日別アーカイブ: 2026年3月31日

第21回 簿記入門(21) 固定資産と減価償却の基礎(簿記・税法で押さえるポイント)

はじめに — つまずきに寄り添って

固定資産や減価償却は「数字の流れ」がわかりにくく、初学者がつまずきやすい分野です。前回扱った補助簿・総勘定元帳、精算表で見た資産勘定の内容を、今回は実務と試験で必要な視点で掘り下げます。精算表から固定資産勘定、財務諸表へのつながりを、仕訳と表で整理していきましょう。

本記事の概要(押さえるべきポイント)

  • 固定資産の取得価額と区分(有形固定資産の基本)
  • 減価償却の仕組み(耐用年数・残存価額・償却方法)
  • 試験で頻出の仕訳パターン(取得、期末償却、中途売却・除却)
  • 減価償却スケジュール作成と決算時処理の例
  • 短時間チェック、週単位ミニ演習、フラッシュカード作成法

用語一覧

用語 意味 試験での着眼点
取得価額 資産を取得するために要した支出の総額(購入価格+付随費用) 付随費用(運送料、据付費)を資本的支出か費用処理か判断する問題が頻出
耐用年数 資産が使用可能と見込まれる期間(税務上は耐用年数表が基準) 税法における耐用年数の取り扱いを押さえる(特に法定耐用年数)
残存価額(簿価保存額) 償却後に残すとする価額(税法上は原則として取得価額の5%等) 減価償却の下限に関する問題で出題される
減価償却方法 定額法、定率法など。費用配分の考え方 計算過程と期末の帳簿価額の一致確認が重要
減価償却累計額 資産の取得以来計上した累計の償却額(貸方評価勘定) 貸借対照表で帳簿価額=取得価額−累計償却額を確認

仕訳パターン表(試験で頻出)

事象 仕訳(借方/貸方) ポイント
固定資産の購入(現金) 固定資産 XXXX/現金 XXXX 購入に係る付随費用は取得価額に含める
購入(掛け) 固定資産 XXXX/買掛金 XXXX 支払条件に注意。取得価額は同じ扱い
期末の減価償却(年度) 減価償却費 XXXX/減価償却累計額 XXXX 費用配分。税法に応じた計算を行う
中途売却(売却益) 現金(又は売掛金) XXXX/固定資産 XXXX
減価償却累計額 XXXX/固定資産処分損益(利益) XXXX
帳簿価額と売却価額の差額を損益で処理
除却(無価値化) 除却損 XXXX/固定資産 XXXX
減価償却累計額 XXXX/固定資産 XXXX
残存価額を考慮して損益処理

減価償却の仕組み(要点と公式)

基本は「取得価額(資本的支出)を耐用年数にわたり費用配分する」ことです。税法では耐用年数表や償却方法の規定があります。ここでは代表的な定額法と定率法について簡潔に示します。

方法 基本計算式 特徴(試験での着眼点)
定額法(直線法) (取得価額−残存価額)÷耐用年数 毎年一定額。スケジュール作成が素直で計算ミスが少ない
定率法(残存簿価比例法) 年初簿価×償却率(年率) 初期償却が大きい。税法上の償却率や丸め処理に注意

例:定額法の償却スケジュール(具体例)

前提:取得価額 1,000,000円、残存価額 100,000円、耐用年数 5年(定額法)

年次 当期償却額 償却累計額 期末帳簿価額
年1 180,000 180,000 820,000
年2 180,000 360,000 640,000
年3 180,000 540,000 460,000
年4 180,000 720,000 280,000
年5 180,000 900,000 100,000

補足:定率法の簡単な示例(概念確認)

定率法は年初簿価に対して一定率を掛けます。例として償却率40%を適用すると:

年次 当期償却額(概算) 期末帳簿価額(概算)
年1 400,000(=1,000,000×40%) 600,000
年2 240,000(=600,000×40%) 360,000
年3以降 同様に年初簿価×償却率。ただし残存価額以下にならないよう調整 残存価額まで減少

(注)税務上は耐用年数表に基づく償却率や端数処理ルールがあるため、本番では規定に従って行うこと。

決算時の仕訳例(表形式で確認)

