第164回 引当金ゼロ入門:賞与引当金と退職給付引当金を表でやさしく整理(続けられる学習メニュー付き)

税理士を目指す学習の中で、賞与や退職給付に関する「引当金」はつまずきやすいテーマです。会計上は見積計上する一方で、税務上の取扱いは支払時に扱う……といった違いが混乱のもとになります。本記事では、まず基本の仕組みを短めに整理し、表を中心に仕訳フローと税務上の差異を示します。最後に週次で続けやすいワークを付け、演習問題(解答付き)で定着をめざします。

基本の仕組み(短く)

賞与引当金・退職給付引当金はいずれも会計上は発生主義に基づき決算で見積計上します。一方で税法上は、原則として実際に支払った時点で損金算入が認められる取り扱いが基本です(例外的な制度や企業年金等は別途要件あり)。以下の表で勘定科目の意味を確認しましょう。

① 勘定科目と意味の一覧表

勘定科目 意味(簡潔) 会計上のタイミング
賞与引当金 決算時点で支給が確定または合理的に見積もれる賞与の負債 決算で見積計上(発生主義)
退職給付引当金 退職金等の将来支払い見込額に対する負債(見積額) 決算で見積計上(退職給付会計のルールに従う)
賞与(費用) 賞与として費用計上される金額(会計上の損益計算用) 発生時(通常は決算で見積計上)
退職給付費用 当期の退職給付に係る費用(年金数理上の費用などを含む) 会計上の規定に従い計上

② 発生〜支払までの仕訳フロー(要点を表で)

以下は典型的な事象ごとの仕訳例と、税務上のメモをまとめたフロー表です。決算日時点で「未払・未支給」であることが分かるように記載しています。

事象(期末の状況) 仕訳(借方/貸方) 税務上のメモ
賞与が決算時点で支給確定(支払日:翌年1月) (借)賞与 1,200,000/(貸)賞与引当金 1,200,000 会計は費用計上。税務は原則として引当金は損金不算入で、支払時に損金算入。
翌年の支払時(決算で計上済の賞与を支払) (借)賞与引当金 1,200,000/(貸)現金 1,200,000 会計上は引当金消込。税務上はこのタイミングで損金算入するのが原則。
退職給付の見積が計上される(期末に将来支払見込) (借)退職給付費用 2,500,000/(貸)退職給付引当金 2,500,000 会計は見積計上。税務は一般に支払時の損金算入が原則(制度や掛金の有無で変動)。
退職金を実際に支払った時点 (借)退職給付引当金 2,500,000/(貸)現金 2,500,000 会計では引当金消込。税務上も支払時に損金として扱うのが一般的(ただし細部は要確認)。

③ 会計処理と税務処理の差異比較表

項目 会計 税務 税務処理のポイント
賞与引当金の計上タイミング 決算で見積計上(発生主義) 原則損金不算入、支払時に損金算入 支給基準や支給決定の有無で判断。支給が確定し具体的なら損金算入の要件該当となるとは限らない。
退職給付引当金(見積) 退職給付会計に基づき見積計上(数理計算含む) 多くは支払時に損金算入。ただし掛金の拠出や企業年金制度によって取扱いが異なる 年金制度や基金への拠出等がある場合は税務上の評価が変わるため、制度ごとに確認が必要。
引当金の取り崩し 支払時に引当金を減額し、現金で支払う 支払時に損金算入(原則) 会計上は損益に影響しないが、税務では支払の事実が重要。

演習問題(短めに)

以下の問題は、決算日時点で何が未提供・未経過かが分かるように条件を示します。解答は下にありますので、まず自力で仕訳してみてください。

問題1(賞与)

ある会社(12月決算)は、12月31日時点で賞与支給額合計800,000円が確定しており、実際の支払日は翌年1月20日です。決算での仕訳を示し、支払時の仕訳も書いてください。税務上の扱いを簡潔に述べてください。

問題2(退職給付)

同社は期末において、当期の退職給付費用を見積りで1,500,000円計上しました。退職金は退職発生時に支払われます。期末の仕訳と、退職金を実際に支払ったときの仕訳を示してください。税務上のポイントも一言で。

問題3(部分例:未確定だが見積可能)

決算日時点で一部従業員の賞与支給額が未確定だが、過去データなどから見積で400,000円を計上することにしました。会計上の処理と、税務上の注意点を答えてください。

解答・解説(仕訳+税務メモ)

問題1の解答

決算仕訳:
(借)賞与 800,000/(貸)賞与引当金 800,000

支払時:
(借)賞与引当金 800,000/(貸)現金 800,000

税務メモ:会計上は決算で費用計上するが、税務上は原則として賞与引当金の計上は損金算入されない。実際に支払った年度に損金算入されるのが一般的(ただし支給基準や支給決定の実態に注意)。

問題2の解答

決算仕訳:
(借)退職給付費用 1,500,000/(貸)退職給付引当金 1,500,000

支払時(退職発生時):
(借)退職給付引当金 1,500,000/(貸)現金 1,500,000

税務メモ:退職給付引当金は、会計上は見積計上するが税務上は原則として支払時の損金算入となる。退職給付制度の種類や拠出の有無で取り扱いは変わるため注意。

問題3の解答

会計上:見積で計上するため、(借)賞与 400,000/(貸)賞与引当金 400,000

税務上の注意:見積計上したからといって自動的に損金算入されるわけではない。支給基準や支給決定の実態、金額の合理性を確認し、支払時に損金算入するのが原則である点を押さえる。

週次ワーク(続けられるメニュー)

短時間で継続できる4週間のワークです。毎週5〜15分で取り組めます。解答例は記事末尾の解説を参照してください。

タスク(所要時間) 目標/成果物
Week1 過去の給与・賞与の記事を復習(5分) 賞与引当金の概念を短くまとめる(ノート1行)
Week2 表①と表②をノートに写して仕訳を1問作成(10分) 決算での仕訳が自分で書けること
Week3 演習問題1問を解く(15分) 解答と解説を照合して誤りを確認
Week4 税務上のポイントを1枚のメモに整理(10分) 会計と税務の差異を短く説明できる

運用上の注意と拡張案

実務では就業規則や支給基準、年金制度の有無で処理が変わります。特に退職給付は年金制度や基金拠出の有無で税務上の評価が大きく異なります。将来的には退職給付会計(年金数理)の導入や、計算用のExcelテンプレートを用意すると実務感が増します。

まとめ

  • 会計:賞与・退職給付は決算で見積計上(発生主義)するのが基本。
  • 税務:原則として支払時に損金算入される点を押さえる(例外あり)。
  • 学習:表をノートに写して自分で仕訳を書く練習を継続すると理解が早く進む。

次回は、今回の内容を別表(法人税別表)への転記イメージと結びつけ、決算整理の流れを実務帳票ベースで示す予定です(第157回・第149回の内容と合わせて復習すると効果的です)。