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第11回 簿記入門(5)貸借対照表(B/S)を図で読む

前回は、仕訳が「1つの取引を、増えたものと減ったものに分けて書くメモ」だという話をしました。
今回は、その仕訳が最終的にたどり着く形のひとつ、
貸借対照表(B/S)をイメージでつかんでいきます。

細かい科目名を全部覚える必要はありません。
「左と右が何を表しているのか」だけ分かれば、今の段階では十分です。


1.貸借対照表は「ある時点の財産の写真」

貸借対照表(Balance Sheet, B/S)は、
一言でいうと
「ある日現在の会社の財産の一覧表」
です。

  • 何をどれくらい持っているか(現金・売掛金・商品・建物など)
  • どれくらい借金やツケがあるか(買掛金・借入金など)
  • その差し引きで、会社の正味の価値はいくらか(純資産)

こういった情報を、
左側と右側に分けて1枚の表にまとめたものがB/Sです。

ざっくりとした構造を描いたのが、今回の
図1「シンプルな貸借対照表(B/S)のイメージ」
です。


2.左側:資産の箱

図1の左側には、大きな箱があり、上に「資産」と書いてあります。
この箱には、次のようなものが入っています。

  • 現金・預金
  • 売掛金(ツケで売って、あとでお金をもらう権利)
  • 商品(在庫)
  • 建物・備品などの固定資産

ここには、
「会社が持っているもの、お金になるもの」
がまとめて入るイメージです。
第8回で出てきた
5つのグループのうち「資産」の代表例がずらっと並んでいる
と思ってください。


3.右側:負債と純資産の箱

図の右側には、同じくらいの大きな箱があり、
中が上と下の2段に分かれています。

  • 上段:負債(買掛金・借入金など)
  • 下段:純資産(資本金・これまでの利益の蓄積)

ここでの関係は、次のひとことに集約されます。

資産 = 負債 + 純資産

つまり、

  • 左側(資産)は、「会社が持っているもの」の合計
  • 右側(負債+純資産)は、「その資産をどのように調達したか」の内訳

という見方ができます。

  • 負債:
    銀行など他人から借りてきたお金や、「あとで支払う約束」の合計
  • 純資産:
    持ち主(株主など)が出したお金+これまでの利益の蓄積

第8回で出てきた
「持ち主から見た会社の正味の価値」=純資産が、ここで右下にまとめて表現されています。


4.簡単な数字のイメージで見てみる

イメージをつかみやすくするために、シンプルな例を考えてみましょう。

例)ある会社のB/S(かなりざっくり)
資産合計   1,000万円
  うち 現金・預金 300万円
    売掛金   200万円
    商品    200万円
    建物・備品 300万円
負債合計    400万円(買掛金・借入金など)
純資産合計   600万円(資本金+これまでの利益)

このときも、

資産1,000 = 負債400 + 純資産600

という関係は必ず成立しています。
B/Sを眺めるときは、

  • 左側に「どんな資産が、どれくらいのバランスであるか」
  • 右側に「どれくらい借金があり、どれくらい自前の力(純資産)があるか」

を見ていくと、「この会社はどんな体質なんだろう?」が少し見えてきます。


5.B/Sは「安全性」のヒントを教えてくれる

もう一歩だけ踏み込むと、B/Sは会社の安全性を考えるときにも役立ちます。

  • 負債が多すぎると、返済や利息の負担が重くなる
  • 純資産が厚い会社は、多少の赤字でもすぐには行き詰まらない
  • 資産の中身が現金や預金ばかりか、在庫だらけか、でも印象が変わる

もちろん、本格的な分析は簿記3級・2級の範囲を超えますが、
「左と右のバランスを見て、会社の体力をイメージしてみる」という感覚は、今から少しずつ慣れておくと役に立ちます。


6.今回のまとめと、次回予告

今回のポイントを整理すると:

  • 貸借対照表(B/S)は、ある時点の「財産の写真」
  • 左側には、現金・売掛金・商品・建物などの資産が並ぶ
  • 右側の上段は負債(他人から借りたお金や、支払う約束)
  • 右側の下段は純資産(持ち主が出したお金+これまでの利益)
  • どんな会社でも、資産 = 負債 + 純資産という式が必ず成り立つ

次回は、B/Sと対になるもう一つの表、
損益計算書(P/L)を図で読んでいきます。
「1年間の成績表」としてのP/Lを、売上・費用・利益の流れの観点からやさしく見ていきましょう。

第10回 簿記入門(4)仕訳って結局なにをしているの?

