日別アーカイブ: 2026年5月8日

第58回 キャッシュ・フロー計算書入門:間接法・直接法を表でやさしく整理し、試験で押さえる実践メニュー付き

勉強していて「損益はわかるが、キャッシュ・フローの作り方がつかめない」「間接法と直接法の違いで迷う」──そんなつまずきに寄り添います。本記事は税理士試験を目指す初学者向けに、キャッシュ・フロー計算書(C/F)の目的や構成、間接法の実務的手順を表で整理し、短時間で続けられる学習メニューと典型問題を示します。第55〜57回(収益認識・費用の期間配分・繰延税金)で学んだ考え方とのつながりも明示します。

要点まとめ

ポイント 説明 試験での位置づけ
目的 企業の現金・現金同等物の増減を示し、収益性と支払能力を補完する 財務諸表論・管理会計の基礎。仕訳や損益との対応を問う問題が頻出

用語定義(主要項目)

用語 定義 試験での注意点
営業活動によるキャッシュ・フロー 本業の現金収入・支出(営業取引に伴う現金の増減) 間接法では当期純利益から非資金項目や運転資本変動を調整
投資活動によるキャッシュ・フロー 固定資産や投資有価証券の取得・売却に伴う現金の増減 長期資産の取得・処分に関する仕訳を正確に把握する
財務活動によるキャッシュ・フロー 借入金、社債、株式発行・配当等による現金の増減 借入金返済や配当支払のタイミングに注意
間接法 当期純利益を起点に非資金項目の加戻し・運転資本の増減を調整して営業CFを算出 税効果会計の処理位置(損益か営業外か)を混同しない
直接法 現金収入・現金支出を受払別に列挙して営業CFを算出 試験では分類力(どれが営業の受払か)が問われる

間接法:段階的ステップ表(損益→営業CF)

ステップ 入力(主な勘定) 操作内容(間接法での処理)
1. 起点 当期純利益 当期純利益を起点にする(損益計算書の最終行)
2. 非資金項目の調整 減価償却費、引当金戻入、減損損失等 非現金支出は加算、非現金収入は減算する
3. 運転資本の増減調整 売掛金、棚卸資産、買掛金、前受金、未払費用等 資産増加は差引(現金減少)、負債増加は加算(現金増加)
4. その他調整 有価証券評価差額、利益処分、法人税等 営業外・特別損益で現金変動がない項目を除く/法人税は支払額で調整

直接法:主要受払項目と仕訳起点表

現金の受払項目 代表的な仕訳例(発生時と回収・支払時) 決算日時点で未提供・未経過の表示例
営業収入の受取(現金売上) 売掛金回収:現金預金/売掛金 売掛金が未回収なら営業CFで回収されていない
営業支出の支払(仕入の現金支払) 買掛金支払:買掛金/現金預金 買掛金が未払なら支払は未発生(営業CF未減少)
利息・配当の受払 利息受取:現金預金/受取利息 利息支払:支払利息/現金預金 未収利息・未払利息は営業CFに影響しない(間接法で調整)

仕訳→損益→C/F 段階トレース表(典型仕訳の追跡)

仕訳(例) 損益計算書への影響 営業CFでの処理(間接法)
減価償却費 (減価償却費/減価償却累計額) 費用として当期純利益を減少させる 非現金費用なので当期純利益に加算する
売掛金発生(掛売上) (売掛金/売上) 売上計上で利益が増加(現金は未受領) 売掛金の増加は資産増加のため差引(営業CF減少)
買掛金発生(掛仕入) (仕入/買掛金) 費用計上で利益が減少(現金未払) 買掛金の増加は負債増加のため加算(営業CF増加)
引当金戻入(過年度に計上した引当金の戻入) (引当金/雑収入) 営業外収益として当期純利益を増加させる場合がある 非現金収益なので当期純利益から減算する

