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第51回 本試験で“時間切れ”を防ぐための解答戦略

知識もある。
仕訳も書ける。

それなのに、本試験で落ちる人の最大の原因は、

「時間切れ」

です。

税理士試験(簿記論・財表)は、
満点を取る試験ではありません。

今回は、
時間内に合格点を取り切る戦略
を整理します。


1.まず理解すべき事実

  • 全問完答は前提ではない
  • 難問は必ず混ざる
  • 合格者も取りこぼしている

つまり、

「全部解こうとする人ほど落ちる」

これが現実です。


2.試験開始からの動き方

① 最初の5分は“読む時間”

いきなり書き始めないこと。

  • どの問題が重いか
  • 計算量が多いのはどれか
  • 明らかに取れる問題はどれか

これを見極めます。

② 取れる問題から処理する

売上・経費など、
迷いの少ない仕訳から書く

ここで得点を積み上げることで、
精神的に安定します。


3.やってはいけない行動

  • 最初の難問に30分かける
  • 1つの論点で止まる
  • 途中でやり直す

本試験で一番危険なのは、

「止まること」

止まった瞬間、時間は奪われます。


4.時間配分の基本モデル

たとえば120分の試験なら、

  • 最初の確認:5分
  • 確実に取れる問題:50〜60分
  • 重めの問題:40分
  • 見直し:10〜15分

あらかじめ配分を決めておくと、
焦りが減ります。


5.“合格点思考”とは何か

本試験では、

100点を目指す人より、70点を確実に取る人が受かる

難問は、全員が苦しんでいます。

そこで差はつきません。

差がつくのは、
基本論点を落とさない力です。


6.本番で安定する人の特徴

  • 処理順が決まっている
  • 完璧を求めない
  • 途中で感情に流されない

これは才能ではなく、
練習段階での意識で決まります。


まとめ

  • 全部解こうとしない
  • 止まらない
  • 基本を積み上げる

試験は「知識勝負」ではなく、
戦略勝負です。

次回は、
👉 「合格する人の勉強法と落ちる人の勉強法の決定的な違い」
に踏み込みます。

第50回 総合問題で点を取り切るための「仕訳の処理順」

ここまで、

  • 決算整理仕訳
  • 前払・未払・未収・前受
  • 減価償却
  • 固定資産の売却・除却

と、一通りの個別論点を見てきました。

しかし、本試験で問われるのは、
「知っているか」ではなく「処理できるか」です。

第50回では、
総合問題で崩れないための仕訳処理の順番
を、具体例を交えて整理します。


1.総合問題で点が取れない原因

できるはずなのに点が取れない人には、共通点があります。

  • 問題文を読んだ瞬間に仕訳を書き始める
  • 思いついたところから処理する
  • 途中で「何をやっているか」分からなくなる

これは知識不足ではなく、
「処理の順番」が決まっていないことが原因です。


2.総合問題の基本処理フロー

総合問題は、必ず次の順番で処理します。

  1. ① 通常取引(売上・仕入・経費)
  2. ② 決算整理仕訳
  3. ③ 固定資産の処分

この順番を崩さないだけで、
ミスは大幅に減ります。


3.実戦イメージで確認する