前回までで、お金の流れ・5つのグループ・家計簿との違いを見てきました。
ここからは、いよいよ簿記のキーワード、
「仕訳(しわけ)」の登場です。

とはいえ、まだ簿記3級のテキストのように
細かいルールを覚える必要はありません。
今回は、
「仕訳とは、取引をどういう形でメモしているのか」だけを、
イメージでつかみましょう。


1.仕訳は「取引のメモ」を共通ルールで書いたもの

まず、そもそも仕訳とは何かという話から。

ざっくり言うと、仕訳は
「1つの取引を、増えたものと減ったものに分けてメモしたもの」
です。

例として、次の取引を考えます。

例)現金で商品を1,000円仕入れた

この取引で起きていることは2つです。

  • 商品(財産)が 1,000円ぶん増えた
  • 現金(財産)が 1,000円ぶん減った

仕訳では、この「増えた」「減った」を
左右に分けて1行にまとめて書く
のがルールです。
このイメージを図にしたのが
図1「仕訳のイメージ(増えたもの・減ったものを1行にまとめる)」
です。


2.仕訳のカタチ:左が「借方」、右が「貸方」

仕訳の用紙(仕訳帳)は、真ん中に線が引いてあって、
左右に分かれています。

  • 左側:借方(かりかた)
  • 右側:貸方(かしかた)

先ほどの取引は、こう書きます。

借方(左) 商品 1,000 | 貸方(右) 現金 1,000

ここでは、「左が正義・右が悪」みたいな意味は一切ありません
単純に、
「増えたほうを左」「減ったほうを右」と決めているだけです。
(※正確には「どのグループが増えたか・減ったか」で左右が決まりますが、
 今はイメージだけで十分です)

図1では、

  • 上の大きな箱に「取引のイメージ」
  • 下の大きな箱に「仕訳の形」
  • 左:商品 1,000 / 右:現金 1,000

という形で、取引 → 仕訳の流れを表しています。
文字を囲んでいる箱は、見やすいように少し大きめにしてあります。


3.なぜ「増えたもの」と「減ったもの」を必ずセットにするのか

仕訳の大原則は、
「1つの取引は必ず、2つ以上の動きのセットになっている」
という考え方です。

さっきの例で言えば:

  • 商品が増えた(プラス)
  • 現金が減った(マイナス)

この2つをセットで書いておけば、

  • 「商品という箱」は、どれくらい増えたか
  • 「現金という箱」は、どれくらい減ったか

を後からきちんと集計できます。
これをすべての取引で続けると、最後には
B/S(貸借対照表)やP/L(損益計算書)を自動的に作れる
ようになる、という仕組みです。

つまり仕訳は、
将来B/SやP/Lを作るための「下書き」のようなものです。


4.別の例でも見てみよう

もう少しイメージを固めるために、別の取引も考えてみます。

例1:家賃を現金で50,000円支払った

  • 家賃という費用が 50,000円ぶん発生
  • 現金という資産が 50,000円ぶん減少

仕訳(イメージ)はこうなります。

借方:地代家賃 50,000 | 貸方:現金 50,000

例2:商品を掛け(ツケ)で200,000円分仕入れた

  • 商品(資産)が 200,000円ぶん増えた
  • まだ払っていないので、買掛金という負債が 200,000円ぶん増えた

仕訳(イメージ)はこうです。

借方:仕入 200,000 | 貸方:買掛金 200,000

どの例でも、
左と右の金額が必ず一致していることに注目してください。
これが、複式簿記のいちばん大事なポイントです。


5.借方・貸方という言葉にビビらなくてOK

初めて簿記のテキストを開くと、
借方・貸方・資産・負債・純資産…
と熟語のオンパレードで、気持ちが折れそうになります。

でも本質は、とてもシンプルです。

  • 1つの取引が起こると、必ず2つ以上の箱が動く
  • その「動いた箱」を、左側(借方)と右側(貸方)に分けて1行でメモする
  • そのメモが仕訳であり、たくさん集めるとB/SやP/Lができる

ここまで理解できていれば、
簿記の「骨組み」はもうかなり見えている状態です。


6.今回のまとめと、次回予告

今回のポイントを整理すると:

  • 仕訳=1つの取引を「増えたもの」と「減ったもの」に分けて書いたメモ
  • 仕訳の形は、左:借方/右:貸方という2つの欄に分かれている
  • どの仕訳も、左と右の金額は必ず同じになる
  • 仕訳を積み重ねることで、最終的にB/SやP/Lが作れる

