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第37回 簿記入門(実戦練習編②) 精算表

第37回 簿記入門(実戦練習編②)
精算表を一気に完成させる
― 簿記2級・途中で迷わないための処理手順 ―

前回(第36回)では、
決算整理仕訳を集中的に練習しました。

今回は、その仕訳を使って、

精算表(決算整理後試算表)を完成させる

実戦練習を行います。


1. 精算表で受験生がつまずく理由

精算表が苦手な人の多くは、

  • どこから手を付けていいか分からない
  • 途中で借方・貸方が分からなくなる
  • P/LとB/Sの区別があいまい

という状態に陥っています。

精算表は「順番」を固定すれば怖くありません。


2. 精算表の全体構造を確認する

区分 役割
試算表欄 決算整理前の残高
整理仕訳欄 期末修正
損益計算書欄 収益・費用
貸借対照表欄 資産・負債・純資産

この4つの欄を、

左から右へ、同じ順番で処理

していきます。


3. 実戦例:決算整理前試算表(抜粋)

科目 借方 貸方
現金 120,000
売掛金 200,000
備品 100,000
買掛金 90,000
資本金 300,000
売上 500,000
給料 180,000

4. 決算整理仕訳を整理欄に書く

整理① 減価償却

備品(100,000円、耐用年数5年)

借方 減価償却費 20,000
貸方 備品減価償却累計額 20,000

整理② 貸倒引当金

売掛金残高200,000円、見積率5%

借方 貸倒引当金繰入 10,000
貸方 貸倒引当金 10,000

5. 精算表への転記ルール(ここが重要)

科目の性質 転記先
収益・費用 損益計算書欄
資産・負債・純資産 貸借対照表欄

迷ったら「P/LかB/Sか」を先に判断


6. 完成後に必ずやるチェック

損益計算書欄の借貸は一致しているか
貸借対照表欄の借貸は一致しているか
当期純利益がP/LとB/Sで一致しているか

このチェックを必ず最後に行うことで、

ケアレスミスを大きく減らせます。


まとめ

  • 精算表は順番がすべて
  • 整理仕訳→転記→チェックを固定
  • P/LかB/Sかを先に判断

次回は、
財務諸表作成問題(P/L・B/S)
を扱います。

第36回 簿記入門(実戦練習編①) 決算整理仕訳

第36回 簿記入門(実戦練習編①)
決算整理仕訳で確実に点を取る
― 簿記2級・頻出論点を整理する ―

ここからは、
簿記2級合格を目的とした「実戦練習編」
に入ります。

第36回のテーマは、

決算整理仕訳

です。

簿記2級では、
決算整理仕訳ができるかどうかで得点が大きく変わります。


1. 決算整理仕訳とは何か(試験向け整理)

決算整理仕訳とは、

期末に、
収益と費用を正しい期間に修正するための仕訳

です。

試験では、

  • 処理の型を覚えているか
  • どちらを増やすか・減らすか判断できるか

が問われます。


2. まず押さえるべき4分類

決算整理仕訳は、
次の4つに整理すると混乱しません。

分類 代表例
費用の前払い・未払い 前払費用/未払費用
収益の前受・未収 前受収益/未収収益
減価償却 備品・機械装置
引当金 貸倒引当金など

まずはこの分類を瞬時に思い出せるようにします。


3. 前払費用・未払費用(最頻出)

例題

決算日において、
次期分の保険料12,000円が含まれている。

考え方

  • すでに費用にしている
  • でも、来期の分である

→ 費用を減らして、資産に振り替える

仕訳

借方 前払費用 12,000
貸方 保険料 12,000

「すでに払った → 資産」が合言葉です。


4. 前受収益・未収収益

例題

決算日において、
来期分の家賃6,000円をすでに受け取っている。

考え方

  • 現金は受け取っている
  • でも、今期の収益ではない

→ 収益を減らして、負債に振り替える

仕訳

借方 家賃収入 6,000
貸方 前受収益 6,000

「先にもらった → まだ収益でない」
と判断します。


5. 減価償却(必ず出る)

例題

備品(取得価額100,000円、耐用年数5年、定額法)

計算

100,000 ÷ 5 = 20,000

仕訳

借方 減価償却費 20,000
貸方 備品減価償却累計額 20,000

「費用はP/L、累計額はB/S」
をセットで覚えます。


6. 貸倒引当金(苦手克服ポイント)

