第234回 司法書士報酬の二重納付5,105円を給与源泉税から自分で引けない理由

司法書士報酬に係る源泉所得税及び復興特別所得税5,105円を二重に納付した場合、その誤納額を、次に納める給与分8,000円から会社の判断だけで差し引けるのでしょうか。

誤納額充当届出書を使って差し引くことはできません。この届出書の対象は、給与や賞与に係る誤納額だからです。ただし、国税通則法57条の要件を満たし、税務署長等が還付に代えて充当した場合は別です。会社による自己控除と、税務署長等による充当を区別する必要があります。

1.還付請求、充当届出、国税通則法上の充当は別の処理

国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税を納め過ぎたとき」は、通常の誤納額還付請求と、給与や賞与に係る誤納額の充当届出を分けています。

処理 主体と内容 X社での扱い
誤納額還付請求 源泉徴収義務者が所轄税務署長へ還付を請求する 司法書士報酬分5,105円について請求する
誤納額充当届出 給与や賞与に係る誤納額を、その後の給与や賞与に係る源泉所得税等から控除するために届け出る 司法書士報酬分には利用しない
国税通則法57条の充当 法令上の要件を満たす場合に税務署長等が還付に代えて行い、納税者へ通知する 実際に成立した充当の対象、金額及び充当日を通知で確認して反映する

国税庁「誤納額充当届出書の記載要領等」は、この届出書を、給与等に対する源泉所得税等を正当税額より多く納付した場合の手続としています。給与所得以外について生じた誤納額は、別様式の誤納額還付請求書で請求します。

したがって、X社が司法書士報酬分5,105円を給与分8,000円から自分で差し引き、2,895円だけを納付することはできません。

一方、国税通則法56条・57条では、還付金等があり、還付を受ける者に納付すべき国税がある場合、税務署長等は還付に代えて充当し、その旨を通知することとされています。この充当は、X社が誤納額充当届出書を利用することとは別の処理です。

ただし、源泉徴収による国税については、税額が確定しただけで直ちに57条1項の充当対象になるわけではありません。国税庁「国税通則法基本通達」第57条関係2・6によれば、原則として納税告知書が発せられ、国税通則法施行令23条の充当適状にあることが必要です。充当適状前の国税については、納付すべき額が確定しており、還付を受ける者が書面で充当を申し出た場合、その申出日を充当適状日として充当する取扱いです。

2.同じ徴収高計算書でも誤納額の性質は変わらない

司法書士報酬の源泉所得税等は、給与と同じ「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」の「税理士等の報酬」欄を使って納付します。

しかし、同じ計算書を使うことと、給与に係る誤納額であることは同じではありません。X社の誤納額は、司法書士報酬に係る源泉所得税等の二重納付から生じています。このため、給与等の誤納額を対象とする充当届出の入力方法は流用しません。

3.税額と納期限を確認する

請求書で報酬60,000円と消費税等6,000円が明確に区分されているため、本設例では報酬60,000円だけを源泉徴収の対象額としています。

計算要素 金額・率
報酬額 60,000円
1回の支払から控除する額 10,000円
税率 10.21%
源泉徴収税額 (60,000円-10,000円)×10.21%=5,105円

納期の特例がない場合、源泉所得税等は原則として支払月の翌月10日までに納付します。2026年8月20日の司法書士報酬分は9月10日、10月20日の給与分は11月10日が納期限です。根拠は国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」で確認できます。

4.現金還付を確認した場合の仕訳

勘定科目は会社の会計方針によりますが、本設例では余分な納付額を未収入金で管理します。納期限までに給与分への充当が成立したことを確認できず、X社が8,000円を納付した後、5,105円の還付入金を実際に確認した場合の仕訳は次のとおりです。

時点 借方 金額 貸方 金額
9月10日・余分な納付 未収入金 5,105円 普通預金 5,105円
還付請求書の提出日 仕訳なし - 仕訳なし -
11月10日・給与分の納付 預り金 8,000円 普通預金 8,000円
還付入金日 普通預金 5,105円 未収入金 5,105円
時点 普通預金 未収入金 預り金
11月7日 借方20,000円 借方5,105円 貸方8,000円
8,000円納付後 借方12,000円 借方5,105円 0円
5,105円入金後 借方17,105円 0円 0円

11月7日の三勘定の純額は、20,000円+5,105円-8,000円=17,105円です。入金後の普通預金残高と一致します。

5.書面による申出に基づく充当が納付前に成立した場合の仕訳

通常の期限内納付前に、還付請求をしたという事情だけで給与分への充当が成立するわけではありません。本節に限り、X社は、納付すべき額が確定した給与分8,000円について、国税通則法基本通達57条関係6に沿って、還付金等5,105円を充当するよう書面で申し出たものとします。その申出に基づき、税務署長等が11月7日までに給与分へ5,105円を実際に充当し、X社も同日までに充当対象、金額及び充当日を通知で確認したという追加前提を置きます。

この場合、8,000円のうち5,105円は適法な充当により消滅し、残額は8,000円-5,105円=2,895円となります。

処理 借方 金額 貸方 金額
成立した充当の反映 預り金 5,105円 未収入金 5,105円
給与分の残額納付 預り金 2,895円 普通預金 2,895円

この場合、普通預金は20,000円-2,895円=17,105円となり、未収入金と預り金はいずれも0円です。

2,895円が残額となる法的な理由は、通知そのものではなく、税務署長等による5,105円の充当が適法に成立したことです。通知は、どの国税に、いくらを、いつ充当したかを確認し、その結果として残額が2,895円であることを帳簿と納付額へ反映するための資料です。書面で申し出ただけの段階や、充当の対象、金額又は充当日を確認できない段階で、2,895円だけを納付してはいけません。

11月10日の納期限までに給与分への充当が成立したことを確認できなければ、X社は充当通知を待って納期限を過ぎるのではなく、給与分8,000円を期限内に納付します。

6.8,000円を納付した後に充当通知が届いた場合

給与分8,000円を全額納付した後に充当通知が届いても、5,105円が必ず現金で還付されるとは限りません。通知上の充当日が全額納付より前であれば、全額納付によって別の過誤納金が生じている可能性があります。また、通知が別の国税への充当を示している場合も、給与分への充当として処理することはできません。

この場合は、次の資料を再照合します。

  • 充当通知に記載された充当対象、金額及び充当日
  • 給与分8,000円の納付日と納付履歴
  • 還付請求中の未収入金5,105円の処理状況
  • 実際の還付入金と、その内訳

照合が終わるまでは、現金還付を見込んだ仕訳や、通知の日付を無視した相殺仕訳を確定しません。必要に応じて所轄税務署へ確認し、確認できた取引の順序と金額に従って、預り金、未収入金又は新たに生じた過誤納金の残高を修正します。

司法書士報酬の誤納額についてX社が行う手続は還付請求ですが、その後の処理結果は現金還付だけとは限りません。会社による自己控除、書面による充当の申出、税務署長等による実際の充当、通知及び入金を分け、納期限を守りながら帳簿を処理結果に一致させることが要点です。