次回は、ここで学んだイメージをベースに、
貸借対照表(B/S)を「図」で読む回に進んでいきます。
「会社の財産のスナップショット」を、視覚的に掴んでいきましょう。

第9回 簿記入門(3)家計簿と簿記の違い

ここまでで、お金の流れ5つのグループ(資産・負債・純資産・収益・費用)のイメージを見てきました。
今回はよく聞かれる
「家計簿と簿記って何が違うの?」
というテーマを、ざっくり整理してみます。


1.家計簿は「いくら使ったか」をざっくり見るノート

多くのご家庭で使っている家計簿は、
一言でいうと
「現金や銀行口座がどれくらい減ったかを追いかけるノート」
です。

たとえば、こんな感じです。

  • 3/5 スーパー 食費 4,000円
  • 3/10 電気料金 6,500円
  • 3/25 給料日 +250,000円

ここで気にしているのは、
「今月いくら使ったか」「残高がどれくらいか」
という点です。
少し乱暴に言えば、
「財布や口座から出ていったお金」だけ分かれば目的は達成されます。

ですから、家計簿は次のような特徴を持っています。

  • 現金・預金の出入りが中心(お金の動きだけ
  • お金を払った日ベースで記録(現金主義)
  • 1行に1つの数字を書く単式の形が多い
  • 目的は家計の管理・使い過ぎのチェック

これに対して、会社で行う簿記は、もう少し「ガチ」です。


2.簿記は「もうけ」と「財産」をきちんと説明する仕組み

会社が行う簿記は、
「今年どれくらいもうかったのか」
「今どれくらい財産があるのか」を、
税務署や銀行、株主などの第三者にも説明できる形で示すための仕組みです。

そのために、家計簿よりも少し厳密なルールが必要になります。

  • 現金だけでなく、ツケ(掛取引)やモノ(商品・建物など)も記録
  • お金を払った日ではなく、約束が発生した日で費用・収益を計上(発生主義)
  • 左側(借方)と右側(貸方)の2つの側に記録する「複式簿記」
  • 目的は、利益の計算財産・負債の把握

文章だと分かりづらいので、図1で家計簿と簿記を並べて比較しています。


3.図で比較:家計簿と簿記のちがい

図1:家計簿と会社の簿記のちがい(ざっくり)では、
左に「家計簿」、右に「会社の簿記」の箱を置き、
次のようなポイントを書き込んであります。

  • 家計簿:
    現金中心/支払った日ベース/単式/家計管理が目的
  • 会社の簿記:
    現金+掛け+モノ/約束が発生した日ベース/複式簿記/利益計算と財産管理が目的

イメージとしては、
家計簿は「ざっくり管理」
簿記は「きっちり説明」のための道具、と考えると分かりやすいです。


4.現金主義と発生主義の違いを、具体例で見てみる

家計簿と簿記の違いで、いちばん大きいのが
「いつ費用として記録するか」という発想です。

ここでは、スマホの電話料金を例にしてみましょう。

  • 3月:スマホを使って電話をしている
  • 4月上旬:3月分の利用について、請求書が届く
  • 4月末:口座から料金が引き落とされる

このとき、家計簿と簿記では記録のタイミングが変わります。

家計簿(現金主義)

  • 4月末、口座からお金が引き落とされたタイミングで
    「通信費 〇〇円」と1回だけ記録する。

簿記(発生主義)

  • サービスを受けた3月分の電話料金として、「通信費」を計上する。
  • まだ支払っていないので、「未払金」という負債も同時に計上する。
  • 4月末に実際に支払ったとき、「未払金の支払」として処理する。

つまり簿記では、
「サービスを受けた月の成績に、その費用をきちんと入れる」
ことを大事にしています。
この違いを、図2:現金主義と発生主義のちがい(電話料金の例)で整理しています。


5.なぜ簿記はそこまで細かくする必要があるの?

