日別アーカイブ: 2026年10月25日

第222回 取締役の重任登記ゼロ入門:原則2年・一定の非公開会社の最長10年・2週間・登録免許税を整理(5日練習付き)

第221回では、最後の登記から12年を経過した株式会社のみなし解散を確認しました。

今回は、その前に行う取締役の任期管理です。同じ人が続けて取締役になる場合でも、任期満了後に再任すれば重任登記が必要です。

重任そのものに仕訳はありません。登記申請に伴う登録免許税には仕訳があります。まず法律上の日付を決め、その後に会計処理を考えます。

1.選任・就任・重任を分ける

用語 意味 S社の日付
選任 株主総会が取締役となる人を選ぶこと 2024年6月25日
就任 選任された人が承諾して取締役になること 2024年6月25日
任期満了 会社法または定款に基づく任期が終わること 2026年6月25日の定時株主総会終結時
重任 任期満了後、間を置かず同じ人が同じ役職に就任すること 2026年6月25日
変更登記 重任年月日などを登記簿へ反映すること 2026年7月2日に申請

氏名が変わらなくても、任期満了による退任と再度の就任が生じます。そのため、登記を省略することはできません。

2.2年任期は「選任日の2周年」ではない

会社法332条による取締役の原則的な任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最後の事業年度に関する定時株主総会の終結時までです。

区分 取扱い
原則 選任後2年以内に終了する最後の事業年度に関する定時株主総会の終結時まで
短縮 定款または株主総会決議により短縮できる
最長10年への伸長 公開会社でない株式会社のうち、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社を除く会社は、定款により伸長できる
監査等委員でない取締役など 機関設計に応じて別の任期規定があるため、個別に確認する

会社法上の公開会社は、上場会社と同じ意味ではありません。発行する株式の全部または一部について譲渡制限を設けていない株式会社が公開会社です。反対に、すべての株式について譲渡による取得に会社の承認を要する会社が、ここでいう公開会社でない株式会社です。

10年は上限です。非公開会社になれば自動的に10年になるわけではありません。機関設計と定款の両方を確認します。

3.S社の任期と登記期限を計算する

日付 出来事
2024年6月25日 Aを選任し、Aが就任を承諾
2025年3月31日 選任後に終了する第1の事業年度
2026年3月31日 選任後2年以内に終了する最後の事業年度
2026年6月25日 定時株主総会の終結時に任期満了。同じ総会で重任
2026年6月26日 2週間の期間計算を開始
2026年7月2日 重任登記を申請
2026年7月9日 本設例の申請期限

2024年3月期はAの選任前に終了しているため、任期計算に含めません。選任後に終了する2025年3月期と2026年3月期を数えます。

民法140条、141条および143条により、本設例では6月25日を算入せず、翌26日から2週間を数えます。末日は7月9日です。

4.同じ人でも重任登記をする

法務省の役員変更登記案内は、任期満了後、間を置かず同じ人を再任した場合にも役員変更登記が必要であると案内しています。

会社法915条1項では、登記事項に変更が生じたときから、本店所在地で2週間以内に変更登記をすることとされています。

S社では、Aが総会に出席し、その場で就任を承諾するため、重任日は2026年6月25日です。承諾が後日となる場合などは、登記原因の日を事実関係から確認します。

S社は取締役会を置かず、取締役がA一人です。会社法349条によりAが会社を代表します。取締役の任期満了に伴い代表者としての地位も更新されるため、取締役と代表取締役の重任を登記します。

申請前には、現行定款、登記事項証明書、株主総会議事録、株主リストおよび就任承諾を示す記載を確認します。議事録に就任承諾の事実が記載されている場合は、その記載を援用できることがあります。

必要書類は機関設計や代表取締役の選定方法によって変わります。S社のように取締役会を置かず、各取締役が会社を代表する会社で役員全員が重任する場合は、法務局の商業・法人登記申請書様式の「1-8」が確認の出発点になります。