例題

売掛金残高200,000円、
貸倒見積率5%

計算

200,000 × 5% = 10,000

仕訳

借方 貸倒引当金繰入 10,000
貸方 貸倒引当金 10,000

「将来の損失を今、費用にする」
と考えます。


7. 決算整理仕訳のチェック手順

① 今期の収益・費用として正しいか
② 資産・負債に振り替える必要はないか
③ P/LとB/Sの両方を意識したか

この手順を毎回同じ順番で行うことが重要です。


まとめ

  • 決算整理仕訳は得点源
  • 型を覚えると速くなる
  • P/LとB/Sを同時に意識する

次回は、
決算整理後試算表・精算表
を扱います。

第35回 簿記入門(28) ケーススタディ集

第35回 簿記入門(28)
財務諸表をどう使うか
― ケーススタディで学ぶ、数字からの判断 ―

第34回では、
数字に強い人が、どこを見て判断しているのか
を整理しました。

今回は総合実践編として、
実際の会社を想定したケースをもとに、
財務諸表をどう使うかを確認します。


ケース① 売上成長中だが資金繰りが苦しい会社

状況

  • 売上は前年比120%
  • 社員も増え、事業は拡大中

P/L(抜粋)

売上 2,400万円
当期純利益 180万円

B/S(ポイント)

現金・預金 90万円
売掛金 780万円
借入金 1,100万円

判断

  • 売上成長=現金増加ではない
  • 売掛金が資金繰りを圧迫

成長のスピードに、回収と資金管理が追いついていない


ケース② 利益は少ないが安定している会社

状況

  • 売上は横ばい
  • 派手な成長はない

P/L(抜粋)

売上 1,600万円
当期純利益 60万円

B/S(ポイント)

