学習を始めたばかりの方は、B/S・P/L は読めても「資金の流れ」を整理する段になるとつまずきやすいものです。ここでは、試験で問われやすい論点に絞って、表を中心に「読む・作る・練習する」流れを示します。短時間で繰り返せる週次ワークシートも用意しましたので、少しずつ習慣化してください。
1. C/F の3区分:定義と典型例
まずは各区分の定義と典型的な勘定科目を一覧で押さえましょう。試験では区分の判別が頻出です。
| 区分 | 定義(資金の視点) | 典型的な科目例(増加=受入、減少=支出) |
|---|---|---|
| 営業活動によるCF(CFO) | 本業から生じる現金の増減。P/L の利益と運転資本の調整を含む。 | 受取利息(受入)、支払利息(支出)、売掛金の増減、買掛金の増減、仕入・販売による現金動 |
| 投資活動によるCF(CFI) | 固定資産や有価証券など資産の取得・処分に伴う現金の増減。 | 有形固定資産の取得(支出)、有形固定資産の売却(受入)、投資有価証券の取得・売却 |
| 財務活動によるCF(CFF) | 資金調達および返済、配当等に伴う現金の増減。 | 借入金の増減、社債の発行・償還、自己株式の取得、配当金の支払 |
2. 間接法のステップ(P/L → CFO への変換手順)
間接法では P/L の当期純利益を出発点に、非現金項目や運転資本の増減を調整します。下表は段階的なチェックリストです。
| ステップ | 処理のポイント | 試験での注意点 |
|---|---|---|
| 1. 当期純利益を出発点 | P/L の最終利益をCFOの開始点にする。 | 税引前・当期純利益のどちらを使うかは指示に注意。 |
| 2. 非現金費用の加算 | 減価償却費・貸倒引当金繰入など、現金を伴わない費用を加算。 | 引当金の税務上の非損金扱いは後段で考慮。 |
| 3. 非現金収益の減算 | 固定資産売却益など、現金受取を伴わない帳簿上の益を減算。 | 特別利益のうち現金受取の有無を確認。 |
| 4. 運転資本の増減調整 | 売掛金増はマイナス、買掛金増はプラスに調整。 | 期末・期首の差額(増減)を正しい符号で記載。 |
| 5. 利息・配当・税金の扱い | 受取利息は営業/投資区分の分類に注意。法人税等の支払は通常 CFO の減少。 | 試験問題の区分指定(投資 or 営業)を確認。 |
3. 現金と税務のズレを整理するチェック表
税務上の取り扱いがC/Fに与える影響は混同しやすい点です。下表で主要項目を比較します。
| 項目 | 会計上の扱い(P/L/C/F) | 税務上の留意点 | C/F への影響 |
|---|---|---|---|
| 減価償却 | P/L の費用(非現金)→CFOに加算 | 税法上の償却方法・耐用年数で差異が生じる | 現金流出はないためCFOを増やす(非現金調整) |
| 貸倒引当金 | 繰入はP/L上の費用(通常非現金) | 税務上は一定の要件でしか損金算入できない(非損金扱いがある) | 会計上はCFOで加算するが、税務差異は将来の法人税に影響 |
| 役員賞与(未払) | 支払基準による。未払はB/Sに計上 | 税務上は賞与の損金算入要件が厳格 | 現金支払がない限りCFOに直接の減少はない(支払時は減少) |
| 前受金/前払費用 | B/S上の負債/資産(現金の先行受払) | 税務上の認識は実態による | 前受金増はCFOの増加、前払費用増はCFOの減少 |
4. 簡易作成フロー(試算表→簡易C/F)
試験や学習で短時間に作る場合の最小フローを表にしました。特に「何が未提供/未経過か」を明確にする習慣をつけましょう。
| ステップ | 入力資料 | 留意点(未提供・未経過の確認) |
|---|---|---|
| 1. 当期純利益の確認 | 試算表/P/L | 特別損益・税金費用が表示されているか。不明なら指示を確認。 |
| 2. 非現金項目の抽出 | 減価償却費、繰入額、引当金など | 未払いであっても非現金か現金かを判断(例:減価償却=非現金) |
| 3. 運転資本の増減計算 | B/S の期首・期末残高 | 売掛金・棚卸・買掛金などの増減を必ず符号で示す |
| 4. 投資・財務の現金流 | 固定資産の取得・処分、借入金の増減、配当支払 | 処分が未実行(未提供)なら記載しない/注記する |
| 5. 合計(期末現金残高の整合) | 期首現金残高 + 当期の純増減 | 試算表の現金残高と突合させる |
5. 実践パート:短めの演習問題(週次ワークに最適)
各問は間接法でCFOを中心に作成する問題です。所要時間は10〜20分を想定。採点チェック表で自己採点してください。
問1(短時間)
期末試算表の要点:
- 当期純利益:800,000円(税引後)
- 減価償却費:200,000円(計上済、現金支出なし)
- 売掛金:期首 1,200,000 → 期末 1,500,000(増加)
- 買掛金:期首 600,000 → 期末 400,000(減少)
- 法人税等の現金支払は未確定(未提供)→ 問題では無視
指示:間接法で営業活動によるキャッシュフロー(簡易)を作成してください。
| 採点チェック表(問1) | 期待値のポイント |
|---|---|
