日別アーカイブ: 2026年4月17日

第37回 法人税申告書の読み方:様式別の役割と決算書からのつなぎ方

決算書は作れたけれど、法人税申告書にどう写せばよいか分からず戸惑っていませんか。初めは「どの数字を写すのか」「どこを税務上調整するのか」が混乱しがちです。本記事では、主要な申告様式ごとに決算書(P/L・B/S)とのつなぎ方を表で整理し、実務で頻出の税務調整を仕訳と計算表で示します。短時間で繰り返し練習できるチェックリストとミニ問題も用意しました。

学習ゴール(読了時にできること)

  • ① 法人税申告書の主要様式の役割を説明できる
  • ② 決算書の数値をどの様式に写すか表で示せる
  • ③ 基本的な税務調整例を仕訳とともに理解できる

申告書全体の俯瞰(まずは全体像を掴む)

様式名 主な目的 決算書の入力元 注意点
別表一(別表一(法人税)) 課税所得の計算(申告書全体の合計表) 損益計算書(当期純利益/当期純損失)と別表四・別表五の結果 税務上の加減算を反映して最終課税所得を算出する
別表四(損益の部) 所得金額の明細(益金・損金の調整) 損益計算書の各費用・収益項目 会計と税法で扱いが異なる項目を個別に調整する
別表五(一)(所得の金額計算) 益金不算入・損金不算入、寄附金等の調整 損益計算書および注記(寄附金、交際費など) 各種控除・損金算入上限の把握が必要
別表六(税額の計算) 法人税の税額計算(税率適用、軽減税率等) 別表一の課税所得 欠損金の繰越控除や税額控除の反映に注意

主要様式ごとの対応表(決算書→申告様式)

以下の表で、「どこを写すか」「どの様式に入るか」を確かめてください。

項目 決算書の場所(P/L/B/S等) 申告書の様式 実務上のポイント
当期純利益(当期純損失) 損益計算書(最終行) 別表一(課税所得の起点) 会計上の利益から税務調整を行い課税所得を導く
売上高(収益) 損益計算書(売上) 別表四(益金) 売上戻し、売上割戻し等の税務上の扱いもチェック
減価償却費 損益計算書(費用)・固定資産台帳 別表四(損金)/別表十六(減価償却の明細) 税法償却率と会計償却の差を調整する
貸倒引当金・貸倒損失 損益計算書(営業外費用)・注記 別表四(損金) 引当金は税務上の損金算入要件を確認
交際費・寄附金 損益計算書(販売費及び一般管理費) 別表五(一)(寄附金、交際費等の調整) 交際費の損金算入限度や寄附金制度を確認
繰延資産の償却 損益計算書(費用)・注記 別表四(損金) 税法上の償却方法と会計処理の差に注意

決算書→申告書 写し方のステップ(簡易フロー)

ステップ 決算書の場所 申告書の様式 例(数値で示す)
1. 起点を確認 損益計算書の当期純利益 500,000円 別表一(当期純利益を起点) 当期純利益 500,000円を別表一へ転記
2. 主要加減算を項目別に分ける 減価償却費 120,000円、寄附金 30,000円 別表四・別表五(一)に個別記載 減価償却は税法償却との差を調整、寄附金は損金不算入分を確認
3. 合算して課税所得を算出 別表四、別表五の結果合計 別表一(最終行:課税所得) 500,000+調整(△)で課税所得を決定