現金・預金 420万円
売掛金 120万円
借入金 300万円

判断

  • 現金が厚く、売掛金が少ない
  • 借入への依存度も低い

成長は遅いが、倒れにくい会社


ケース③ 投資判断で迷っている会社

状況

  • 新設備に500万円投資予定
  • 売上増加は不確実

見るべきポイント

現金残高 投資後も運転資金が残るか
営業CF 本業で回せているか
回収期間 何年で投資回収できるか

「儲かりそう」より「耐えられるか」


ケース④ 借入をどう判断するか

状況

  • 一時的な資金不足
  • 銀行から融資提案あり

チェック視点

用途 運転資金か、赤字補填か
返済原資 営業CFで返せるか
期間 短期で詰まらないか

借入は「延命」ではなく「整理」に使う


まとめ

  • 数字は判断の材料
  • 会社ごとに正解は違う
  • 重要なのは「倒れないこと」

会計が分かるとは、
数字から未来を想像できること
です。

第34回 簿記入門(27) 数字に強い人の視点

第34回 簿記入門(27)
数字に強い人は何を見ているのか
― 会計を「判断の道具」に変える視点 ―

ここまでの回で、
P/L・B/S・キャッシュ・フローを一通り学んできました。

今回は、知識の総仕上げとして、

「数字に強い人は、実際に何を見て判断しているのか」

という視点を整理します。


1. 数字に強い人は「全部」は見ていない

会計が苦手な人ほど、
すべての数字を理解しようとします。

しかし、実務で数字に強い人は、

見る場所を最初から絞っています。

書類 まず見るポイント
P/L 利益が出ているか、その質はどうか
B/S 現金・借入金・純資産
CF 営業CFがプラスか

まずは要点だけを見る。
これが第一歩です。


2. 実例① 売上が伸びていると言われたとき

現場でよくある場面です。

「今年は売上がかなり伸びています」

このとき、数字に強い人は、

すぐに喜ばず、次を確認します。

見る項目 理由
利益 売上増が儲けにつながっているか
売掛金 回収が追いついているか
営業CF 現金が増えているか

売上だけを見て判断することは、
ほとんどありません。


3. 実例② 黒字なのに不安を感じるとき

「利益は出ているのに、なぜか不安」

こういう感覚を持つ人は、
実は数字に強くなり始めています。

チェックされているポイント

営業CF マイナスが続いていないか
借入金 増え続けていないか
現金残高 数か月持つか

利益より「持久力」を見ている


4. 実例③ 投資や新規事業を判断するとき

新しい設備や事業の話が出たとき、

数字に強い人は「損益」より先に、
「キャッシュ」を考えます。

確認点 考え方
初期支出 現金はいくら出るか
回収時期 何年で戻るか
失敗時 耐えられるか

「うまくいったら」ではなく、

「うまくいかなかったらどうなるか」

を先に考えます。


5. 数字に強い人の共通点

特徴
完璧な理解を求めない
数字を「変化」で見る
利益よりキャッシュを重視
最悪のケースを想定する

会計は、
暗記科目ではありません。

判断力を鍛えるための道具

です。


まとめ

  • 数字は全部見なくていい
  • 要点を絞ることが大切
  • 「なぜ?」を考える
  • 会計は判断のために使う

ここまで理解できれば、
「会計が分かる人」から「使える人」
へ一歩進んだと言えます。

第33回 簿記入門(26) キャッシュ・フロー改善の実例

第33回 簿記入門(26)
キャッシュ・フローを改善するにはどうすればいいのか
― 実例で学ぶ、お金が残る会社の考え方 ―

前回(第32回)では、
P/L・B/S・キャッシュ・フローをまとめて読む
方法を学びました。

今回は一歩進んで、

「では、どうすればキャッシュ・フローは良くなるのか」

を考えます。

実務では、
ちょっとした判断の違いで、
お金の残り方が大きく変わります。


1. キャッシュ・フロー改善の基本視点

キャッシュ・フロー改善の基本は、次の3点です。

視点 考え方
営業CF 本業で現金を生む
投資CF 使いすぎない・使いどころを選ぶ
財務CF 借り方・返し方を整える

以下、
よくある実例で見ていきます。


2. 実例① 売上は順調だが現金が足りない会社

ある制作会社では、

  • 売上は毎年増えている
  • 利益も出ている

にもかかわらず、
常に資金繰りが苦しい状態でした。

原因

売掛金の回収が遅い 入金まで3〜4か月
支払いは現金 外注費・人件費は即時

改善策

  • 請求書の締日・支払日を見直す
  • 一部前金制を導入
  • 回収条件を契約時に明確化

売上を増やすより、
回収を早める方が即効性がある


3. 実例② 利益は少ないが現金が残る会社

次は、
一見地味な小売店です。

特徴

  • 利益率は高くない
  • 派手な成長はない

実態

現金売上が中心 売掛金がほぼない
在庫管理が厳格 余剰在庫を持たない

「儲ける」より「回す」意識が強い会社


4. 実例③ 投資で失敗しやすいケース

キャッシュ・フローを悪化させる原因として、
非常に多いのが投資の判断ミスです。

よくある失敗

  • 売上が伸びる前に大きな設備投資
  • 見栄で高額なオフィス移転
  • 使いこなせないシステム導入

改善の考え方

分割投資 小さく始めて様子を見る
レンタル・外注 固定費を増やさない

投資は、

「できるか」ではなく「回せるか」

が判断基準です。


5. 実例④ 借入との付き合い方で差が出る

借入金は、
キャッシュ・フロー改善の味方にもにもなります。

危ないパターン

  • 赤字補填のための借入
  • 返済計画のない借入

良い使い方

運転資金 短期の資金繰りを安定させる
成長投資 将来のCF改善につながる

借入は「時間を買う手段」


6. キャッシュ・フロー改善のチェックリスト

チェック項目
売掛金は増えすぎていないか
在庫を抱えすぎていないか
投資の回収時期を考えているか
借入金の返済計画は現実的か

まとめ

  • キャッシュ・フローは改善できる
  • 数字より「流れ」を意識する
  • 小さな判断の積み重ねが差になる

会計は、
会社を守り、成長させるための道具です。


次回予告(第34回)

次回は、
「数字に強い経営者・担当者は何を見ているか」
をテーマにまとめます。

第32回 簿記入門(25) 財務諸表の総合的な読み方

第32回 簿記入門(25)
財務諸表をまとめて読む
― P/L・B/S・キャッシュ・フローで会社を立体的に理解する ―

これまでの回で、
損益計算書(P/L)・貸借対照表(B/S)・キャッシュ・フロー
を個別に学んできました。

今回はいよいよ、

3つの財務諸表を同時に見て、
会社の実像を読み取る

ことに挑戦します。


1. なぜ「まとめて」読む必要があるのか

財務諸表は、それぞれ役割が異なります。

書類 分かること
P/L どれだけ儲かったか(成績表)
B/S 今どんな体力があるか(健康診断)
CF お金の流れは健全か(血流)

