簿記の学習で「貸倒」の処理は、初学者がつまずきやすいところです。仕訳の順序や勘定科目の使い分けがあいまいだと、試験でも時間を使ってしまいます。ここでは、まず考え方を整理し、そのうえで代表的な仕訳パターンと計算の流れを見やすくまとめます。
まず押さえたいポイント
- 貸倒損失は、回収不能が確定したときの確定損失です。
- 貸倒引当金は、将来の貸倒れに備えてあらかじめ見積もる評価・見積りです。
- 回収不能が確定したら売掛金を消します。すでに引当していれば、まず貸倒引当金を取り崩します。
- 期末に一般引当金を設定する仕訳は、貸倒引当金繰入/貸倒引当金です。
基本概念の整理
| 勘定科目 | 借方に使う場面 | 貸方に使う場面 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 売上計上時 | 回収時、貸倒処理時 | 得意先に対する債権を表す流動資産 |
| 貸倒損失 | 貸倒れが確定したとき(引当不足分を含む) | 通常は使わない | 回収不能が確定したときの費用 |
| 貸倒引当金 | 回収不能確定時の取り崩し | 期末に見積計上するとき | 売掛金などの評価減に備える引当金 |
仕訳パターン一覧
| 事象 | 仕訳 | ポイント |
|---|---|---|
| 期末に一般引当金を設定する | 貸倒引当金繰入 XXX / 貸倒引当金 XXX | 見積りによる費用計上です。 |
| 回収不能が確定(事前に引当あり) | 貸倒引当金 100,000 / 売掛金 100,000 | すでに見積計上済みなので、引当金を取り崩します。 |
| 回収不能が確定(引当なし) | 貸倒損失 100,000 / 売掛金 100,000 | その場で直接損失を計上します。 |
| 引当処理済みの債権を後日回収した | (1)売掛金 50,000 / 貸倒引当金 50,000 (2)現金 50,000 / 売掛金 50,000 |
いったん債権を復活させてから回収します。 |
| 直接貸倒損失で処理した債権を後日回収した | 現金 30,000 / 貸倒損失戻入(又は雑収入) 30,000 | 過去の損失が戻るので収益計上します。 |
引当金の動きを計算表で確認する
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 期首の貸倒引当金残高 | 50,000 |
| 期中の取り崩し | ▲40,000 |
| 期末に必要と見積もる残高 | 60,000 |
| 追加で繰り入れる金額 | 50,000 |
| 期末残高 | 60,000 |
この場合、追加繰入額は次のように考えます。
期首残高 50,000 − 取崩 40,000 = 期末前残高 10,000
必要額 60,000 − 10,000 = 追加繰入額 50,000
したがって仕訳は、貸倒引当金繰入 50,000 / 貸倒引当金 50,000 です。
よくある誤り
- 回収不能が確定したときに、貸倒引当金繰入を使ってしまう。
- 引当金の設定と、実際の貸倒れの処理を混同してしまう。
- 後日回収の場面で、以前に引当処理だったか、直接損失だったかを確認しないまま仕訳する。
試験では、問題文の中の「期末に見積もる」「回収不能が確定した」「以前に貸倒処理した」という言葉を見たら、まずどのパターンかを判断することが大事です。
これまでの学習とのつながり
固定資産や棚卸資産でも、見積りによる評価と、実際に確定した損失を区別してきました。貸倒れの処理も同じで、見積りなのか、確定なのかを分けて考えることがポイントです。
練習問題
- 売掛金200,000円について個別に回収不能が確定した。期首にその債権に対する個別の貸倒引当金が50,000円ある。仕訳を示しなさい。
- 期末に一般貸倒引当金の必要額を80,000円と見積もった。期首残高は30,000円で、期中の取り崩しはなかった。追加繰入の仕訳を示しなさい。
- 過去に貸倒損失として直接処理した売掛金のうち、30,000円を後日回収した。仕訳を示しなさい。
解答・解説
| 問 | 解答仕訳 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | 貸倒引当金 50,000 / 売掛金 50,000 貸倒損失 150,000 / 売掛金 150,000 |
引当金50,000をまず取り崩し、残り150,000を貸倒損失として処理します。 |
| 2 | 貸倒引当金繰入 50,000 / 貸倒引当金 50,000 | 必要額80,000から既存残高30,000を差し引くと、追加繰入額は50,000です。 |
| 3 | 現金 30,000 / 貸倒損失戻入(又は雑収入) 30,000 | 直接貸倒損失で処理していたものを回収したので、戻入として収益計上します。 |
確認チェックリスト
- 「引当」と「確定損失」の違いを説明できる。
- 期末繰入、引当金の取り崩し、直接損失の3パターンを区別できる。
- 貸倒引当金の期首・取崩・繰入・期末の関係を計算できる。
次回学習の目安
次回は、引当金と税務上の扱いの違いにも触れながら、会計処理とのつながりを整理していきます。
貸倒の問題は、最終的には「引当か、確定か」を見分けられるかどうかです。ここが整理できると、仕訳はかなり速くなります。
