、企業結合日後1年以内に識別可能資産・負債へ配分します。最初の決算までに土地、無形資産、偶発債務に係る引当金などの配分額を確定できない場合は、その時点で入手できる合理的な情報に基づいて暫定処理を行います。

企業結合年度の翌年度に配分額が確定した場合は、企業結合年度に確定していたかのように処理します。翌年度の財務諸表と併せて企業結合年度の財務諸表を表示するときは、比較情報にも見直しを反映します。

この1年は、取得後に新しく発生した事象を取得日の数値へ戻すための期間ではありません。企業結合日に存在していた事実や状況について、測定を完成させるための期間です。

11.会計上ののれんと税務上の資産調整勘定は別物

会計上の企業結合と法人税上の組織再編税制では、判定の目的と要件が異なります。会計上ののれんの金額や償却期間を、そのまま法人税の計算へ使うことはできません。

取引 法人税上の確認事項
株式取得 株式を取得しただけでは、対象会社が保有する資産・負債の税務上の帳簿価額は、株式の購入額に合わせて変わらない
適格合併など 取引形態ごとの適格要件を満たすかを確認し、満たす場合は税務上の帳簿価額による引継ぎを検討する
非適格合併など 移転資産・負債の時価を基礎とする処理と、法人税法第62条の8の調整勘定を検討する
事業譲受 移転した資産・負債ごとの税務上の取得価額と、法人税法第62条の8の対象となる事業の譲受けかを確認する

資産調整勘定の60か月処理

2026年9月30日現在、法人税法第62条の8の要件を満たして資産調整勘定が生じる場合、通常の当期損金算入額は次の式で計算します。

資産調整勘定の当初計上額÷60×当該事業年度の月数

非適格合併等の日を含む最初の事業年度では、その日から事業年度終了日までの期間を基礎に月数を求めます。月数は暦に従って計算し、1月未満の端数は1月とします。残額の処理や、その後に適格組織再編成が行われた場合などには別の規定があるため、個別に確認が必要です。

計算欄は、国税庁の別表十六(十一)「非適格合併等に係る調整勘定の計算の明細書」で確認できます。

ただし、会計上ののれん450が、税務上も資産調整勘定450になるとは限りません。対象取引への該当性、非適格合併等対価額、時価純資産価額、資産等超過差額、引受債務などを法令に従って計算します。

税効果会計

PPAで認識した資産・負債の会計上の価額と税務上の価額が異なる場合は、その一時差異について繰延税金資産・負債を検討します。これらを反映すると、配分残余であるのれんの金額が変わることがあります。

一方、企業結合会計上、のれんまたは負ののれんは取得原価の配分残余なので、それ自体に対する税効果は認識しません。

12.計算問題の確認表

欄 記入する内容
A 取得対価 現金、交付株式などの時価
B 識別可能資産 企業結合日の時価を基礎とする資産の合計
C 引受負債 企業結合日に認識する負債の合計
D 識別可能純資産 B-C
E 差額 A-D
判定 Eが正ならのれん。負なら配分を見直し、なお残れば負ののれん発生益

税効果や非支配株主持分がある問題では、その項目も加えます。仕訳を書く前にAからEまでを埋めると、のれんの符号を誤りにくくなります。

13.5日で確認する練習メニュー

日 課題 終了条件
1日目 取得企業、企業結合日、取得原価、PPAを一文ずつ説明する 「誰が・いつ・いくらで・何を得たか」を区別できる
2日目 識別可能純資産とのれんを3問計算する 取得対価=識別可能純資産+のれんで検算できる
3日目 事業譲受と株式取得の仕訳を並べる 個別と連結で、のれんが現れる場所を区別できる
4日目 負ののれんと段階取得を1問ずつ解く 配分の再点検と、持分法評価額を使う理由を説明できる
5日目 会計上ののれんと税務上の資産調整勘定を比較する 両者を別々に判定できる

まとめ

  • PPAでは、取得原価を企業結合日の識別可能資産・負債へ配分する
  • 取得対価が識別可能純資産を上回る差額は、のれんになる
  • 取得対価が識別可能純資産を下回るときは、配分を見直してから負ののれん発生益を計上する
  • 事業譲受では個別上、株式取得による子会社化では原則として連結上でのれんを認識する
  • 段階取得で持分法を適用していた場合、既存持分の時価と持分法評価額との差額を段階取得損益とする
  • 会計上ののれんと税務上の資産調整勘定は、別々に判定する