どれか1つだけでは、
会社を正しく判断することはできません。


2. 実例:ある小さな制作会社の数字

ここからは、
1社の実例を使って読み進めます。

損益計算書(P/L)

項目 金額(万円)
売上 1,300
費用 1,150
当期純利益 150

P/Lだけ見ると、

「しっかり利益が出ている会社」

に見えます。


3. 貸借対照表(B/S)を見る

資産の部

資産 金額(万円)
現金・預金 120
売掛金 420
設備 260
合計 800

負債・純資産の部

項目 金額(万円)
借入金 500
純資産 300
合計 800

ここで見えてくるのは、

  • 売掛金が多く、現金が少ない
  • 借入金への依存度が高い

という点です。


4. キャッシュ・フローを見る

区分 金額(万円)
営業キャッシュ・フロー ▲30
投資キャッシュ・フロー ▲120
財務キャッシュ・フロー +100
現金の増減 ▲50

キャッシュ・フローから分かるのは、

本業でお金を生めておらず、
借入で資金繰りを支えている

という事実です。


5. 3つを合わせて読むと何が見えるか

書類 評価
P/L 利益は出ている
B/S 借金が多く、体力は中程度
CF 本業のキャッシュが弱い

総合すると、この会社は、

「成長途中だが、まだ資金面は不安定」

と判断できます。


まとめ

  • P/Lだけでは判断できない
  • B/Sで体力を見る
  • CFで血流を確認する
  • 3つを同時に見ることが重要

財務諸表が読めるとは、
数字の裏にある会社の姿を想像できること
です。


次回予告(第33回)

次回からは、
数字を「改善する」視点に進みます。

「どうすればキャッシュ・フローは良くなるのか」
実務的な考え方を扱います。

第31回 簿記入門(24) 良いCF・悪いCFの見分け方

第31回 簿記入門(24)
良いキャッシュ・フロー、悪いキャッシュ・フロー
― 黒字でも危ない会社、赤字でも強い会社 ―

前回(第30回)では、
キャッシュ・フローは「営業・投資・財務」の3つに分けて考える
ことを学びました。

今回は、その知識を使って、
会社の状態を判断するところまで踏み込みます。

テーマは、

良いキャッシュ・フローと、悪いキャッシュ・フローの違い

です。


1. 「良い・悪い」は合計額だけでは分からない

キャッシュ・フローを見るとき、
つい現金が増えたか減ったかだけを見がちです。

しかし、本当に大切なのは、

どこからお金が入り、
どこへ出ていったのか

という中身です。


2. 実例① 黒字だが「悪いCF」の会社

まずは、
損益計算書では黒字の会社を見てみます。

損益計算書(抜粋)

項目 金額(万円)
当期純利益 200

一見すると、
好調な会社に見えます。

キャッシュ・フローの内訳

区分 金額(万円)
営業CF ▲120
投資CF ▲30
財務CF +200
現金の増減 +50

現金は増えていますが、

  • 本業(営業CF)はマイナス
  • 借入(財務CF)でお金を補っている

状態です。

この会社は、
「儲かっているように見えるが、自力では回っていない」

と評価できます。


3. 実例② 赤字だが「良いCF」の会社

次は逆の例です。

損益計算書(抜粋)

項目 金額(万円)
当期純損失 ▲40

P/Lだけ見ると、
不調な会社に見えます。

キャッシュ・フローの内訳

区分 金額(万円)
営業CF +180
投資CF ▲60
財務CF ▲50
現金の増減 +70

この会社は、

  • 本業でしっかり現金を生み
  • 借金を返しながら
  • 将来への投資もしている

状態です。

一時的な赤字でも、
体力のある会社

と言えます。


4. 良いCF・悪いCFを見分ける視点

チェックポイント 判断の目安
営業CF プラスが基本。マイナス続きは要注意
財務CF 借入頼みか、返済できているか
投資CF 将来につながる内容か

特に重要なのは、

営業CFが安定してプラスかどうか

です。


まとめ

  • 黒字=安全、とは限らない
  • 赤字=危険、とも限らない
  • お金の「出どころ」を見る
  • 営業CFが会社の生命線

キャッシュ・フローが読めるようになると、
会社の将来を現実的に判断できる
ようになります。


次回予告(第32回)

