日別アーカイブ: 2026年9月18日

第187回 償却資産申告ゼロ入門:対象判定・評価額・固定資産税の仕訳を表で整理(令和9年度の免税点改正対応)

第186回では、法人住民税と事業税の全体像を確認しました。今回は同じ地方税のうち、土地・家屋以外の事業用資産にかかる固定資産税(償却資産)の申告を扱います。

先に結論です。償却資産の所有者は、原則として毎年1月1日現在の資産を、その資産が所在する市町村へ申告します。法人税・所得税で取得価額の全額を損金または必要経費に算入した資産でも、固定資産税では申告対象になることがあります。また、課税標準額が免税点未満でも、申告義務までなくなるわけではありません。

本稿は2026年9月18日時点で公布・公表されている法令と公的資料に基づく一般的な説明です。個別の資産区分、リース契約、課税標準の特例、自治体条例または会計処理を判断するものではありません。実際の申告では、資産所在地の自治体が公表する対象年度の手引と様式を確認してください。

1.償却資産申告の基本

確認項目 基本的な取扱い 覚える言葉
税金の種類 固定資産税のうち、土地・家屋以外の事業用償却資産にかかる部分 「償却資産税」という独立した税目ではない
基準日 毎年1月1日 賦課期日
申告する人 原則として、1月1日現在の償却資産の所有者 所有者判定
申告先 資産が所在する市町村。東京都23区内に所在する資産は東京都 本店所在地ではなく資産所在地
申告期限 原則として毎年1月31日。休日に当たる場合の具体的な期限は自治体の案内で確認 1月31日
課税方法 申告内容などを基に自治体が価格と税額を決定 賦課課税方式
税率 地方税法上の標準税率は1.4%。適用税率は自治体条例を確認 標準税率

法人税申告書の減価償却明細を税務署へ提出しても、償却資産申告をしたことにはなりません。提出先と制度が異なるためです。償却資産の定義、標準税率、免税点、賦課期日および申告義務は、e-Gov法令検索「地方税法」の第341条、第350条、第351条、第359条および第383条で確認できます。

2.令和9年度から償却資産の免税点は180万円

令和8年法律第2号により、償却資産にかかる固定資産税の免税点は、令和9年度分から180万円へ引き上げられました。

適用年度 償却資産の免税点
令和8年度分まで 課税標準額が150万円未満
令和9年度分以後 課税標準額が180万円未満

免税点改正の施行日は2027年4月1日で、改正後の地方税法第351条は令和9年度分以後の固定資産税に適用されます。改正文、施行日および適用年度は、参議院掲載の「地方税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第2号)」第1条、附則第1条第3号および附則第14条第2項で確認できます。

令和9年度申告では、2027年1月1日現在の所有状況を申告します。2027年1月31日は日曜日であるため、一般的な期限計算では翌日の2027年2月1日(月)が期限となりますが、提出先、受付期限、様式および添付書類は資産所在地の自治体が公表する令和9年度版の案内で最終確認してください。

免税点を理解するための注意点

  • 取得価額ではなく、申告先の課税単位における課税標準額の合計で判定します。指定都市の区など、集計単位に注意が必要な場合があるため、自治体の手引を確認します。
  • 資産1個ごとに180万円未満かどうかを判定する制度ではありません。
  • 180万円を控除して残額へ課税する制度ではありません。免税点以上の場合は、原則として課税標準額全体が税額計算の基礎になります。
  • 免税点未満と見込まれても、償却資産の所有者には原則として申告が必要です。
  • 地方税法第351条ただし書に基づく条例上の取扱いもあるため、申告先自治体の条例と手引を確認します。

3.申告対象になる資産・ならない資産

区分 主な例 基本判定
構築物 駐車場舗装、門、塀、広告塔、外構、テナント施工の内装・造作など 対象になり得る
機械・装置 製造設備、加工機械、発電設備、機械式駐車設備など 対象
船舶・航空機 事業用船舶、飛行機、ヘリコプターなど 対象
車両・運搬具 大型特殊自動車など 対象になり得る
工具・器具・備品 パソコン、机、椅子、陳列棚、冷蔵庫、医療機器、看板など 対象
土地・家屋 土地、固定資産税上の家屋として評価される建物や設備 償却資産申告の対象外
無形固定資産 ソフトウェア、特許権、商標権、営業権など 対象外
棚卸資産 販売目的の商品、製品、原材料など 対象外
自動車税・軽自動車税の対象車両 普通自動車、軽自動車、小型特殊自動車など 対象外

建物附属設備は判断を誤りやすい分野です。家屋と一体で評価される設備がある一方、特定の生産・業務用設備や、賃借人が取り付けた内装・造作などは償却資産になる場合があります。名称だけで決めず、所有者、用途、施工内容および家屋との一体性を確認します。具体例は東京都主税局「固定資産税(償却資産)」で確認できます。自治体によって取扱いが異なる場合がある点にも注意してください。