| 出発点:当期純利益 | 800,000円 |
| 減価償却の加算 | +200,000円 |
| 売掛金の増加調整 | -300,000円(売掛金増は現金減) |
| 買掛金の減少調整 | -200,000円(買掛金減は現金減) |
| 計:営業活動によるCF(期待値) | 500,000円 |
解答・解説(問1)
計算:800,000 + 200,000 – 300,000 – 200,000 = 500,000円。法人税等が未提供の場合はCFOには含めません。減価償却は非現金項目として加算し、売掛金増および買掛金減は現金の流出要因です。
問2(中程度)
期末試算表の要点:
- 当期純利益:1,200,000円(税引後)
- 売上代金の回収で売掛金が期首 800,000 → 期末 500,000(減少)
- 固定資産売却益:300,000円(帳簿上の益、ただし売却代金は受取済)
- 有形固定資産の取得による支出:1,000,000円(現金支出あり、投資区分)
指示:間接法で営業・投資のCFを簡易に作成し、営業活動によるCFを示してください。
| 採点チェック表(問2) | 期待値のポイント |
|---|---|
| 出発点:当期純利益 | 1,200,000円 |
| 固定資産売却益の調整(非営業) | -300,000円(営業から除く) |
| 売掛金の減少調整 | +300,000円(売掛金減は現金増) |
| 営業活動によるCF(期待値) | 1,200,000 – 300,000 + 300,000 = 1,200,000円 |
| 投資活動によるCF(参考) | -1,000,000円(固定資産取得の現金支出) |
解答・解説(問2)
営業活動の計算では、固定資産売却益は営業活動の利益から除く必要があります。売掛金の回収は現金増加であり営業CFを押し上げます。投資活動では固定資産取得の現金支出を記載します。
問3(税務ポイント含む)
期末試算表の要点:
- 当期純利益:600,000円(税引後)
- 貸倒引当金繰入:100,000円(費用計上、現金支出なし)
- 実際の貸倒損失(現金回収不能で債権を消去):50,000円(現金影響なし)
- 税務上は引当金のうち 60,000円が非損金(課税調整が必要)
指示:間接法で営業活動によるCFを作成し、税務上の差異がCFOに与える影響について簡潔にコメントしてください。
| 採点チェック表(問3) | 期待値のポイント |
|---|---|
| 出発点:当期純利益 | 600,000円 |
| 貸倒引当金の加算(会計上) | +100,000円(非現金) |
| 実際の貸倒処理 | 現金影響なし(既に非現金調整でカバー) |
| 税務差異の示唆 | 税務上非損金分(60,000円)は当期の税金費用に影響するが、現金支出そのものは別途の法人税支払時に現れる |
| 営業活動によるCF(期待値) | 700,000円(600,000 + 100,000) |
解答・解説(問3)
会計上の貸倒引当金繰入は非現金費用なのでCFOを押し上げます。ただし税務上一部が非損金である場合、その税務調整は法人税等の計算に影響し、法人税の現金支出時にCFOを減少させます。問題で法人税等の支払が与えられていなければ、ここではCFOに直接の減少は反映しません。
6. 継続しやすさの工夫:10分チェックリストと週次ワークシート
毎週10分で振り返れるチェックリストと記録欄を用意しました。週次で演習→自己採点→振り返りを行うことで定着を図ります。
| 10分チェックリスト | 確認内容 |
|---|---|
| 1. 当期純利益を確認 | 試算表のP/Lから抜き出したか |
| 2. 非現金項目を洗い出す | 減価償却・引当金等を確認したか |
| 3. 運転資本の増減を計算 | 売掛金・買掛金・棚卸の増減を確認 |
| 4. 投資・財務の現金流を確認 | 固定資産取得や借入の増減をチェック |
| 5. 税務上の留意点をメモ | 引当金の非損金など税務差異を記録 |
以下は週次で記録できるシンプルなテンプレートです。WordPress にそのまま貼って毎週使えます。
| 週次Progress記録 | 記入欄 |
|---|---|
| 日付 | (例)2026-08-01 |
| 当週の演習(問番号) | 例:問1・問2 |
| 合格/不合格(自己採点) | 例:問1 ○ / 問2 △ |
| 次週の重点 | 例:運転資本の符号確認を重点 |
まとめ
キャッシュフロー計算書は、B/S・P/L と並ぶ「資金の視点」を身につけるための重要なツールです。まずは区分(営業・投資・財務)の典型例を覚え、間接法のステップを順に追う練習を繰り返してください。税務上の差異(引当金の非損金等)は、C/F の作成自体には直接の現金影響を与えない場合が多いものの、法人税等の現金支出を通じて最終的な現金残高に影響します。短時間の演習を週次で継続することで、着実に定着します。この記事のワークシートを活用して、まずは一週間に1回、今回のような短問を解いてみましょう。
次の学習導線:この記事の演習を終えたら、C/F で理解が浅かった項目(例:運転資本の符号、税務調整)に応じて、B/S や P/L の該当回に戻って復習してください。
