日別アーカイブ: 2026年4月11日

第31回 簿記入門(31) リース会計の基礎(オペレーティングリースとファイナンスリース)

リースは用語や仕訳の扱いでつまずきやすいテーマです。特に「貸借人(借りる側)」と「賃貸人(貸す側)」で処理が分かれる点や、オペレーティングリースとファイナンスリースの判定が混乱のもとになります。ここでは表を中心に整理し、試験で押さえるべきポイントと短い練習問題で理解を定着させます。

導入:リースとは(簡潔に)

リースとは、資産の使用に対して一定期間の対価(リース料)を支払う取引です。会計上は「使用権」と「負債」の認識が問題になります。税理士試験向けには、どの取引を負債性とみなすか、どのように仕訳するかをまず押さえましょう。

リースの分類比較(主要点を表で整理)

観点 オペレーティングリース(運用型) ファイナンスリース(実質所有)
賃借人の認識 原則:リース料を費用計上(賃借人に資産・負債は計上しないことが多い) 使用権資産とリース負債を計上(借方:使用権資産、負債を計上)
貸借人の認識 資産計上、減価償却を行う(使用期間に応じて) 売上と金融債権として計上(受取利息等を含む)
試験での判定ポイント 契約が譲渡に近いか、資産の実質的所有が移転するかを確認 残存価格や契約期間が資産の経済的実態を示すかを確認

仕訳パターン(代表的な取引ごと)

取引 賃借人(借方) 賃借人(貸方)
ファイナンスリース開始時の認識(取得時点) 使用権資産(リース資産) リース負債(現在価値)
リース料支払(利息部分と元本部分がある場合) 支払利息(利息部分)/リース負債(元本返済部分) 現金預金
使用権資産の償却 減価償却費 減価償却累計額(又は資産の帳簿価額の減少)
オペレーティングリースで定期的なリース料支払 リース料(費用) 現金預金

税務上の基本ポイント(簿記との違いを明確に)

論点 簿記(会計上)の扱い 税務上の扱い(損金算入等)
減価償却 ファイナンスは使用権資産を償却、オペは賃借人は費用計上 税務では資産計上した場合に償却が認められる。オペはリース料を損金算入
利息相当額の取扱い リース負債に係る利息は費用計上 利息性の部分は原則損金算入。ただし税務上の判定基準に注意
中途解約・譲渡 残存価額や契約条件に応じて損益を認識 解約損や残存価額の扱いは税務調整が必要になる場合がある

試験で問われやすい論点と短い例題

試験では「判定」と「仕訳の作成」が典型です。以下の簡単な例題で確認しましょう。

例題(クリックして開く)

条件:賃借人A社が機械を取得するリース契約を開始。契約は所有権移転条項はないが、契約期間が耐用年数の80%に相当し、実質的に資産の経済的便益をほぼ獲得する。リース料の現在価値は1,200千円。初回の仕訳を示しなさい。

解答(要点)

  1. 判定:契約期間が耐用年数の80%相当のため、ファイナンスリース(簿記上は資産計上)と判断。
  2. 仕訳(開始時):借方:使用権資産 1,200,000円 / 貸方:リース負債 1,200,000円
  3. 税務メモ:税務上も資産計上が認められる場合、償却方法や耐用年数の取り扱いに注意。

5分で復習(要点チェック表)

チェック項目 合格ライン(押さえる点)
オペ/ファイナンスの判定 所有移転・期間/残存価額・現在価値で判断する
賃借人の仕訳 ファイナンスは資産と負債計上、オペは費用計上が基本
税務上の注意点 償却方法・損金算入のタイミングを確認する

今日のミニ問題(5分)

問題(クリックして開く)

問:オペレーティングリースで賃借人が支払うリース料は簿記上どのように処理しますか。短く答えよ。

解答例:原則としてリース料を期間費用として計上する(借方:リース料/貸方:現金預金)。

自己採点と復習ポイント:正答なら「仕訳パターン表」を復習。部分的に迷った場合は契約条件でオペ/ファイナンス判定の基準を再確認。

まとめ

リース会計は、判定(オペかファイナンスか)と賃借人・貸借人それぞれの認識がポイントです。表で示した典型的な仕訳パターンと税務上の違いを押さえ、短い問題で繰り返し確認してください。前回の長期負債の知識はリースの負債性判定に役立ちますので、必要なら 第30回(長期負債) を振り返ってください。次回はリース会計の実務上の留意点をもう少し踏み込みます。