4.国税の少額資産と同じ判定をしない

法人税・所得税で早期に費用化できるかどうかと、固定資産税の申告対象になるかどうかは別の問題です。

国税上の処理 固定資産税の基本的な取扱い 注意点
使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満の資産を、法人税法・所得税法の規定により一時に損金または必要経費へ算入 対象外 個別に減価償却資産として計上した場合は対象になり得る
取得価額20万円未満の資産について3年間の一括償却を選択 対象外 通常の耐用年数で個別償却した場合は対象
中小企業者等の少額減価償却資産の特例により全額を損金または必要経費へ算入 対象 国税で即時に費用化しても、固定資産税では除外されない
通常の減価償却 対象 帳簿価額が少額または1円でも対象になり得る

中小企業者等の少額減価償却資産の特例では、一定の要件を満たす場合、2026年4月1日以後に取得等をした取得価額10万円以上40万円未満の資産が対象になります。2026年3月31日以前の取得分は30万円未満でした。年間合計300万円までという上限などもあり、法人と個人では適用要件をそれぞれ確認する必要があります。詳細は、国税庁の「減価償却のあらまし」「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」および「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」を確認してください。

例えば、要件を満たす法人が2026年6月に取得した35万円のパソコンをこの特例で全額損金算入しても、それだけを理由に償却資産申告から除外することはできません。他の除外要件に該当しなければ申告対象です。

5.1月1日現在の資産を帳簿から拾う

申告書へ直接転記する前に、前年度の申告明細と固定資産台帳を照合します。

前年度の申告資産 + 増加資産 - 減少資産 = 1月1日現在の申告候補資産

確認資料 確認する内容
前年度の種類別明細書 前年まで申告していた資産と資産番号
固定資産台帳・減価償却明細 取得年月、取得価額、耐用年数、除却状況
固定資産勘定の総勘定元帳 前年中の取得、売却、除却、他拠点への移動
請求書・契約書・工事明細 資産の内容、取得価額に含まれる付随費用、内装工事の内訳
廃棄・売却記録 1月1日より前に所有しなくなった事実
拠点別の資産一覧 申告先となる市町村と実際の設置場所

年末年始の判定

1月1日現在の状況 基本判定 理由
12月中に取得し、事業に使用できる状態にある 対象 取得月にかかわらず1月1日に所有している
1月2日に取得し、1月1日には所有していない 当年度は対象外 賦課期日後の取得
12月31日までに売却または廃棄が完了している 対象外 1月1日に所有していない
1月2日に廃棄した 対象 1月1日には所有している
減価償却済みだが、現在も使用できる 対象 帳簿価額と申告対象の判定は別
休止中だが、いつでも事業に使用できる 対象 現に事業の用に供することができる状態にある

6.評価額と税額の計算

償却資産の評価は、取得年月、取得価額および耐用年数に応じて一品ごとに行います。耐用年数に対応する減価率を「r」とした基本式は次のとおりです。

  • 前年中に取得した資産:取得価額 ×(1-r÷2)
  • 前年前に取得した資産:前年度評価額 ×(1-r)
  • 算出額が取得価額の5%を下回る場合:取得価額の5%を評価額とする

前年中に取得した資産は、取得月にかかわらず半年分の減価を反映します。法人税・所得税の月割計算とは異なるため、会計上または国税上の帳簿価額を、そのまま固定資産税の評価額として使うことはできません。

税額 = 課税標準額 × 適用税率

課税標準額は、原則として資産の評価額を合計し、課税標準の特例がある場合はその特例を反映して求めます。端数処理や適用税率は自治体の条例と手引を確認してください。例えば横浜市の公表資料では、課税標準額の1,000円未満と税額の100円未満を切り捨てる取扱いが示されています。

令和9年度の計算例

次の前提で、評価額から税額までを計算します。

取得日 2026年7月1日
資産 事務用備品
取得価額 2,400,000円
耐用年数 8年
固定資産評価上の減価率 0.250
課税標準の特例 なし
同じ課税単位内の他の償却資産 なし
税率 標準税率1.4%を使用

評価額
2,400,000円 ×(1-0.250÷2)=2,100,000円

免税点の判定
2,100,000円は令和9年度の免税点1,800,000円以上であるため、この前提では課税対象になります。

税額
2,100,000円 × 1.4% = 29,400円

この例では課税標準額と税額に切捨て対象となる端数がありません。免税点との差額30万円に税率を掛けるのではなく、課税標準額210万円全体を基に計算します。

7.帳簿価額と固定資産税評価額を区別する

同じ資産でも、会計上の帳簿価額と固定資産税の評価額は別々に計算します。前記の備品について、消費税等を考慮せず、会計上は定額法、償却率0.125、残存価額0円、2026年7月から12月までの6か月を償却するものと仮定します。

日付・内容 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
2026年7月1日・備品取得 備品 2,400,000円 普通預金 2,400,000円
2026年12月31日・減価償却 減価償却費 150,000円 減価償却累計額 150,000円