主な一次資料

第197回 持分法会計ゼロ入門:利益・配当・のれんを連結修正仕訳で整理(5日練習付き)

第196回では、子会社の資産・負債・収益・費用を取り込む連結会計を学びました。今回は、関連会社などへの投資を一つの投資勘定で表す「持分法」です。

最初に覚えるのは、「利益で投資勘定が増え、配当で減る」という動きです。個別財務諸表で計上した受取配当金は、連結上、投資の回収として投資勘定の減額に振り替えます。

1.持分法は「一行連結」

企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」は、持分法を、被投資会社の資本と損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、連結決算日ごとに投資額を修正する方法と定めています。

子会社の連結では各科目を合算します。持分法では、原則として貸借対照表の投資有価証券と、損益計算書の持分法による投資損益に集約します。この表示の特徴から、移管指針第7号「持分法会計に関する実務指針」では「一行連結」と説明されています。

「一行」は表示上の特徴です。連結修正仕訳が一つだけになるという意味ではありません。また、以下の仕訳は投資会社の連結決算上の修正であり、被投資会社の帳簿に記帳するものではありません。

比較項目 子会社の連結 持分法
主な対象 連結子会社 非連結子会社と関連会社
貸借対照表 資産・負債を科目ごとに合算 原則として投資勘定を修正
損益計算書 収益・費用を科目ごとに合算 持分相当額を持分法による投資損益に集約
受取配当金 内部取引として消去 投資の回収として投資勘定を減額
持分法による投資損益 該当なし 営業外収益または営業外費用に一括表示

2.「議決権20%」だけでは決まらない

関連会社とは、出資、人事、資金、技術、取引などを通じて、子会社以外の企業の財務・営業・事業方針の決定に重要な影響を与えることができる場合の、その相手企業です。代表的な判定ルートを整理します。

議決権の状況 判定の考え方
自己の計算で20%以上を所有 原則として該当する。ただし、重要な影響を与えられないことが明らかな場合を除く
自己の計算で15%以上20%未満を所有 役員等の派遣、重要な融資・技術提供・取引など、基準所定の事実がある場合に該当する
緊密な関係者や議決権行使に同意する者と合わせて20%以上 役員等の派遣、重要な融資・取引など、基準所定の事実がある場合に該当する

非連結子会社と関連会社への投資には、原則として持分法を適用します。ただし、適用しても連結財務諸表に重要な影響を与えない場合は、適用会社としないことができます。試験問題では持分割合が明示されることが多いのですが、実務では関係の実態も確認します。

3.計算の軸

期末投資額 = 取得原価 + 取得後利益の持分相当額 - 取得後損失の持分相当額 - 受取配当金相当額 - のれん償却額 ± その他の修正

実際の計算では、会計方針の統一、取得時の時価評価、税効果、未実現損益、その他の包括利益なども検討します。未実現損益は取引の方向によって修正する科目が異なるため、上の式だけで処理を決めることはできません。まずは利益、配当、のれんの三つを確実に押さえます。

4.のれんがない基本設例

取得は期首に行い、利益剰余金を原資とする金銭配当を期中に受け取ったものとします。評価差額、未実現損益、税効果、減損、源泉所得税等は考慮しません。

項目 前提
P社の議決権割合 30%。重要な影響があり、A社は関連会社に該当
A社株式の取得価額 3,000万円
取得時のA社修正後純資産 10,000万円
取得後のA社当期純利益 1,200万円
A社の配当総額 400万円

取得価額3,000万円と純資産持分10,000万円×30%=3,000万円が一致するため、のれんはありません。

個別財務諸表の仕訳

取引 借方科目 金額(万円) 貸方科目 金額(万円)
株式取得 関係会社株式 3,000 現金預金 3,000
配当受領 現金預金 120 受取配当金 120

配当受領額は400万円×30%=120万円です。この設例では減損がないため、個別財務諸表の関係会社株式は3,000万円のままです。

連結修正仕訳

A社利益の持分相当額は1,200万円×30%=360万円です。

修正内容 借方科目 金額(万円) 貸方科目 金額(万円)
利益の持分相当額 投資有価証券 360 持分法による投資利益 360
受取配当金の振替 受取配当金 120 投資有価証券 120

