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第28回 簿記入門(28) 資本取引と配当の仕訳・剰余金の整理

学習を続ける中で、「資本取引の仕訳は似ているが微妙に条件が違って混乱する」「配当の決議日や基準日の扱いがあいまいになりやすい」と感じることは多いはずです。そこで今回は、増資・減資、利益処分(剰余金の振替)と配当を、仕訳表と勘定科目への影響を中心に整理します。試験で狙われやすいポイントや、日々の学習チェックにも触れながら、実戦的に理解できる形にまとめました。

1.資本取引の全体像

取引 主要勘定 BSへの影響 注意点
増資(株式発行と払込) 資本金・資本準備金・現金 純資産増加、流動資産増加 払込額のうち、どこまでを資本金に計上するかを確認する
減資 資本金・資本剰余金・現金 純資産減少、場合により現金減少 債権者保護手続や欠損吸収の方法に注意する
利益処分(配当・準備金) 繰越利益剰余金・未払配当金・利益準備金 純資産内の振替、または負債計上 決議日と支払日の区別を明確にする
自己株式の処理 自己株式・資本剰余金 純資産の項目移動や減少 会計処理と税務処理は分けて考える

2.増資と払込の仕訳

例として、普通株式を額面1株100円で1,000株発行し、払込金額が1株500円だった場合を考えます。

項目 金額 備考
払込総額 500,000円 1,000株 × 500円
資本金 100,000円 1,000株 × 100円
資本準備金 400,000円 払込総額 − 資本金

仕訳は次のとおりです。

(借)現金 500,000
    (貸)資本金   100,000
    (貸)資本準備金 400,000

増資では、会社に現金が入り、純資産が増加します。試験では、額面までを資本金にするのか、払込額の2分の1以上を資本金にするのか、問題文の指示をよく確認することが大切です。

3.減資の考え方

減資は、資本金を減らして欠損を補てんしたり、資本剰余金へ振り替えたりする処理です。実務では会社法上の手続も関係しますが、試験ではまず仕訳と流れを押さえることが大事です。

減資の目的 主要仕訳例 ポイント
資本の組替え (借)資本金 / (貸)資本剰余金 資本金を減らして、剰余金項目へ振り替える
欠損の補てん (借)資本金 / (貸)繰越利益剰余金 など 赤字を補うために資本を振り替える

たとえば、資本金の一部を資本準備金に振り替える場合は次のようになります。

(借)資本金 200,000
    (貸)資本準備金 200,000

4.利益処分の仕訳

当期純利益は決算で繰越利益剰余金に振り替えられ、その後、株主総会などの決議によって配当や利益準備金への振替が行われます。

処分先 仕訳例 影響
現金配当 (借)繰越利益剰余金 / (貸)未払配当金 剰余金が減少し、負債が増加する
利益準備金 (借)繰越利益剰余金 / (貸)利益準備金 純資産内の振替
繰越 仕訳なし 翌期へそのまま繰り越される

テンプレートとしては次の形で覚えておくと便利です。

借方 貸方 説明
繰越利益剰余金 未払配当金 配当決議時の処理
繰越利益剰余金 利益準備金 利益準備金の積立

5.配当の種類と仕訳の流れ

配当の種類 代表的仕訳 注意点
現金配当 (借)繰越利益剰余金 X
(貸)未払配当金 X

支払時:
(借)未払配当金 X
(貸)現金 X

決議日で負債を計上し、支払日で現金が減少する
株式配当 (借)繰越利益剰余金 X
(貸)資本金 Y
(貸)資本準備金 差額
資本金と資本準備金の按分に注意する

試験でよく問われる日付の考え方は次の3つです。

  • 決議日:配当額が正式に決まる日。この日に未払配当金を計上する。
  • 基準日:誰に配当をするかを確定する日。会計上の仕訳日は通常、決議日ではなくない点に注意。
  • 支払日:実際に現金や株式を交付する日。この日に未払配当金を取り崩す。

6.試験で狙われやすいポイント

項目 確認ポイント
払込額の按分 資本金にいくら入れるのか、残額をどこに入れるのかを確認する
配当の発生日 決議日で未払配当金を計上する
減資 目的が「組替え」か「欠損補てん」かを見分ける
自己株式 資産ではなく純資産の控除項目として扱う点を押さえる
  • 仕訳を書く前に、「現金が増えるのか減るのか」「純資産の中で動いているだけなのか」を言葉で確認する。
  • 問題文に「会社法の規定に従い」とあれば、利益準備金や資本金計上額の指定に注意する。

7.演習問題

問題1
会社Aは普通株式100株を1株額面100円で発行し、払込価格は1株300円であった。払込時の仕訳を示しなさい。

解答

(借)現金 30,000
    (貸)資本金   10,000
    (貸)資本準備金 20,000

払込総額は30,000円で、そのうち額面部分10,000円が資本金、残り20,000円が資本準備金です。

問題2
期末に繰越利益剰余金が500,000円あり、株主総会で現金配当150,000円を決議した。決議日の仕訳と支払日の仕訳を示しなさい。

解答

(決議日)
(借)繰越利益剰余金 150,000
    (貸)未払配当金 150,000

(支払日)
(借)未払配当金 150,000
    (貸)現金    150,000

決議日に会社の支払義務が生じるため、まず未払配当金を計上します。支払日にはその負債を消し、現金を減少させます。

学習継続のコツ

  • 毎日5分、増資・減資・配当のどれか1題だけでも仕訳を書く。
  • 週1回、配当の流れを「決議日→基準日→支払日」で整理し直す。
  • 試験前は「払込額の按分」「決議日の未払配当金」「減資の目的」の3点を重点的に確認する。

まとめ

資本取引は、見た目は似ていても、どの日に何を計上するか、どこまでを資本金にするかで処理が変わります。増資は払込額の按分、配当は決議日と支払日の区別、減資は目的の見分け方を押さえると整理しやすくなります。細かな論点に振り回される前に、まずは基本の仕訳パターンを確実に身につけていきましょう。

関連回

  • 損益計算書のまとめ
  • 決算整理の仕訳
  • 固定資産の会計処理