学習を進める中で「年末調整や源泉税の仕訳で迷う」「決算日時点での未払処理がわかりにくい」と感じる方は多いはずです。本記事では、税理士試験を目指す初学者の立場に寄り添い、給与と賞与の計算・仕訳パターンを表を中心に整理します。実務と試験で共通して出やすいポイントに注意を向け、短時間で継続できる練習法も示します。
学習目標(本記事で得ること)
- 源泉所得税の流れ(給与→計算→納付)を理解する
- 年末調整の目的と主要項目(扶養控除・保険料控除・配偶者控除等)を整理する
- 給与・賞与の典型的な仕訳パターンと源泉徴収分の処理を表で示せる
- 試験で狙われやすい論点を押さえる
用語表(定義と仕訳目安)
まず用語を整理します。試験では用語の定義と仕訳上の取り扱いが問われることが多いので、ここで押さえましょう。
| 用語 | 定義 | 仕訳目安 | 試験での注意点 |
|---|---|---|---|
| 給与(賃金) | 通常の毎月支払われる労働対価 | 支払時に「給料手当」などを借方、現金・預金を貸方。未払は「未払給与」 | 決算日時点で未払の有無を明確にすること(未払計上の有無が頻出) |
| 賞与 | 特別給付。年に数回支給されることが多い | 支払時に「賞与」等を借方、現金・預金を貸方。未払は「未払賞与」 | 賞与の源泉税計算は給与と別計算になる点に注意(端数処理が頻出) |
| 源泉所得税(源泉徴収) | 給与等支払時に給与から天引きし、会社が徴収して納付する所得税 | 給与支払時に「預り金(源泉所得税)」を貸方計上。納付時に預り金を減少 | 毎月納付期限(原則、翌月10日)と法定調書の作成時期に注意 |
| 社会保険料 | 厚生年金・健康保険等。従業員負担分を給与から控除 | 給与支払時に「預り金(社会保険料)」を貸方計上。未払は「未払金」等 | 簿記上は費用控除、税法上は損金・所得控除の扱いが異なる点を理解する |
| 年末調整 | 年間の給与所得について、源泉徴収税額と確定税額の差額を精算する手続 | 差額がある場合は、還付は「租税公課」ではなく従業員に対して調整(会社は精算行為) | 扶養控除等申告書などの提出状況で適用可否が変わる点に注意 |
給与・賞与の計算と仕訳テンプレ(典型例の比較)
代表的なケースを比較します。各行は決算日時点で「何が未提供・未経過か」がわかるように記載しています。
| ケース | 支給総額 | 支給時の源泉税額(例) | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|---|---|
| (A)月給支給・当月支払済(決算日より前に支払) | 300,000円 | 源泉税 12,000円(仮定) | 給料手当 300,000円 | 普通預金 288,000円 預り金(源泉所得税) 12,000円 |
| (B)12月分の給与が決算日後支払(決算日時点で未払) | 300,000円(未払) | 源泉税 12,000円(未払として計上) | 給料手当 300,000円 | 未払給与 300,000円 |
| (C)賞与支給・支払済(年内に支給し源泉徴収済) | 500,000円 | 源泉税 50,000円(仮定) | 賞与 500,000円 | 普通預金 450,000円 預り金(源泉所得税) 50,000円 |
| (D)賞与支給決定だが決算後支払(決算日時点で未払賞与) | 500,000円(未払) | 源泉税 50,000円(未払扱い) | 賞与 500,000円 | 未払賞与 500,000円 |
注:源泉税額はモデル例です。実務では源泉徴収税額表等で計算してください。決算日時点で支払済か未払かにより借方/貸方勘定は変わります。
年末調整の手順を段階表で整理(チェックリスト付き)
年末調整は「収集→確認→計算→精算→報告」の流れです。下表で担当と確認ポイントを整理します。
| 手順 | 作業者 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 1. 書類収集(扶養控除等申告書・各種控除証明) | 従業員・総務 | 提出期限・記入漏れ・扶養人数の確認 |
| 2. 控除額の確認(社会保険料・生命保険料等) | 総務・給与担当 | 証明書の日付・金額の整合性(決算日時点で未払保険料があれば別処理) |
| 3. 年間所得と源泉徴収額の照合 | 給与担当 | 源泉徴収済額と年税額の差額確認(過不足の原因チェック) |
| 4. 差額の精算(還付または追加徴収) | 給与担当・人事 | 還付時の振込先確認、追徴時の給与天引き可能性の確認 |
| 5. 法定調書等の作成と提出 | 総務・税理士(必要時) | 提出期限、記載金額の整合性 |