例)
当期中に次の取引があった。
・商品を掛けで販売した
・家賃を1年分前払いしている
・備品を売却している

この問題で、やってはいけないのは、
売却の仕訳から書き始めることです。

まずやるのは、

① 通常取引の処理

売上・仕入・経費など、
期中の動きを先に処理します。

② 決算整理仕訳

前払・未払・減価償却など、
期間のズレを修正します。

③ 固定資産の処分

最後に、
帳簿価額 → 売却価額 → 益損
の順で処理します。


4.時間を奪われないためのコツ

① 仕訳は完璧を狙わない

7割の確信で書いて進む方が、
結果的に得点は安定します。

② 計算は紙に残す

帳簿価額や月割計算は、
必ず書き出すことでミスを防げます。

③ 悩む論点ほど後回しにしない

決算整理や固定資産は、
後に回すほど不安が増える分野です。


5.この回までで身についたこと

  • 仕訳には「型」がある
  • 決算整理はズレの修正
  • 固定資産処分は帳簿価額がすべて

これらを順番どおり使えるようになった時、
総合問題は「怖い問題」ではなくなります。


まとめ

  • 総合問題は処理順が命
  • 通常取引 → 決算整理 → 処分
  • 思考を止めず、流れで処理する

次回は、
👉 「本試験で実際に起こる“時間切れ”を防ぐ解答戦略」
をテーマに、点数を最大化する考え方に踏み込みます。

第49回 固定資産の売却・除却・廃棄を実例で完全攻略する

減価償却が理解できたと思った直後に、
一気に難易度が上がるのが「固定資産の処分」です。

特に試験では、

  • 減価償却したあとに売却
  • 帳簿価額が残ったまま除却
  • 売却損・売却益の判定

といった複合パターンが頻出します。

今回は、
どんな問題でも同じ手順で処理できる考え方
を、実例で確認していきましょう。


1.固定資産処分の基本手順

どんなケースでも、必ずこの順番です。

  1. ① 減価償却累計額を確認する
  2. ② 帳簿価額を計算する
  3. ③ 処分価額と比較する

このを崩さなければ、迷いません。


2.売却の実例(売却益が出るケース)

例①
取得価額500,000円の備品を売却した。
減価償却累計額は300,000円。
売却代金は250,000円、代金は現金で受け取った。

ステップ① 帳簿価額

500,000 − 300,000 = 200,000円

ステップ② 売却価額と比較

  • 売却価額:250,000円
  • 帳簿価額:200,000円

→ 50,000円多く売れている → 売却益

仕訳

現金 250,000 / 備品 500,000
      備品減価償却累計額 300,000
      固定資産売却益 50,000


3.売却の実例(売却損が出るケース)

例②
取得価額600,000円の車両運搬具を売却した。
減価償却累計額は400,000円。
売却代金は150,000円。

帳簿価額

600,000 − 400,000 = 200,000円

比較

  • 売却価額:150,000円
  • 帳簿価額:200,000円

→ 50,000円足りない → 売却損

仕訳

現金 150,000 / 車両運搬具 600,000
固定資産売却損 50,000
      車両運搬具減価償却累計額 400,000


4.除却の実例(売れずに処分)

