日別アーカイブ: 2026年7月2日

第113回 法人税の別表ゼロ入門:主要別表の構成と試算表からの転記ルールを表でやさしく整理(続けられる実践メニュー付き)

決算から申告書作成の段階で「試算表の数字をどの別表に入れればよいか分からない」「どこで税務調整が必要か見えにくい」とつまずく人は多いです。本記事は、試験で問われる基本パターンに絞り、主要な別表の役割と試算表からの転記ルールを表で整理します。初学者がまず押さえるべき「最初の一歩」を目標に、短時間でできる演習メニューも付けました。読み進める順序は(1)別表全体の俯瞰、(2)主要別表ごとの転記ルール、(3)注意ポイント、(4)実践メニュー、(5)まとめ、です。

別表全体の俯瞰

まずは主要な別表を一覧で確認します。別表ごとに「何を記載するか」と「試算表で押さえる数字」をざっくり把握しましょう。

別表名 用途 押さえる数字(試算表)
別表一(別表一(確定申告書本体への要約)) 損益計算から課税所得、税額計算までの要約 当期純利益(税務調整前の損益)・法人税額控除等
別表四 益金・損金の内訳や所得金額の確認(補助的な明細) 売上高・売上原価・経費項目の明細
別表五(一) 役員報酬、交際費、寄附金等の損金算入の可否を整理 役員報酬、交際費、寄附金の試算表金額
別表六(損益調整) 会計上の利益と課税所得の差異を調整(永久差・一時差) 減価償却費、引当金、受取配当金等の調整対象額

主要別表ごとの転記ルール(代表例)

以下は頻出の勘定科目と、どの別表のどの欄に転記するかの対応表です。まずはこのパターンを覚え、例外や細部は実務で補いましょう。

試算表科目 → 別表の行(基本パターン)

試算表科目 別表・記載欄(概略) 備考(税務調整の要否)
売上高 別表一(収益の部:売上高欄) 原則そのまま。消費税等除外は注意
売上原価・仕入 別表一(費用の部:売上原価欄)/別表四で内訳 期末棚卸の評価差異は調整対象
減価償却費 別表一(費用)→ 別表六で税務上の償却との比較 税法上の償却限度と会計償却の差は別表六で調整
支払利息 別表一(費用の部) 利子制限税制や関連会社間利息は別表で要確認
受取配当金 別表六(益金不算入等の調整欄) 益金不算入制度(持株比率等)で調整が必要な場合あり
役員報酬 別表五(一)の該当欄/別表一の費用欄 損金算入要件(定時決議・支給時期)で調整が必要な場合あり
引当金(貸倒引当金等) 別表六(損金算入限度の調整欄) 税務上認められる割合や基準が異なるため調整要
寄附金 別表五(一)の寄附金欄 損金算入限度の判定が必要(法人税法上の取り扱い)

注意ポイント(よくあるミス)

  • 決算日時点で未払・未経過項目の扱いを忘れる:未払費用や前受金は別表転記時に「決算日時点の状態」を確認する。
  • 会計処理と税務上処理の混同:減価償却や引当金は税法上の判定基準を必ず確認する。
  • 役員報酬の損金算入のタイミングを誤る:定時決議や支給条件に基づく判定を怠らない。
  • 消費税等の税込/税抜処理を誤る:売上・仕入の金額が税込表示のまま転記されるミス。
  • 別表の役割を混同する:別表一は要約、別表六は調整表という基本を忘れない。

短い実践メニュー(10〜20分で完了)

毎回短時間で繰り返せる演習を用意しました。解答は折りたたみで隠しています。まずは時間を測って取り組んでください。

演習1(所要時間15分):試算表の主要項目を別表一・別表四へ転記

(試算表抜粋:金額は千円)
売上高   10,000
売上原価   6,000
減価償却費   800
役員報酬   1,200
前受金     300(決算日現在)
未払費用    150(決算日現在)

