日別アーカイブ: 2026年4月30日

第50回 株主資本等変動計算書の作り方入門:資本の部の変動を表で追う

学習を進める中で、仕訳はできても「どうやって株主資本等変動計算書に落とし込むか」がわからず戸惑うことはありませんか。ここでは、決算整理の仕訳から変動表への転記までを段階的に示し、試験で押さえるポイントと続けやすい練習メニューを紹介します。表を中心に進めるので、実務感・試験対応力を同時に身につけられます。

目的と全体像(要点)

株主資本等変動計算書は、期首から期末までの資本の部の増減を一目で示す書類です。主要構成要素を整理します。

項目 説明(要点)
資本金 払込により増加する基本的な資金。株式発行で増加。
資本剰余金 株式発行差額など、資本取引から生じる剰余金。
利益剰余金 当期純利益の積み上げ、配当や剰余金の処分で増減。
自己株式 会社が取得した自己株式。貸借対照表上は控除項目。
その他(新株予約権等) 会社法や会計基準上のその他の項目を含むことがある。

作り方の流れ(要点)

仕訳 → 集計(科目ごとの増減) → 変動表への転記、の順に進めます。以下に典型的なイベントごとに仕訳例と変動表への反映を示します。

1. 株式発行(現金払込)

要点:払込があると資本金・資本剰余金が増加します。払込金額の内訳(額面と払込差額)に注意。

仕訳例(発行時) 借方 貸方
(例)額面100、払込200(超過100) 現金 200 資本金 100
資本剰余金(払込超過額)100
変動表への反映 資本金 資本剰余金 利益剰余金 自己株式
増減(この期の効果) +100 +100 0 0

練習問題:期首 資本金1,000、資本剰余金200。期中に額面50、払込80の株式を発行した場合の変動を記載してください(仕訳と変動表)。

2. 当期純利益の計上

要点:当期純利益は利益剰余金の増加要因。ただし決算整理で損益振替が必要。

仕訳例(決算) 借方 貸方
(例)当期純利益 300 損益勘定 300 繰越利益剰余金(または当期未処分利益)300
変動表への反映 資本金 資本剰余金 利益剰余金 自己株式
増減(この期の効果) 0 0 +300 0

練習問題:期首 利益剰余金500。期中の当期純利益が150、配当が未決定のまま決算を迎えた場合、期末の利益剰余金はいくらになるか(仕訳と変動表)?

3. 配当(剰余金の処分)

要点:配当は利益剰余金の減少。決算日時点で「株主への支払義務が確定」しているかどうか(=剰余金の処分決議)で処理が分かれます。未払配当や未決議の場合の表示に注意。

仕訳例(配当決議あり・未払) 借方 貸方
(例)配当金 120(決議済み、未払) 繰越利益剰余金 120 未払配当金 120
変動表への反映 資本金 資本剰余金 利益剰余金 自己株式
増減(この期の効果) 0 0 -120 0

ポイント練習:決算日時点で配当が「株主総会で決議されていない」場合、利益剰余金はどう表示されるか。決議済みだが未払のケースと比較してください。

4. 自己株式の取得・処分

要点:取得は自己株式(控除)を増加させ、処分は取得原価と処分差益の扱いに注意。自己株式は資本の部の控除項目です。

仕訳例(取得) 借方 貸方
(例)自己株式を現金で取得 200 自己株式 200 現金 200
変動表への反映 資本金 資本剰余金 利益剰余金 自己株式
増減(この期の効果) 0 0 0 +200(控除)

練習問題:期首自己株式が0。期中に自己株式取得150、処分50(取得原価より高く処分し資本剰余金に振替)した場合の変動表を作成してください。

WordPress用 テンプレート(コピーして使える空欄形式)

要点:以下のテンプレートをコピーして、数値を埋めて実習してください。決算日時点で未払・未決議の状態がある場合は備考欄に明記してください。

区分 資本金 資本剰余金 利益剰余金 自己株式(控除) 備考
期首残高
増減(内訳を複数行で記載)
期末残高

完成例(決算日時点の状態が分かる記載)

要点:配当が決議済みで未払(未払配当金あり)、当期純利益が計上されている想定です。

区分 資本金 資本剰余金 利益剰余金 自己株式(控除) 備考
期首残高 1,000 300 800 0
増減(株式発行・当期利益・配当) +100(株式発行) +100(払込超過) +300(当期純利益)
-120(配当(決議済み・未払))
0 配当120は未払配当金として負債計上済み
期末残高 1,100 400 980 0 未払配当金120が負債に計上

短時間で続けられる学習メニュー(要点)

要点:10分単位で短時間に反復し、実務感を養います。

  • 1日目(10分): 株式発行と仕訳→変動表の反映(テンプレートに記入)
  • 2日目(10分): 当期利益と配当の処理(決議あり/なしの違い)を仕訳で確認
  • 3日目(10分): 自己株式の取得・処分と表へのまとめ(完成例と比較)

実務風ミニ演習(所要時間目安:30分)

  • 仕訳4問(株式発行、当期利益計上、配当決議(未払)、自己株式取得)
  • 変動表作成1問(上記4問をまとめてテンプレートに転記)

セルフチェックリスト:

  • 仕訳から科目ごとの増減が出ているか
  • 配当の決議状況が決算日時点で正しく表示されているか
  • 自己株式は控除表示になっているか
  • 数値の合計関係が一致しているか(期首+増減=期末)

試験で押さえるポイントと頻出ミス(要点)

要点:処理のタイミングと振替先を正確に理解することが合格ラインです。

ポイント 注意点(頻出ミス)
配当の処理タイミング 総会決議前の配当を誤って期末で減算する(決議要否の区別を忘れる)
利益剰余金の振替 特別積立や準備金への振替を記載漏れにする(振替先の表示を確認)
自己株式の表示 資本の部で増加扱いにする(実際は控除項目)

会計と税務のつなぎ(要点)

要点:会計上の処理がそのまま税務上認められるとは限りません。繰延税金や課税上の損金算入時期で差異が生じます。

  • 例:引当金や減価償却の処理時期差異は、期末の利益剰余金に影響を与える(参照:法人税・繰延税金の記事)。
  • 参照リンク:資本の部・配当の記事(前回)/法人税・繰延税金の記事(関連学習)。

次の学習への導線(要点)

要点:まずは「表が自力で作れる」ことを目標に3回の演習を推奨します。次は持分法・連結入門を学ぶと理解が広がります。

  • 小さな到達目標:表が自力で作れるまで「仕訳→表への転記」を3回繰り返す
  • おすすめ次回:持分法の基礎、連結決算の基本フロー(少しずつステップアップ)

まとめ

株主資本等変動計算書は、仕訳の結果を科目ごとに整理して表示する作業です。まずは典型的なイベント(株式発行、当期利益、配当、自己株式)について仕訳を正しく行い、それをテンプレートに転記する反復練習を続けてください。配当の決議状況や自己株式の表示など、試験で間違いやすいポイントをセルフチェックリストで確認しながら進めると、学習が確実に続けられます。次回は持分法・連結の基礎に進みましょう。