どちらの仕訳も借方と貸方が一致しています。連結上は受取配当金120万円が投資の回収に振り替えられ、当期の成果として持分法による投資利益360万円が残ります。

期末残高を二方向から検算する

投資勘定から:3,000+360-120=3,240万円

A社純資産から:(10,000+1,200-400)×30%=3,240万円

二つの計算が一致しました。この検算で、配当の控除漏れや転記ミスを見つけられます。

5.のれんがある場合

前の設例の取得価額だけを3,300万円に変更します。取得時の修正後純資産持分は3,000万円なので、差額300万円がのれんです。持分法ののれんは独立した資産として表示せず、投資勘定に含めます。

日本基準では、のれんは20年以内の効果が及ぶ期間にわたり、定額法その他の合理的な方法で規則的に償却します。本設例では効果が及ぶ期間を5年と仮定します。5年は設例上の前提であり、一律の年数ではありません。

ASBJでは、のれんの会計処理と関連する開示が検討テーマとして追加され、今後、検討を開始する予定です。2026年9月29日現在、現行の償却処理を変更する会計基準は公表されていません。

計算項目 計算 金額(万円)
取得時のれん 3,300-10,000×30% 300
当期のれん償却額 300÷5年 60
利益の持分相当額 1,200×30% 360
持分法による投資利益 360-60 300
受取配当金 400×30% 120

連結修正仕訳

修正内容 借方科目 金額(万円) 貸方科目 金額(万円)
利益の持分相当額 投資有価証券 360 持分法による投資利益 360
のれんの償却 持分法による投資利益 60 投資有価証券 60
受取配当金の振替 受取配当金 120 投資有価証券 120

投資勘定から:3,300+360-60-120=3,480万円

純資産とのれんから:修正後純資産持分3,240+未償却のれん240=3,480万円

持分法による投資利益も、貸方360万円-借方60万円=300万円となります。

6.損失が投資残高を超える場合

期首投資残高が800万円、当期純損失の持分相当額が1,200万円だったとします。関連会社の欠損を負担する責任が投資額の範囲に限られ、貸付金、損失分担契約、契約上または事実上の債務保証もない場合、投資価額がゼロになる800万円まで損失を計上します。

借方科目 金額(万円) 貸方科目 金額(万円)
持分法による投資損失 800 投資有価証券 800

ただし、投資残高がゼロになれば必ず処理が終わるわけではありません。設備資金・運転資金等の貸付金があれば、投資有価証券をゼロにした後、その貸付金等を減額します。ここには、返済期限の延長を繰り返し、実質的に運転資金となっている営業債権も含まれます。さらに負担すべき額が残る場合は、「持分法適用に伴う負債」などの適切な科目を計上します。負担範囲は契約と実態に基づいて判断します。

7.持分法と法人税は別に考える

持分法による投資利益は、連結決算上の会計処理です。被投資会社の利益を投資会社が現金で受け取ったことを意味せず、通常、投資会社の個別帳簿には同額の投資利益を計上しません。

項目 会計上の扱い 法人税での確認点
持分法による投資利益 連結財務諸表上の投資損益 実際の配当とは区別し、各法人の個別所得と税法上の調整を確認する
実際の配当 個別では受取配当金、持分法上は投資勘定を減額 株式等の区分、保有関係、保有期間などから益金不算入を判定する
持分法適用後の投資価額 利益、配当、のれんなどで増減 税務上の株式簿価と一致するとは限らず、一時差異の検討が必要になることがある

法人税法第23条は、内国法人から受ける一定の配当等について、株式等の区分に応じた益金不算入を定めています。会計上の持分法適用割合だけでは、税務上の株式区分や益金不算入額を確定できません。

2026年4月1日以後終了事業年度分については、国税庁が別表八(一)「受取配当等の益金不算入に関する明細書」を公表しています。外国法人から受ける配当には別の規定や別表が関係するため、国内法人からの配当と同じ処理とは限りません。

また、グループ通算制度は、一定の完全支配関係にある企業グループを対象とする法人税の制度です。会計上の連結や持分法とは、適用要件も計算目的も異なります。

取得後の留保利益に係る税効果は、将来の配当見込み、予測可能な将来の売却・清算の方針、追加税負担の有無などを踏まえて検討します。本稿の設例では、必要な前提を置いていないため税効果の金額を計算していません。

