前回は、1月1日現在の資産を基に行う償却資産申告を扱いました。今回は、その前段階となる「機械や備品を売却・廃棄したとき、帳簿からどう外すか」を整理します。主題は、帳簿価額と売却損益の計算、除却の判定、仕訳、固定資産台帳の更新です。
基準日と前提:本稿は2026年9月19日を確認基準日とし、同日に閲覧できる国税庁・e-Govの法令、通達および公表資料を参照しています。仕訳例は、日本国内の法人が所有する機械装置・器具備品について、間接法、税抜経理方式、消費税の課税事業者、通常の国内取引を前提とします。一般的な学習用の説明であり、個別の契約、会計方針、税務申告に対する判断ではありません。
1.売却損益は帳簿価額と売却価額を比べる
固定資産を売却するときは、最初に売却直前の帳簿価額を求めます。間接法の場合の基本式は次のとおりです。
帳簿価額=取得価額-売却直前までの減価償却累計額
本稿のような税抜経理方式では、会計上の売却損益を次のように計算します。
売却損益=税抜売却価額-売却直前の帳簿価額
| 用語 | 意味 | 主な確認資料 |
|---|---|---|
| 取得価額 | 固定資産の購入代価と、事業に使用できる状態にするための付随費用などからなる金額 | 固定資産台帳、契約書、請求書 |
| 減価償却累計額 | 対象資産について計上した減価償却費の累計額 | 固定資産台帳、総勘定元帳 |
| 帳簿価額 | 間接法では、取得価額から対象資産の減価償却累計額を差し引いた残額 | 固定資産台帳 |
| 税抜売却価額 | 売却対価から消費税等を分けた本体価額 | 売買契約書、請求書、入金資料 |
| 固定資産売却益 | 税抜売却価額が帳簿価額を上回る場合の差額 | 計算明細、仕訳帳 |
| 固定資産売却損 | 帳簿価額が税抜売却価額を上回る場合の差額 | 計算明細、仕訳帳 |
| 固定資産除却損 | 廃棄などにより帳簿から外す資産の帳簿価額を基礎とする損失 | 廃棄記録、社内決裁、固定資産台帳 |
売却日までの減価償却費を計上する会計処理を採用している場合は、先に「借方:減価償却費/貸方:減価償却累計額」を記帳し、その後の帳簿価額で売却損益を計算します。以下の数値例は、売却直前までに必要な減価償却が計上済みという前提です。
2.売却・除却・使用停止を区別する
| 状況 | 基本的な処理 | 注意点 |
|---|---|---|
| 売却 | 対価を得て資産を他者へ移転し、帳簿から外す | 売却価額と帳簿価額の差から売却損益を計算する |
| 下取り | 旧資産の売却と新資産の取得に分ける | 差額決済だけで処理せず、それぞれの対価を確認する |
| 物理的な廃棄 | 使用を終えた資産を処分し、帳簿から外す | 廃材などに価値が残る場合や処分費用がある場合は、その内容も確認する |
| 一時的な使用停止 | 保有を続け、再使用や売却の可能性が残る | 使用を止めただけで直ちに除却損を計上できるとは限らない |
| 有姿除却 | 現物が残っていても、明確な事実と税務上の要件に基づいて除却を検討する | 単なる遊休状態と区別し、今後の使用可能性と処分見込価額を確認する |
3.売却益が生じる仕訳
取得価額1,200,000円、売却直前の減価償却累計額900,000円の機械を、税抜400,000円で売却したとします。消費税等40,000円を含む440,000円は普通預金へ入金されました。
| 取得価額 | 1,200,000円 |
| 減価償却累計額 | 900,000円 |
| 帳簿価額 | 1,200,000円-900,000円=300,000円 |
| 税抜売却価額 | 400,000円 |
| 固定資産売却益 | 400,000円-300,000円=100,000円 |
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 440,000円 | 機械装置 | 1,200,000円 |
| 減価償却累計額 | 900,000円 | 仮受消費税等 | 40,000円 |
| 固定資産売却益 | 100,000円 | ||
| 合計 | 1,340,000円 | 合計 | 1,340,000円 |
仕訳後は、対象資産分の機械装置1,200,000円と減価償却累計額900,000円が帳簿から外れます。売却益は100,000円であり、入金額440,000円の全額ではありません。
4.売却損が生じる仕訳
