日別アーカイブ: 2026年8月16日

第157回 給与と源泉徴収ゼロ入門:給与計算の仕訳と年末調整を表でやさしく整理(続けられる週次チェックリスト付き)

学び始めるとき、給与まわりの処理は「項目が多い」「税や保険の期限が分かりにくい」とつまずきやすい部分です。本記事では仕訳や流れを図ではなく表で整理し、初学者が試験と実務の両方で迷わないようになることを目標にします。計算例は簡潔に示し、税率や料率は変動する旨を注記します。

1. 給与フロー概観(月次→支払→源泉→納付→年末調整)

まずは月次の主要プロセスを一目で把握しましょう。

月次処理 具体例 会計処理タイミング 備考
給与計算(締め) 当月分の総支給、控除(源泉・社会保険)を確定 締め日(当月末)に未払で計上 決算日時点では未払給与や預り金が残る場合あり
支払(振込) 従業員へ差引支給額を振込 支払日(翌月〇日など)に未払消滅 給与振込が遅れれば未払残高が残る
源泉徴収 給与から源泉所得税を控除 給与支払時に預り金計上、税務署へ納付 納期の特例の有無で納付タイミングが変わる
社会保険(被保険者分・事業主負担) 被保険者の控除+会社負担分を算出 締めで未払計上、納付時に支払 決算時点で未納があれば未払金として残る
年末調整 年間の源泉徴収額と確定税額を精算 年末(通常12月)に実施、還付または追徴 還付は会社が社員へ支払、追徴は会社が徴収

2. 基本仕訳表(主要項目別)

ここでは代表的な仕訳を示します。金額は例で、締め日時点で何が未払・未経過かを明示します。

取引 借方 貸方 備考
給与の締め(当月末・支払未済) 給料手当(費用) 300,000 未払給与(負債) 245,000
預り金(源泉所得税) 15,000
預り金(健康保険料等) 40,000
例:総支給300,000、控除合計55,000、差引支給245,000。決算日時点では未払給与・預り金が残る
支払(振込)時 未払給与 245,000 普通預金 245,000 差引支給額の振込で未払が消滅
源泉税の納付時 預り金(源泉所得税) 15,000 普通預金 15,000 税務署への納付で預り金が消える
会社負担の社会保険(発生時) 法定福利費(費用) 60,000 未払金(社会保険) 60,000 会社負担分は費用計上し、納付時に支払う。決算で未払金が残ることあり
会社負担の社会保険(納付時) 未払金(社会保険) 60,000 普通預金 60,000 納付により未払金が消滅
賞与の締め(未経過分の処理) 賞与手当(費用) 200,000 未払賞与 200,000 賞与支払日前の決算では未払賞与で処理

3. 源泉徴収・納付の仕訳とスケジュール

納付期限と対応する仕訳の例を整理します。実際の期限は会社の採用する特例や税務署の指示で変わるため、都度確認してください(注)。

種類 納付期限(目安) 仕訳例 備考
源泉所得税(給与) 一般的に給与支払月の翌月10日(特例あり) 借方:預り金(源泉所得税) 15,000 / 貸方:普通預金 15,000 特例(年2回納付等)を利用している場合はスケジュールが異なる
社会保険料(被保険者分・事業主分) 月次でまとめて翌月末頃(協会けんぽ等により異なる) 借方:未払金(社会保険) 100,000 / 貸方:普通預金 100,000 納付漏れがあると決算で未払金が増える
源泉所得税の年末調整(確定) 年末調整実施後に精算(12月給与など) 還付:借方 預り金(源泉) 5,000 / 貸方 普通預金 5,000
追徴:借方 普通預金 3,000 / 貸方 預り金(源泉) 3,000
還付は会社が従業員に支払う(会社の立替え)

