給与処理は「面倒でつまずきやすい」分野です。はじめは勤怠や控除項目、源泉の計算ルールが混ざって頭が重くなることが多いですが、月次ルーチンに落とし込めば必ず整理できます。この記事では、試算表につなげる仕訳とチェック表を中心に、年末調整・法定調書への流れまで表で整理します。短時間で続けられる練習メニューも付けました。
学習目標と所要時間
| 学習目標 |
所要時間(目安) |
| 給与計算の月次フローを理解し、仕訳に結びつける |
30〜60分 |
1. 給与計算のフロー(要点を表で確認)
| ステップ |
入力/確認事項 |
出力(会計上の結果) |
| 勤怠集計 |
出勤日数、欠勤、有給、時間外など |
総支給額の基礎(支給額算出) |
| 支給計算 |
基本給、諸手当、賞与の算出 |
給与手当(費用)発生 |
| 控除計算 |
社会保険(従業員負担)、源泉所得税、その他控除 |
預り金(負債)計上、差引支給額の確定 |
| 支払・振込 |
振込日、振込手数料、未払の有無 |
預金減少または未払給与解消 |
2. 支給・控除ごとの仕訳対応表(基本)
| 項目 |
借方(勘定科目) |
貸方(勘定科目) |
試算表上の項目 |
| 給与手当(総支給) |
給与手当(費用) |
未払給与/預り金(源泉・社保) |
損益(人件費)/貸借(負債) |
| 従業員負担の社会保険料 |
(給与手当に含めて一括計上) |
従業員社会保険預り金(負債) |
負債(預り金) |
| 源泉所得税(控除) |
(給与手当に含めて) |
源泉所得税預り金(負債) |
負債(預り金) |
| 会社負担の社会保険(法定福利費) |
法定福利費(費用) |
未払法定福利費/預り金 |
損益(法定福利)/負債 |
| 支払(振込時) |
未払給与/預り金(各) |
当座預金・普通預金 |
貸借(資産減少) |
仕訳例(決算日時点で未払がある場合の例):
| 仕訳 |
借方 |
貸方 |
| 月末時点で支払が翌月の給与(数値例) |
給与手当 300,000円 |
未払給与 240,000円 従業員社会保険預り金 40,000円 源泉所得税預り金 20,000円 |
3. 源泉所得税の計算(簡易例)
詳細な税額表は複雑ですが、学習では「課税対象の算出→税額表の適用→預り金計上」の流れを押さえます。
| 項目 |
計算式・例 |
| 課税対象 |
総支給 300,000円 - 従業員社会保険 40,000円 = 260,000円 |
| 源泉税額(簡易例) |
課税対象 260,000円 → 税額表を適用して仮に 20,000円 とする(甲区の例) |
| 会計処理 |
借方:給与手当 300,000円 / 貸方:未払給与 240,000円、源泉所得税預り金 20,000円、従業員社会保険預り金 40,000円 |
注:実務では「扶養控除等申告書の甲・乙区分」「扶養人数」「社会保険等の金額」によって税額表を正確に適用します。試験対策としては、税額表の使い方と甲乙の違い(甲は年末調整で精算される、乙は月額徴収で年末調整対象外になりがちな扱い)を押さえておきます。
4. 年末調整の手順(段階表)
| 段階 |
主な作業 |
会計処理の注意点 |
| 1 |
年間の支給額・控除額の集計 |
月次の預り金(源泉・社保)と突合する |
| 2 |
扶養控除等申告書、保険料控除証明書の反映 |
控除の反映で差額が生じたら還付または追加徴収の仕訳を作成 |
| 3 |
年末調整での精算・還付または追徴 |
還付は未払給与の減額、追徴は未収入金または給与からの天引き |
| 4 |
法定調書(合計表)への反映と提出 |
源泉徴収簿との突合、記載ミスに注意 |
5. 法定調書・源泉徴収簿への転記ルール(簡易表)
| 書類名 |
転記元 |
提出期限 |
会計への影響 |
| 源泉徴収簿 |
各従業員の月次支給・控除・源泉額 |
毎月の記録(年次集計は翌年1月) |
源泉預り金の集計・年末調整の根拠 |
| 給与支払報告書(法定調書) |
源泉徴収簿の年次合計 |
1月末(各種法定調書と合わせて) |
税務申告・地方税の基礎資料 |
6. 月次給与ワークシート(そのまま貼れるテンプレ)
以下の表はそのままコピーして使える形です。決算日時点で支払が翌月の場合は「未払」で仕訳してください。
| 従業員名 |
勤怠日数 |
総支給額 |
従業員社保控除 |
源泉所得税 |
差引支給額 |
仕訳(借方) |
仕訳(貸方) |
| 山田太郎 |
22日 |
300,000円 |
40,000円 |
20,000円 |
240,000円 |
給与手当 300,000円 |
未払給与 240,000円/従業員社保預り金 40,000円/源泉所得税預り金 20,000円 |
7. 源泉徴収簿テンプレ(各従業員の月次記録)
| 氏名 |
支給年月日 |
支給額 |
社保控除 |
源泉徴収額 |
差引支給 |
備考 |
| 山田太郎 |
2026-06-30(例) |
300,000円 |
40,000円 |
20,000円 |
240,000円 |
月末決済で未払 |
8. 月次チェックリスト(最低ルーチン)
- 振込準備:差引支給額の振込手続き(翌月支払の場合は未払処理確認)
- 社会保険:被保険者算定と納付手続きの確認(企業負担分の計上)
- 源泉納付:源泉税の納付期限を確認(納付が未了なら未納金の計上を忘れない)
9. 続けられる練習メニュー(短時間で3回分)
- 週1回×3週:模擬給与計算(各回異なる条件を用意)
- 第1回:基本給300,000円、社保従業員負担40,000円、扶養なし(甲)
- 第2回:残業あり、時間外代を含めて総支給350,000円、扶養1人
- 第3回:賞与月の処理(賞与控除と法定調書への入力を練習)
- 各回のゴール:勤怠→支給→控除→仕訳作成→源泉簿への転記までを30〜60分で完了する
10. 試験寄りチェックポイント(短く)
| 論点 |
押さえるポイント |
| 源泉所得税の納付時期 |
給与支払の翌月10日(原則)や納期の特例の扱いを状況により確認 |
| 給与所得控除の考え方(基礎) |
給与所得の計算において経費性の観点で扱われる点を理解する |
| 年末調整での所得控除反映 |
保険料控除等の証明書を基に税額を精算(還付または追徴) |
| 法定調書の意義 |
税務署・市区町村への報告資料であり、源泉簿との整合が重要 |
まとめ(短く)
給与処理は「勤怠の正確な集計→支給と控除の明確化→預り金の管理→年末調整・法定調書へつなげる」一連の流れをルーチン化することが最短の近道です。まずは今回の表を使って月次ワークシートを3回繰り返し、月次チェックリストに従って運用してみてください。ミスを見つけたら源泉簿と試算表の突合を優先して直すと学習効果が高まります。
今月やること3つ
- 月次ワークシートで今月分の給与を仕訳まで完了する(未払がある場合は未払処理を忘れずに)
- 源泉徴収簿に月次分を転記して試算表と突合する
- 週1回の模擬給与計算を3回分行い、処理時間の短縮を図る
この記事の表はそのままコピーして使えます。テンプレートをCSV化しておくと、繰り返しの練習や実務移行が楽になります。次回は「月次試算表から決算・別表へつなぐ実務ポイント」を予定しています。