第224回 司法書士報酬の支払調書ゼロ入門:同一人へ年5万円超・未払額の内書き・2027年2月1日の期限(5日練習付き)

第223回では、司法書士報酬を支払った日の源泉徴収と仕訳を確認しました。

今回は、2026年中に報酬が確定し、支払が2027年になる場合です。

支払調書には未払報酬と未徴収税額を記載します。一方、帳簿の預り金は、実際に報酬を支払って源泉徴収するときに計上します。

1.五つの日付を分ける

支払調書は、法人の事業年度ではなく、暦年中に支払の確定した金額を集計します。現金を動かした日だけで判定するものではありません。

日付 処理
2026年12月25日 業務完了と支払確定。費用、仮払消費税等、未払金を計上する
2026年12月31日 決算日。未払金66,000円が残り、預り金はまだ生じない
2027年1月10日 支払調書を作成・提出。未払額と未徴収税額を内書きする
2027年1月20日 Bへ支払う際に源泉徴収する
2027年2月1日 令和8年分法定調書の提出期限
2027年2月10日 源泉徴収した税額の納付期限

令和8年分の通常の提出期限に当たる2027年1月31日は日曜日です。このため、国税庁の令和8年分手引では2027年2月1日月曜日が提出期限とされています。

2.提出基準は同一人への年額5万円超

国税庁「No.7431 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の提出範囲と提出枚数等」によると、司法書士報酬を含むこの区分は、同一人に対するその年中の支払金額の合計が50,000円を超える場合に提出対象となります。

年額 提出 理由
50,000円 原則不要 5万円以下
50,001円 必要 5万円を超える
本設例の60,000円 必要 同一人への年額が5万円を超える

「5万円以上」ではなく「5万円を超える」が基準です。2026年中に支払が確定した未払報酬も含めて判定します。

消費税等を除外できる場合

国税庁の令和8年分手引35ページでは、提出基準の判定と支払金額の記載は消費税等を含めることが原則とされています。ただし、消費税等が明確に区分されていれば、その額を除外しても差し支えありません。

本設例では、判定額と支払調書の支払金額を60,000円とします。除外した消費税等6,000円は摘要欄に記載します。

3.年末は未払金66,000円を計上する

2026年12月25日の税抜経理による仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払手数料 60,000円 未払金 66,000円
仮払消費税等 6,000円
合計 66,000円 合計 66,000円

国税庁「No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金」は、司法書士報酬を支払うときに源泉徴収するとしています。年末まで支払っていない本設例では、預り金をまだ計上しません。

4.支払調書は未払額を内書きする

国税庁の令和8年分手引第4章は、その年中に支払の確定した未払報酬も支払金額に含め、作成日現在の未払額を上段に内書きするよう示しています。未払のため徴収していない税額も、源泉徴収税額欄に内書きします。

請求書で消費税等が明確に区分されているため、源泉徴収税額の計算対象は報酬60,000円です。

(60,000円-10,000円)×10.21%=5,105円

1円未満の端数がある場合は切り捨てます。本設例では端数はありません。

欄 記載内容
区分 司法書士報酬
細目 役員変更登記
支払金額 60,000円
支払金額の内書き 60,000円
源泉徴収税額 5,105円
源泉徴収税額の内書き 5,105円
摘要 消費税等6,000円

内書きは合計額の内数です。支払金額60,000円に内書き60,000円を加えて、120,000円とするものではありません。

支払調書に未徴収税額5,105円を記載しても、年末の帳簿に預り金を計上するわけではありません。書類の記載と帳簿上の負債を分けて考えます。

5.支払時と納付時の仕訳

2027年1月20日の振込額は60,895円です。

項目 金額
報酬 60,000円
消費税等 6,000円
請求総額 66,000円
源泉徴収税額 △5,105円
振込額 60,895円
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
未払金 66,000円 預り金 5,105円
普通預金 60,895円
合計 66,000円 合計 66,000円

未払金はゼロになり、納付まで預り金5,105円が残ります。納期の特例を適用していないため、1月に徴収した税額の納付期限は翌月10日の2027年2月10日です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
預り金 5,105円 普通預金 5,105円

6.残高で検算する

時点 普通預金 未払金 預り金
取引前 100,000円 0円 0円
2026年12月25日 100,000円 66,000円 0円
2027年1月20日 39,105円 0円 5,105円
2027年2月10日 34,000円 0円 0円

司法書士への振込60,895円と国への納付5,105円の合計は66,000円です。普通預金の減少額も、100,000円-34,000円=66,000円となります。

仮払消費税等の決算整理には、会社全体の仮受消費税等や他の取引も必要です。このため、決算日後の仮払消費税等の残高は本件だけで断定せず、上表から除いています。

7.提出方法と番号の注意

支払調書は法定調書合計表とともに、支払事務を取り扱う事務所等の所在地を所轄する税務署へ提出します。

2027年1月以後に提出する法定調書は、2025年中に提出すべきであった同種類の法定調書が30枚以上なら、e-Tax、認定クラウド等または光ディスク等による提出が必要です。判定は法定調書の種類ごとに行います。

税務署へ提出する支払調書には、BのマイナンバーとT社の法人番号を記載します。Bへ写しを交付する場合、その写しにBのマイナンバーを記載することはできません。

支払調書を作成・提出しただけでは、資産、負債、収益、費用は動きません。提出自体の仕訳は不要です。

8.間違えやすい点

誤り 正しい処理
翌年払いなので令和8年分から除外する 2026年中に支払が確定した未払報酬を含める
5万円ちょうどを提出対象にする 基準は5万円以上ではなく5万円超
内書き額を合計額へ加える 内書きは合計額の内数として扱う
年末に預り金5,105円を計上する 年末は未払金を計上し、預り金は支払時に計上する
消費税等を除外して摘要を空欄にする 摘要欄に除外した消費税等6,000円を記載する
支払調書の提出日に費用を計上する 本設例では業務完了・支払確定日に費用を計上する

9.5日で定着させる

日 取り組む内容
1日目 支払確定日、決算日、支払日、提出期限、納付期限を並べる
2日目 50,000円、50,001円、60,000円の提出要否を判定する
3日目 12月25日の未払計上仕訳を書く
4日目 支払金額、未払額、源泉徴収税額、未徴収税額、摘要を記入する
5日目 支払と納付を仕訳し、普通預金、未払金、預り金を検算する

最初に分けたいのは、「年内に支払が確定した金額」と「実際に支払った日」です。ここが分かれると、支払調書の内書きと帳簿の預り金を混同しにくくなります。

10.確認した一次資料

支払調書は年内に確定した未払報酬まで集計します。帳簿では、未払計上、支払、源泉税の納付の順に残高を動かします。書類の内書きと帳簿の預り金を分けることが、年をまたぐ処理の要点です。