源泉税の納付・還付と仕訳
源泉徴収した税金は会社が一時的に預かる預り金です。納付や還付時の基本仕訳は下表のとおりです。
| ケース | 仕訳例(借方) | 仕訳例(貸方) |
|---|---|---|
| 源泉所得税の納付(納付日に) | 預り金(源泉所得税) | 普通預金(納付) |
| 年末調整で源泉徴収超過→従業員へ還付 | 預り金(源泉所得税) | 普通預金(従業員振込) |
| 年末調整で源泉不足→従業員から追徴(給与天引) | 普通預金(または未収) | 預り金(源泉所得税) |
実務と試験の接点(コラム)
簿記上は給与や社会保険料を費用・預り金として処理しますが、税法上は控除の適用可否や所得区分の取り扱いが異なる場合があります。代表例:
- 社会保険料:簿記では会社負担分は福利厚生費等、従業員負担分は預り金で処理。税法では従業員負担分は所得控除の対象となる。
- 賞与の源泉税:税法上、賞与は原則別枠で源泉徴収。簿記上は賞与支払時に預り金を計上し、納付時に減少。
- 決算時の未払処理:簿記上の未払計上が税額計算に影響を与える場合があるため、双方の照合が重要。
第36〜38回の消費税・法人税の基礎理解があると、費用の損金算入や留意点がつながって理解しやすくなります。
練習問題(短時間で解ける形式)
以下は決算日時点で未払や未経過が明確になるように条件を示しています。解答はすぐ下に載せていますので、まずは自力で解いてから確認してください。
問題1(仕訳)
ある会社の12月分の給与(従業員B)は、給与総額300,000円、社会保険料従業員負担 45,000円、源泉所得税 12,000円で、支払日は翌年1月10日(決算日12月31日時点で未払)。決算日に必要な仕訳を示しなさい。
問題2(年末調整の差額精算)
従業員Cは年間の源泉徴収累計が200,000円、年末調整で確定税額が180,000円と判明した。差額の処理と仕訳を示しなさい。
模範解答
問題1:
- 決算日時点での未払計上(未払給与として費用計上)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料手当 | 300,000円 | 未払給与 | 300,000円 |
※支払時(翌年1月10日)に実際の振込と預り金(源泉税)処理を行う。源泉税は未払として別途管理するか、支払時にまとめて処理する運用が多い。
問題2:
- 源泉徴収累計が多かった(過大徴収)ため、従業員に還付する。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金(源泉所得税) | 20,000円 | 普通預金(従業員振込) | 20,000円 |
学習の続け方(1日15分プラン:4週間テンプレ)
続けやすさを重視した週次テンプレです。1日15分を目安に、仕訳1問+計算1問を解く習慣をつくりましょう。
| 週 | 日別の目安 | 内容(15分) |
|---|---|---|
| 第1週 | 月〜金(5日) | 用語復習(1日)・仕訳演習(3日)・源泉税計算練習(1日) |
| 第2週 | 月〜金(5日) | 年末調整の流れチェック(1日)・控除項目別問題(4日) |
| 第3週 | 月〜金(5日) | 賞与の源泉計算(2日)・未払/未収の決算処理演習(3日) |
| 第4週 | 月〜金(5日) | 過去問形式の総合演習(仕訳+年末調整1題)・自己採点と復習 |
取り扱いメモ(間違えやすいポイント)
- 賞与の源泉税は給与と別に計算すること(端数処理の扱いに注意)。
- 扶養控除等申告書が提出されていない場合、甲欄か乙欄かで源泉税額が変わる点を忘れない。
- 決算日時点で支払済か未払かを必ず確認する。未払は貸方を未払勘定にする。
出題対策と重要ポイント(短く)
- 扶養控除の適用可否と扶養親族の年齢判定は頻出。証明書類の整合性が問われる。
- 賞与の源泉税計算での端数処理(切捨て・切上げ等)は過去問で確認する。
- 年末調整での修正処理(源泉税過不足の扱い)は仕訳と実務対応の両面で理解する。
まとめ
年末調整と源泉所得税は、簿記(仕訳)と税法(控除ルール)が接する重要分野です。ポイントは「何を預かっているか(預り金)」「決算日時点で支払済か未払か」「年末調整での差額精算」の三つです。本記事の表を参照し、まずは簡単な仕訳と計算問題を毎日続けることをおすすめします。短時間の積み上げが試験合格と実務の安定につながります。
シリーズ「税理士合格ロードマップ」では、今回の内容を実務と試験の両面からつなげて解説しています。次回は給与関連の応用(退職手当・外国人従業員の取扱い)を予定しています。
