第230回 源泉所得税のダイレクト納付ゼロ入門:期日指定と5,105円の納付仕訳(5日練習付き)

第229回では、司法書士報酬から源泉徴収した5,105円について、所得税徴収高計算書を作成しました。

今回は、そのデータをe-Taxで送信し、ダイレクト納付で納めます。

計算書を送信しただけでは、納付は終わりません。

送信、期日指定、口座からの引落し。この三つを分けると、仕訳の時点がはっきりします。

1.送信と納付は別の処理

e-Taxソフト(WEB版)の計算書作成時の留意事項には、所得税徴収高計算書データを送信しただけでは納付にならないことが明記されています。

日付 処理 勘定残高 仕訳
2027年2月5日 計算書データを送信する 変わらない なし
2027年2月5日 納付日を2月10日に指定する 変わらない なし
2027年2月10日 登録口座から5,105円が引き落とされる 普通預金と預り金が各5,105円減る あり

e-Taxのダイレクト納付案内によれば、納付の効力が生じるのは、金融機関が国庫金勘定への振替処理を行った時点です。

送信や期日指定をした時点では、普通預金も預り金も動きません。

2.1月20日の源泉徴収税額は2月10日までに納める

国税庁の「司法書士等に支払う報酬・料金」によれば、司法書士報酬から源泉徴収した税額は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。

今回の税額は、次の計算です。

(60,000円-10,000円)×10.21%=5,105円

日付 処理 判断
2027年1月20日 Bへ支払い、5,105円を源泉徴収 預り金を計上する
2027年2月5日 計算書を送信し、納付日を指定 まだ納付前
2027年2月10日 登録口座から納付 原則の納付期限

期日指定で選べる納付日は、納付期限までの日です。また、納付期限当日にデータを送信した場合は期日指定を選べません。本設例では、余裕を持って2月5日に手続をします。

3.受信通知から期日指定へ進む

ダイレクト納付を利用するには、e-Taxの利用開始手続、利用可能な金融機関の口座、ダイレクト納付利用届出書の提出が必要です。登録が完了すると、メッセージボックスに口座登録完了通知が格納されます。

準備を終えたT社は、e-Taxの公式手順に沿って進めます。

  1. e-Taxソフト(WEB版)で所得税徴収高計算書データを作成し、送信する。
  2. 「お知らせ・受信通知」の受信フォルダから「受信通知(納付区分番号通知)」を開く。
  3. 納付金額5,105円、納期等の区分、納税者情報を確認する。
  4. 「納付日を指定される方」を選び、登録口座と2027年2月10日を指定する。
  5. 2月10日以後に、ダイレクト納付完了通知と口座の引落しを確認する。

2月5日に確認できるのは、データが受け付けられ、納付日を指定したことまでです。納付完了は、指定日に改めて確認します。

4.納付時の仕訳

2月5日の送信時と期日指定時には仕訳をしません。

2月10日に5,105円の振替が行われたことを確認したら、次の仕訳をします。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
預り金(源泉所得税等) 5,105円 普通預金 5,105円

預り金は負債の減少、普通預金は資産の減少です。借方と貸方は5,105円で一致します。

納付額を租税公課にする仕訳ではありません。5,105円はT社自身の費用ではなく、Bへの支払時に預かった税額だからです。

5.納付後の残高を検算する

勘定科目 納付前 増減 納付後
普通預金 借方残高39,105円 貸方5,105円 借方残高34,000円
預り金(源泉所得税等) 貸方残高5,105円 借方5,105円 0円
未払金 0円 増減なし 0円
  • 普通預金:39,105円-5,105円=34,000円
  • 預り金:5,105円-5,105円=0円
  • 借方合計と貸方合計:5,105円=5,105円

預り金がゼロになり、普通預金の減少額が納付額と一致すれば、支払から納付までの仕訳がつながります。

6.完了通知とエラー通知を確認する

e-TaxのFAQによれば、納付が完了すると、メッセージボックスにダイレクト納付完了通知が格納されます。納付できなかった場合は、ダイレクト納付エラー通知が格納されます。

確認結果 仕訳 預り金残高
完了通知と5,105円の引落しを確認 預り金5,105円/普通預金5,105円 0円
エラー通知があり、引落しもない 納付仕訳なし 貸方5,105円
計算書を送信しただけ 納付仕訳なし 貸方5,105円
引落しはあるが、完了通知がまだない 口座明細とe-Taxの状況を照合する 重複納付を避けて確認する

指定日の通知は、処理件数によって格納まで時間がかかることがあります。通知が見当たらないだけで、同じ税額をすぐに納め直してはいけません。まず口座明細とメッセージボックスを照合します。

残高不足で引落しができなかった場合は、e-Taxの案内に従い、納付日当日に必要な資金を入金したうえで即時納付を行います。期限内に処理できない場合や状況が判然としない場合は、所轄税務署へ確認します。

ダイレクト納付では領収証書は発行されません。領収証書が必要な場合は、所定の納付書を使った金融機関等の窓口納付を選びます。e-Taxソフト(WEB版)で作成した計算書を印刷しても、窓口用の納付書としては使用できません。

7.5日で仕訳の時点を定着させる

日 練習内容
1日目 報酬支払日、計算書送信日、納付日を時系列に並べる
2日目 2月5日の送信時に仕訳が必要か判断する
3日目 2月10日の仕訳を借方と貸方に分けて書く
4日目 普通預金と預り金の納付後残高を計算する
5日目 エラー通知があり、引落しがなかった場合の仕訳を答える
日 解答
1日目 1月20日、2月5日、2月10日の順
2日目 仕訳なし
3日目 借方・預り金5,105円、貸方・普通預金5,105円
4日目 普通預金34,000円、預り金0円
5日目 納付仕訳なし。預り金は貸方残高5,105円のまま

今回のまとめ

  • 所得税徴収高計算書データを送信しただけでは、納付したことにならない。
  • 送信時と期日指定時には仕訳をしない。
  • 5,105円の振替時に、預り金を借方、普通預金を貸方に記帳する。
  • 納付後の残高は、普通預金34,000円、預り金0円、未払金0円となる。
  • 指定日には、完了通知またはエラー通知と口座明細を確認する。

「送信済み」と「納付済み」は別です。

この区別ができれば、仕訳を早く計上したり、納付確認を忘れたりするミスを減らせます。