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第23回 簿記入門(16) 精算表

第23回 簿記入門(16)
精算表とは何をしている表なのか
― 決算の全工程を1枚で確認する ―

前回(第22回)では、
損益振替・資本振替によって帳簿を締める意味を整理しました。

今回は、決算作業の流れを
1枚の表でまとめて確認できる道具
精算表を扱います。


1. 精算表とは何か

精算表とは、

試算表から決算整理、
そして損益計算書・貸借対照表までの流れを
一覧で確認するための表

です。

大切なポイントは、

  • 帳簿そのものではない
  • 試験や学習用に作られた「整理のための表」

だということです。


2. 精算表は何のために使うのか

決算では、

  • 決算整理仕訳
  • 損益計算書の作成
  • 貸借対照表の作成

と、多くの作業が連続します。

精算表は、それらを

「ちゃんとつながっているか」
「数字が合っているか」

を確認するためのチェックシートです。


3. 精算表の基本構造

精算表は、横に区分が並ぶ形をしています。

区分 内容
試算表 決算整理前の残高
決算整理 前払・未払・減価償却などの修正
損益計算書 収益・費用を集計
貸借対照表 資産・負債・純資産を集計

左から右へ見ていくことで、
決算の流れをそのまま追える構造になっています。


4. 具体例で見る精算表の考え方

例えば、次のような決算整理があったとします。

内容 処理
前払家賃が1か月分残っていた 前払費用として資産計上
給料の未払いがあった 未払費用として負債計上

これらは、

  • 決算整理欄で修正され
  • 損益計算書欄に費用が反映され
  • 貸借対照表欄に資産・負債が反映される

という流れで、
横方向につながっていきます


5. 精算表を見るときのコツ

精算表は、
細かい数字を追うよりも、次の点を見るのが大切です。

チェックポイント 見る理由
左右が必ず一致しているか 仕訳のミスを防ぐため
決算整理がどこに影響しているか 処理の意味を理解するため
P/LとB/Sに正しく振り分けられているか 財務諸表作成の確認

まとめ

  • 精算表は決算作業の「地図」
  • 帳簿ではなく、整理・確認のための表
  • 決算の流れを横に追えるのが最大の特徴
  • 理解できれば、決算は一気に楽になる

精算表を使って考えられるようになると、
決算は暗記ではなく流れで処理できるようになります。


次回予告(第24回)

次回は、
精算表と財務諸表の関係をもう一歩深めます。

精算表のどこを見れば、
損益計算書・貸借対照表が完成するのかを整理します。

第22回 簿記入門(15) 損益振替・資本振替

前回(第21回)では、
決算整理後試算表から、損益計算書と貸借対照表が作られる
ことを確認しました。

今回はその続きとして、
帳簿を締める作業、つまり
損益振替・資本振替を扱います。


1. 帳簿を「締める」とは何をすることか

「帳簿を締める」と聞くと、
特別な作業を想像しがちですが、やっていることはシンプルです。

1年間使った勘定科目をリセットし、
次の期をゼロから始められるようにする

そのために使われるのが、
損益振替資本振替です。


2. なぜ振替が必要なのか

収益や費用の勘定は、
1年間の成績を記録するためのものです。

そのまま残してしまうと、
翌年の成績と混ざってしまいます。

そこで、

  • 今年の収益・費用 → 今年で完結させる
  • 翌年はまたゼロから記録する

という区切りをつける必要があります。


3. 損益振替とは何か

損益振替とは、

すべての収益・費用を、
「損益」勘定に集める作業

です。

対象 意味
収益 すべて損益勘定へ振り替える
費用 すべて損益勘定へ振り替える

この結果、
損益勘定の残高=当期純利益(または損失)
になります。


4. 資本振替とは何か

資本振替は、損益振替の次のステップです。

損益勘定に集まった利益(または損失)を、
資本(純資産)へ移す作業

振替内容 意味
利益の場合 純資産が増える
損失の場合 純資産が減る

これにより、
今年の成績が、会社の財産に反映されます。


5. 損益振替と資本振替の関係(整理)