取得価額800,000円、減価償却累計額500,000円の備品を税抜200,000円で売却し、消費税等20,000円を含む220,000円が入金されたとします。
帳簿価額300,000円-税抜売却価額200,000円=固定資産売却損100,000円
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 220,000円 | 器具備品 | 800,000円 |
| 減価償却累計額 | 500,000円 | 仮受消費税等 | 20,000円 |
| 固定資産売却損 | 100,000円 | ||
| 合計 | 820,000円 | 合計 | 820,000円 |
直接法では、固定資産勘定が減価償却後の帳簿価額まで直接減額されているため、売却時に減価償却累計額を使いません。直接法と間接法を一つの仕訳に混在させないようにします。
5.対価のない廃棄の仕訳
取得価額600,000円、減価償却累計額500,000円の備品を廃棄したとします。廃材などの価値はなく、処分業者への支払いもこの仕訳には含めません。帳簿価額は100,000円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却累計額 | 500,000円 | 器具備品 | 600,000円 |
| 固定資産除却損 | 100,000円 | ||
| 合計 | 600,000円 | 合計 | 600,000円 |
処分業者への支払いがある場合は、請求内容に応じて処分費用と消費税区分を別に確認します。廃材などが資産として残る場合や売却対価を受け取る場合は、その価額または収入も反映するため、帳簿価額の全額を機械的に除却損としないよう注意します。
6.消費税は売却益ではなく売却対価を基礎にする
国内で事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡は、消費税の課税対象です。国税庁は、事業に使用していた建物、機械、車両などの売却も、事業に付随する資産の譲渡として課税対象になると示しています。したがって、本稿の例では売却益100,000円ではなく、税抜売却価額400,000円を基礎に消費税等を処理します。根拠は、国税庁の「事業者の事業用固定資産の売却」で確認できます。
| 取引 | 消費税上の基本区分 | 確認点 |
|---|---|---|
| 国内で行う機械・備品・車両・建物の売却 | 原則として課税取引 | 売却損益ではなく、売却対価を基礎にする |
| 土地の売却 | 非課税取引 | 土地と建物の一括売却では、それぞれの対価を合理的に区分する |
| 資産の廃棄・盗難・滅失 | 資産の譲渡等に該当しない | 対価を得て資産を移転する取引ではない |
| 処分業者への支払い | 廃棄そのものとは別の役務提供として判定する | 請求内容、課税区分、採用する経理方式を確認する |
廃棄・盗難・滅失の取扱いは、国税庁の消費税法基本通達5-2-13に示されています。
本稿の機械・備品の売却例には、通常の国内取引に適用される消費税と地方消費税の合計10%を使用しています。国税庁の「No.6303 消費税および地方消費税の税率」は、2026年4月1日現在の法令等として、標準税率を合計10%としています。実際の処理では、取引日、経過措置、資産の種類、売手の納税義務、税込・税抜経理の別を確認してください。
7.法人税では会計上と税務上の金額を分けて確認する
法人税基本通達2-1-14では、固定資産の譲渡収益は、別段の定めがある場合を除き、原則として引渡しがあった日の属する事業年度の益金に算入するとされています。ただし、土地、建物その他これらに類する資産について、契約の効力発生日に収益計上している場合の取扱いも定められています。契約日や入金日だけで一律に判断せず、資産の種類、契約内容、引渡しの事実、実際の収益計上を確認します。根拠は国税庁の「固定資産の譲渡等に係る収益」です。
会計上の帳簿価額と、申告調整を反映した税務上の未償却残額は一致しないことがあります。過年度の償却限度超過額、圧縮記帳、特別償却などがある場合は、会計上の売却損益をそのまま税務上の譲渡損益とせず、固定資産台帳と法人税申告書の明細を照合します。減価償却費の損金算入については、法人税法第31条および国税庁の「償却費の損金経理」を確認してください。
有姿除却は「使っていないだけ」では足りない