例③
取得価額400,000円の備品を除却した。
減価償却累計額は320,000円。

帳簿価額

400,000 − 320,000 = 80,000円

売却代金はありません。

→ 帳簿価額はそのまま除却損

仕訳

固定資産除却損 80,000 / 備品 400,000
      備品減価償却累計額 320,000


5.完全に償却済みの資産を処分する場合

例④
取得価額300,000円、減価償却累計額300,000円の備品を除却した。

帳簿価額

0円

→ 損も益も出ません。

仕訳

備品減価償却累計額 300,000 / 備品 300,000

このパターンは、
試験で「引っかけ」としてよく出ます


6.よくある失敗

  • いきなり仕訳を書き始める
  • 帳簿価額を出さずに益損を判断する
  • 累計額を書き忘れる

必ず、
帳簿価額 → 比較 → 仕訳
の順番を守りましょう。


まとめ

  • 固定資産処分は「型」で処理する
  • 最初に帳簿価額を出す
  • 売却価額との差が益か損

次回は、
👉 「商品売買と固定資産処分が同時に出る総合問題の解き方」
をテーマにすると、簿記論レベルの総合問題にかなり強くなります。

第48回 減価償却を「実例」で完全に理解する――なぜ毎年費用になるのか

決算整理仕訳の中でも、
最後まで苦手意識が残りやすいのが「減価償却」です。

計算式は覚えた。
定額法・定率法も分かる。

それでも本試験になると、

  • 仕訳の方向に迷う
  • 月割・年割で混乱する
  • なぜこの金額なのか不安になる

今回は、
「減価償却は何をしている処理なのか」
を実例で徹底的に整理します。


1.減価償却を一言でいうと

「高額なモノの代金を、使った年数に分けて費用にする」

これだけです。

現金は、
買ったときに一気に出ていく
でも、

費用は、
使った期間に分けて計上する

ここが、減価償却の本質です。


2.建物の実例

例① 建物
4月1日に建物2,000,000円を購入した。
耐用年数は20年、定額法を用いる。

まず、日本語に戻します。

  • 建物は長く使う
  • 20年にわたって会社に貢献する

→ 今年1年分だけ費用にする

年間の減価償却費

2,000,000 ÷ 20年 = 100,000円

ただし、4月1日取得なので、今年は12か月中9か月分。

当期の減価償却費

100,000 × 9/12 = 75,000円

決算整理仕訳

減価償却費 75,000 / 建物減価償却累計額 75,000


3.備品の実例

例② 備品
10月1日に事務用備品300,000円を購入した。
耐用年数は5年とする。

ここでも考え方は同じです。

  • 備品も数年使う
  • 今年使った分だけ費用にする

年間の減価償却費

300,000 ÷ 5年 = 60,000円

10月1日取得なので、当期は3か月分。

当期の減価償却費

60,000 × 3/12 = 15,000円

決算整理仕訳

減価償却費 15,000 / 備品減価償却累計額 15,000


4.車両運搬具の実例

例③ 車両運搬具
期首に車両600,000円を取得している。
耐用年数は6年とする。

この場合は、月割計算は不要です。

年間の減価償却費

600,000 ÷ 6年 = 100,000円

決算整理仕訳

減価償却費 100,000 / 車両運搬具減価償却累計額 100,000

取得時期によって、
月割が必要かどうかが変わる
ここは試験でよく狙われます。


5.よくあるミス

① 現金が動かないのに不安になる

減価償却は、現金と関係ありません

② 資産を直接減らしてしまう

原則は、
「資産 − 累計額」
で管理します。

③ 月割を忘れる・逆にしてしまう

取得日を必ず確認しましょう。


まとめ

  • 減価償却は「分割払いの費用化」
  • 現金は無視してOK
  • 使った期間分だけ費用にする

次回は、
👉 「減価償却と固定資産売却が絡むときの実戦処理」
をテーマにすると、応用問題への耐性が一気に上がります。

第47回 前払・未払・未収・前受を「実例」で完全整理する

決算整理仕訳で多くの人がつまずく原因は、
前払・未払・未収・前受を「言葉」で覚えようとすることにあります。

しかし、実戦では言葉の暗記は役に立ちません。

必要なのは、
「何が、いつの損益か」
を実例で判断できる力です。

今回は、試験で頻出のパターンを実例ベースで整理していきます。


1.まずは超基本ルール

決算整理で考えることは、これだけです。

「この収益・費用は、今期のものか?」

YESなら → そのまま
NOなら → 決算整理仕訳で修正

これを頭に置いたまま、実例を見ていきましょう。


2.前払費用の実例

例①
7月1日に1年分の家賃120,000円を現金で支払った。
決算日は12月31日。

まず、日本語に戻します。

  • 1年分まとめて払った
  • でも使ったのは6か月分だけ

→ 払いすぎている費用がある

決算整理仕訳

前払費用 60,000 / 地代家賃 60,000

「払ったけど、まだ今期の費用じゃない」
これが前払費用です。


3.未払費用の実例

例②
12月分の水道光熱費8,000円は、翌年1月に支払う予定である。

日本語にすると、

  • もう使っている
  • でも、まだ払っていない

→ 足りない費用を追加する

決算整理仕訳

水道光熱費 8,000 / 未払費用 8,000

「使ったのに、まだ払っていない」
これが未払費用です。


4.未収収益の実例

例③
定期預金の利息5,000円は翌年に受け取る予定である。

ここでのポイントは、

  • 現金はまだ入っていない
  • でも、今期分の収益である

決算整理仕訳

未収収益 5,000 / 受取利息 5,000

「もらっていないけど、今期の収益」
これが未収収益です。


5.前受収益の実例

例④
来期分の家賃50,000円を、今期中に受け取っている。

ここでは、

  • 現金はもう受け取っている
  • でも、来期の収益である

決算整理仕訳

家賃収入 50,000 / 前受収益 50,000

「もらいすぎた収益」
これが前受収益です。


6.4つを一気に見分けるコツ

状況 処理
払ったけど、まだ費用でない 前払費用
使ったけど、まだ払っていない 未払費用
もらっていないが、今期の収益 未収収益
もらったが、来期の収益 前受収益

