勉強していて「損益はわかるが、キャッシュ・フローの作り方がつかめない」「間接法と直接法の違いで迷う」──そんなつまずきに寄り添います。本記事は税理士試験を目指す初学者向けに、キャッシュ・フロー計算書(C/F)の目的や構成、間接法の実務的手順を表で整理し、短時間で続けられる学習メニューと典型問題を示します。第55〜57回(収益認識・費用の期間配分・繰延税金)で学んだ考え方とのつながりも明示します。
要点まとめ
| ポイント |
説明 |
試験での位置づけ |
| 目的 |
企業の現金・現金同等物の増減を示し、収益性と支払能力を補完する |
財務諸表論・管理会計の基礎。仕訳や損益との対応を問う問題が頻出 |
用語定義(主要項目)
| 用語 |
定義 |
試験での注意点 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー |
本業の現金収入・支出(営業取引に伴う現金の増減) |
間接法では当期純利益から非資金項目や運転資本変動を調整 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー |
固定資産や投資有価証券の取得・売却に伴う現金の増減 |
長期資産の取得・処分に関する仕訳を正確に把握する |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー |
借入金、社債、株式発行・配当等による現金の増減 |
借入金返済や配当支払のタイミングに注意 |
| 間接法 |
当期純利益を起点に非資金項目の加戻し・運転資本の増減を調整して営業CFを算出 |
税効果会計の処理位置(損益か営業外か)を混同しない |
| 直接法 |
現金収入・現金支出を受払別に列挙して営業CFを算出 |
試験では分類力(どれが営業の受払か)が問われる |
間接法:段階的ステップ表(損益→営業CF)
| ステップ |
入力(主な勘定) |
操作内容(間接法での処理) |
| 1. 起点 |
当期純利益 |
当期純利益を起点にする(損益計算書の最終行) |
| 2. 非資金項目の調整 |
減価償却費、引当金戻入、減損損失等 |
非現金支出は加算、非現金収入は減算する |
| 3. 運転資本の増減調整 |
売掛金、棚卸資産、買掛金、前受金、未払費用等 |
資産増加は差引(現金減少)、負債増加は加算(現金増加) |
| 4. その他調整 |
有価証券評価差額、利益処分、法人税等 |
営業外・特別損益で現金変動がない項目を除く/法人税は支払額で調整 |
直接法:主要受払項目と仕訳起点表
| 現金の受払項目 |
代表的な仕訳例(発生時と回収・支払時) |
決算日時点で未提供・未経過の表示例 |
| 営業収入の受取(現金売上) |
売掛金回収:現金預金/売掛金 |
売掛金が未回収なら営業CFで回収されていない |
| 営業支出の支払(仕入の現金支払) |
買掛金支払:買掛金/現金預金 |
買掛金が未払なら支払は未発生(営業CF未減少) |
| 利息・配当の受払 |
利息受取:現金預金/受取利息 利息支払:支払利息/現金預金 |
未収利息・未払利息は営業CFに影響しない(間接法で調整) |
仕訳→損益→C/F 段階トレース表(典型仕訳の追跡)
| 仕訳(例) |
損益計算書への影響 |
営業CFでの処理(間接法) |
| 減価償却費 (減価償却費/減価償却累計額) |
費用として当期純利益を減少させる |
非現金費用なので当期純利益に加算する |
| 売掛金発生(掛売上) (売掛金/売上) |
売上計上で利益が増加(現金は未受領) |
売掛金の増加は資産増加のため差引(営業CF減少) |
| 買掛金発生(掛仕入) (仕入/買掛金) |
費用計上で利益が減少(現金未払) |
買掛金の増加は負債増加のため加算(営業CF増加) |
| 引当金戻入(過年度に計上した引当金の戻入) (引当金/雑収入) |
営業外収益として当期純利益を増加させる場合がある |
非現金収益なので当期純利益から減算する |
試験で出やすい調整項目比較表
| 項目 |
営業CFでの扱い(間接法) |
具体的処理例(決算日時点に未提供・未経過がある場合) |
| 減価償却 |
非現金費用として加算 |
決算で計上済みでも現金支出は既に完了/加算して調整 |
| 引当金戻入 |
非現金収益として減算 |