8.問題を解く順番

  1. 持分法の適用対象か確認する
  2. 取得日と持分割合を確定する
  3. 取得日の資産・負債を必要に応じて時価評価し、税効果を反映する
  4. 投資原価と修正後純資産持分の差額から、のれんまたは負ののれんを判定する
  5. 取得後の修正済み純損益に持分割合を掛ける
  6. のれん償却、評価差額、未実現損益などを調整する
  7. 受取配当金に相当する額を投資勘定から減らす
  8. 投資勘定と純資産持分の二方向から期末残高を検算する
  9. 個別仕訳、連結修正、税務申告を混同していないか確認する

9.5日練習

日 練習内容 終了時の確認
1日目 子会社の連結と持分法の違いを3点書く 「全科目」と「一行」の違いを説明できる
2日目 20%以上、15%以上20%未満、緊密な関係者等との合算という判定ルートを整理する 持分割合だけでは決まらないと説明できる
3日目 のれんなしの設例を見ずに計算する 投資利益360万円、期末投資額3,240万円になる
4日目 取得価額を3,300万円に変更して仕訳する 投資利益300万円、期末投資額3,480万円になる
5日目 損失超過時の負担範囲と法人税との違いを整理する 投資額までの場合と、貸付金・保証等がある場合を区別できる

一度にすべてを覚える必要はありません。まず「利益で増える、配当で減る」を押さえ、最後に期末投資残高を検算してください。

まとめ

  • 持分法は、被投資会社の資本と損益の持分相当額を投資勘定に反映する
  • 利益の持分相当額は投資勘定を増やし、受取配当金相当額は投資勘定を減らす
  • のれんは投資勘定に含め、20年以内の効果が及ぶ期間にわたって規則的に償却する
  • 投資額を超える損失の負担範囲は、貸付金、損失分担契約、債務保証などの実態によって変わる
  • 持分法による投資利益、実際の配当、法人税の益金不算入は別々に判定する

本稿は日本基準を前提とする一般的な学習資料です。実際の財務諸表作成や法人税申告では、適用時点の会計基準、法令、契約、持株関係、申告書様式を確認し、必要に応じて公認会計士・税理士等の専門家へ相談してください。

第196回 連結会計ゼロ入門:投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分を仕訳で整理(5日練習付き)

第195回では、1株当たり利益(EPS)の分子を考えるとき、親会社株主に帰属する当期純利益が重要になることを確認しました。今回は、その利益を計算する土台となる連結会計を扱います。

連結財務諸表は、親会社と子会社の個別財務諸表を合計するだけでは完成しません。企業集団の内部にある投資と資本、債権と債務、売上と仕入、未実現損益を消去します。まずは、投資と資本の相殺消去、のれん、非支配株主持分の順に整理しましょう。

基準日と前提:本稿は、2026年9月28日現在に公表されている日本基準と日本の法人税法を前提とした一般的な学習用解説です。IFRSによる処理や、個別の企業結合、連結範囲、税効果、法人税申告を判断するものではありません。実際の処理では、契約内容、適用する会計基準、最新の法令を確認してください。

先に結論:合計してから、企業集団の内部を消す

論点 基本的な考え方
連結の範囲 議決権比率だけでなく、意思決定機関を実質的に支配しているかで判定する
作成の出発点 親会社と子会社の個別財務諸表を基礎にする
資本連結 親会社の子会社に対する投資と、対応する子会社の資本を相殺する
非支配株主持分 子会社の資本のうち、親会社に帰属しない部分を純資産に表示する
のれん 投資額と、投資に対応する子会社の時価純資産との差額から計算する
内部取引 債権・債務、取引高、外部へ未販売の資産に含まれる未実現損益を消去する
法人税 連結上の消去と、各法人の所得計算やグループ通算制度を分けて考える

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」は、連結財務諸表を、支配従属関係にある企業集団を単一の組織体とみなして作成するものとしています。

1.個別財務諸表と連結財務諸表の違い

項目 個別財務諸表 連結財務諸表
報告単位 親会社、子会社それぞれの法人 親会社と子会社からなる企業集団
子会社株式 親会社の資産として表示する 対応する子会社資本と相殺消去する
グループ内売上 売手の売上として計上する 企業集団内部の取引として消去する
グループ内債権 債権者の資産として計上する 対応する債務と相殺消去する