言葉ではなく、状況で判断しましょう。


まとめ

  • 前払・未払・未収・前受は暗記しない
  • 「いつの損益か」で判断する
  • 日本語に戻すと必ず正解に近づく

次回は、
👉 「減価償却を実例で完全に腹落ちさせる」
をテーマに進めると、決算整理がさらに安定します。

第46回 決算整理仕訳で一気に点を落とす人の共通点

税理士試験(特に簿記論・財務諸表論)で、
合否を大きく左右するのが「決算整理仕訳」です。

実はここ、

  • 理屈は分かっている
  • 個別論点も理解している

それでも点を落とす人が非常に多い分野です。

今回は、
「なぜ決算整理で崩れるのか」
その共通点を整理していきます。


1.決算整理仕訳は「特別」だと思ってしまう

まず一番多いのが、この思い込みです。

「決算整理仕訳は難しい」
「普段の仕訳とは別物」

しかし実際には、決算整理仕訳も通常仕訳の延長です。

違うのは、
「期間をまたぐかどうか」
それだけです。

特別扱いすると、逆に頭が混乱します。


2.「現金が動かない仕訳」が苦手

決算整理仕訳が苦手な人の多くは、

  • 現金・預金が出てこない
  • 目に見える動きがない

仕訳に不安を感じます。

代表例は、

  • 前払費用・未払費用
  • 未収収益・前受収益
  • 減価償却費

ここで大事なのは、
「現金ではなく、期間を見る」
という視点です。


3.決算整理の基本は「ズレの修正」

決算整理仕訳は、難しく考える必要はありません。

やっていることは、常にこれです。

「今期の損益と、実際の取引のズレを直す」

たとえば、

  • 払ったけど、まだ今期の費用じゃない → 前払費用
  • 使ったけど、まだ払っていない → 未払費用

すべて、ズレを元に戻しているだけです。


4.よくある失点パターン

① 前払・未払・未収・前受がごちゃごちゃ

言葉を覚えようとすると、必ず混乱します。

覚えるべきなのは、
「今期の収益・費用かどうか」
それだけです。

② 減価償却を丸暗記している

定額法・定率法の計算以前に、

  • なぜ費用になるのか
  • なぜ毎期分けるのか

ここが曖昧だと、応用で崩れます。

③ 決算整理仕訳を後回しにする

本試験では、最後に残すほど危険です。

迷いやすい論点ほど、
早めに処理する勇気が必要です。


5.決算整理を安定させる考え方

  • 現金ではなく「期間」を見る
  • 増えすぎた収益・費用を減らす
  • 足りない収益・費用を足す

この3点を意識するだけで、
決算整理仕訳は一気に整理されます


まとめ

  • 決算整理仕訳は特別ではない
  • やっているのは「ズレの修正」
  • 現金ではなく期間で考える

次回は、
👉 「前払・未払・未収・前受を一発で整理する思考法」
をテーマに進めると、かなり実戦力が上がります。

第45回 実戦で差がつく「仕訳の総合力」――売上・仕入・諸経費を一気に処理する

第45回 実戦で差がつく「仕訳の総合力」――売上・仕入・諸経費を一気に処理する

ここまで、

  • 売上の認識
  • 仕入の処理
  • 各種費用(旅費交通費・通信費・消耗品費など)