やること:上の試算表抜粋を別表一と別表四にどう転記するかを整理してください(概略で可)。

演習1の模範解答(概略)
試算表科目 別表記載(概略) 備考
売上高 10,000 別表一(収益の部:売上高) 消費税等を除く表示か確認
売上原価 6,000 別表一(費用の部:売上原価)/別表四で内訳 期末棚卸調整があれば別表で調整
減価償却費 800 別表一(費用)→ 別表六で税務償却との差を確認 税務上の償却額と差異がある場合は別表六で調整
役員報酬 1,200 別表五(一)で損金算入要件確認 → 別表一の費用 支給時期・定時決議の有無をチェック(損金算入要否)
前受金 300 貸借対照表項目として別表の注記を確認 決算日時点での未経過収益として扱う
未払費用 150 貸借対照表項目。別表転記時に費用と整合性確認 決算日時点で未払の支払義務である点に注意

演習2(所要時間10分):調整が必要な項目の穴埋め

次の項目のうち、税務上の調整が必要なものに○を付けよ。
1. 売上高(通常の販売)
2. 減価償却費(会計償却>税務償却)
3. 受取配当金(一定の要件を満たす持株によるもの)
4. 交際費(少額の接待)
5. 引当金(税法上の算入限度を超える部分)
演習2の解答と解説

解答:2 ○ 、3 条件による、5 ○ 。

解説:通常の売上高は調整不要。減価償却は会計と税務で差が出ることが多く、別表六で調整。受取配当金は持株比率等の要件で益金不算入となる場合があるため条件確認が必要。交際費の少額部分は損金算入される制度があるが、限度を確認すること。

演習3(所要時間10分):セルフチェックリストで自己確認

  • 決算日時点での未払・未経過項目を洗い出したか
  • 減価償却と税務償却の差を確認したか
  • 役員報酬・交際費・寄附金の損金算入要件を確認したか
チェックの目安と所要時間
項目 確認内容 所要時間(目安)
未払・未経過 試算表の貸借項目と費用・収益の整合性確認 5分
減価償却 会計償却と税務償却の差異把握 10分
損金算入要件 役員報酬等の要件確認(定時決議の有無等) 5〜10分

試験で押さえるべき最低限と実務での注意点の使い分け

  • 試験で覚えるべき最低限:別表ごとの役割(別表一は要約、別表六は調整)、頻出の転記パターン(売上、減価償却、役員報酬、受取配当の扱い)。
  • 実務で注意する点:税務調整の根拠資料(支払明細、契約書、議事録など)の保存、引当金や減損の合理的な根拠の説明、消費税の税込/税抜処理の厳密管理。

今日の10分チェック(テンプレ)

毎日10分でできる簡単な確認テンプレです。習慣化しておくと別表作成が格段に楽になります。

  • 今日の項目:前回学習した勘定科目1つ(例:減価償却)を復習(3分)
  • 実践:短い試算表抜粋を1つ転記してみる(5分)
  • 振り返り:分からなかった点をメモ(2分)

1週間で済ませる復習プラン(3ステップ)

  1. ステップ1(1日目)別表の俯瞰表を暗記する(別表1・4・5・6の役割)
  2. ステップ2(3日目)演習1・2を時間を測って解く(合計30分)
  3. ステップ3(7日目)実務上の注意点を1件資料で確認する(支払明細や議事録の確認、10〜20分)

よくある失敗談(短文)

「試験対策で暗記した通りに転記したが、決算日時点の未払や未経過を見落として別表の金額が合わなかった」――こうした失敗は初心者に多く、決算日時点の状態を常に意識することで防げます。

まとめと次回予告

本記事では、主要別表の役割を一覧にして、試算表の代表的な勘定科目がどの別表に入るかを表で整理しました。初学者はまず「別表の役割」と「頻出転記パターン」を押さえ、短時間の演習を継続することが重要です。次回は「別表六の具体的な調整手順と一時差・永久差の整理」を予定しています。関連回として第94回・第95回・第100回の記事も合わせて復習すると、決算整理から申告への流れがより理解しやすくなります。

関連記事:第94回 決算整理→申告フロー入門、 第95回 決算整理の実務ポイント、 第100回 減価償却の税務基礎(例示)