学習を進めると、貸借対照表や損益計算書は理解できても、株主資本等変動計算書(Statement of Changes in Equity:SHE)の取り扱いで手が止まることがよくあります。特に「どこからデータを持ってくるか」「決算日時点で何が未払・未処理か」を見落とすと、仕訳や期末残高が合いません。本記事では、試算表からSHEを作る手順を表で整理し、代表的取引の仕訳とSHE上の反映を具体的に示します。短時間で続けられる学習メニューも付けましたので、少しずつ実力をつけましょう。
SHEの標準テンプレート(見本)
まずは完成形の雛形です。試算表から転記する際は、この列に当てはめて埋めていきます。WordPressにそのまま貼れる表形式のテンプレートです(幅は固定想定)。モバイルでは横スクロールが発生する点に注意してください。
| 資本項目 | 期首残高 | 当期増減(内訳) | 期末残高 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | (金額) | 増資:○○、減少:○○ | (金額) |
| 資本剰余金 | (金額) | 払込剰余金、組替等 | (金額) |
| 利益剰余金 | (金額) | 当期純利益、配当、繰越など(決算日時点の未払配当は注記) | (金額) |
| 自己株式 | (金額) | 取得・処分の影響 | (金額) |
| その他(評価差額等) | (金額) | OCI等の増減 | (金額) |
試算表からSHEへ:転記箇所一覧
まず試算表上のどの勘定がSHEのどの列に対応するかを整理します。以下は典型的な対応表です。
| 試算表科目 | SHE上の科目 | 備考 |
|---|---|---|
| 資本金 | 資本金 | 払込資本としてそのまま記載 |
| 資本準備金・その他資本剰余金 | 資本剰余金 | 組替がある場合は内訳を注記 |
| 繰越利益剰余金・当期未処分利益 | 利益剰余金 | 決算日時点の未払配当や利益処分は別行で示す |
| 自己株式 | 自己株式 | 取得額・処分差益の処理に注意 |
SHE作成のステップ(短く確実に進める5段階)
| Step | 作業内容 | チェックポイント |
|---|---|---|
| Step1 | 試算表の期首残高を各SHE科目に転記する | 期首残高は前期の期末残高と一致するか確認 |
| Step2 | 当期中に発生した増減の仕訳を洗い出す(増資、配当、自己株式等) | 決算日時点で支払済か未払かを明確にする(未払配当等) |
| Step3 | 各取引のSHE上の増減を該当列に記入する | 増減の符号(増・減)と内訳を注記する |
| Step4 | 合計して期末残高を算出する | B/Sの各資本科目の残高と整合するか照合する |
| Step5 | 必要に応じて注記(未払配当、利益処分案など)を追記 | 税務申告書の別表との連動を確認する |
代表的取引の仕訳例とSHE上の反映
以下はよく出る典型例です。仕訳例では「決算日時点で何が未提供・未経過か」が分かるようにしています。
| 仕訳 | SHE上の増減 | 決算書(B/S)への影響 |
|---|---|---|
| (増資) 現金 XXX / 資本金 YYY 資本剰余金 ZZZ | 資本金↑(YYY)、資本剰余金↑(ZZZ) | 現金(流動資産)↑、資本金・資本剰余金↑ |
| (配当・決議済で未払) 未払配当 AAA / 繰越利益剰余金 AAA | 利益剰余金↓(配当額)、※注:決算日時点で未払配当AAAとして注記 | 流動負債の未払配当↑、利益剰余金↓(純資産減) |
| (利益処分) 繰越利益剰余金 BBB / 当期未処分利益 BBB | 利益剰余金の期末反映(繰越) | 利益剰余金↑(内部処理)、B/Sの純資産に反映 |
| (自己株式取得) 自己株式 CCC / 現金 CCC | 自己株式↑(マイナス表示のため実質的に純資産↓) | 現金↓、自己株式(純資産のマイナス項目)↑ |
| (資本組替) 資本準備金 DDD / 資本金 DDD | 資本剰余金↓、資本金↑(組替の表示変化) | B/Sの科目内訳が変わるが総資本は原則変わらない |
例:決算日時点で未払配当がある場合の注意
配当が取締役会や株主総会で決議され、決算日後に支払う場合は「未払配当」として負債計上します。SHE上は利益剰余金の減少として扱い、注記で「決算日時点で未払配当○円」と明示します。試験でも未払配当の処理ミスが多いポイントです。
税務上の簡単なチェックポイント
- 配当は会社側では原則として損金不算入:会計上の配当と税務上の損金算入可否は区別する(申告書の別表と照合)。
- 利益剰余金の処理は申告書の別表に影響:別表との連動(例:別表四、別表五等)をざっくり確認する。
- 自己株式や資本組替は資本の表示に影響するため、注記とB/Sの整合を確認する。
- 決算日時点の未払・未経過項目はSHEに注記:税務調整が必要な項目は別途メモしておく。
続けられる学習メニュー(短時間ドリル+週次課題)
学習は短時間で回数を重ねるのが効果的です。以下は実践しやすい例です。
- 短時間ドリルA(10分): 試算表から資本金・資本剰余金・利益剰余金の期末残高を転記する。
- 短時間ドリルB(15分): 配当の決議があった場合の仕訳とSHEへの反映を記述する(未払の有無を明示)。
- 短時間ドリルC(20分): 自己株式取得の仕訳とB/S・SHEでの表示を比較する。
- 週次課題(30〜60分): 模擬試算表を用意し、調整仕訳を行ってからSHEを作成する(作業ログを残す)。
短時間ドリル:答えと解説(例)
| 問題 | 正答(要点) |
|---|---|
| 配当100の決議があり、支払日は決算日後の場合の仕訳 | 未払配当 100 / 繰越利益剰余金 100。SHEは利益剰余金減、注記に未払配当100。 |
| 自己株式取得200の仕訳とSHE上の表示 | 自己株式 200 / 現金 200。SHEでは自己株式が増え、純資産は実質減少。 |
学習記録用シンプルチェックリスト(週次)
| 週 | 実施日 | 達成欄(完了ならチェック) |
|---|---|---|
| Week1 | □ | |
| Week2 | □ | |
| Week3 | □ |
最後に:実務と試験のつながりを意識して
SHEは、単に資本の増減を並べるだけでなく、損益の帰属や配当の可否、税務申告書との関係を整理する役割を持ちます。試験では仕訳の正確さとともに「決算日時点で未払かどうか」を問う問題がよく出ます。まずは本記事のテンプレートを用いて何度か手を動かし、次に短時間ドリル→週次課題の流れで習慣化してください。所要時間の目安は本編15〜25分+演習30〜60分です。
まとめ
- SHEは資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式などの期首→増減→期末を整理する表です。
- 試算表のどの科目をSHEに転記するかを一覧化しておくと作業が速くなります。
- 決算日時点の未払配当や未経過項目は注記し、SHEとB/Sの整合を必ず確認してください。
- 短時間ドリルと週次課題を継続し、仕訳と表作成の手順を体得しましょう。
次回は演習用の模擬試算表と解答付きのウォークスルーを掲載します。継続して取り組むことで、試験と実務の両方で役立つ実力が身につきます。