を個別には見てきました。

しかし、試験で問われるのは「1つずつ」ではありません。
実際の問題では、これらがまとめて、連続して、しかも時間制限つきで出てきます。

今回は、「実戦で仕訳が崩れやすいポイント」を意識しながら、
仕訳の総合処理力を鍛えていきましょう。


1.実戦問題で起こりがちなミス

まず、よくある失敗から整理します。

① 勘定科目は合っているが、貸借が逆

→ 理解不足というより、スピード優先による事故が多いです。

② 消費税の扱いで迷って止まる

→ 税抜・税込の判断に時間を使いすぎるケースです。

③ 仕訳は合っているのに、金額を間違える

→ 問題文を「流し読み」しているサインです。

これらはすべて、知識の問題ではなく「処理の型」ができていないことが原因です。


2.仕訳は「3ステップ」で処理する

実戦では、次の順番を体に染み込ませるのが重要です。

ステップ① 取引の性質を一瞬で判断

  • 売上か
  • 仕入か
  • 費用か
  • 資産の増減か

ここで迷うと、すべてが崩れます。

ステップ② 現金か、掛けか

  • 現金・普通預金 → すぐ動く
  • 売掛金・買掛金 → 将来動く

まず「現金が動いたか?」を見るクセをつけましょう。

ステップ③ 費用・収益は期間対応を意識

  • 今期の費用か
  • 次期以降の費用か

ここが、後の決算整理仕訳につながります。


3.総合例題で確認してみる

例)
商品100,000円を掛けで販売した。送料3,000円を現金で支払った。
なお、送料は当社負担とする。

この場合、取引は2つあります。

① 商品の販売

売掛金 100,000 / 売上 100,000

② 送料の支払い

発送費 3,000 / 現金 3,000

ここで重要なのは、「売上と送料を無理にまとめない」ことです。

試験では、
「まとめて1仕訳にしなさい」
とは、ほぼ書かれていません。


4.仕訳を速く、正確にするコツ

✔ 勘定科目を増やしすぎない

初心者ほど細かく分けたがりますが、試験では標準的な科目で十分です。

✔ 迷ったら立ち止まらない

完璧を狙わず、7割の確信で書いて次に進む勇気も必要です。

✔ 仕訳は「文章を日本語に戻す」

一度、頭の中で「何が起きたか」を短い日本語に戻すと、ミスが激減します。


5.ここが合否を分ける

税理士試験(特に簿記論・財表)では、

  • 難問を解ける人

よりも

  • 基本を崩さない人

が合格します。

仕訳の総合力は、点数を積み上げるための土台です。


まとめ

  • 仕訳は「知識」より「型」
  • 実戦では複数取引を冷静に分解
  • 迷わず、止まらず、基本を守る

次回は、
👉 「決算整理仕訳で一気に点を落とす人の共通点」
をテーマに進めるのがおすすめです。

第44回 売却・除却が出てきたら、減価償却は「いつまで?」を考える<

前回は、期中取得と月割計算を扱いました。

今回は、減価償却で最後に大きな落とし穴になる、
固定資産の売却・除却をテーマにします。

ここを苦手にしている受験生は非常に多いですが、
理由ははっきりしています。


売却・除却で混乱する理由

売却や除却が出てくると、多くの人はこうなります。

  • 減価償却をいくらまで計上するのか分からない
  • 売却益・売却損の計算がぐちゃぐちゃになる
  • 仕訳の順序に迷う

しかし、ここでも考え方は一貫しています。


「その資産を、いつまで使ったのか」

これだけです。


まず大原則を確認する

固定資産を売却・除却した場合、


減価償却は、売却・除却した日まで

しか行いません。

当たり前のことですが、

  • もう使っていない
  • 会社に存在しない

資産について、それ以降の減価償却はあり得ません。


【具体例】期中に売却した場合

次の例で確認しましょう。

  • 取得価額:120万円
  • 耐用年数:5年
  • 定額法
  • 期首帳簿価額:72万円
  • 7月1日に売却

まず、1年分の減価償却費を確認します。


120万円 ÷ 5年 = 24万円

次に、当期に「何か月使ったか」を考えます。

7月1日売却なので、

  • 1月〜6月
  • 6か月間使用

しています。

したがって、当期の減価償却費は、