手順 何をしているか
損益振替 収益・費用をまとめて、当期の利益を確定
資本振替 確定した利益を、純資産に組み込む

この2つを行うことで、
帳簿は次の期に向けてリセットされます。


まとめ

  • 帳簿を締める=区切りをつける
  • 損益振替で「今年の成績」を確定
  • 資本振替で「会社の財産」に反映
  • 翌期はまたゼロからスタート

ここまで理解できれば、
決算の流れは完全に一本につながります。


次回予告(第23回)

次回は、
精算表とは何かを扱います。

決算整理・損益振替・財務諸表作成を、
1枚でまとめる道具として整理します。

第21回 簿記入門(14) 決算整理後試算表と財務諸表

第21回 簿記入門(14)
決算整理後試算表から財務諸表はどう作られるのか
― 損益計算書と貸借対照表の正体 ―

前回(第20回)では、
決算整理仕訳とは「期間のズレを直す作業」だということを学びました。

今回はいよいよ、その結果がどのように
損益計算書(P/L)貸借対照表(B/S)になるのかを見ていきます。


1. 決算整理後試算表とは何か

決算整理後試算表とは、

決算整理仕訳をすべて反映させたあとの
最終的な勘定科目の一覧表

です。

ここには、

  • 費用・収益(1年間の結果)
  • 資産・負債・純資産(期末の状態)

がすべてそろっています。


2. 決算整理後試算表の中身

決算整理後試算表は、大きく見ると次の2種類の科目でできています。

種類 内容
損益計算書項目 収益・費用(その年の成績)
貸借対照表項目 資産・負債・純資産(期末の財産状況)

3. 損益計算書はどう作られるのか

損益計算書(P/L)は、

決算整理後試算表のうち、
「収益」と「費用」だけを集めて作る

書類です。

区分 代表例
収益 売上、受取利息 など
費用 仕入、給料、減価償却費 など

収益 − 費用 = 当期純利益

これが、
1年間の経営成績です。


4. 貸借対照表はどう作られるのか

貸借対照表(B/S)は、

決算整理後試算表のうち、
「資産・負債・純資産」を集めて作る

書類です。

区分 意味
資産 会社が持っている財産
負債 将来支払う義務
純資産 返さなくてよい自己資本

ここに、
当期純利益が純資産として組み込まれることで、
貸借対照表は完成します。


5. 決算整理後試算表 → 財務諸表の流れ(整理)

段階 何をしているか
決算整理後試算表 すべての勘定科目を確定
損益計算書 収益・費用を抜き出して利益計算
貸借対照表 期末時点の財産状況を表示

まとめ

  • 決算整理後試算表は「すべての完成形」
  • P/Lは「成績表」
  • B/Sは「健康診断書」
  • 利益はP/Lで計算され、B/Sに引き継がれる

ここまで理解できれば、
決算の全体像は頭の中で1本につながります。


次回予告(第22回)

次回は、
帳簿を締めるとはどういうことかを扱います。

損益振替・資本振替の意味を、
暗記ではなく流れで整理します。

第20回 簿記入門(13) 決算整理仕訳・総まとめ

第20回 簿記入門(13)
決算整理仕訳とは何をしているのか
― 発生主義を完成させる最後の作業 ―

ここまでの回で、私たちは次のことを学んできました。

  • 減価償却:過去の支出を期間配分する
  • 引当金:将来のリスクを今期に見積もる
  • 前払費用・未払費用:費用の時間調整
  • 前受収益・未収収益:収益の時間調整

今回は、それらを一本につなぐ回です。


1. 決算整理仕訳とは何か

決算整理仕訳とは、

日々の取引だけではズレてしまう
「費用」と「収益」を、正しい期間に直すための仕訳

です。

日常の取引は、どうしても現金基準に引きずられます。
それを、決算のタイミングで発生主義に修正する。
それが決算整理仕訳の役割です。


2. なぜ決算で大量の仕訳を入れるのか

決算で突然、

  • 前払費用
  • 未払費用
  • 前受収益
  • 未収収益
  • 減価償却費
  • 各種引当金

がまとめて出てくるのは、偶然ではありません。

これらはすべて、

現金の動きと、
期間のズレを修正するための仕訳

だからです。


3. 決算整理仕訳でやっていること(整理)

