日別アーカイブ: 2026年5月20日

第70回 手形(約束手形)の会計入門:受取手形・支払手形の仕訳と割引・裏書・不渡処理を表でやさしく整理(続ける学習メニュー付き)

勉強を進めると「手形の仕訳だけ覚えれば良いのか」「決算で何を確認すればいいのか」が混乱しやすいものです。ここでは受取手形・支払手形の仕組みを、取引→仕訳→決算処理の流れで整理します。図より表を中心に示すので、仕訳の流れを手早く確認できます。第68回(売掛金)・第69回(銀行勘定調整表)とつなげて理解すると効果的です(内部リンクは記事末をご覧ください)。

用語早見表

用語 意味 ポイント
受取手形 取引先から受け取った約束手形(支払期日に受け取るべき金銭を表す債権) 取得時は売掛金を減少させ、受取手形として計上する。期日回収か割引か、決算で未回収かを確認する。
支払手形 自社が発行した約束手形(期日に支払うべき債務) 作成時は買掛金を減少させ、支払手形として計上する。期日到来前後の残高管理が重要。
割引 受取手形を銀行で満期前に換金すること(銀行が手形の額面から利息等を差し引く) 受取側は割引料を費用計上し、受取手形を減少させる。決算で未払割引料がないか確認。
裏書(譲渡) 手形を第三者に譲渡するための署名・記載、債権(または債務)の移転を伴う 受取手形を裏書譲渡したら自社の受取手形は消える。支払手形を裏書で譲渡すると債務の引き継ぎが行われる。
不渡 満期に銀行で支払われず、手形が不渡扱いになること 受取手形が不渡の場合、売掛金に戻すなどの仕訳が必要。回収不能なら貸倒処理の検討。

典型取引別仕訳表(1行1仕訳で可読性重視)

取引 仕訳(借方 / 貸方) 決算時の留意点
受取手形の取得(売掛金の代替) 借方 受取手形 100,000 / 貸方 売掛金 100,000 決算日時点で期日到来前なら流動資産のまま。未提示や回収未済を明示する。
受取手形を銀行で割引(額面100,000、割引料2,000、受取現金98,000) 借方 当座預金(現金)98,000 / 借方 割引料 2,000 / 貸方 受取手形 100,000 割引料は損益計算書の費用。決算で割引未払の事実は通常ないが、割引手続きの有無を確認。
受取手形を裏書譲渡して買掛金を支払(額面70,000) 借方 買掛金 70,000 / 貸方 受取手形 70,000 現金の授受なしで債務消滅。決算で譲渡証拠を残すこと。
支払手形の作成(買掛金の支払) 借方 仕入(または買掛金)80,000 / 貸方 支払手形 80,000 支払手形は期日到来で当座預金から支払う。決算で未渡や期日前の残高を確認。
受取手形が満期で不渡(期日に回収されず) 借方 売掛金 100,000 / 貸方 受取手形 100,000 回収の見込みが薄ければ貸倒損失計上。決算で未回収の理由と見込みを注記。
受取手形の期日回収 借方 当座預金 100,000 / 貸方 受取手形 100,000 回収済みであれば当座預金に振替。銀行手数料等があれば別途処理。

仕訳の流れ(当事者・帳簿影響を横並びで確認)

取引 取引先(相手方) 自社(当社)の帳簿影響 銀行の扱い
受取手形の受取り 売り手(当社)が手形を保有。買い手は支払義務を負う。 売掛金→受取手形に振替(資産構成が変化)。 銀行はまだ関与しない(満期で支払処理)。
受取手形の割引 当社から銀行へ手形を渡し、銀行が現金を支払う。 受取手形減少、当座預金増加、割引料は費用。 銀行が手形の額面と割引料を評価して支払う。
受取手形の裏書譲渡 譲受人が手形を保有し、満期時に支払いを受ける。 受取手形が消え、譲渡先への債務消滅や相殺が行われる。 銀行は譲渡された手形を取立てる(必要に応じて)。
不渡の発生 支払人が支払不能で相手方が損失リスクを負う。 受取手形→売掛金へ戻す。回収不能なら貸倒処理。 銀行は支払拒絶を記録し、取引先管理に影響。

税務上の注意点(試験で押さえるポイント)

