第232回では、引落し前に口座指定を変更する場合を扱いました。
今回は、ダイレクト納付の完了を確認しないまま、同じ源泉所得税等を別の口座からも納付した場合です。
預り金を消すのは1回だけです。余分に納付した5,105円は費用ではなく、還付を受ける未収入金として整理します。
1.口座変更と二重納付は違う
| 回 | 資金移動 | 帳簿処理 |
|---|---|---|
| 第232回 | 取消し後、B口座から1回だけ引落し | 取消しと再指定は仕訳なし。引落完了時に預り金を消す |
| 第233回 | A口座とB口座から各5,105円を納付 | 正当税額は預り金、余分な納付は未収入金として処理する |
取消しや期日指定だけでは預金は動きません。今回は実際に2口座から出金されているため、2件とも仕訳が必要です。
e-Taxの操作マニュアルにも、選択した納付手続の完了を確かめずに別の納付手続を行うと、二重納付のおそれがあるとの注意があります。
2.正当税額と納付済額を照合する
e-Taxのダイレクト納付に関するFAQでは、納付完了後に受信通知等の内容が更新され、メッセージボックスへ完了通知が格納されると案内されています。
| 確認資料 | 確認した内容 |
|---|---|
| 所得税徴収高計算書データ | 正当税額は5,105円 |
| ダイレクト納付完了通知 | A口座から5,105円を納付 |
| 電子納税の結果 | B口座から5,105円を納付 |
| 預金明細 | 両口座から各5,105円を出金 |
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 納付済額 | 5,105円×2回 | 10,210円 |
| 正当税額 | 所得税徴収高計算書の税額 | 5,105円 |
| 誤納額 | 10,210円-5,105円 | 5,105円 |
司法書士から源泉徴収した税額は5,105円です。国へ2回納付しても、預り金が2回分に増えるわけではありません。
3.1回目は預り金、2回目は未収入金
A口座からの正当な納付
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金(源泉所得税等) | 5,105円 | 普通預金A | 5,105円 |
この仕訳で預り金残高は0円になります。
B口座からの余分な納付
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収入金(源泉所得税等過誤納金) | 5,105円 | 普通預金B | 5,105円 |
本設例では、二重納付を確認し、還付を請求する方針が決まっているため未収入金を使います。勘定科目は会社の方針により異なりますが、預り金や租税公課と混ぜないことが大切です。
2回目も預り金の借方へ記帳すると、預り金に5,105円の借方残高が残ります。その場合は、次のように振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収入金(源泉所得税等過誤納金) | 5,105円 | 預り金(源泉所得税等) | 5,105円 |
4.誤納額の還付を請求する
国税庁の「源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の還付請求」では、正当税額を超えて納付した源泉徴収義務者が、所轄税務署へ還付請求書を提出する手続を案内しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 請求者 | 源泉徴収義務者であるW社 |
| 提出先 | 源泉所得税の納税地を所轄する税務署 |
| 還付請求額 | 5,105円 |
| 誤納の理由 | 同じ税目・対象期間・税額を重複して納付したため |
| 計算 | 納付済額10,210円-正当税額5,105円=5,105円 |
添付書類は、還付対象額を納付した際の所得税徴収高計算書の写しと、誤納の事実を記載した帳簿書類の写しです。国税庁の記載要領では、帳簿書類の例として預り金元帳が示されています。電子納税の場合は、納付区分番号を確認されることがあります。
還付請求書はe-Taxソフトで提出できます。書面の場合は、添付書類とともに所轄税務署へ持参または送付します。
還付請求書の提出だけでは預金も未収入金も動かないため、本設例では提出時の仕訳はありません。
国税庁は、納付した日から5年間の間に提出しないと、時効により請求権が消滅すると案内しています。二重納付を確認したら、早めに資料をそろえます。
5.司法書士報酬には給与・賞与向けの充当届出を使わない
国税庁の案内では、「誤納額充当届出書」を利用できるのは、過誤納金が給与や賞与に係る場合とされています。
| 誤納額が生じた所得 | 手続 |
|---|---|
| 給与・賞与 | 要件を満たせば、将来納付する給与・賞与の源泉所得税等への充当を届け出ることができる |
| 司法書士報酬 | 給与所得以外のため、誤納額還付請求書で還付を請求する |
所得税徴収高計算書に司法書士報酬を記載していても、その所得が給与や賞与に変わるわけではありません。様式だけを見て充当届出を選ばないようにします。
6.還付入金と残高を検算する
B口座へ誤納額5,105円が入金されたときに、未収入金を消します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金B | 5,105円 | 未収入金(源泉所得税等過誤納金) | 5,105円 |
| 段階 | 普通預金A | 普通預金B | 預り金 | 未収入金 |
|---|---|---|---|---|
| 納付前 | 10,000円 | 10,000円 | 貸方5,105円 | 0円 |
| 1回目の納付後 | 4,895円 | 10,000円 | 0円 | 0円 |
| 2回目の納付後 | 4,895円 | 4,895円 | 0円 | 5,105円 |
| 還付請求後 | 4,895円 | 4,895円 | 0円 | 5,105円 |
| 還付入金後 | 4,895円 | 10,000円 | 0円 | 0円 |
還付後の預金合計は14,895円です。開始時の20,000円から、正当税額5,105円だけが減った金額と一致します。
7.二重納付を防ぐ確認順序
- 税目、対象期間、税額を確認する。
- 同じ内容について、期日指定または処理中の納付がないか確認する。
- 別の方法で納付する前に、メッセージボックスで完了通知またはエラー通知を確認する。
- 完了通知、納付結果、預金明細を照合して記録する。
担当者が複数いる場合は、税目、対象期間、税額、納付方法、引落口座、指定日、完了状態を一つの管理表で共有します。
8.5日練習
| 日 | 問題 | 答え |
|---|---|---|
| 1日目 | 正当税額5,105円を2回納付した。納付済額と誤納額はいくらか | 納付済額10,210円、誤納額5,105円 |
| 2日目 | A口座からの1回目を仕訳する | 借方・預り金5,105円、貸方・普通預金A5,105円 |
| 3日目 | B口座からの2回目を仕訳する | 借方・未収入金5,105円、貸方・普通預金B5,105円 |
| 4日目 | 還付請求書を提出した日の仕訳を考える | 本設例では仕訳なし |
| 5日目 | 5,105円の還付後に残高を検算する | A口座4,895円、B口座10,000円、預り金0円、未収入金0円 |
9.まとめ
- 正当税額5,105円は、1回目の納付で預り金から消す。
- 余分な5,105円は、還付を受ける未収入金として管理する。
- 司法書士報酬の誤納額には、給与・賞与向けの充当届出を使わない。
- 還付請求書の提出時ではなく、入金時に未収入金を消す。
- 還付後は、正当税額だけが預金から減っているかを確認する。
二重納付では、預かった税額と余分な納付を分けて考えます。預り金は1回分。余分な納付は会社の債権です。