よくある税務調整(会計と税の差)と仕訳例

ここでは代表的な調整を表で整理し、決算日時点で「未払・未経過」であることが分かる仕訳例を付けます。

調整項目 会計処理 税務上の扱い 決算日時点の仕訳例(税務調整を示す)
役員賞与(未確定だが支払見込) 発生主義で費用計上(当期) 税務上は原則損金不算入(一定の要件で損金算入可) (決算仕訳)
(借)未払役員賞与 300,000
(貸)普通預金等 300,000(支払時)
税務調整:別表四で損金不算入を計上
減価償却の差(会計償却 > 税法償却) 会計償却費 120,000 税法償却 100,000 ⇒ 差額20,000は別表四で加算(益金算入) (決算仕訳)
(借)減価償却費 120,000
(貸)減価償却累計額 120,000
税務調整:別表四で20,000を加算
前払費用(未経過分) 前払費用として資産計上 税務上も原則資産だが、取り扱い要件を確認 (決算仕訳)
(借)前払費用 50,000
(貸)現金預金 50,000
決算で未経過分は資産として扱うため別表上の損金調整なし(注記)
貸倒引当金(法定繰入限度を超過) 会計上は引当金計上 税務上は法定限度があり、超過部分は損金不算入となる (決算仕訳)
(借)貸倒損失 200,000
(貸)貸倒引当金 200,000
税務調整:法定限度超過分を別表四で加算

調整の計算表(減価償却の差の例)

内訳 会計額 税法額 差額(会計−税)
減価償却費 120,000 100,000 20,000(別表四で加算)

練習問題(ミニ問題3問)

小規模法人の簡易決算データを用意しました。まずは「どこを写すか」を考えてください。解答は下にあります。

問題 決算データ(抜粋)
問1 当期純利益 400,000円、減価償却費(会計)80,000円、税法償却60,000円 別表一・別表四にどのように記載するか
問2 交際費 120,000円(法人の交際費規模が少額控除の対象) 別表五(一)ではどう扱うか
問3 前受収益 50,000円(決算日時点で未履行) 申告書上、どの様式にどのように反映するか

練習問題の解答(簡潔に)

問題 要点(解答)
問1 当期純利益 400,000円を別表一へ。減価償却差額(80,000−60,000=20,000)は別表四で加算し、課税所得を調整する。
問2 交際費は別表五(一)で損金算入限度を確認。少額控除の適用があれば限度内は損金算入、超過分は損金不算入として別表四で加算。
問3 前受収益は決算日時点で未履行の収益なので負債(前受金)としてB/Sに計上。申告書では収益認識の時点に合わせて別表四で扱いを確認する(原則、実現主義に基づく扱いを反映)。

1日20分で続けられるチェックリスト(コピーして使える)

  • 1日目:損益計算書の当期純利益を別表一に転記する練習(5件)
  • 2日目:減価償却の会計額と税法額の差を計算し、別表四へ反映する(3件)
  • 3日目:交際費・寄附金の取扱いを別表五(一)で整理する(判定練習5件)
  • 4日目:貸倒引当金の税務上限と調整を書く練習(確認と仕訳)
  • 5日目:前払費用・前受収益の期ずれ処理をB/S・別表で確認
  • 6日目:別表一の最終行(課税所得)までの流れを通しで練習
  • 7日目:総復習(過去6日分を通しで1回)

学習スケジュール案(1週間で申告書の読み方を体験)

内容 所要時間目安
1日目 申告書全体の俯瞰と別表の役割確認 20分
2日目 別表四・別表五(一)の個別項目練習(写し方) 20分
3日目 減価償却、貸倒引当金の調整練習 20分
4日目 交際費・寄附金の判定練習 20分
5日目 前払・前受の期ずれ処理を確認 20分
6日目 別表一で課税所得を確定する通し練習 30分
7日目 ミニ問題で理解度チェック 30分

関連記事(学習の前後に)

本記事は第36回(決算書からはじめる法人税入門)を前提としています。決算後の税務調整や繰延税金については、以下の記事も参考にしてください。

まとめ

申告書の読み方は、最初に全体像を掴み、主要様式ごとに「どの数値を写すか」「どこで税務調整が必要か」を繰り返し練習することで身につきます。本記事の表やチェックリストを使い、短時間の反復学習を続けてください。慣れてくると、決算書のどの行が申告書のどこに対応するかが自然に頭に入るようになります。

次回は、具体的な申告書(様式)の記入例を一歩進めて示します。まずは本記事の表を1セット、実際の決算データで写す練習をしてみてください。