法人税基本通達7-7-2では、物理的な解撤や廃棄をしていなくても、次のような固定資産について、帳簿価額から処分見込価額を控除した金額を除却損として損金算入できる取扱いが示されています。
- 使用を廃止し、今後通常の方法で事業に使用する可能性がないと認められる固定資産
- 特定製品専用の金型などで、その製品の生産中止により将来使用される可能性がほとんどないことが、その後の状況などから明らかなもの
自社利用ソフトウェアについても、対象業務の廃止やハードウェア・OSの変更などにより、今後使用しないことが明らかな場合の取扱いが同通達7-7-2の2に示されています。詳しい要件は、国税庁の「除却損失等の損金算入」で確認できます。
有姿除却を検討するときは、使用廃止日、使用できない理由、再使用・転用・売却の可能性、処分見込価額を整理します。社内決裁書、製品の生産中止資料、現物写真、資産台帳、処分見積書などは事実関係を確認する資料になり得ますが、必要な証拠と税務判断は個別事情によって異なります。
8.記帳から固定資産台帳更新までの手順
- 対象資産を特定する:資産番号、勘定科目、取得日、取得価額を照合します。
- 売却・除却直前の残高を確定する:対象資産の減価償却累計額と当期の減価償却処理を確認します。
- 処分方法を判定する:売却、下取り、廃棄、滅失、単なる使用停止を区別します。
- 対価と消費税区分を確認する:税抜価額、消費税等、入金額を分けます。
- 仕訳を検算する:帳簿価額と売却損益を再計算し、借方合計と貸方合計の一致を確認します。
- 固定資産台帳を更新する:売却日または除却日、相手先、対価、処分理由を記録し、総勘定元帳と照合します。
- 根拠資料をひも付ける:契約書、請求書、入金資料、社内決裁、廃棄関係資料を資産番号から追えるようにします。
9.初学者が間違えやすいポイント
| 間違い | 正しい確認方法 |
|---|---|
| 売却価額を取得価額と比べる | 売却直前の帳簿価額と比べる |
| 売却益だけに消費税を掛ける | 原則として売却対価を基礎にする |
| 間接法で固定資産を帳簿価額だけ貸方へ記入し、累計額も借方へ記入する | 固定資産を取得価額で消し、対象資産分の累計額を借方へ振り戻す |
| 資産勘定だけを消し、累計額を残す | 対象資産と対応する累計額を同じ処理で帳簿から外す |
| 使っていない資産をすべて除却する | 物理的な廃棄の事実、または有姿除却の要件と事実関係を確認する |
| 下取りの差額だけを新資産の取得価額にする | 旧資産の売却と新資産の取得を分けて記帳する |
| 会計上の帳簿価額をそのまま法人税でも使う | 税務上の未償却残額と申告調整の有無を別に確認する |
10.確認問題
取得価額1,000,000円、減価償却累計額700,000円の機械を、税抜250,000円で売却しました。消費税等25,000円を含む275,000円は普通預金へ入金されています。当期に必要な減価償却は計上済みです。
答えと検算を表示
帳簿価額は1,000,000円-700,000円=300,000円です。帳簿価額と税抜売却価額との差額50,000円が固定資産売却損になります。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 275,000円 | 機械装置 | 1,000,000円 |
| 減価償却累計額 | 700,000円 | 仮受消費税等 | 25,000円 |
| 固定資産売却損 | 50,000円 | ||
| 合計 | 1,025,000円 | 合計 | 1,025,000円 |
11.5日練習
| 日 | 取り組む内容 |
|---|---|
| 1日目 | 取得価額、減価償却累計額、帳簿価額の関係を確認する |
| 2日目 | 売却益、売却損、除却損を一例ずつ計算する |
| 3日目 | 間接法の仕訳を書き、借方・貸方を検算する |
| 4日目 | 売却、廃棄、使用停止を分類し、消費税区分を確認する |
| 5日目 | 仕訳後に対象資産分の取得価額と減価償却累計額が帳簿から外れているか確認する |
固定資産の処分では、「帳簿価額を求める」「取引を分類する」「資産と対応する累計額を帳簿から外す」という順番が基本です。関係会社間取引、著しい低額譲渡、圧縮記帳資産、土地建物の一括売却などでは追加の検討が必要になるため、基準日現在の法令・通達と個別の事実関係を確認してください。
