第229回では、司法書士報酬から源泉徴収した5,105円について、所得税徴収高計算書を作成しました。
今回は、そのデータをe-Taxで送信し、ダイレクト納付で納めます。
計算書を送信しただけでは、納付は終わりません。
送信、期日指定、口座からの引落し。この三つを分けると、仕訳の時点がはっきりします。
1.送信と納付は別の処理
e-Taxソフト(WEB版)の計算書作成時の留意事項には、所得税徴収高計算書データを送信しただけでは納付にならないことが明記されています。
| 日付 | 処理 | 勘定残高 | 仕訳 |
|---|---|---|---|
| 2027年2月5日 | 計算書データを送信する | 変わらない | なし |
| 2027年2月5日 | 納付日を2月10日に指定する | 変わらない | なし |
| 2027年2月10日 | 登録口座から5,105円が引き落とされる | 普通預金と預り金が各5,105円減る | あり |
e-Taxのダイレクト納付案内によれば、納付の効力が生じるのは、金融機関が国庫金勘定への振替処理を行った時点です。
送信や期日指定をした時点では、普通預金も預り金も動きません。
2.1月20日の源泉徴収税額は2月10日までに納める
国税庁の「司法書士等に支払う報酬・料金」によれば、司法書士報酬から源泉徴収した税額は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。
今回の税額は、次の計算です。
(60,000円-10,000円)×10.21%=5,105円
| 日付 | 処理 | 判断 |
|---|---|---|
| 2027年1月20日 | Bへ支払い、5,105円を源泉徴収 | 預り金を計上する |
| 2027年2月5日 | 計算書を送信し、納付日を指定 | まだ納付前 |
| 2027年2月10日 | 登録口座から納付 | 原則の納付期限 |
期日指定で選べる納付日は、納付期限までの日です。また、納付期限当日にデータを送信した場合は期日指定を選べません。本設例では、余裕を持って2月5日に手続をします。
3.受信通知から期日指定へ進む
ダイレクト納付を利用するには、e-Taxの利用開始手続、利用可能な金融機関の口座、ダイレクト納付利用届出書の提出が必要です。登録が完了すると、メッセージボックスに口座登録完了通知が格納されます。
準備を終えたT社は、e-Taxの公式手順に沿って進めます。
- e-Taxソフト(WEB版)で所得税徴収高計算書データを作成し、送信する。
- 「お知らせ・受信通知」の受信フォルダから「受信通知(納付区分番号通知)」を開く。
- 納付金額5,105円、納期等の区分、納税者情報を確認する。
- 「納付日を指定される方」を選び、登録口座と2027年2月10日を指定する。
- 2月10日以後に、ダイレクト納付完了通知と口座の引落しを確認する。
2月5日に確認できるのは、データが受け付けられ、納付日を指定したことまでです。納付完了は、指定日に改めて確認します。
4.納付時の仕訳
2月5日の送信時と期日指定時には仕訳をしません。
2月10日に5,105円の振替が行われたことを確認したら、次の仕訳をします。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金(源泉所得税等) | 5,105円 | 普通預金 | 5,105円 |
預り金は負債の減少、普通預金は資産の減少です。借方と貸方は5,105円で一致します。
納付額を租税公課にする仕訳ではありません。5,105円はT社自身の費用ではなく、Bへの支払時に預かった税額だからです。
5.納付後の残高を検算する
| 勘定科目 | 納付前 | 増減 | 納付後 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 借方残高39,105円 | 貸方5,105円 | 借方残高34,000円 |
| 預り金(源泉所得税等) | 貸方残高5,105円 | 借方5,105円 | 0円 |
| 未払金 | 0円 | 増減なし | 0円 |
- 普通預金:39,105円-5,105円=34,000円
- 預り金:5,105円-5,105円=0円
- 借方合計と貸方合計:5,105円=5,105円
預り金がゼロになり、普通預金の減少額が納付額と一致すれば、支払から納付までの仕訳がつながります。
6.完了通知とエラー通知を確認する
e-TaxのFAQによれば、納付が完了すると、メッセージボックスにダイレクト納付完了通知が格納されます。納付できなかった場合は、ダイレクト納付エラー通知が格納されます。
| 確認結果 | 仕訳 | 預り金残高 |
|---|---|---|
| 完了通知と5,105円の引落しを確認 | 預り金5,105円/普通預金5,105円 | 0円 |
| エラー通知があり、引落しもない | 納付仕訳なし | 貸方5,105円 |
| 計算書を送信しただけ | 納付仕訳なし | 貸方5,105円 |
| 引落しはあるが、完了通知がまだない | 口座明細とe-Taxの状況を照合する | 重複納付を避けて確認する |
指定日の通知は、処理件数によって格納まで時間がかかることがあります。通知が見当たらないだけで、同じ税額をすぐに納め直してはいけません。まず口座明細とメッセージボックスを照合します。
残高不足で引落しができなかった場合は、e-Taxの案内に従い、納付日当日に必要な資金を入金したうえで即時納付を行います。期限内に処理できない場合や状況が判然としない場合は、所轄税務署へ確認します。
ダイレクト納付では領収証書は発行されません。領収証書が必要な場合は、所定の納付書を使った金融機関等の窓口納付を選びます。e-Taxソフト(WEB版)で作成した計算書を印刷しても、窓口用の納付書としては使用できません。
7.5日で仕訳の時点を定着させる
| 日 | 練習内容 |
|---|---|
| 1日目 | 報酬支払日、計算書送信日、納付日を時系列に並べる |
| 2日目 | 2月5日の送信時に仕訳が必要か判断する |
| 3日目 | 2月10日の仕訳を借方と貸方に分けて書く |
| 4日目 | 普通預金と預り金の納付後残高を計算する |
| 5日目 | エラー通知があり、引落しがなかった場合の仕訳を答える |
| 日 | 解答 |
|---|---|
| 1日目 | 1月20日、2月5日、2月10日の順 |
| 2日目 | 仕訳なし |
| 3日目 | 借方・預り金5,105円、貸方・普通預金5,105円 |
| 4日目 | 普通預金34,000円、預り金0円 |
| 5日目 | 納付仕訳なし。預り金は貸方残高5,105円のまま |
今回のまとめ
- 所得税徴収高計算書データを送信しただけでは、納付したことにならない。
- 送信時と期日指定時には仕訳をしない。
- 5,105円の振替時に、預り金を借方、普通預金を貸方に記帳する。
- 納付後の残高は、普通預金34,000円、預り金0円、未払金0円となる。
- 指定日には、完了通知またはエラー通知と口座明細を確認する。
「送信済み」と「納付済み」は別です。
この区別ができれば、仕訳を早く計上したり、納付確認を忘れたりするミスを減らせます。
