第23回 簿記入門(23) 貸倒引当金と貸倒損失の基礎(試験で押さえる仕訳と計算)

簿記の学習で「貸倒」の処理は、初学者がつまずきやすいところです。仕訳の順序や勘定科目の使い分けがあいまいだと、試験でも時間を使ってしまいます。ここでは、まず考え方を整理し、そのうえで代表的な仕訳パターンと計算の流れを見やすくまとめます。

まず押さえたいポイント

  • 貸倒損失は、回収不能が確定したときの確定損失です。
  • 貸倒引当金は、将来の貸倒れに備えてあらかじめ見積もる評価・見積りです。
  • 回収不能が確定したら売掛金を消します。すでに引当していれば、まず貸倒引当金を取り崩します。
  • 期末に一般引当金を設定する仕訳は、貸倒引当金繰入/貸倒引当金です。

基本概念の整理

勘定科目 借方に使う場面 貸方に使う場面 意味
売掛金 売上計上時 回収時、貸倒処理時 得意先に対する債権を表す流動資産
貸倒損失 貸倒れが確定したとき(引当不足分を含む) 通常は使わない 回収不能が確定したときの費用
貸倒引当金 回収不能確定時の取り崩し 期末に見積計上するとき 売掛金などの評価減に備える引当金

仕訳パターン一覧

事象 仕訳 ポイント
期末に一般引当金を設定する 貸倒引当金繰入 XXX / 貸倒引当金 XXX 見積りによる費用計上です。
回収不能が確定(事前に引当あり) 貸倒引当金 100,000 / 売掛金 100,000 すでに見積計上済みなので、引当金を取り崩します。
回収不能が確定(引当なし) 貸倒損失 100,000 / 売掛金 100,000 その場で直接損失を計上します。
引当処理済みの債権を後日回収した (1)売掛金 50,000 / 貸倒引当金 50,000
(2)現金 50,000 / 売掛金 50,000
いったん債権を復活させてから回収します。
直接貸倒損失で処理した債権を後日回収した 現金 30,000 / 貸倒損失戻入(又は雑収入) 30,000 過去の損失が戻るので収益計上します。

引当金の動きを計算表で確認する

項目 金額
期首の貸倒引当金残高 50,000
期中の取り崩し ▲40,000
期末に必要と見積もる残高 60,000
追加で繰り入れる金額 50,000
期末残高 60,000

この場合、追加繰入額は次のように考えます。

期首残高 50,000 − 取崩 40,000 = 期末前残高 10,000

必要額 60,000 − 10,000 = 追加繰入額 50,000

したがって仕訳は、貸倒引当金繰入 50,000 / 貸倒引当金 50,000 です。

よくある誤り

  • 回収不能が確定したときに、貸倒引当金繰入を使ってしまう。
  • 引当金の設定と、実際の貸倒れの処理を混同してしまう。
  • 後日回収の場面で、以前に引当処理だったか、直接損失だったかを確認しないまま仕訳する。

試験では、問題文の中の「期末に見積もる」「回収不能が確定した」「以前に貸倒処理した」という言葉を見たら、まずどのパターンかを判断することが大事です。

これまでの学習とのつながり

固定資産や棚卸資産でも、見積りによる評価と、実際に確定した損失を区別してきました。貸倒れの処理も同じで、見積りなのか、確定なのかを分けて考えることがポイントです。

練習問題

  1. 売掛金200,000円について個別に回収不能が確定した。期首にその債権に対する個別の貸倒引当金が50,000円ある。仕訳を示しなさい。
  2. 期末に一般貸倒引当金の必要額を80,000円と見積もった。期首残高は30,000円で、期中の取り崩しはなかった。追加繰入の仕訳を示しなさい。
  3. 過去に貸倒損失として直接処理した売掛金のうち、30,000円を後日回収した。仕訳を示しなさい。

解答・解説

解答仕訳 解説
1 貸倒引当金 50,000 / 売掛金 50,000
貸倒損失 150,000 / 売掛金 150,000
引当金50,000をまず取り崩し、残り150,000を貸倒損失として処理します。
2 貸倒引当金繰入 50,000 / 貸倒引当金 50,000 必要額80,000から既存残高30,000を差し引くと、追加繰入額は50,000です。
3 現金 30,000 / 貸倒損失戻入(又は雑収入) 30,000 直接貸倒損失で処理していたものを回収したので、戻入として収益計上します。

確認チェックリスト

  • 「引当」と「確定損失」の違いを説明できる。
  • 期末繰入、引当金の取り崩し、直接損失の3パターンを区別できる。
  • 貸倒引当金の期首・取崩・繰入・期末の関係を計算できる。

次回学習の目安

次回は、引当金と税務上の扱いの違いにも触れながら、会計処理とのつながりを整理していきます。

貸倒の問題は、最終的には「引当か、確定か」を見分けられるかどうかです。ここが整理できると、仕訳はかなり速くなります。