日別アーカイブ: 2026年4月12日

第32回 簿記入門(32) キャッシュフロー計算書の基礎と作成手順(P/L・B/Sとのつながりで理解する)

学習を進める中で「損益は黒字でも現金が足りない」「貸借対照表の増減がキャッシュにどう影響するかわからない」とつまずく人は多いです。本記事では、P/L・B/Sで学んだ知識を土台に、キャッシュの流れ(C/F)を段階的に整理します。試験でよく問われる非資金取引や誤解しやすい仕訳もチェックリスト形式で示しますので、実務や試験対策に活用してください。

1) キャッシュフロー計算書の目的と基本構成

キャッシュフロー計算書は、一定期間の現金及び現金同等物の変動を示す表です。構成は次の3区分に分かれます。

区分 主な内容 注目点
営業活動によるCF 本業から生じる現金収支(売上回収・仕入支払など) P/Lの利益から開始し、非資金項目や運転資本の増減で調整する
投資活動によるCF 有形・無形固定資産の取得・売却、投資有価証券の売買 長期資産の増減が中心。キャッシュの長期的な流出入を見る
財務活動によるCF 借入、社債発行、配当金支払、自己株式の取得 資本や負債の調達と返済に関する現金の流れ

2) 間接法と直接法の違い(表で比較)

項目 間接法 直接法
着眼点 当期純利益を出発点に調整 現金収入・現金支出を明示
利点 P/Lとの連結がわかりやすい(試験で多用) 現金の内訳が直感的で分かりやすい
欠点 現金取引の明細は不明瞭 作成に手間がかかる(補助帳を要する)

3) P/L・B/Sからの連結――典型的な調整項目と仕訳

営業CF(間接法)の主な調整例を示します。

調整項目 P/L/B/Sでの表示 営業CFへの影響
減価償却費 P/Lの費用、B/Sでは減価償却累計が増加 費用だが現金支出なし→営業CFに加算
売掛金の増加 B/Sの流動資産が増加 売上は計上済でも現金未回収→営業CFで減算
仕入債務(買掛金)の増加 B/Sの流動負債が増加 支払い前なら現金支出が先送り→営業CFで加算

仕訳例(参考)

減価償却費の計上(非資金取引)

(仕訳) 減価償却費 300,000/減価償却累計 300,000

4) 非資金取引・引当金等の処理例

非資金取引はP/Lに影響し現金を伴わないものを指します。代表例とC/F上の扱いを表にします。

非資金取引例 P/L上の扱い C/Fでの扱い(間接法)
減価償却 費用計上(利益減) 営業CFで加算(現金支出なし)
貸倒引当金の増減 費用または戻入計上 営業CFで加減(現金支出なし)
資産の帳簿上の評価替え(非現金) 評価損益がP/Lに反映 営業CFに調整(実際の現金は影響しない)

5) 作成ステップのチェックリスト(試験での注意点)

  • 出発点を明確にする:間接法は当期純利益、直接法は現金収支の合計。
  • P/Lの非資金項目(減価償却・引当金)を忘れずに調整する。
  • B/Sの増減はすべて現金の増減に直結しない点を確認する(例:売掛金↑は現金↓)。
  • 投資・財務の非現金取引(株式発行による債務の株式化など)は注記扱いになることがある。
  • 試験では用語・分類ミスが頻出:設備取得は投資CF、借入は財務CF。

6) 練習問題(解答・解説付き)

問題1(間接法の調整)

当期の当期純利益は1,000,000円、減価償却費300,000円。期末の売掛金は期首より200,000円増、棚卸資産は100,000円増、買掛金は50,000円減少した。営業活動によるキャッシュフローを求めよ(間接法)。

調整項目 増減 CFへの影響
当期純利益 +1,000,000 基準値から順に調整

計算:1,000,000 + 300,000 – 200,000 – 100,000 – 50,000 = 950,000(営業CF)

問題2(投資取引と未払)

期中に機械を帳簿価額1,000,000円で取得した。取得代金のうち現金支払は500,000円、残額は未払金として期末に残っている。投資活動によるキャッシュフローの表示はどうなるか。仕訳も示せ。

事象 仕訳 投資CFへの表示
設備取得(代金の一部未払) 有形固定資産 1,000,000/未払金 500,000
現金 500,000
固定資産の取得による支出 -500,000(現金支出は500,000のみ)

ポイント:B/S上は固定資産1,000,000増、負債(未払金)500,000増。投資CFは実際の現金支出のみを示す(この例では500,000のマイナス)。未払分は財務CFでもなく注記で扱う。

まとめ(試験と学習プラン)

キャッシュフロー計算書はP/L・B/Sと表裏一体です。まずは間接法の調整ロジック(当期純利益→非資金項目を加算→運転資本の増減を調整)を体得しましょう。週1回、短時間で復習するルーティン例を示します。

  • 週1(理解):間接法のフローと典型調整項目を確認(30分)。
  • 週2(演習):問題1〜2問を実際に解き、仕訳とCFの関係を確認(45分)。
  • 週4(振返):過去の誤答を整理し、チェックリストを更新(30分)。

よくある挫折ポイント:減価償却や引当金など非資金項目を見落とす、B/Sの増減を現金増減と直結させすぎる。上のチェックリストを活用し、まずは間接法での調整に慣れてください。

関連回:第13回(損益計算書)第13回(貸借対照表)

自己採点用チェックリスト(短縮版):減価償却を加算したか / 売掛金・棚卸・買掛金の増減を正しく符号処理したか / 投資・財務は現金支出入のみ反映されているか。

次回は具体的な試験頻出の論点(金融収益と現金等価物の扱い、開示上の注意点)を取り上げます。継続して学習すれば、P/L・B/SとC/Fのつながりが自然に見えてきます。