日別アーカイブ: 2026年6月13日

第94回 決算整理仕訳ゼロ入門:試算表から決算書へ表でやさしく整理(続けるためのチェックリスト付き)

試験直前や学習を進める中で「決算整理の流れがぱっと頭に入らない」「仕訳は覚えたが全体のつながりが分からない」と感じることはよくあります。ここでは、複雑に感じる決算整理〜損益振替〜繰越利益剰余金への取りまとめを、表で段階的に示し、必要最小限の要点と練習問題で“流れ”を掴めるように整理します。

この記事の構成(必要な箇所へ飛べます)

試算表→決算書変換表(勘定科目の集約ルール)

試算表上の細かな科目を、財務諸表上でどのように集約するかを示します。ここでの集約ルールを意識すると、決算書作成の全体像が見えます。

試算表の科目 決算書上の科目(集約例) 要点・補足
現金・普通預金・当座預金 現金及び預金(貸借対照表 流動資産) 流動性でまとめる。通貨換算や相殺は期末残高で確認
売掛金・受取手形 売掛金(貸借対照表 流動資産) 貸倒見積りは引当金で調整(第87回参照)
商品・製品・仕掛品 棚卸資産(流動資産) 期末棚卸差異は決算整理で調整(第88回参照)
建物・機械・車両・減価償却累計額 有形固定資産(純額表示) 減価償却は当期分を計上(第77回参照)
未払金・未払費用・前受金 流動負債 発生と経過を期末で整理、前受収益は翌期へ按分
支払利息・受取利息・売上・売上原価 損益計算書の営業収益・営業費用 当期発生分を確定し、損益振替へ
利益剰余金の前期繰越 繰越利益剰余金(純資産) 当期純利益を振替後に最終残高を表示

決算整理仕訳一覧(代表的仕訳)

代表的な決算整理項目と、期末における「未提供/未経過」の状態を明示した仕訳例を示します。詳しい計算方法は該当回へリンクしています。

項目 代表的仕訳(借方→貸方) 期末の未提供・未経過の状況説明
減価償却 減価償却費 → 減価償却累計額 当期分未計上ならば当期の費用を計上(第77回参照)
貸倒引当金 貸倒損失 → 貸倒引当金 期末の回収可能性を見積り、未計上分を追加計上(第87回参照)
棚卸資産の評価・差異 売上原価(または棚卸減耗損) → 商品(棚卸減少) 期末棚卸と帳簿残高の差異を調整(第88回参照)
未払費用 費用(未払計上) → 未払費用 期末時点でサービス受領済だが未払の費用を計上
前払費用の振替 費用(期間経過分) → 前払費用 前払で処理していた費用のうち当期に属する部分を費用化
前受収益の整理 前受収益 → 収益(繰越すべきでない分) 前受金のうち当期に属する収益を計上、未経過分は残す
未収収益(経過収益) 未収金 → 収益(計上) 当期に発生しているが未回収の収益を計上

※ 詳細な処理や計算例は、減価償却・引当金・棚卸・前払/前受に関する過去回を参照してください。例:第77回 減価償却第87回 引当金第88回 棚卸第78回 前払/前受

損益振替・資本振替の流れ表(期末→繰越)

決算整理仕訳を済ませた後、損益勘定を閉鎖して繰越利益剰余金へ取りまとめます。以下は実務的な手順と仕訳例の流れです。

段階 仕訳例(借方→貸方) 結果(財務諸表上)
1. 収益勘定の振替 各収益勘定 → 損益(損益勘定) 収益勘定をゼロにし、損益勘定に収益総額を集約
2. 費用勘定の振替 損益(損益勘定) → 各費用勘定 費用勘定をゼロにし、損益勘定に費用総額を集約
3. 損益の確定(当期純損益の計上) 損益(損益勘定) → 繰越利益剰余金 当期純利益(または損失)を繰越利益剰余金へ振替
4. 配当・資本取引の反映 繰越利益剰余金 → 未払配当(支払) / 資本剰余金等 配当が決定している場合は差し引いた最終残高を表示(第93回参照)