連結修正仕訳は、通常、親会社や子会社の総勘定元帳に記帳する仕訳ではありません。各社の個別財務諸表を残したまま、連結精算表上で企業集団としての表示に直す処理です。

同一環境下で行われた同一の性質の取引については、親会社と子会社の会計方針を原則として統一します。また、親会社は原則としてすべての子会社を連結しますが、連結範囲や連結手続には重要性の原則が適用されます。

2.設例1:投資と資本の相殺消去

以下は学習用の設例です。金額の単位は万円とし、消費税は考慮しません。

株式取得 P社がS社の既存株式80%を外部株主から960で取得する
取得時点 連結会計年度の期首
S社の資本金 600
S社の資本剰余金 200
S社の利益剰余金 200
時価評価 識別可能な資産・負債の時価と帳簿価額は一致する
その他 取得関連費用、税効果、段階取得、評価・換算差額等はない

P社の個別仕訳

借方 金額 貸方 金額
子会社株式 960 現金預金 960
合計 960 合計 960

既存株式が株主間で移転するため、S社には、この株式取得に伴う仕訳はありません。

のれんと非支配株主持分の計算

S社の支配獲得時の時価純資産は、600+200+200=1,000です。

項目 算式 金額
時価純資産 600+200+200 1,000
親会社持分 1,000×80% 800
非支配株主持分 1,000×20% 200
のれん 投資額960-親会社持分800 160

投資額960と比べるのは、S社の時価純資産1,000の全額ではなく、投資に対応する親会社持分800です。

連結精算表上の相殺消去

借方 金額 貸方 金額
資本金
資本剰余金
利益剰余金
のれん
600
200
200
160
子会社株式
非支配株主持分
960
200
合計 1,160 合計 1,160

連結精算表上では、S社の支配獲得時資本1,000を消去し、親会社に帰属しない200を非支配株主持分として表示します。

項目 修正前 修正 連結上の残高
子会社株式 960 -960 0
S社の支配獲得時資本 1,000 -1,000 0
のれん 0 +160 160
非支配株主持分 0 +200 200

3.のれんの償却と当期利益の帰属

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第32項では、のれんを資産に計上し、20年以内の効果が及ぶ期間にわたり、定額法その他の合理的な方法で規則的に償却するとしています。

ここでは、効果が及ぶ期間を10年、償却方法を定額法と仮定します。10年は設例上の年数であり、すべての企業結合に一律に適用する年数ではありません。

年間償却額:160÷10年=16

借方 金額 貸方 金額
のれん償却額 16 のれん 16
合計 16 合計 16

期末ののれん残高は、160-16=144です。

S社の当期純利益が150の場合

P社自身の当期損益を0、S社の連結修正後の当期純利益を150とします。配当、その他の純資産変動、追加の連結修正はないものとします。

非支配株主に帰属する当期純利益は、150×20%=30です。

借方 金額 貸方 金額
非支配株主に帰属する当期純利益 30 非支配株主持分 30
合計 30 合計 30
項目 計算 金額
連結損益計算書の当期純利益 150-のれん償却16 134
非支配株主帰属分 150×20% 30
親会社株主帰属分 134-30 104
親会社株主帰属分の別検算 150×80%-16 104
帰属額の合計 104+30 134
期末非支配株主持分 取得時200+当期利益30 230
期末のれん 取得時160-償却16 144

前回のEPSにつなげると、この設例では、親会社株主に帰属する当期純利益104が連結EPSの分子を考える出発点になります。

4.設例2:内部取引と未実現利益の消去

ここからは設例1と切り離した別の設例です。P社がS社へ商品を掛けで300販売したとします。P社にとっての原価は240で、期末時点では商品の25%がS社に残り、代金300も未決済です。消費税と税効果は考慮しません。

債権と債務の消去

借方 金額 貸方 金額
買掛金 300 売掛金 300
合計 300 合計 300

内部売上の消去

借方 金額 貸方 金額
売上高 300 売上原価 300
合計 300 合計 300

期末商品に含まれる未実現利益

内部取引全体の利益は、300-240=60です。その25%が期末商品に残っているため、未実現利益は60×25%=15となります。

借方 金額 貸方 金額
売上原価 15 商品 15
合計 15 合計 15

S社の個別財務諸表にある期末商品は300×25%=75です。一方、企業集団にとっての原価は240×25%=60です。75-15=60となり、商品残高を検算できます。

