日別アーカイブ: 2026年6月27日

第108回 給与・賞与ゼロ入門:源泉徴収・法定福利費・損金算入の基本を表でやさしく整理(続けられる実践メニュー付き)

試験勉強や実務で給与・賞与の処理に向き合うと、「仕訳は分かるが税務の判定で迷う」「決算時に何が損金算入できるか不安」と感じることが多いはずです。本記事では、初学者がつまずきやすい点に寄り添い、仕訳テンプレートと表で処理フローを整理します。図は控えめにし、テーブル中心で、試験で押さえるべきポイントと続けられる実践メニューを添えます。

1)給与計算の全体フロー(概観)

まずは処理の流れを一望できる表で確認します。処理の各段階で関係する仕訳と期限を併せて示します。

処理ステップ 主な内容 関連仕訳(代表例) 期限・備考
勤怠確定 出勤・残業・欠勤・控除対象の確定 -(内部処理) 給与計算前に確定すること
支給額算定 基本給・手当・時間外等の計算 -(根拠資料作成) 支給日前まで
源泉所得税計算 課税対象額の算出→源泉徴収税額表に照合 借方:支払給与 貸方:預り金(源泉所得税) 給与支払時(原則:支払時に控除)
社会保険料控除 従業員分を天引き、会社負担分を計上 借方:法定福利費 貸方:未払社会保険料等 資格取得届等は発生時、保険料は月次処理
振込・支払 給与振込、現金支給等の実行 借方:支払給与 貸方:普通預金 支給日
納付・届出 源泉税・社会保険・住民税の納付・届出 借方:預り金 貸方:普通預金等(納付時) 納期期限は項目ごとに要確認

2)代表的な仕訳テンプレート

よく使う仕訳をテンプレとして示します。金額要素は分かりやすく分類しています。

用途 金額要素(例) 借方 貸方
月次給与(支給時) 総支給額、社会保険料・源泉税を控除後の振込額 支払給与(総支給額) 普通預金(従業員へ振込額)/預り金(源泉、社保)
源泉所得税(控除時) 給与から差し引いた源泉額 預り金(源泉所得税) 支払給与(控除)
社会保険(従業員負担分、控除時) 法定の従業員負担額 預り金(社会保険料) 支払給与(控除)
法定福利費(会社負担分、計上) 会社負担の健康保険・厚生年金等 法定福利費(費用) 未払社会保険料(または普通預金)
賞与(支給時) 賞与総額、源泉・社保を控除後の支払額 賞与手当(または支払給与) 普通預金/預り金(源泉・社保)
未払給与(決算で発生が確定している場合) 決算日時点で支払確定している未払額 支払給与(費用) 未払給与(負債)

3)源泉徴収の計算と納付フロー(届出・期限)

源泉所得税は国の定める源泉徴収税額表に基づき算出します。実務では社会保険料控除等を差し引いた「課税対象給与」を確認して税額表に照らします。

説明 計算式(概要) 備考
課税対象給与の求め方 課税対象給与 = 総支給額 − 社会保険料(従業員負担) − 控除(扶養等) 控除の扱いは源泉徴収税額表の注記に従う
源泉税額(簡易例) 例:総支給300,000円、従業員社保30,000円 → 課税対象270,000円 × 仮税率10% = 27,000円 実務では国税庁の源泉徴収税額表を使用する(ここでは説明用の仮率)

届出・納付の主要事項は以下の通りです(代表例)。

手続 担当 期限 備考
源泉所得税の納付 会社(源泉徴収義務者) 原則:給与支払の翌月10日(ただし納期の特例適用時は年2回:7/10・翌年1/20) 中小企業等は納期の特例の適用可。適用要件を確認すること
社会保険料の算定・納付 会社(事業主) 毎月(被保険者資格取得等は発生時に届出) 保険料は事業主が天引きし会社負担分と併せて納付
住民税(特別徴収) 会社(特別徴収義務者) 市区町村の定める納期(概ね毎月) 地方自治体により手続・納期が異なるため確認必須

4)法定福利費(会社負担)の会計と税務

会社負担の社会保険料は会計上「法定福利費」として計上します。税務上の損金算入のタイミングは発生主義に基づく点がポイントです。

項目 会社負担の扱い 従業員負担の扱い 代表的な仕訳 損金算入のタイミング
健康保険・厚生年金 会社負担あり(法定福利費) 給与から天引き(預り金) 借方:法定福利費 貸方:未払社会保険料 決算日時点で支払が確定していればその事業年度で損金算入可
雇用保険 会社負担あり(法定福利費) 従業員負担あり(天引き) 借方:法定福利費 貸方:未払雇用保険料 支払確定の有無で損金算入を判断
労災保険 会社負担のみ(法定福利費) 該当なし 借方:法定福利費 貸方:未払労災保険料 通常は発生時に費用化(支払確定の考え方を確認)