減価償却費は、2,400,000円 × 0.125 × 6か月÷12か月=150,000円です。2026年12月31日現在の残高は次のようになります。

  • 備品:借方残高2,400,000円
  • 減価償却累計額:貸方残高150,000円
  • 帳簿価額:2,400,000円-150,000円=2,250,000円

一方、2027年1月1日を基準とする固定資産税評価額は2,100,000円です。帳簿価額との差額150,000円を仕訳で調整することはありません。償却資産申告書の提出や評価額の計算だけを理由とする仕訳も不要です。

賦課決定時と納付時の仕訳

前記の前提による固定資産税29,400円について、納税通知書の到達により債務を計上し、その後に普通預金から全額を納付する場合は次のとおりです。

内容 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
賦課決定による計上 租税公課 29,400円 未払金 29,400円
普通預金から納付 未払金 29,400円 普通預金 29,400円

賦課決定時には未払金の貸方残高が29,400円となり、納付時に借方へ同額を計上することで残高は0円になります。租税公課は29,400円増加し、普通預金は29,400円減少します。各仕訳の借方金額と貸方金額は一致しています。

法人が負担する固定資産税は、原則として賦課決定のあった事業年度の損金です。ただし、納期の開始日または実際の納付日の属する事業年度に損金経理した場合は、その事業年度の損金とする取扱いがあります。詳細は国税庁「租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期」を確認してください。個人事業者の必要経費算入時期は、国税庁「固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合」で確認できます。

8.申告作業の順番

  1. 資産所在地を分ける:本店、支店、店舗、工場などの所在地ごとに申告先を確認します。
  2. 前年度明細を起点にする:前年の申告資産へ、取得、売却、除却および移動を反映します。
  3. 対象・対象外を判定する:少額資産、ソフトウェア、車両および内装工事を重点的に確認します。
  4. 1月1日現在で締める:年末取得と年始売却・除却の時期を取り違えないようにします。
  5. 申告書と種類別明細書を作る:取得年月、取得価額、耐用年数および増減理由などを転記します。
  6. 特例資料を確認する:課税標準の特例を受ける場合は、自治体指定の記載方法と添付書類を確認します。
  7. 期限までに提出する:紙またはeLTAXなど、自治体が案内する方法で提出し、提出控えを保存します。

提出前チェック

  • 前年度の申告資産に当年中の増加・減少を正しく反映した
  • 取得価額、取得年月および耐用年数を請求書や台帳と照合した
  • 除却資産について、廃棄日や売却日を確認した
  • 償却済みでも使用中または使用可能な資産を除外していない
  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例と3年一括償却を区別した
  • ソフトウェアをパソコンなどの有形資産と分けた
  • 複数の市町村に所在する資産を本店所在地へまとめていない
  • 免税点未満という理由だけで申告を省略していない

9.短い判定練習

資産と処理 基本判定 理由
2026年6月取得の35万円のパソコンを、中小企業者等の特例で全額損金算入 対象 国税上の特例による費用化だけでは、固定資産税の対象から除外されない
18万円の事務机を3年間の一括償却資産として処理 対象外 法人税法・所得税法の規定による一括償却資産は除外される
減価償却が終了したまま使用している製造機械 対象 事業に使用できる状態なら、償却済みでも対象になる
50万円の業務用ソフトウェア 対象外 無形固定資産に該当する
自動車税の対象となる普通乗用車 対象外 自動車税の課税対象となる自動車は償却資産から除かれる

10.続けるための週次メニュー

  1. 固定資産台帳から5件を選び、「対象・対象外・要確認」に分類する。
  2. 前年度明細と前年中の増減資産を、1つの申告先について照合する。
  3. 取得価額と耐用年数を使い、評価額を1件だけ手計算する。
  4. 「免税点未満でも申告義務は別」「国税で即時費用化しても対象になる場合がある」「帳簿価額と評価額は別」の3点を説明する。

一度に全資産を覚える必要はありません。対象判定、台帳照合、評価計算を少数の資産で繰り返すと、申告書と簿記のつながりを確認しやすくなります。

まとめ

  • 償却資産の所有者は、原則として毎年1月1日現在の状況を資産所在地の自治体へ申告する。
  • 令和9年度分以後の償却資産の免税点は180万円だが、免税点未満でも申告義務は別に判定する。
  • 国税の少額減価償却資産の特例で全額を損金または必要経費にした資産でも、固定資産税では申告対象になり得る。
  • 帳簿価額と固定資産税評価額は別計算であり、評価額と帳簿価額との差額を仕訳で調整しない。
  • 適用税率、課税標準の特例、集計単位、提出期限および添付書類は資産所在地の自治体資料で最終確認する。

主な一次資料

実際の申告では、資産所在地の自治体が公表する最新年度の申告手引、条例および申告書様式を優先してください。判断が難しい資産や契約については、自治体の償却資産担当部署または税理士へ個別に確認してください。