この取引は親会社が売手となるダウンストリーム取引なので、消去した未実現利益15は親会社株主側に帰属します。非支配株主のいる子会社が売手となるアップストリーム取引では、連結会計基準第38項により、未実現損益を親会社と非支配株主の持分比率に応じて配分します。

5.連結会計と法人税を混同しない

項目 連結会計 グループ通算制度
目的 企業集団を一つの報告単位として表示する 一定の完全支配関係にある法人間で法人税上の損益通算などを行う
主な範囲 会計上の支配関係にある子会社 法令上の要件を満たす完全支配関係にある法人
申告単位 税務申告制度ではない 各通算法人が個別に法人税額を計算し、申告する
内部取引 連結表示上、取引高や未実現損益を消去する 連結修正仕訳をしただけでは各法人の課税関係は変わらない

国税庁の「No.5900 グループ通算制度の概要」は、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位とし、各法人が個別に法人税額を計算・申告しながら、損益通算などの調整を行う制度と説明しています。

本稿では、P社がS社株式の80%を保有し、残る20%を外部株主が保有しています。この前提では100%の完全支配関係がないため、両社はグループ通算制度の対象となる関係ではありません。一方、P社がS社を支配しているため、会計上はS社を連結します。

また、P社が取得したのはS社の既存株式です。取得関連費用を考慮しない本設例では、P社の個別財務諸表上の子会社株式は960ですが、連結上ののれん160はP社やS社の個別帳簿には計上されません。そのため、連結上ののれん償却額16が、P社またはS社の所得計算でそのまま損金になるわけではありません。法人税法上の資産調整勘定も、連結上ののれんが生じただけで自動的に計上されるものではありません。

内部取引の未実現利益を連結上消去しても、売手側では個別の所得計算が行われます。この差額については、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」に従い、税効果を検討します。本稿の設例では、売手の法定実効税率や課税所得を設定していないため、繰延税金資産の金額は計算していません。

6.間違えやすいポイント

誤り 正しい整理
80%取得なので、子会社資本も80%だけ消す 連結精算表上は子会社資本を消去し、20%分を非支配株主持分として表示する
のれんを960-1,000で計算する 投資額960から、投資に対応する親会社持分800を控除する
内部売上だけを消し、商品に残る利益はそのままにする 外部へ未販売の資産に含まれる未実現損益も消去する
連結修正仕訳を各社の帳簿へ記帳する 個別帳簿と区別し、通常は連結精算表上で処理する
連結子会社なら法人税も自動的に一括申告になる 会計上の連結範囲と、グループ通算制度の適用要件を別々に判定する

計算するときは、「時価純資産の確定→親会社と非支配株主への配分→投資額との差額」の順序を固定すると、数字の置き場所を見失いにくくなります。

7.折れずに進める5日練習

日 練習内容 確認点
1日目 個別財務諸表と連結財務諸表の違いを説明する 「合計して内部を消す」と説明できるか
2日目 時価純資産、親会社持分、非支配株主持分を再計算する 1,000、800、200になるか
3日目 支配獲得日の相殺消去仕訳を書き、借貸を合計する 借方・貸方がともに1,160になるか
4日目 当期利益とのれん償却後の期末残高を再計算する 親会社株主帰属利益104、のれん144、非支配株主持分230になるか
5日目 個別上の商品75を企業集団の原価60へ修正する 未実現利益15を仕訳で消去できるか

最初から複数年度の開始仕訳や税効果まで同時に解く必要はありません。まず支配獲得日の資本連結を固め、当期利益、内部取引、税効果を一つずつ追加しましょう。

まとめ

  • 連結財務諸表は、親会社と子会社からなる企業集団を一つの組織体として表示する
  • 投資と対応する子会社資本を相殺し、親会社に帰属しない部分を非支配株主持分として表示する
  • 設例ののれんは、投資額960-時価純資産の親会社持分800=160となる
  • 内部取引では、債権債務と取引高に加え、外部未販売分の未実現損益も消去する
  • 連結会計と法人税の所得計算、グループ通算制度は別々に判定する

主な一次資料