次回は、
財務諸表を使って会社を総合的に見る方法
を扱います。

P/L・B/S・CFをまとめて、
実践的な読み方を整理します。

第30回 簿記入門(23) キャッシュ・フロー計算書の3区分

第30回 簿記入門(23)
キャッシュ・フローは3つに分けて考える
― 営業・投資・財務でお金の流れを読み解く ―

前回(第29回)では、
利益とキャッシュは一致しないという点を、具体例で確認しました。

今回はさらに一歩進んで、
現金の動きを3つに分けて考える方法を学びます。

これが、キャッシュ・フロー計算書の基本的な考え方です。


1. キャッシュ・フロー計算書とは何か

キャッシュ・フロー計算書とは、

一定期間における
現金の増減を、その理由別に整理した書類

です。

その「理由」が、次の3つに分けられます。


2. キャッシュ・フローの3区分

区分 意味
営業キャッシュ・フロー 本業でお金が増えたか・減ったか
投資キャッシュ・フロー 将来のためにお金を使ったか
財務キャッシュ・フロー 借入や返済など、資金調達の動き

この3つを分けて見ることで、
会社が今どんな状態にあるのかが見えてきます。


3. 具体例① 営業キャッシュ・フローを見る

まずは、営業キャッシュ・フローです。

ある制作会社の1年間を見てみましょう。

内容 金額(万円)
当期純利益 150
売掛金の増加 ▲200
営業CF ▲50

この会社は、

利益は出ているが、
本業では現金が減っている

という状態です。

売上は立っているものの、
回収が追いついていないことが原因です。


4. 具体例② 投資キャッシュ・フローを見る

次に、投資キャッシュ・フローです。

同じ会社が、
新しいパソコンやソフトを購入したとします。

内容 金額(万円)
設備投資 ▲120
投資CF ▲120

投資キャッシュ・フローがマイナスでも、

将来の売上につながる投資であれば、
必ずしも悪いことではない

という点が重要です。


5. 具体例③ 財務キャッシュ・フローを見る

最後に、財務キャッシュ・フローです。

この会社は、
設備投資の資金を借入でまかないました。

内容 金額(万円)
借入金の増加 +200
借入金の返済 ▲80
財務CF +120

この結果、

本業と投資で減った現金を、
借入で補っている

状態だと分かります。


6. 3つを合計すると何が見えるか

ここまでの3つを合計してみます。

区分 金額(万円)
営業CF ▲50
投資CF ▲120
財務CF +120
現金の増減 ▲50

この会社は、

将来に向けて投資をしているが、
まだ本業のキャッシュが弱い

という状態だと読み取れます。


まとめ

  • キャッシュ・フローは3区分で考える
  • 営業CFは本業の健康状態
  • 投資CFは将来への布石
  • 財務CFは資金調達の実態

3つをセットで見ることで、
会社のお金の流れが立体的に見える
ようになります。


次回予告(第31回)

次回は、
良いキャッシュ・フロー、悪いキャッシュ・フロー
を見分ける視点を整理します。

同じ黒字でも、
「安全な会社」と「危ない会社」の違いを考えます。

第29回 簿記入門(22) キャッシュ・フローの基本

第29回 簿記入門(22)
なぜ利益が出ているのにお金がないのか
― キャッシュ・フローで会社の血流を読む ―

前回(第28回)では、
損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)をセットで読む
ことで、会社の実像が見えてくることを学びました。

そこで浮かび上がった疑問が、

「利益は出ているのに、なぜお金が足りないのか?」

です。

この疑問に答えるのが、
キャッシュ・フローという考え方です。


1. キャッシュ・フローとは何か

キャッシュ・フローとは、

一定期間における
現金の増減を表す概念

です。

ここで大事なのは、

利益とキャッシュは、
必ずしも一致しない

という点です。


2. 利益とキャッシュがズレる理由

まず、基本的なズレの原因を整理します。

原因 何が起きているか
売掛金の増加 売上は計上したが、まだ入金されていない
在庫の増加 お金を使って商品を仕入れた
借入金の返済 費用ではないが現金は出ていく
設備投資 一度に大きな現金支出が発生

