日別アーカイブ: 2026年8月6日

第147回 キャッシュフロー計算書(C/F)ゼロ入門:営業・投資・財務の見方と税務とのつながり(続けられる週次ワークシート付き)

学習を始めたばかりの方は、B/S・P/L は読めても「資金の流れ」を整理する段になるとつまずきやすいものです。ここでは、試験で問われやすい論点に絞って、表を中心に「読む・作る・練習する」流れを示します。短時間で繰り返せる週次ワークシートも用意しましたので、少しずつ習慣化してください。

1. C/F の3区分:定義と典型例

まずは各区分の定義と典型的な勘定科目を一覧で押さえましょう。試験では区分の判別が頻出です。

区分 定義(資金の視点) 典型的な科目例(増加=受入、減少=支出)
営業活動によるCF(CFO) 本業から生じる現金の増減。P/L の利益と運転資本の調整を含む。 受取利息(受入)、支払利息(支出)、売掛金の増減、買掛金の増減、仕入・販売による現金動
投資活動によるCF(CFI) 固定資産や有価証券など資産の取得・処分に伴う現金の増減。 有形固定資産の取得(支出)、有形固定資産の売却(受入)、投資有価証券の取得・売却
財務活動によるCF(CFF) 資金調達および返済、配当等に伴う現金の増減。 借入金の増減、社債の発行・償還、自己株式の取得、配当金の支払

2. 間接法のステップ(P/L → CFO への変換手順)

間接法では P/L の当期純利益を出発点に、非現金項目や運転資本の増減を調整します。下表は段階的なチェックリストです。

ステップ 処理のポイント 試験での注意点
1. 当期純利益を出発点 P/L の最終利益をCFOの開始点にする。 税引前・当期純利益のどちらを使うかは指示に注意。
2. 非現金費用の加算 減価償却費・貸倒引当金繰入など、現金を伴わない費用を加算。 引当金の税務上の非損金扱いは後段で考慮。
3. 非現金収益の減算 固定資産売却益など、現金受取を伴わない帳簿上の益を減算。 特別利益のうち現金受取の有無を確認。
4. 運転資本の増減調整 売掛金増はマイナス、買掛金増はプラスに調整。 期末・期首の差額(増減)を正しい符号で記載。
5. 利息・配当・税金の扱い 受取利息は営業/投資区分の分類に注意。法人税等の支払は通常 CFO の減少。 試験問題の区分指定(投資 or 営業)を確認。

3. 現金と税務のズレを整理するチェック表

税務上の取り扱いがC/Fに与える影響は混同しやすい点です。下表で主要項目を比較します。

項目 会計上の扱い(P/L/C/F) 税務上の留意点 C/F への影響
減価償却 P/L の費用(非現金)→CFOに加算 税法上の償却方法・耐用年数で差異が生じる 現金流出はないためCFOを増やす(非現金調整)
貸倒引当金 繰入はP/L上の費用(通常非現金) 税務上は一定の要件でしか損金算入できない(非損金扱いがある) 会計上はCFOで加算するが、税務差異は将来の法人税に影響
役員賞与(未払) 支払基準による。未払はB/Sに計上 税務上は賞与の損金算入要件が厳格 現金支払がない限りCFOに直接の減少はない(支払時は減少)
前受金/前払費用 B/S上の負債/資産(現金の先行受払) 税務上の認識は実態による 前受金増はCFOの増加、前払費用増はCFOの減少

4. 簡易作成フロー(試算表→簡易C/F)

試験や学習で短時間に作る場合の最小フローを表にしました。特に「何が未提供/未経過か」を明確にする習慣をつけましょう。

ステップ 入力資料 留意点(未提供・未経過の確認)
1. 当期純利益の確認 試算表/P/L 特別損益・税金費用が表示されているか。不明なら指示を確認。
2. 非現金項目の抽出 減価償却費、繰入額、引当金など 未払いであっても非現金か現金かを判断(例:減価償却=非現金)
3. 運転資本の増減計算 B/S の期首・期末残高 売掛金・棚卸・買掛金などの増減を必ず符号で示す
4. 投資・財務の現金流 固定資産の取得・処分、借入金の増減、配当支払 処分が未実行(未提供)なら記載しない/注記する
5. 合計(期末現金残高の整合) 期首現金残高 + 当期の純増減 試算表の現金残高と突合させる

5. 実践パート:短めの演習問題(週次ワークに最適)

各問は間接法でCFOを中心に作成する問題です。所要時間は10〜20分を想定。採点チェック表で自己採点してください。

問1(短時間)

期末試算表の要点:

  • 当期純利益:800,000円(税引後)
  • 減価償却費:200,000円(計上済、現金支出なし)
  • 売掛金:期首 1,200,000 → 期末 1,500,000(増加)
  • 買掛金:期首 600,000 → 期末 400,000(減少)
  • 法人税等の現金支払は未確定(未提供)→ 問題では無視