5.登録免許税は資本金で判定する

登録免許税法別表第一第24号(一)カおよび国税庁「登録免許税の税額表」による役員変更登記の税額は、次のとおりです。

申請時の資本金 課税標準 税額
1億円以下 申請件数 1件につき1万円
1億円超 申請件数 1件につき3万円

S社の資本金は3,000万円です。したがって、重任登記1件の登録免許税は1万円、千円単位では10となります。

取締役一人ごとに1万円を納付するのではありません。ただし、同じ申請書で別の課税区分に属する登記も受ける場合は、その申請内容に応じて税額を計算します。

6.重任には仕訳なし、登録免許税には仕訳あり

2026年6月25日の任期満了と重任だけでは、S社の資産、負債、純資産、収益および費用は動きません。この日の仕訳はありません。

7月2日に登録免許税10を普通預金から支払ったときは、次のように仕訳します。

日付 借方科目 借方 貸方科目 貸方
2026年7月2日 租税公課 10 普通預金 10

借方と貸方は、それぞれ10で一致します。

区分 支払前 支払後
普通預金 30,300 30,290
資産合計 30,300 30,290
未払金 300 300
資本金 30,000 30,000
利益剰余金 0 △10
負債・純資産合計 30,300 30,290

登録免許税10の費用計上により当期利益が10減り、利益剰余金も10減るものとして簡略化しています。支払後も、資産30,290と負債・純資産30,290は一致します。

国税庁「租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期」では、法人が納付する租税公課等は、損金不算入とされるものを除き原則として損金算入するとされています。本設例の登録免許税10は支払時に租税公課として費用計上し、法人税上も同額を損金算入する前提であるため、申告調整はありません。

7.期限を過ぎても100万円を仕訳しない

法務局の商業・法人登記に関するFAQによると、登記期間を過ぎたことだけを理由に申請が却下されるわけではありません。遅れに気付いたら、放置せずに申請を進めます。

一方、会社法976条により、必要な登記を怠った代表取締役は100万円以下の過料に処される可能性があります。

項目 登録免許税 登記懈怠による過料
性質 登記を受ける際に納付する税 登記義務違反に対して科される可能性がある制裁
本設例 S社が1万円を納付 Aに対する決定はない
100万円 関係しない 上限であり固定額ではない
期限超過を知った時点 申請に必要な税額を確認する 有無も金額も未確定

本設例で過料の対象となり得るのは代表取締役Aであり、S社自身に科されるとは限りません。期限超過を知っただけで、S社が100万円を費用や未払金に計上することはありません。

S社がAに科された過料を負担する場合は、Aに対する経済的利益や役員給与に当たるかを含めて別途検討します。会社自身に科された過料の損金不算入を説明する国税庁資料だけで、この場合の処理を決めることはできません。

8.任期は毎期確認する

時期 確認すること
毎期末 役員の選任日、定款上の任期、機関設計を確認する
総会準備時 任期満了者と再任・交代の予定を照合する
総会当日 決議内容と就任承諾日を議事録に残す
総会直後 登記期限、申請担当者、申請予定日を決める
申請後 登記完了、納付証憑、仕訳を確認する

10年任期にしても、任期管理が不要になるわけではありません。毎期確認し、次に任期が満了する事業年度を更新します。

9.5日で確認する

日 練習
1日目 選任、就任、任期満了、重任の違いを書く
2日目 S社の任期満了日と2026年7月9日の登記期限を再計算する
3日目 定款と登記事項証明書で確認する項目を挙げる
4日目 租税公課10/普通預金10を転記し、残高を検算する
5日目 役員名、選任日、任期、対象事業年度、総会予定日、登記期限を一覧にする

確認問題:2024年6月25日に選任されたAの任期を計算するとき、2024年3月期を含めるでしょうか。

答え:含めません。2024年3月期は選任前に終了しています。選任後に終了する2025年3月期と2026年3月期を数え、2026年3月期に関する定時株主総会の終結時に任期が満了します。

10.まとめ

  • 原則2年の任期は、選任日の2周年ではなく、事業年度と定時株主総会から計算する
  • 一定の非公開会社は定款により最長10年まで伸長できるが、自動適用ではない
  • 同じ人を間を置かず再任しても、重任登記が必要になる
  • S社の登記期限は2026年7月9日で、7月2日の申請は期限内である
  • 重任自体には仕訳がなく、登録免許税の支払には仕訳がある
  • 資本金3,000万円のS社の登録免許税は1万円である
  • 100万円は過料の上限であり、期限超過時に直ちに計上する債務ではない

人が変わらなくても、任期は終わります。毎期一度、選任日と定款を確認しておけば、重任登記の見落としを防ぎやすくなります。