処理 仕訳 解説
年度減価償却の計上 減価償却費 XXXX/減価償却累計額 XXXX 損益計算書に費用、貸借対照表に控除項目として表示
中途売却(帳簿価額より高く売れた場合) 現金 XXXX/固定資産 XXXX
減価償却累計額 XXXX/固定資産処分益(又は損) XXXX
帳簿価額=取得価額−累計償却額。差額を損益計算
除却(廃棄) 除却損 XXXX/固定資産 XXXX
減価償却累計額 XXXX/固定資産 XXXX
残存価額がある場合は除却損に反映

よくあるミスと対処法(試験対策)

  • 誤り:付随費用を費用として処理してしまう。対処:取得価額に組み入れるかどうかを状況で判断(据付費等は通常取得価額へ)
  • 誤り:耐用年数を間違える。対処:問題文の条件を最優先、税法問題では耐用年数表の該当を確認する練習を繰り返す
  • 誤り:定率法の計算で端数処理を省略。対処:端数処理ルールを明確にして計算過程を丁寧に書く
  • 誤り:除却・売却時の累計償却額を忘れる。対処:処分時は必ず減価償却累計額と比較する習慣をつける

『3分チェックリスト』

  • 取得価額には付随費用を含めたか?
  • 耐用年数と残存価額の前提を問題文で確認したか?
  • 定額法・定率法のどちらを用いるか明示しているか?
  • 期末の減価償却は減価償却費/減価償却累計額で処理したか?

週単位ミニ演習(例題3問+詳解)

問題1

機械を現金1,200,000円で購入した。付随費用として据付費50,000円がかかった。耐用年数は4年、残存価額は0とする。定額法で年次償却額を求めよ。

解答1(解説)

取得価額=1,200,000+50,000=1,250,000円。残存価額0、耐用年数4年。

年次償却額=1,250,000÷4=312,500円。

問題2

取得価額800,000円、耐用年数5年、残存価額100,000円の固定資産がある。定額法で3年経過後の帳簿価額はいくらか。

解答2(解説)

年次償却額=(800,000−100,000)÷5=140,000円。3年の累計=420,000円。

帳簿価額=800,000−420,000=380,000円。

問題3

取得価額1,000,000円、定率法(償却率40%)、残存価額100,000円の資産について、年1の期末帳簿価額を求めよ。

解答3(解説)

年1の償却額=1,000,000×40%=400,000円。期末帳簿価額=1,000,000−400,000=600,000円。

(注)以降は年初簿価×償却率で計算し、残存価額以下にならないよう調整する。

復習用フラッシュカードの作り方(例・テンプレ)

フラッシュカードは短い問いと答えを反復するのに有効です。以下を参考に電子カードや紙カードを作りましょう。

表(問い) 裏(答え)
定額法の年次償却額の公式は? (取得価額−残存価額)÷耐用年数
減価償却費の仕訳は? 減価償却費/減価償却累計額
中途売却の際にまず確認することは? 帳簿価額(取得価額−累計償却額)と売却価額の差

WordPress に貼りやすいテンプレート(仕訳テーブルと仕訳サンプル)

以下はそのままコピペして使えるHTMLテーブルテンプレートです。必要に応じて数値を書き換えてください。

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
YYYY/MM/DD 固定資産 機械 1,250,000 現金 1,250,000 機械購入(据付費含む)
YYYY/MM/DD 減価償却費 312,500 減価償却累計額 312,500 年次償却(定額法)

最後に:まとめ

本記事では、有形固定資産の取得価額の考え方、定額法と定率法の違い、試験でよく出る仕訳パターン、決算時の処理例を表で整理しました。ポイントは「取得価額の認識」「耐用年数と残存価額の設定」「期末に必ず減価償却費/減価償却累計額で処理すること」です。短いチェックリストやフラッシュカードで反復すると記憶に残りやすくなります。

次回は精算表から財務諸表へとつなぐ一連の流れを、固定資産の注記と税効果の観点から詳しく見ていきます。小さな演習を継続して、着実に理解を深めていきましょう。