指示:間接法で営業活動によるキャッシュフロー(簡易)を作成してください。

採点チェック表(問1) 期待値のポイント
出発点:当期純利益 800,000円
減価償却の加算 +200,000円
売掛金の増加調整 -300,000円(売掛金増は現金減)
買掛金の減少調整 -200,000円(買掛金減は現金減)
計:営業活動によるCF(期待値) 500,000円
解答・解説(問1)

計算:800,000 + 200,000 – 300,000 – 200,000 = 500,000円。法人税等が未提供の場合はCFOには含めません。減価償却は非現金項目として加算し、売掛金増および買掛金減は現金の流出要因です。

問2(中程度)

期末試算表の要点:

  • 当期純利益:1,200,000円(税引後)
  • 売上代金の回収で売掛金が期首 800,000 → 期末 500,000(減少)
  • 固定資産売却益:300,000円(帳簿上の益、ただし売却代金は受取済)
  • 有形固定資産の取得による支出:1,000,000円(現金支出あり、投資区分)

指示:間接法で営業・投資のCFを簡易に作成し、営業活動によるCFを示してください。

採点チェック表(問2) 期待値のポイント
出発点:当期純利益 1,200,000円
固定資産売却益の調整(非営業) -300,000円(営業から除く)
売掛金の減少調整 +300,000円(売掛金減は現金増)
営業活動によるCF(期待値) 1,200,000 – 300,000 + 300,000 = 1,200,000円
投資活動によるCF(参考) -1,000,000円(固定資産取得の現金支出)
解答・解説(問2)

営業活動の計算では、固定資産売却益は営業活動の利益から除く必要があります。売掛金の回収は現金増加であり営業CFを押し上げます。投資活動では固定資産取得の現金支出を記載します。

問3(税務ポイント含む)

期末試算表の要点:

  • 当期純利益:600,000円(税引後)
  • 貸倒引当金繰入:100,000円(費用計上、現金支出なし)
  • 実際の貸倒損失(現金回収不能で債権を消去):50,000円(現金影響なし)
  • 税務上は引当金のうち 60,000円が非損金(課税調整が必要)

指示:間接法で営業活動によるCFを作成し、税務上の差異がCFOに与える影響について簡潔にコメントしてください。

採点チェック表(問3) 期待値のポイント
出発点:当期純利益 600,000円
貸倒引当金の加算(会計上) +100,000円(非現金)
実際の貸倒処理 現金影響なし(既に非現金調整でカバー)
税務差異の示唆 税務上非損金分(60,000円)は当期の税金費用に影響するが、現金支出そのものは別途の法人税支払時に現れる
営業活動によるCF(期待値) 700,000円(600,000 + 100,000)
解答・解説(問3)

会計上の貸倒引当金繰入は非現金費用なのでCFOを押し上げます。ただし税務上一部が非損金である場合、その税務調整は法人税等の計算に影響し、法人税の現金支出時にCFOを減少させます。問題で法人税等の支払が与えられていなければ、ここではCFOに直接の減少は反映しません。

6. 継続しやすさの工夫:10分チェックリストと週次ワークシート

毎週10分で振り返れるチェックリストと記録欄を用意しました。週次で演習→自己採点→振り返りを行うことで定着を図ります。

10分チェックリスト 確認内容
1. 当期純利益を確認 試算表のP/Lから抜き出したか
2. 非現金項目を洗い出す 減価償却・引当金等を確認したか
3. 運転資本の増減を計算 売掛金・買掛金・棚卸の増減を確認
4. 投資・財務の現金流を確認 固定資産取得や借入の増減をチェック
5. 税務上の留意点をメモ 引当金の非損金など税務差異を記録

以下は週次で記録できるシンプルなテンプレートです。WordPress にそのまま貼って毎週使えます。

週次Progress記録 記入欄
日付 (例)2026-08-01
当週の演習(問番号) 例:問1・問2
合格/不合格(自己採点) 例:問1 ○ / 問2 △
次週の重点 例:運転資本の符号確認を重点

まとめ

キャッシュフロー計算書は、B/S・P/L と並ぶ「資金の視点」を身につけるための重要なツールです。まずは区分(営業・投資・財務)の典型例を覚え、間接法のステップを順に追う練習を繰り返してください。税務上の差異(引当金の非損金等)は、C/F の作成自体には直接の現金影響を与えない場合が多いものの、法人税等の現金支出を通じて最終的な現金残高に影響します。短時間の演習を週次で継続することで、着実に定着します。この記事のワークシートを活用して、まずは一週間に1回、今回のような短問を解いてみましょう。

次の学習導線:この記事の演習を終えたら、C/F で理解が浅かった項目(例:運転資本の符号、税務調整)に応じて、B/S や P/L の該当回に戻って復習してください。