日別アーカイブ: 2026年5月4日

第54回 減損会計入門:資産の価値が下がったときの考え方と税務上の扱いを表でやさしく整理

推定所要時間:読む時間 8分、演習時間 15分

学習を進めるうちに、「資産の価値が下がったときに何を見ればいいか」「いつ仕訳するのか」が分かりにくく感じることは多いはずです。本記事では、減損判定の流れ(判定→測定→仕訳→税務)を段階的に示し、試験で押さえるポイントと短時間で続けられる学習メニューを提示します。図は使わず表中心で整理しますので、ノートにそのまま写しやすい形になっています。

なぜ減損が必要か(つまずきへの寄り添い)

教科書的には「資産は回収可能価額まで切り下げる」と書かれますが、試験や実務で重要なのは手順です。まずは「判定が必要か」を判断し、必要なら測定して仕訳を行う――この流れを身に付ければ混乱が減ります。

減損判定の基本フロー(表で分解)

以下は判定を段階的に分解した表です。チェックリストとして使ってください。

段階 判断内容 要点(何を確認するか)
1. 兆候の把握 資産に価値低下の兆候があるか 市況悪化、技術陳腐化、経営環境の急変、資産の損傷など
2. 回収可能性の検討 帳簿価額と回収可能価額を比較する必要があるか 兆候がある場合は回収可能価額(公正価値−処分費用、または使用価値の高い方)を算定
3. 測定 回収可能価額を算定し、帳簿価額と比較 回収可能価額 < 帳簿価額なら減損認識(差額が減損損失)
4. 仕訳・開示 帳簿価額の切下げと仕訳、注記・開示の準備 資産種別に応じて仕訳方法が異なる(例:のれんは直接減少)

判定チェックリスト(簡易)

  • 兆候はあるか(外部・内部)
  • 回収可能価額の候補(公正価値−処分費用/使用価値)を算定できるか
  • 割引率や将来キャッシュフローの前提は妥当か

減損の測定と仕訳例(資産別に簡潔に)

次表は資産種別ごとの測定方法と仕訳の例です。金額例は演習で示します。

資産種別 測定方法(回収可能価額) 仕訳例(概念) 注記
有形固定資産 公正価値−処分費用 または 使用価値(高い方) 減損損失 XXX / 固定資産 XXX 帳簿価額を直接切り下げる。減価償却累計を使わない表現が多い
のれん 債務返済能力を含むCGU単位での回収可能価額(使用価値) 減損損失 XXX / のれん XXX のれんは償却しない場合が多く、直接減少。CGUの認定が重要
無形資産(のれん以外) 使用価値または公正価値−処分費用 減損損失 XXX / 無形固定資産 XXX 償却資産は将来キャッシュフロー見積りに注意
投資その他(有価証券等) 市場価格や回収可能性を個別に検討 減損損失 XXX / 投資有価証券等 XXX 時価の把握が容易な場合は公正価値での評価が多い

会計処理と税務処理の差分(表で整理)

税務上の扱いは税法によります。以下は試験・実務で押さえておきたい一般的な相違点の整理です(具体的処理は税法・通達で確認してください)。

項目 会計処理 税務上の扱い(一般的な指針) 備考
減損損失の計上 回収可能価額まで切下げ、減損損失を計上 客観的な価値低下を認める場合は損金算入されることが多いが、個別判断が必要 税務上は評価方法の証拠(見積書等)が重要
のれんの減損 減損が生じれば損失計上(直接減少) 税務上の取扱いは注意。状況により損金算入の範囲が限定される場合がある のれんは税務調整が生じやすい
戻入れ(回復) 将来の回復が認められれば戻入れ(制限あり) 戻入れがあれば益金算入等の調整が必要になることが多い 会計と税務で認識時点や金額が異なることがある

引当金(第53回)との対比表(要点だけ)

前回の引当金記事と重ならないよう、比較で理解を深めましょう。

項目 減損会計 引当金(第53回の要点)
目的 資産の価値低下を帳簿に反映する 将来の特定費用や損失に備える(発生可能性に基づく見積り)
発生要件 資産の回収可能価額が帳簿価額を下回ること(客観的な低下) 将来の特定事象が高い確度で発生すると見積もられること
計上タイミング 判定後、必要な金額を一度に切下げる 将来支出の見積りに応じて引当を設定する(発生見込み時点)
戻入れ 回復が認められれば戻入れ(制限あり) 実際の支出や見積りの変更に応じて増減する

実務での注意点(継続性・開示)

  • CGU(キャッシュ・ジェネレーティング・ユニット)の単位は実務で重要。誤った単位設定は誤判定の原因になる。
  • 使用価値を算定する際の割引率や将来キャッシュフローの前提は文書で残す。
  • 開示項目(減損の事由、金額、算定方法の要旨)は試験でも問われやすい。

短い実例問題(演習)

以下は短時間で解ける例を2問用意しました。問題後に解答と仕訳を示します。

問題1(有形固定資産)

決算日時点の状況:取得原価1,000、減価償却累計400 → 帳簿価額600。公正価値−処分費用=450、使用価値(割引後の期待キャッシュフロー)=520。回収可能価額はいくらか。減損損失と仕訳を示しなさい。

解答1

回収可能価額は公正価値−処分費用(450)と使用価値(520)の高い方=520。帳簿価額600>回収可能価額520のため、減損損失は80。

(仕訳)
減損損失 80
  有形固定資産 80

問題2(のれん)

決算日時点:のれん取得原価300、帳簿価額300。CGU単位で回収可能価額が200と試算された。減損損失と仕訳を示しなさい。

解答2

回収可能価額200<帳簿価額300のため、減損損失100を計上。

(仕訳)
減損損失 100
  のれん 100

試験で出やすい論点(キーワードと手順)

  • キーワード:回収可能価額、公正価値−処分費用、使用価値、割引率、CGU、のれんの減損
  • 計算問題で押さえる手順(必ず順に行う):
    1. 兆候の有無確認
    2. 回収可能価額の候補(公正価値−処分費用、使用価値)を算定
    3. 高い方を選んで帳簿価額と比較
    4. 差額を減損損失として計上(資産の切下げ)

続けられる学習メニュー(短時間での継続案)

  • 短時間確認問題(5分×3問)
    1. 兆候例を3つ挙げ、それぞれ回収可能価額の算定方法を答える(5分)
    2. 小問:帳簿価額と2つの回収可能価額から減損損失を計算(5分)
    3. CGUの単位の考え方を例示して説明(5分)
  • 毎週の復習ルーチン(チェックリスト)
    • 減損判定の4段階を声に出して説明する(2分)
    • 過去問1問を解き、解答手順をノートに書く(20分)
  • 間違いやすいポイントの覚え方:暗記ではなくフローで覚える。”兆候→回収可能価額候補→比較→仕訳” を反復すること

まとめ

減損会計は「何を」「いつ」「どのように」判断するかの手順が大切です。表で示した判定フローと資産別の仕訳例、税務上の留意点をまずは身に付け、短時間の演習を繰り返してください。次回は引当金の記事(第53回)との実務的な接続点を簡単に振り返り、具体的な過去問演習に進みます。

次に取り組むこと(推奨):

  • この記事の例題をノートに写して再計算する(10分)
  • 減損に関する過去問を1問解く(30分)