決算書を作ったけれど、「会計上の利益」と「税法上の課税所得」が違う理由がわからず混乱していませんか。試験対策としては、どこを足す・引くかを整理できれば得点につながります。本記事では初学者向けに、損金・益金の考え方と代表的な具体例をテーブル中心でやさしく整理します。第34回・第35回の内容(税務調整・繰延税金)への橋渡しにもなります。
会計利益と課税所得の関係(全体像)
まずは流れを一目でつかみましょう。
| 項目 | 会計(財務諸表) | 税法上の扱い | 差異の種類 |
|---|---|---|---|
| 税務上の調整 | 会計処理の結果を出発点にする | 損金不算入や益金不算入、税法上の償却などで調整する | 恒久差・一時差に分類 |
| 課税所得 | 調整後の金額 | これに税率を掛けて法人税等の概算を求める | 税額計算の出発点 |
損金・益金とは(ポイント整理)
用語の確認と試験で押さえるべき点を箇条書きで整理します。
- 損金:税法上、損金(費用)として認められるもの。損金算入されれば課税所得が減る。
- 益金:税法上、益金(収益)として認められるもの。益金算入されれば課税所得が増える。
- 損金不算入:会計上は費用でも、税務上は損金と認められず課税所得に戻される(加算)。
- 益金不算入:会計上は収益でも、税務上は益金としない(減算)。
- 差異の種類:恒久差(将来戻らない)と一時差(将来戻る。繰延税金の対象)を区別することが大切。
主要な具体例(試験頻出項目を表で整理)
以下はよく出題される具体例を、会計処理と税法上の扱い、差異の種類、試験での注意点でまとめた表です。
| 会計処理 | 税法上の扱い | 差異の種類 | 試験での注意点 |
|---|---|---|---|
| 減価償却(会計:定率法・定額法など) | 税法は別の償却方法や税法耐用年数を適用。別途税務上の償却費を計算する。 | 一時差(会計と税法の償却年数や方法の違いによる) | 耐用年数や償却方法の違いが試験で問われやすい。 |
| 交際費(会計上の費用) | 原則として損金不算入。ただし少額のものや中小企業特例などで損金算入可能な場合がある。 | 恒久差(損金不算入部分) | 金額基準や中小企業判定の要件を押さえる。 |
| 寄付金(会計上の費用) | 一般寄付金は損金不算入が多い。税法上一定限度で損金算入可(公益法人等は扱いが異なる)。 | 恒久差/一部は限度内で損金算入(要確認) | 寄付先の種別と限度額の計算がポイント。 |
| 引当金(会計:貸倒引当金、賞与引当金等) | 税法では原則として損金算入が制限される。貸倒引当金は一定の割合で損金算入可などの特例あり。 | 恒久差/一時差(将来の戻入れで調整される場合は一時差) | 各引当金ごとの税法上の認容範囲を覚える。試験では「どの引当金が損金算入可能か」がよく問われる。 |
計算フローの実例(簡単な数値例で理解する)
会計上の利益から課税所得に至るまでの計算の流れを、簡単な数値で示します。
| 段階 | 金額の動き(例) |
|---|---|
| 会計上の当期純利益 | 1,000,000円 |
| 加算(損金不算入): 交際費の税務上不算入分 | +50,000円 |
| 減算(益金不算入): 受取利息の益金不算入分 | -10,000円 |
| 課税所得(概算) | 1,040,000円 |
仕訳と決算書の読み替え例
以下は試験で問われやすい仕訳例を、決算書上の見え方と税務上の調整につなげた表です。決算日時点で何が未提供・未経過かがわかるようにしています。
| 仕訳(会計) | P/L / B/Sへの反映 | 税務上の調整(決算時の扱い) |
|---|---|---|
| 減価償却費 100,000 / 減価償却累計額 100,000 | P/Lで費用計上(減価償却費100,000)。B/Sで簿価が減る。 | 税法上の償却額が80,000の場合、会計費用との差額20,000を加算(損金不算入的扱い=一時差)。 |
| 交際費 120,000 / 現金 120,000(年度末に一部が未払・未提供でない場合) | P/Lで交際費120,000を費用計上 | 税法で100,000が損金算入可、20,000は損金不算入→加算する(恒久差)。 |
| 賞与引当金繰入 300,000 / 賞与引当金 300,000(決算日時点で未払の賞与見込) | P/Lで費用300,000、B/Sに負債計上 | 税法上、賞与引当金は一定の要件が満たされれば損金算入可。要件未達なら損金不算入となる点に注意。 |
試験で暗記すべきチェックリスト
- 減価償却:会計償却と税法償却の違い(耐用年数・方法)を整理する。
- 交際費:損金不算入の原則と中小企業特例の条件を確認する。
- 引当金:各引当金ごとの税務上の認容範囲(貸倒、賞与、退職給付など)を区別する。
- 差異の種類:恒久差と一時差を見分け、繰延税金の対象・非対象を判断する。
練習問題(自己採点用)
- 短答式:会計上は費用として処理した寄付金が、税法上で損金算入されない場合、この差は恒久差か一時差か。理由も簡潔に答えよ。
- 仕訳問題:決算日時点で、期末に見込まれる未払賞与があるため賞与引当金を300,000円計上した。会計仕訳を示し、税務上の取扱いとしてどのような調整が生じ得るか簡潔に述べよ。
解答例:恒久差。税法上の損金算入が認められないため、将来にわたって課税所得の減少に繋がらないから。
解答例:仕訳:賞与引当金繰入 300,000 / 賞与引当金 300,000。税務上は、賞与引当金が税法の要件を満たせば損金算入されるが、要件を満たさない場合は損金不算入となり、課税所得へ加算される可能性がある。
5分で復習できる要点表
短時間で復習したいときの要点を表にまとめました。毎日の反復に使ってください。
| テーマ | 覚えるべきポイント(1行) |
|---|---|
| 減価償却 | 会計と税法で耐用年数・方法が違えば一時差が生じる。 |
| 交際費 | 原則損金不算入。中小企業等の特例を確認。 |
| 引当金 | 種類ごとに税務上の認容範囲を覚える(貸倒・賞与等)。 |
| 差異の判定 | 恒久差=永久的に課税所得に影響。一時差=将来戻る可能性がある。 |
まとめと次回予告
今回は、会計上の利益と税法上の課税所得のズレ(損金・益金)を、具体例と計算フローで整理しました。試験では「どこを加算・減算するか」を論理的に判断できるかが重要です。次回は法人税の申告書の構造と、課税所得から実際の法人税額を求める計算フロー(税率適用・中間申告の概略)をやさしく説明します。
学習のコツ:毎日5分で要点表を眺め、具体例の仕訳を実際に書いてみることが継続の近道です。シリーズ「税理士合格ロードマップ」の次回もお楽しみに。