決算整理仕訳の中身を、役割別に整理するとこうなります。

  • 期間配分
    └ 減価償却、前払費用
  • 未処理の確定費用・収益
    └ 未払費用、未収収益
  • 将来リスクの見積り
    └ 引当金
  • 先にもらった・払った分の調整
    └ 前受収益

見た目はバラバラでも、
目的はすべて同じです。

それは、

「この1年間の正しい利益を計算すること」


4. 【図】決算整理仕訳の全体像


【決算整理仕訳とは】


現金の動きではなく
「期間」
利益を確定させるための仕訳


5. 決算整理仕訳=利益調整ではない

初学者がよく誤解するのが、

決算整理仕訳は、
利益を操作するためのもの

という考え方です。

実際はその逆で、

利益を「ごまかさない」ために行う

のが決算整理仕訳です。


まとめ

  • 日々の取引=現金に近い
  • 決算整理仕訳=期間に修正
  • 目的は「正しい利益」の計算
  • 発生主義を完成させる最後の工程

ここまで理解できれば、
決算整理仕訳は暗記ではなく、意味で処理できるようになります。


次回予告(第21回)

次回は、
決算整理後試算表と財務諸表のつながりを扱います。

決算整理仕訳が、
どのように損益計算書・貸借対照表に反映されるのかを見ていきます。

第19回 簿記入門(12) なぜ「まだもらっていないお金」が収益になるのか― 前受収益・未収収益と発生主義

前回(第18回)では、
前払費用・未払費用を通じて、
「費用は現金ではなく、期間で決まる」という考え方を完成させました。

今回はその反対側です。

もうお金をもらったのに、収益じゃないもの
まだお金をもらっていないのに、収益になるもの

これを整理するのが、
前受収益未収収益です。


1. 前受収益 ― もらったが、まだ収益ではない

前受収益とは、

すでにお金を受け取っているが、まだサービスを提供していないもの
をいいます。

具体例

  • 翌月分・翌年分の家賃を先にもらった
  • 前受けした授業料・会費

現金は手元にありますが、
まだ仕事は終わっていません。

したがって、受け取った時点では収益ではなく「負債」として扱います。

(将来サービスを提供する義務があるためです)

サービスを提供した時点で、
はじめて収益に振り替えます。


2. 未収収益 ― 収益だが、まだもらっていない

未収収益は、前受収益とは逆です。

すでにサービスは提供しているが、まだお金を受け取っていないもの
を指します。

具体例

  • 利息収益(入金は翌期)
  • 月末締めで翌月請求する手数料収入

仕事は終わっている。
つまり、収益は今期に属しています

ただし入金がまだなので、
その分を資産(未収収益)として計上します。


3. 費用との完全な対称関係

ここまでで、気づいたかもしれません。

費用 収益
前払費用 前受収益
未払費用 未収収益

費用と収益は、
鏡写しの関係になっています。


4. 収益も「現金」ではなく「期間」で決まる

まとめると、収益についても判断基準は同じです。

  • 前受収益:先にもらったが、期間はこれから
  • 未収収益:期間は終わったが、入金はこれから

現金の有無は関係ありません。

「いつ、何を提供したか」
これが収益計上の基準です。


【図】収益計上の全体マップ(まとめ)


まとめ

  • 前受収益:もらったが、まだ収益でない
  • 未収収益:収益だが、まだもらっていない
  • 判断基準は常に「期間」

これで、
発生主義は費用・収益の両面から完成です。


次回予告(第20回)

次回は、
「決算整理仕訳とは何をしているのか」を総復習します。

なぜ決算で大量の仕訳を入れるのか。
その意味を、ここまでの知識で一本につなげます。