4. 年末調整の仕訳と還付・追徴の対応

年末調整での代表的な処理を整理します。決算日時点で「過不足」が生じることがあります。

手続き 仕訳例 発生状況(決算時)
年末調整で還付がある(会社が従業員に還付) 借方:預り金(源泉所得税) 5,000
貸方:普通預金 5,000
決算日時点で源泉預り金が過剰計上されている場合、還付により負債が減少
年末調整で追徴がある(従業員から徴収) 借方:普通預金 3,000
貸方:預り金(源泉所得税) 3,000
決算日時点で源泉預り金が不足している場合、徴収により負債が補填される
年末調整後の法定調書等の提出 (会計上の直接仕訳なし) 税務書類の提出は別途管理。提出漏れがないよう注意

5. 週次チェックリスト+実践練習(模擬給与明細つき)

継続しやすい学習メニューを示します。15分×3回の短時間セッションで習慣化しましょう。

週次セッション 内容(15分×3回の例)
1回目 給与フローの読み直し(本記事の表を参照)、未払・預りの意味を確認
2回目 仕訳練習:締め→支払→源泉納付の仕訳を短時間で3セット実施
3回目 年末調整の仕組み確認と短問(下のセルフチェック)を解答

模擬給与明細(例)

氏名 支給(基本給) 支給計 控除(源泉) 控除(社会保険 被保険者) 差引支給
山田 太郎 300,000 300,000 15,000 40,000 245,000

練習問題(模擬明細を使って)

以下の条件で仕訳を作成してください(締め日:当月末、支払日:翌月5日、源泉納付:翌月10日)。決算日時点で未払・未経過の項目が分かるように示してください。

  • 総支給:300,000、源泉:15,000、被保険者負担:40,000、差引支給:245,000
  • 会社負担の社会保険:60,000(当月分)

期待される仕訳(主要なもの):給与締め、支払、源泉納付、会社負担保険の計上と納付。

セルフチェック(短問)

  • Q1. 給与を締めたが支払日が来ていないとき、決算書上どの勘定が残るか?(答えを1〜2行で)
  • Q2. 年末調整で従業員に還付が生じた場合、会社はどの勘定を減らして現金を出すか?
  • Q3. 源泉税の納付期限が守られないとどんな会計上の影響があるか?

よくあるミスと回避法

  • 未払と預り金を混同する:未払給与は会社の債務、預り金は従業員の税・保険の預かりである点を意識する。
  • 納付期限の誤認:源泉・社会保険は納付期日が異なるのでカレンダーで管理する。
  • 年末調整の還付処理忘れ:決算書上の源泉預り金を照合し、過不足を年末調整で確実に処理する。

試験との対応(押さえるべきポイント)

項目 簿記 税法(源泉・年調)
給与の計上・未払処理 費用計上と未払負債の把握(締め処理)
源泉徴収の預り金と納付 預り金の計上・精算仕訳 源泉税の計算方法と納期限(特例の有無)
年末調整 還付・追徴の仕訳(負債の減少・増加) 扶養控除や基礎控除などの適用要件

(参考)未払/前払・勘定科目・試算表の基礎については、過去記事も合わせて確認してください:未払と前払の基礎勘定科目と試算表の見方

まとめ

給与処理は「計算→未払計上→支払→納付→年末調整」という一連の流れを表で整理すると理解が進みます。ポイントは未払と預り金の違い、納付期限の管理、年末調整での還付・追徴処理です。週次で短時間の練習を継続し、模擬明細で仕訳を繰り返すことで試験と実務の両方に役立つ力がつきます。最新の税率や保険料率は必ず官公庁や保険者の公表値を参照してください。

付録:コピペで使える仕訳スニペット(例)

(締め時)

借方:給料手当 300,000
貸方:未払給与 245,000
貸方:預り金(源泉所得税) 15,000
貸方:預り金(健康保険料等) 40,000

(支払時)

借方:未払給与 245,000
貸方:普通預金 245,000

(源泉納付時)

借方:預り金(源泉所得税) 15,000
貸方:普通預金 15,000

次回は「決算整理での未払賞与と賞与引当金の処理」を表で整理します。継続学習の一助になれば幸いです。