戻入が計上されているが現金は未発生→減算 |
| 棚卸資産増減 |
棚卸増加は資産増加のため差引、減少は加算 |
棚卸増加=仕入超過で現金未払いの可能性を考慮 |
| 売掛金の増減 |
増加は差引(現金未回収)、減少は加算 |
売掛金回収が未了なら営業CF上は回収されていない |
| 買掛金の増減 |
増加は加算(支払延長)、減少は差引 |
買掛の支払が未了なら営業CFは減少していない |
| 法人税等 |
損益上の費用と異なり、支払額で営業CFを調整 |
未払法人税がある場合は支払がまだのため営業CF未減少 |
実践メニュー:短時間で反復できる問題(3題)
各問は15分以内で解くことを目安にしてください。解答は下に段階的に示します。
問題1(間接法作成)
| 調整項目 |
増減(期首→期末)または費用 |
| 減価償却費 |
300(費用) |
| 売掛金(増加) |
200 |
| 買掛金(増加) |
150 |
| 未払法人税(増加) |
100 |
問題2(直接法の分類)
| 取引 |
分類(営業の受取/営業の支払/投資/財務) |
| 固定資産売却代金の受取 |
|
| 利息支払 |
|
| 商品売上の回収 |
|
問題3(調整項目の判定)
| 項目 |
営業CFで加算/減算/無関係 |
| 評価損(有価証券評価) |
|
| 前受金の増加 |
|
| 未払費用の増加 |
|
解答テンプレ(段階的)
| 問題 |
解答(要点) |
計算・処理の根拠 |
| 問題1(間接法) |
営業CF=当期純利益1,200+減価償却300−売掛金増加200+買掛金増加150+未払法人税増加100=1,550 |
非現金費用は加算、売掛金増加は差引、買掛金増加は加算、未払法人税増加は加算扱い(税金支払はまだ) |
| 問題2(直接法の分類) |
固定資産売却:投資の受取、利息支払:営業の支払(または財務扱いの形式あり)、商品売上回収:営業の受取 |
売却は投資活動、利息は受払の性質に応じて営業(受取・支払)に分類。試験では利息の区分に注意 |
| 問題3(判定) |
評価損:無関係(損益影響はあるが現金変動なし→間接法で調整)、前受金増加:加算(負債増加→現金増)、未払費用増加:加算 |
評価損は現金支出伴わない。前受金・未払費用は現金受入または支払のタイミングの違い |
典型的な落とし穴(問題例→迷い方→正答の根拠)
| 問題例 |
迷い方 |
正答の根拠 |
| 売上が計上されているが売掛金が増加している場合に営業CFを増やすか |
利益が増えているから営業CFも増えると誤認 |
売掛金増加は現金未回収のため営業CFでは差引(現金増加は起きていない) |
| 減価償却は営業CFで差引?加算? |
費用なので差引すると思う誤解 |
非現金費用なので当期純利益に加算する(現金支出は既に過去に行われている) |
| 法人税の処理位置(営業CFか特別項目か) |
損益上の表示と混同してしまう |
税金はその支払が現金支出となるため、営業CFで支払額ベースで扱う(間接法で調整) |
毎日15分・週次チェックリスト(HTMLテンプレ)
短期目標:1週間で間接法の基本10項目を確実に解けるようにする。
| 日付 |
15分メニュー(例) |
達成チェック |
| YYYY/MM/DD |
間接法の調整項目を1つ復習→関連仕訳を1問解く |
|
学習ログテンプレ(週次)
| 週 |
学習項目 |
所要時間 |
反省・次回の課題 |
| 第1週 |
間接法の基本+減価償却の処理 |
3時間 |
|
学習継続のための短いアドバイス
- 毎日15分でよいので、調整項目を1つずつ仕訳からトレースする習慣をつける。
- 間接法は「当期純利益→非現金項目を調整→運転資本増減調整」の流れを常に意識する。
- 第55〜57回で学んだ収益認識・期間配分・繰延税金の処理は、C/Fの調整項目と直接つながるため復習を推奨。
まとめ
本稿ではキャッシュ・フロー計算書の目的と3区分、間接法と直接法の違いを表で整理し、損益から営業CFへ段階的にトレースする手順を示しました。試験で問われやすい調整項目を1ページで確認できるようにしたので、まずは毎日15分の反復で代表例を仕訳からC/Fまで追う訓練を続けてください。継続的な練習が理解を定着させ、試験本番での判断力を高めます。次回は具体的な過去問を使った応用編を予定しています。