24万円 × 6か月 ÷ 12か月 = 12万円

です。


売却時点の帳簿価額を求める

期首帳簿価額は72万円でした。

そこから、当期分の減価償却費12万円を引くと、


72万円 − 12万円 = 60万円

これが、売却時点の帳簿価額です。

売却価額と比較するのは、
この60万円です。


売却損益を計算する

仮に、この固定資産を65万円で売却したとします。

  • 売却価額:65万円
  • 帳簿価額:60万円

差額は、


65万円 − 60万円 = 5万円

よって、固定資産売却益 5万円が発生します。


仕訳の流れを整理する

売却時の仕訳は、流れで考えると整理しやすくなります。

  1. 当期分の減価償却を計上する
  2. 帳簿価額を確定させる
  3. 売却損益を計算する

結果として、次のような仕訳になります。


(借方)現金 650,000
(借方)減価償却累計額 600,000
(貸方)固定資産 1,200,000
(貸方)固定資産売却益 50,000

※減価償却累計額は、売却時点までの累計額です。


除却の場合はどうなるか

除却の場合も、考え方は同じです。

違うのは、

  • 売却価額がない

という点だけです。

帳簿価額がそのまま、


固定資産除却損

になります。


よくある失点パターン

  • 売却後も1年分の減価償却をしてしまう
  • 期首帳簿価額をそのまま使ってしまう
  • 減価償却と売却損益を混ぜて考える

これらはすべて、


「いつまで使ったか」

を意識していないことが原因です。


第44回のまとめ

  • 減価償却は、売却・除却した日まで
  • まず帳簿価額を正確に出す
  • 売却損益・除却損はその後に考える

次回は、減価償却シリーズの総まとめとして、
本試験で減価償却を落とさないための整理を行います。

ここまで理解できれば、減価償却は得点源にできます。

第43回 期中取得・月割計算で迷わなくなる考え方

第43回 期中取得・月割計算で迷わなくなる考え方

前回は、減価償却の考え方そのものを整理しました。

今回は、試験で一気にミスが増えるポイント、
期中取得と月割計算を扱います。

ここで点を落とす人は本当に多いのですが、
理由はとても単純です。


期中取得で何が難しくなるのか

期中取得になると、多くの受験生はこう考えます。

  • とりあえず月割にする
  • 公式を思い出す
  • 何か12で割る

そして、


「合っているはずなのに、なぜか点が取れない」

という状態になります。

これは、月割計算を「作業」として扱っていることが原因です。


月割計算の本質はこれだけ

期中取得でも、考えることは前回と同じです。


「その資産を、何か月使ったのか」

これだけです。

定額法であれば、


1年分の減価償却費 × 実際に使った月数 ÷ 12

という形になりますが、
これは結果としてそうなるだけです。


【具体例】7月1日に固定資産を取得した場合

次の例で考えてみましょう。

  • 取得価額:120万円
  • 耐用年数:5年
  • 定額法
  • 7月1日取得

まず、1年分の減価償却費はいくらでしょうか。


120万円 ÷ 5年 = 24万円

次に、「何か月使ったか」を考えます。

7月1日取得なので、

  • 7月〜12月
  • 合計6か月

使っています。

したがって、当期の減価償却費は、


24万円 × 6か月 ÷ 12か月 = 12万円

となります。


仕訳を確認する

当期に計上する仕訳は次のとおりです。


(借方)減価償却費 120,000
(貸方)減価償却累計額 120,000

ここでも大切なのは、


「半年分だけ使ったから、半年分だけ費用にしている」

という感覚です。


よくある失点パターン① 月数を機械的に数える

典型的なミスが、

  • 取得月を含めるかどうか迷う
  • とりあえず6か月・7か月にしてしまう

というものです。

迷ったときは、


「いつから業務に使い始めたのか」

を問題文から冷静に読み取ってください。

試験では、意図的に迷わせる表現が使われます。


よくある失点パターン② 1年分を計上してしまう

期中取得にもかかわらず、

  • 月割を忘れる