項目 税務上の取扱い(一般的) 試験で押さえる点
割引利息(割引料) 営業外費用等として損金算入されるのが一般的。 仕訳では割引料を費用で処理する点を確実に。金額の按分や未払扱いに注意。
裏書譲渡 資産の移転であり、譲渡の事実が会計上重要。 受取手形が実質的に移転したかを判断し、仕訳で受取手形を減少させること。
不渡発生時の貸倒 回収不能と判断されれば損金算入の検討が必要。 不渡のときは受取手形を戻した上で、貸倒損失や貸倒引当金の処理を確認。

試験向けチェック表(短問答)

答え(簡潔) メモ(活用メモ)
1. 受取手形を銀行で割引したときの仕訳は? 借方 当座預金(受取額)/ 借方 割引料(割引差額)/ 貸方 受取手形(額面) 割引料は費用計上。受取額=額面−割引料。
2. 受取手形を裏書譲渡したら自社の受取手形はどうなる? 受取手形を減少させ、譲渡の目的に応じて買掛金や債務を消す仕訳を行う。 裏書の事実と譲渡先を帳簿で確認できるようにする。
3. 不渡になった受取手形はどうする? 受取手形を売掛金に戻す。回収不能なら貸倒処理。 決算で回収可能性の判断を明確にしておく。
4. 支払手形を作成した時の仕訳は? 借方 仕入(または買掛金)/ 貸方 支払手形 作成時は現金の払出はない。期日到来で当座預金から支払う。
5. 決算で確認すべき点は? 期日到来前の手形残高、割引手続きの有無、不渡リスクの有無 売掛金や当座預金の連続性(第68回・第69回)を確認する習慣を付ける。

練習問題(仕訳 5 題)

各問題は短時間で取り組める設問です。決算日時点で何が未提供・未経過かを明示しています。

  1. (状況)当社が売掛金100,000を受取手形で受け取った(決算日現在、期日到来前)。仕訳を示せ。
  2. (状況)当社は受取手形(額面200,000)を銀行で割引し、受取現金195,000、割引料5,000を計上した。仕訳を示せ。(決算日:割引済み)
  3. (状況)当社は受取手形70,000を裏書譲渡して買掛金70,000を消した(決算日:譲渡済)。仕訳を示せ。
  4. (状況)受取手形100,000が満期に不渡となった。まだ回収の見込みが立っていない。仕訳を示せ。(決算日:不渡確認済み)
  5. (状況)支払手形80,000を作成した(仕入に充当)。期日は決算後。仕訳を示せ。

解答と解説(仕訳は1行)

解答仕訳(借方 / 貸方)
1 借方 受取手形 100,000 / 貸方 売掛金 100,000
2 借方 当座預金 195,000 / 借方 割引料 5,000 / 貸方 受取手形 200,000
3 借方 買掛金 70,000 / 貸方 受取手形 70,000
4 借方 売掛金 100,000 / 貸方 受取手形 100,000
5 借方 仕入(または費用科目)80,000 / 貸方 支払手形 80,000

続ける学習メニュー(短時間で確実に)

  • 実践問題:上記の仕訳を時間を計って解く(目安:各問3分)→ 解説を読み、間違えた箇所をノートに書く。
  • 1週間復習プラン(毎日15〜30分):
    • 1日目:用語早見表を読む(受取手形/支払手形/割引)
    • 2日目:典型仕訳表の暗唱(声に出す)
    • 3日目:練習問題を解く(時間計測)
    • 4日目:第68回(売掛金)を復習して接続を確認
    • 5日目:第69回(銀行勘定調整表)を復習して現金の流れを確認
    • 6日目:試験向けチェック表を短答で繰り返す
    • 7日目:模擬5問を解き解説と照合
  • セルフチェック表(合格ライン): 5問のうち4問以上正解で「理解進展」と判定。間違えた仕訳はワンポイントメモを残す。

まとめ

  • 受取手形・支払手形は「取引→仕訳→決算」で考えると整理しやすい。決算日時点で期日到来前か否かを必ず確認する習慣をつけること。
  • 割引は受取手形を現金化する代替手段で、割引料は費用処理。簿記試験では仕訳の形を確実に押さえることが重要。
  • 裏書は実質的に資産(または債務)が移転する操作。証拠書類を残し、会計上は受取手形・支払手形の減少で処理する。
  • 不渡は受取手形を売掛金に戻し、回収見込みによって貸倒の検討が必要。決算での注記と見積りがポイント。

関連:第68回(売掛金)へ戻る → 第68回 売掛金の記事、第69回(銀行勘定調整表)へ → 第69回 銀行勘定調整表の記事。今後、確認問題集や演習集を順次公開予定です(必要に応じて有料教材の案内を控えめに行う予定)。

公開予定:2026-05-21