試験で出やすい調整項目比較表

項目 営業CFでの扱い(間接法) 具体的処理例(決算日時点に未提供・未経過がある場合)
減価償却 非現金費用として加算 決算で計上済みでも現金支出は既に完了/加算して調整
引当金戻入 非現金収益として減算 戻入が計上されているが現金は未発生→減算
棚卸資産増減 棚卸増加は資産増加のため差引、減少は加算 棚卸増加=仕入超過で現金未払いの可能性を考慮
売掛金の増減 増加は差引(現金未回収)、減少は加算 売掛金回収が未了なら営業CF上は回収されていない
買掛金の増減 増加は加算(支払延長)、減少は差引 買掛の支払が未了なら営業CFは減少していない
法人税等 損益上の費用と異なり、支払額で営業CFを調整 未払法人税がある場合は支払がまだのため営業CF未減少

実践メニュー:短時間で反復できる問題(3題)

各問は15分以内で解くことを目安にしてください。解答は下に段階的に示します。

問題1(間接法作成)

条件 数値
当期純利益 1,200
調整項目 増減(期首→期末)または費用
減価償却費 300(費用)
売掛金(増加) 200
買掛金(増加) 150
未払法人税(増加) 100

問題2(直接法の分類)

取引 分類(営業の受取/営業の支払/投資/財務)
固定資産売却代金の受取
利息支払
商品売上の回収

問題3(調整項目の判定)

項目 営業CFで加算/減算/無関係
評価損(有価証券評価)
前受金の増加
未払費用の増加

解答テンプレ(段階的)

問題 解答(要点) 計算・処理の根拠
問題1(間接法) 営業CF=当期純利益1,200+減価償却300−売掛金増加200+買掛金増加150+未払法人税増加100=1,550 非現金費用は加算、売掛金増加は差引、買掛金増加は加算、未払法人税増加は加算扱い(税金支払はまだ)
問題2(直接法の分類) 固定資産売却:投資の受取、利息支払:営業の支払(または財務扱いの形式あり)、商品売上回収:営業の受取 売却は投資活動、利息は受払の性質に応じて営業(受取・支払)に分類。試験では利息の区分に注意
問題3(判定) 評価損:無関係(損益影響はあるが現金変動なし→間接法で調整)、前受金増加:加算(負債増加→現金増)、未払費用増加:加算 評価損は現金支出伴わない。前受金・未払費用は現金受入または支払のタイミングの違い

典型的な落とし穴(問題例→迷い方→正答の根拠)

問題例 迷い方 正答の根拠
売上が計上されているが売掛金が増加している場合に営業CFを増やすか 利益が増えているから営業CFも増えると誤認 売掛金増加は現金未回収のため営業CFでは差引(現金増加は起きていない)
減価償却は営業CFで差引?加算? 費用なので差引すると思う誤解 非現金費用なので当期純利益に加算する(現金支出は既に過去に行われている)
法人税の処理位置(営業CFか特別項目か) 損益上の表示と混同してしまう 税金はその支払が現金支出となるため、営業CFで支払額ベースで扱う(間接法で調整)

毎日15分・週次チェックリスト(HTMLテンプレ)

短期目標:1週間で間接法の基本10項目を確実に解けるようにする。

日付 15分メニュー(例) 達成チェック
YYYY/MM/DD 間接法の調整項目を1つ復習→関連仕訳を1問解く

学習ログテンプレ(週次)

学習項目 所要時間 反省・次回の課題
第1週 間接法の基本+減価償却の処理 3時間

学習継続のための短いアドバイス

  • 毎日15分でよいので、調整項目を1つずつ仕訳からトレースする習慣をつける。
  • 間接法は「当期純利益→非現金項目を調整→運転資本増減調整」の流れを常に意識する。
  • 第55〜57回で学んだ収益認識・期間配分・繰延税金の処理は、C/Fの調整項目と直接つながるため復習を推奨。

まとめ

本稿ではキャッシュ・フロー計算書の目的と3区分、間接法と直接法の違いを表で整理し、損益から営業CFへ段階的にトレースする手順を示しました。試験で問われやすい調整項目を1ページで確認できるようにしたので、まずは毎日15分の反復で代表例を仕訳からC/Fまで追う訓練を続けてください。継続的な練習が理解を定着させ、試験本番での判断力を高めます。次回は具体的な過去問を使った応用編を予定しています。