  • 条件を読み飛ばす

ことで、1年分の減価償却費を計上してしまうケースです。

これは、


「減価償却=毎年同じ金額」

という思い込みが原因です。

あくまで、


「使った期間分だけ」

という原則に戻りましょう。


期中取得は「難しい処理」ではない

期中取得という言葉に身構える必要はありません。

やっていることは、

  • 1年分を計算する
  • 使った月数を考える
  • 対応させる

それだけです。

この順序を崩さなければ、
計算ミスも、仕訳ミスも大きく減ります。


第43回のまとめ

  • 期中取得でも考え方は同じ
  • 月割計算は「作業」ではなく「期間対応」
  • 使った月数を必ず意識する

次回は、
固定資産の売却・除却がある場合の減価償却を扱います。

「いつまで償却するのか」という、もう一つの落とし穴を整理していきましょう。

第42回 減価償却は「計算」より先に、考え方で8割決まる

第42回 減価償却は「計算」より先に、考え方で8割決まる

ここからはいよいよ、具体的な試験テーマに入っていきます。
第42回で取り上げるのは、税理士試験で必ず出題され、かつ差がつきやすいテーマ、
減価償却です。

減価償却というと、

  • 定額法・定率法
  • 耐用年数
  • 期首・期中取得

といった計算ルールを思い浮かべる人が多いと思います。

しかし、実際の試験では


「計算はできるのに点が取れない」

という人が、非常に多い分野でもあります。


なぜ減価償却はミスが多いのか

理由ははっきりしています。

  • 計算手順だけを暗記している
  • 「なぜ費用になるのか」を意識していない
  • 期中取得・売却時の意味を理解していない

その結果、

  • 月割計算を機械的に当てはめる
  • 仕訳の意味を考えずに数字だけ合わせる
  • 問題文の条件を読み飛ばす

といったミスが起きます。

減価償却は、計算問題でありながら「考え方の問題」なのです。


減価償却の本質を一言で言うと

減価償却とは何か。

難しく考える必要はありません。


「長く使うものの代金を、使った期間に分けて費用にする」

ただそれだけです。

たとえば、次の例を見てください。


【具体例】コピー機を購入した場合

ある会社が、業務用コピー機を100万円で購入したとします。
このコピー機は、5年間使う予定です。

このとき、購入した年に100万円すべてを費用にしてしまうと、

  • 初年度だけ費用が大きくなる
  • 翌年以降は、コピー機を使っているのに費用が出てこない

という不自然な結果になります。

そこで、


「毎年使った分だけ、少しずつ費用にしよう」

と考える。
これが減価償却です。


定額法の基本を確認する

まずは最も基本的な定額法から確認します。

先ほどのコピー機の例を使います。

  • 取得価額:100万円
  • 耐用年数:5年
  • 残存価額:0円(とする)

この場合、1年あたりの減価償却費は、


100万円 ÷ 5年 = 20万円

です。

毎年、20万円ずつ費用にしていきます。


仕訳を「丸暗記」しない

ここで仕訳を確認します。


(借方)減価償却費 200,000
(貸方)減価償却累計額 200,000

この仕訳を、ただ暗記してしまう人が多いのですが、
重要なのは意味です。

  • 減価償却費:その年に使った分の費用
  • 減価償却累計額:これまでに使った分の合計

つまり、


「費用を計上しつつ、資産の価値を少しずつ減らしている」

という処理をしているだけです。


ここでよくある失点ポイント

減価償却で点を落とす人には、典型的なパターンがあります。

  • 計算は合っているのに仕訳を間違える
  • 期中取得なのに月割を忘れる
  • 売却・除却があるのに1年分計上してしまう

これらはすべて、


「その資産を、いつからいつまで使ったのか」

を考えていないことが原因です。


第42回のまとめ

  • 減価償却は計算問題だが、本質は考え方
  • 「使った期間」に対応させる意識が最重要
  • 仕訳は意味を理解して切る

次回は、
期中取得・月割計算をテーマに、
試験でよく出るパターンを具体的に見ていきます。

減価償却は、ここで一度しっかり整理しておきましょう。