注意:賞与に関する引当金(賞与引当金)は、税務上一般に損金算入が否認される扱いが多いため、決算で未払計上する際は「支払が決定しているか」「支給対象者・金額が確定しているか」を慎重に確認してください。法改正・通達変更があるため、最新の税法を確認することを必ず付記します。

5)月次チェックリストと決算整理の注意点

項目 チェック内容 理由(税務・会計上の注意)
源泉税の計算と納付状況 源泉徴収税額表で照合、納付が期限内か確認 納付遅延は過怠金の対象。納期の特例適用の手続き確認
社会保険料の算出と届出 月額変更・資格取得届が正しく処理されているか確認 保険料の誤算定は従業員の負担・会社負担の差異につながる
未払給与・賞与の扱い(決算) 決算日現在で支払が確定しているかを書面で確認する 支払確定がない場合、未払計上は税務上否認されることがある
法定福利費の計上 会社負担分を月次で計上し、未払金の残高を照合 年度末の未払残高は損金算入の判断に影響する

6)試験向けポイントと短い練習問題

まず押さえるべきポイントを箇条書きで示します。

  • 給与・賞与の損金算入は「支払の確定(発生主義)」の有無で判断する。賞与引当金は原則注意。
  • 源泉徴収は課税対象額を正しく算出し、国税庁の税額表に照らすことが必須。
  • 社会保険は会社負担と従業員負担を区分し、法定福利費と預り金で処理する。

練習問題(解答は下に簡潔に示します)

  1. (仕訳)12月31日に支給が確定した給与100,000円(うち源泉10,000円、従業員社会保険5,000円)は未払として計上する。必要な仕訳を記入しなさい。
  2. (源泉計算)Aさんの当月総支給額は400,000円、従業員社会保険が40,000円である。課税対象額と、仮に税率を8%とした場合の源泉税額を示しなさい(税額表は別途参照する点に留意)。
  3. (決算整理)会社は期末時点で賞与の支給を検討中だが、まだ支給対象者・金額が未確定である。賞与引当金を計上してよいか、理由とともに答えなさい。

解答(簡潔)

  1. 借方:支払給与 100,000 / 貸方:未払給与 100,000(支払が確定しているため未払計上)。また源泉・社保の控除処理を別途次のように整理:借方:未払給与 100,000 / 貸方:預り金(源泉)10,000、預り金(社保)5,000、普通預金(振込額)85,000 のように実務では分けて処理します。
  2. 課税対象額 = 400,000 − 40,000 = 360,000。仮税率8%の場合の源泉税額 = 360,000 × 8% = 28,800円(実務では税額表を参照)。
  3. 原則として不可。支給対象者・金額が決定していない賞与引当金は税務上否認されることが多い。決算で損金算入するためには支払の確定(具体的な金額・支給基準の確定等)が必要である。

7)続けるための実践メニュー(15分×5日)

忙しい受験生でも続けられる短期集中プランです。毎日15分で1サイクルを理解します。

  • 1日目:給与計算の流れをテーブルで読む(本記事の1章を確認)
  • 2日目:仕訳テンプレをノートに写す(項目ごとに例題を1つ)
  • 3日目:源泉徴収の考え方と簡易計算(練習問題2を自分で解く)
  • 4日目:法定福利費の会計処理を整理(会社負担と従業員負担を比較)
  • 5日目:決算整理の要点確認と練習問題の復習(本記事のチェックリストを使う)

継続のコツ:毎回「仕訳1件+判定1点」を習慣化すると精神的負担が減り、知識が定着しやすくなります。

まとめ

本記事では、給与・賞与処理を「仕訳テンプレ」「計算例」「届出・納付スケジュール」「損金算入の判断材料」に分けて表で整理しました。重要な点は次のとおりです。

  • 源泉徴収は課税対象額を正確に算出し、国税庁の税額表に従うこと。
  • 法定福利費は会社負担と従業員負担を区分して処理し、未払計上の可否は支払確定の有無で判断すること。
  • 賞与引当金は税務上の取り扱いに注意。決算での未払計上は支払確定が要件になる。

最後に:法令・通達は変更される可能性があります。本記事は基礎整理を目的としており、実務や試験の直前は最新の法令・税務通達、自治体の手引きを必ず確認してください。関連する過去記事(第107回:交際費・福利厚生費)も参考にしてください。