日別アーカイブ: 2026年6月8日

第89回 売掛金と貸倒引当金ゼロ入門:回収と貸倒処理、税務上の扱いを表でやさしく整理(続けるための実践メニュー付き)

勉強を進めていると「売掛金の仕訳はわかるが、期末の貸倒引当金の計算や税務調整でつまずく」という声をよく聞きます。本記事はそのつまずきに寄り添い、仕訳と数値の流れを表で一貫して示します。演習を繰り返せるよう、毎日続けられる練習メニューも用意しました。

本記事の読み方と学習目標

目的は次の3点です。

  • 売掛金の発生から回収、貸倒までの主要な仕訳パターンを整理する
  • 貸倒引当金の算定方法(個別・一括・年齢別)を比較して計算手順を身につける
  • 税務上の取扱いと実務で注意する点を表で確認する

第87回(引当金)と重複しないよう、本稿では売掛金に特化した実務的な計算・仕訳パターンと税法上の要件を中心に扱います。関連:第87回(引当金)第88回(棚卸資産)第69回(銀行勘定調整表)

売掛金の発生〜回収の仕訳一覧(取引別)

取引 借方 貸方 メモ
売上の計上(掛け) 売掛金 売上高 商品の引渡し・サービス完了で発生
現金で回収 現金 売掛金 回収時に消える(債権回収)
受取手形の取得 受取手形 売掛金 手形取引に変更
値引・返品発生 売上値引・売上戻り 売掛金 売掛金が減少
個別に貸倒れ(回収不能) 貸倒損失 売掛金 直接償却(個別貸倒)

貸倒の種類と代表的な仕訳

種類 仕訳(借方) 仕訳(貸方) メモ
個別貸倒(直接法) 貸倒損失 売掛金 特定債権が回収不能と確定した場合に直接償却
貸倒引当金による取崩し 貸倒引当金 売掛金 期末に引当てた引当金を実際の貸倒で取り崩す
貸倒引当金の繰入 貸倒引当金繰入 貸倒引当金 期末に見積りて計上する(会計処理)

貸倒引当金の算定方法比較

方法 計算手順 長所 短所
個別評価法 回収不能の可能性が高い債権を個別に評価し見積る 精度が高い 手間がかかる
一括法(売掛金総額×率) 売掛金残高に予め定めた率を乗じて算出 簡便で試験向き 個別差を反映しにくい
年齢別法 残高を期間別に区分し、それぞれに回収見込み率を適用 経過日数でリスクを反映しやすい 資料整理が必要

貸倒引当金計算表(例)

項目 金額(円)
期首残高 50,000
当期繰入(見積) 30,000
当期取崩(実際の貸倒) 20,000
期末残高(計算) 60,000

年齢別残高表(例:年齢別法の適用)

債権区分 残高 回収見込み率 貸倒見込額
30日以内 800,000 99% 8,000
31〜90日 150,000 95% 7,500
90日超 50,000 60% 20,000
合計 1,000,000 35,500

税務上の取扱い(会計→課税所得の調整)

会計処理 税務上の取扱 要件・期限
個別貸倒(実際の貸倒損失) 原則として損金算入可 回収不能が合理的に判明した時点で処理
貸倒引当金の繰入(会計上) 税法上の繰入限度額があり、超過部分は損金不算入 算定は事業年度末の残高を基準にし、合理的な基準で算定すること
引当金取崩し 実際の貸倒に対応する部分は税務上も損金扱い 実際の貸倒の発生事実が必要

練習問題(計算3問)

各問とも「決算日時点で未回収の債権がある」ことが条件です。計算過程を示してください。

問題1(年齢別法)

期末の売掛金残高は次のとおり。年齢別の回収見込み率は表中の通り。貸倒引当金の期末残高(見積額)を計算し、当期の繰入額を求めよ。期首貸倒引当金残高は50,000円。

区分 残高 回収見込み率
30日以内 600,000 98%
31〜90日 200,000 90%
90日超 50,000 50%

解答解説1(ステップ)

ステップ 計算 金額(円)
各区分の貸倒見込額 600,000×2%、200,000×10%、50,000×50% 12,000/20,000/25,000
期末見積合計(期末残高) 合計 57,000
当期繰入額 期末57,000−期首50,000 7,000

問題2(個別貸倒の処理)

期末に売掛金100,000円のうち、得意先Aの債権40,000円が倒産により回収不能と判明した。仕訳と税務上のポイントを示せ。

解答解説2

項目 内容
会計仕訳 貸倒損失 40,000 / 売掛金 40,000
税務上の取扱 回収不能の事実が確認できれば損金算入可(証拠書類を保存)

問題3(一括法の例)

売掛金残高が1,200,000円。一括法で評価率を2.5%とした場合の期末引当金額と、期首引当金が10,000円のときの当期繰入額を求めよ。

解答解説3

ステップ 計算 金額(円)
期末見積額 1,200,000×2.5% 30,000
当期繰入 30,000−10,000 20,000

続けるための学習メニュー(毎週・毎日)とチェックリスト

短時間で継続できるルーティンを7日間の簡易プランで提示します。

内容(15〜30分)
1日目 仕訳パターン10問を確認(売掛金発生〜回収)
2日目 年齢別表の作成練習(架空データで3パターン)
3日目 個別貸倒の判定基準を整理(条文・判例の要点)
4日目 税務上の処理整理(チェックリスト作成)
5日目 過去問(貸倒関連)を1問解いて解説を作る
6日目 当期繰入の仕訳練習と仕訳帳入力の確認
7日目 弱点チェック(仕訳/計算/税務)と復習

弱点チェックシート(3項目)

項目 チェックポイント
仕訳 売掛金発生・回収・貸倒の仕訳を即答できるか
計算 年齢別・一括・個別の計算が正確にできるか
税務 引当金の税務上の限度や証拠書類の要件を説明できるか

まとめ

売掛金は「発生→回収→貸倒」という流れを仕訳で追えることが基本です。貸倒引当金は算定方法によって手順が異なり、税務上の取り扱いに注意が必要です。本稿の表と演習を繰り返し、事例ごとにどの処理が適切か判断できるようにしましょう。継続学習のために、7日プランを参考に少しずつ習慣化することをおすすめします。

抜粋(excerpt): 売掛金の基本から回収・貸倒の仕訳、貸倒引当金の算定方法(個別・一括・年齢別)と税務上の取り扱いを、表中心でやさしく整理します。試験で問われやすい計算パターンと、毎日続けられる練習メニュー付き。