実務上の注意点

  • 順序を守ること:決算整理→損益振替→資本振替の順で作業するとミスが減ります。
  • 未提供・未経過の明示:仕訳の摘要やチェック表に「期末時点で未払/未経過である」ことを明記しておくと検算しやすいです。
  • 外部リンク・参照:減価償却や引当金の計算は別回で詳述しているため、個別の計算は該当記事を参照してください。

演習:10分×5問(解答は折りたたみで確認)

時間を計って解き、解答で自己採点してください。すべて期末時点で「未提供」「未経過」が発生している例です。

問題1:期末に当期分の減価償却が未計上で、当期の減価償却費は50,000円です。仕訳を示しなさい。

解答

仕訳:減価償却費 50,000 → 減価償却累計額 50,000

  • 問題2:売掛金の一部について回収可能性が低いと判断し、貸倒引当金として30,000円追加計上する必要がある。仕訳を示し、期末の未提供状態を説明しなさい。

    解答

    仕訳:貸倒損失 30,000 → 貸倒引当金 30,000

    期末の未提供状態:期末時点で回収見込みのない債権が存在し、引当金が未計上であった。

  • 問題3:前払として処理していた保険料のうち、当期帰属額が20,000円である。仕訳を示しなさい。

    解答

    仕訳:保険料(費用)20,000 → 前払保険料 20,000

    期末状態:前払処理されていたが期末で当期分を取り崩す必要がある。

  • 問題4:期末棚卸で帳簿の在庫が減少し、棚卸減耗損が15,000円発見された。仕訳を示しなさい。

    解答

    仕訳:棚卸減耗損 15,000 → 商品(棚卸減少)15,000

    期末状態:実地棚卸と帳簿残が一致しておらず、差異を決算整理で処理する。

  • 問題5:収益のうち、期末時点で未収のものが40,000円ある。仕訳を示しなさい。

    解答

    仕訳:未収金 40,000 → 受取利息(または該当収益科目)40,000

    期末状態:収益は発生済だが回収が翌期となるため未収計上が必要。

    続けるためのチェックリスト(週/月)と学習ルーティン案

    長く続けるための小さな習慣を提案します。短時間で継続できるメニューを優先しました。

    続けるためのチェックリスト(週次)

    • 週1回:決算整理の代表仕訳を3つ音読して手を動かす(10分)
    • 週1回:過去の自作ノートを見直し、理解が曖昧な点を1つ潰す(20分)
    • 週1回:この回の表を見て、試算表→決算書の流れを復習(10分)

    チェックリスト(月次)

    • 月1回:5問演習(解答付き)を時間を測って解く(30分)
    • 月1回:過去回(第77回・第87回・第88回・第78回)を参照して計算手順を確認
    • 月1回:模擬試算表を一つ解き、決算書への変換を通して行う(60分)

    週ごとの学習ルーティン案(短時間で続ける)

    • 月・水・金(各10分):仕訳を声に出して書く(ルーチン化で記憶を定着)
    • 土曜(30〜60分):表を使って1周(試算表→決算整理→損益振替→繰越)を通す
    • 日曜(15分):その週の弱点メモを作り、次週の学習目標を設定

    まとめ

    本稿では、試算表から決算書への変換、代表的な決算整理仕訳、損益振替〜繰越までを表中心に整理しました。ポイントは「順序」を守り、期末時点で何が未提供・未経過であるかを明示することです。まずは表を用いて流れを頭に入れ、短時間の反復で仕訳と手順を習慣化してください。必要に応じて第77回・第87回・第88回・第78回の記事で個別の計算を確認すると効率的です。

    次回(シリーズ『税理士合格ロードマップ』):資本取引と決算後処理の実務チェックリスト(第95回・予定)