日別アーカイブ: 2026年8月4日

第145回 株主資本等変動計算書ゼロ入門:資本の動きを表でやさしく整理(続けられる学習メニュー付き)

学習を進めると、貸借対照表や損益計算書は理解できても、株主資本等変動計算書(Statement of Changes in Equity:SHE)の取り扱いで手が止まることがよくあります。特に「どこからデータを持ってくるか」「決算日時点で何が未払・未処理か」を見落とすと、仕訳や期末残高が合いません。本記事では、試算表からSHEを作る手順を表で整理し、代表的取引の仕訳とSHE上の反映を具体的に示します。短時間で続けられる学習メニューも付けましたので、少しずつ実力をつけましょう。

SHEの標準テンプレート(見本)

まずは完成形の雛形です。試算表から転記する際は、この列に当てはめて埋めていきます。WordPressにそのまま貼れる表形式のテンプレートです(幅は固定想定)。モバイルでは横スクロールが発生する点に注意してください。

資本項目 期首残高 当期増減(内訳) 期末残高
資本金 (金額) 増資:○○、減少:○○ (金額)
資本剰余金 (金額) 払込剰余金、組替等 (金額)
利益剰余金 (金額) 当期純利益、配当、繰越など(決算日時点の未払配当は注記) (金額)
自己株式 (金額) 取得・処分の影響 (金額)
その他(評価差額等) (金額) OCI等の増減 (金額)

試算表からSHEへ:転記箇所一覧

まず試算表上のどの勘定がSHEのどの列に対応するかを整理します。以下は典型的な対応表です。

試算表科目 SHE上の科目 備考
資本金 資本金 払込資本としてそのまま記載
資本準備金・その他資本剰余金 資本剰余金 組替がある場合は内訳を注記
繰越利益剰余金・当期未処分利益 利益剰余金 決算日時点の未払配当や利益処分は別行で示す
自己株式 自己株式 取得額・処分差益の処理に注意

SHE作成のステップ(短く確実に進める5段階)

Step 作業内容 チェックポイント
Step1 試算表の期首残高を各SHE科目に転記する 期首残高は前期の期末残高と一致するか確認
Step2 当期中に発生した増減の仕訳を洗い出す(増資、配当、自己株式等) 決算日時点で支払済か未払かを明確にする(未払配当等)
Step3 各取引のSHE上の増減を該当列に記入する 増減の符号(増・減)と内訳を注記する
Step4 合計して期末残高を算出する B/Sの各資本科目の残高と整合するか照合する
Step5 必要に応じて注記(未払配当、利益処分案など)を追記 税務申告書の別表との連動を確認する

代表的取引の仕訳例とSHE上の反映

以下はよく出る典型例です。仕訳例では「決算日時点で何が未提供・未経過か」が分かるようにしています。

仕訳 SHE上の増減 決算書(B/S)への影響
(増資) 現金 XXX / 資本金 YYY 資本剰余金 ZZZ 資本金↑(YYY)、資本剰余金↑(ZZZ) 現金(流動資産)↑、資本金・資本剰余金↑
(配当・決議済で未払) 未払配当 AAA / 繰越利益剰余金 AAA 利益剰余金↓(配当額)、※注:決算日時点で未払配当AAAとして注記 流動負債の未払配当↑、利益剰余金↓(純資産減)
(利益処分) 繰越利益剰余金 BBB / 当期未処分利益 BBB 利益剰余金の期末反映(繰越) 利益剰余金↑(内部処理)、B/Sの純資産に反映
(自己株式取得) 自己株式 CCC / 現金 CCC 自己株式↑(マイナス表示のため実質的に純資産↓) 現金↓、自己株式(純資産のマイナス項目)↑
(資本組替) 資本準備金 DDD / 資本金 DDD 資本剰余金↓、資本金↑(組替の表示変化) B/Sの科目内訳が変わるが総資本は原則変わらない

例:決算日時点で未払配当がある場合の注意

配当が取締役会や株主総会で決議され、決算日後に支払う場合は「未払配当」として負債計上します。SHE上は利益剰余金の減少として扱い、注記で「決算日時点で未払配当○円」と明示します。試験でも未払配当の処理ミスが多いポイントです。

税務上の簡単なチェックポイント

  • 配当は会社側では原則として損金不算入:会計上の配当と税務上の損金算入可否は区別する(申告書の別表と照合)。
  • 利益剰余金の処理は申告書の別表に影響:別表との連動(例:別表四、別表五等)をざっくり確認する。
  • 自己株式や資本組替は資本の表示に影響するため、注記とB/Sの整合を確認する。
  • 決算日時点の未払・未経過項目はSHEに注記:税務調整が必要な項目は別途メモしておく。

続けられる学習メニュー(短時間ドリル+週次課題)

学習は短時間で回数を重ねるのが効果的です。以下は実践しやすい例です。

  • 短時間ドリルA(10分): 試算表から資本金・資本剰余金・利益剰余金の期末残高を転記する。
  • 短時間ドリルB(15分): 配当の決議があった場合の仕訳とSHEへの反映を記述する(未払の有無を明示)。
  • 短時間ドリルC(20分): 自己株式取得の仕訳とB/S・SHEでの表示を比較する。
  • 週次課題(30〜60分): 模擬試算表を用意し、調整仕訳を行ってからSHEを作成する(作業ログを残す)。

短時間ドリル:答えと解説(例)

問題 正答(要点)
配当100の決議があり、支払日は決算日後の場合の仕訳 未払配当 100 / 繰越利益剰余金 100。SHEは利益剰余金減、注記に未払配当100。
自己株式取得200の仕訳とSHE上の表示 自己株式 200 / 現金 200。SHEでは自己株式が増え、純資産は実質減少。

学習記録用シンプルチェックリスト(週次)

実施日 達成欄(完了ならチェック)
Week1  
Week2  
Week3  

最後に:実務と試験のつながりを意識して

SHEは、単に資本の増減を並べるだけでなく、損益の帰属や配当の可否、税務申告書との関係を整理する役割を持ちます。試験では仕訳の正確さとともに「決算日時点で未払かどうか」を問う問題がよく出ます。まずは本記事のテンプレートを用いて何度か手を動かし、次に短時間ドリル→週次課題の流れで習慣化してください。所要時間の目安は本編15〜25分+演習30〜60分です。

まとめ

  • SHEは資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式などの期首→増減→期末を整理する表です。
  • 試算表のどの科目をSHEに転記するかを一覧化しておくと作業が速くなります。
  • 決算日時点の未払配当や未経過項目は注記し、SHEとB/Sの整合を必ず確認してください。
  • 短時間ドリルと週次課題を継続し、仕訳と表作成の手順を体得しましょう。

次回は演習用の模擬試算表と解答付きのウォークスルーを掲載します。継続して取り組むことで、試験と実務の両方で役立つ実力が身につきます。