これらは、

P/Lにはすぐ表れないが、
現金には直接影響する

取引です。


3. 具体例① 黒字なのに資金繰りが苦しい会社

前回と同じ、
小さな制作会社を例に考えてみます。

この会社の今年のP/Lは、次の通りでした。

項目 金額(万円)
当期純利益 150

しかし、実際の現金の動きを見ると、

現金の動き 金額(万円)
売掛金の増加 ▲200
借入金の返済 ▲100
現金の増減 ▲150

結果として、

利益は150万円出たが、
現金は150万円減った

という状態になります。


4. 具体例② 赤字でもお金が増える会社

逆の例も見てみましょう。

次の会社は、P/L上は赤字でした。

項目 金額(万円)
当期純損失 ▲50

ところが、現金は、

現金の動き 金額(万円)
借入金の増加 +200
設備投資の見送り +0
現金の増減 +150

この会社は、

赤字だが、
当面のお金には困っていない

という状態です。


5. キャッシュ・フローを見るときの実践的視点

キャッシュ・フローを見るときは、
次の点を意識すると理解しやすくなります。

視点 見る意味
利益と現金の差 ズレの原因を探る
売掛金・在庫の動き 本業の資金効率
借入金の増減 資金繰りの依存度

数字を見るというより、

「お金がどこへ行ったのか」を
想像する

感覚が大切です。


まとめ

  • 利益とキャッシュは別物
  • 黒字でも倒産はあり得る
  • 赤字でも資金が回ることはある
  • キャッシュ・フローは会社の血流

キャッシュ・フローを理解できると、
会計が「生きた情報」として見えてきます。


次回予告(第30回)

次回は、
営業・投資・財務の3つのキャッシュ・フロー
を整理します。

現金の動きを、
さらに分解して見ていきます。

第28回 簿記入門(21) P/LとB/Sをセットで読む

第28回 簿記入門(21)
損益計算書と貸借対照表はどうつながっているのか
― 数字の流れで会社の姿を立体的に読む ―

前回(第27回)では、
貸借対照表は会社の体力を表す書類だということを学びました。

今回は一歩進んで、
損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)をセットで読む
方法を整理します。

実務でも試験でも、
「片方だけ読む」のは不十分です。


1. なぜP/LとB/Sはセットで読むのか

まず結論から確認します。

P/Lは「動き」、B/Sは「結果」

です。

書類 役割
損益計算書(P/L) 1年間で何が起きたか
貸借対照表(B/S) その結果、今どうなっているか

P/Lだけを見ると「儲かったか」は分かりますが、
お金が残っているかは分かりません。

逆に、B/Sだけを見ると、
なぜそうなったかが見えません。


2. 具体例で見る「利益が出ている会社」

では、具体的な数字で確認してみましょう。

ある小さな制作会社の、
今年の損益計算書が次の通りだったとします。

項目 金額(万円)
売上 1,200
売上原価 700
販売費・一般管理費 350
当期純利益 150

数字だけ見ると、
きちんと利益が出ている会社に見えます。


3. 同じ会社の貸借対照表を見る

では、同じ会社の
期末の貸借対照表を見てみます。

資産 金額(万円)
現金・預金 100
売掛金 400
備品 300
資産合計 800

負債・純資産 金額(万円)
借入金 500
純資産 300
合計 800

ここで、
違和感に気づくでしょうか。

利益は出ているのに、
現金があまり残っていない

という状態です。


4. なぜこのような状態になるのか

理由は、B/Sを見ると分かります。

  • 売掛金が多い → まだ回収できていない売上が多い
  • 借入金が多い → 設備投資や運転資金を借金でまかなっている

つまり、

P/Lでは「儲かっている」
B/Sでは「お金はまだ厳しい」

という、
よくある中小企業の姿が見えてきます。


5. P/LとB/Sをセットで読むと見えること

見る組み合わせ 分かること
P/Lの利益 × B/Sの現金 利益が本当にお金になっているか
P/Lの売上 × B/Sの売掛金 回収が順調かどうか
P/Lの利益 × B/Sの借入金 借金に依存していないか

このように、

「儲かっているのに苦しい」
「利益は少ないが安定している」

といった違いは、
P/LとB/Sを同時に見ないと分からない
のです。


まとめ

  • P/Lは動き、B/Sは結果
  • 利益=お金とは限らない
  • 2つを合わせると会社の実像が見える
  • 数字の背景を考えることが大切

財務諸表が読めるようになるとは、
数字の裏にある会社の姿を想像できること
です。


次回予告(第29回)

次回は、
キャッシュ・フローの考え方を扱います。

「なぜ利益が出ているのにお金がないのか」を、
さらに深く掘り下げていきます。