「そんなに細かく分けなくても、トータルで払っている額は同じでは?」
と感じるかもしれません。

しかし、会社の場合は次のような理由から、
「いつの利益なのか」を正しく分ける必要があります。

  • 銀行や投資家に対して、「今年どれくらいもうかったか」を説明する必要がある
  • 税金(法人税など)は、「その年のもうけ」をもとに計算される
  • いつも同じルールで計算しないと、去年と今年の比較ができない

そのため、発生主義(サービスを受けたタイミングで費用を認識)という考え方が使われています。


6.家計簿ができる人は、簿記もきっと得意になれる

ここまで読むと、「簿記ってなんだか難しそう…」と感じるかもしれません。
ただ、家計簿をちゃんとつけられる人は、簿記の素質アリです。

違いをざっくりまとめると:

  • 家計簿:
    「お金が減った瞬間」に印をつける習慣づくり
  • 簿記:
    その印を、5つの箱(資産・負債・純資産・収益・費用)のどこに入れるかまで整理する作業

つまり簿記は、家計簿に「箱分け」と「約束の管理」が加わったイメージです。
今の段階では、そこまで構えなくて大丈夫なので、

  • 家計簿は現金ベース・1行だけ
  • 簿記は、約束も含めて2つの側に記録する

この2点が頭に残っていれば十分です。


7.今回のまとめと、次回予告

今回のポイントを整理すると:

  • 家計簿は、現金の出入りを中心に「いくら使ったか」を見るノート
  • 簿記は、第三者に説明できる形で「利益」と「財産」を示すしくみ
  • 家計簿は支払った日ベース(現金主義)、簿記はサービスを受けた日ベース(発生主義)
  • 簿記では、掛取引やモノ(商品・建物など)も含めて5つの箱に分けて整理する

次回は、ここまでの話を踏まえて、
「仕訳って結局何をしているの?」というテーマに入っていきます。
簿記の世界で何度も出てくる「借方・貸方」の入口を、できるだけやさしく解説していきます。

第8回 簿記入門(2)資産・負債・純資産・収益・費用をざっくりイメージで掴む

前回は、「お金の流れ」と「取引」のイメージを見てきました。
今回は、簿記で何度も登場するキーワード
「資産・負債・純資産・収益・費用」という5つのグループを、
できるだけイメージで掴んでいきます。

最初から完璧に覚える必要はありません。
「なんとなく、この箱はこういうものが入る」というレベルで大丈夫です。


1.5つのグループは「箱」の名前

簿記では、会社のいろいろなお金やモノを、性質ごとに5つの箱に分けて考えます。

  • 資産:会社が持っているもの・お金になるもの
  • 負債:あとで払わないといけない義務
  • 純資産:持ち主から見た会社の「正味の価値」
  • 収益:もうけの原因になる「入り」
  • 費用:もうけを得るための「出ていくコスト」

これらは、専門用語っぽく見えますが、
言い換えれば「どの箱に入っている話なのか」を区別するためのラベルです。

記事の途中にある図(図1)では、
この5つの箱と代表的な中身を、シンプルに整理しています。


2.「資産」=会社が持っているもの

まずは資産です。
ざっくり言うと、「会社が持っているもの・お金になるもの」が資産に入ります。

  • 現金・預金
  • 売掛金(ツケで売って、あとでお金でもらえる権利)
  • 商品・製品・材料
  • 建物・土地・機械・備品

イメージとしては、
「会社の宝箱」のようなものです。
「将来お金になりそうなもの」が、この宝箱に入っていると考えてください。


3.「負債」=将来払う約束があるもの

次は負債です。
これは一言でいうと、「将来お金を払う義務・約束があるもの」です。

  • 借入金(銀行などから借りたお金)
  • 買掛金(ツケで仕入れ、あとで支払う義務)
  • 未払金(まだ払っていない代金)
  • 未払費用(電気代など「請求書は来たがまだ払っていないもの」)

資産が「宝箱」だとすると、
負債は「借りているもの」「あとで返さないといけないもの」です。

ここで大事なのは、
「実際に払ったかどうか」ではなく、「払う義務が発生したかどうか」です。
請求書が届いた時点で、負債が増えるイメージを持っておいてください。


4.「純資産」=持ち主から見た会社の「正味の価値」

3つ目は純資産です。
少し抽象度が高いのですが、イメージとしては
「会社をまるごと売ったときに、最終的にオーナーに残る部分」
です。

数学的には、

資産 − 負債 = 純資産

となります。
つまり、会社が持っているもの(資産)から、
借りているもの(負債)を引いた残りが純資産です。

純資産の代表例は:

  • 資本金(会社のスタート時に出してもらったお金)
  • 利益剰余金(これまでの利益がたまったもの)

「資産の箱」と「負債の箱」を並べて、その差額が「純資産の箱」
…というイメージでOKです。


5.「収益」と「費用」=1年間の成績表の主役

ここまでの3つ(資産・負債・純資産)は、ある時点の「財産の状態」を表すもので、
貸借対照表(B/S)に登場するグループでした。

一方、これから出てくる収益・費用は、
1年間の成績を表す損益計算書(P/L)に登場するグループです。

収益:もうけの原因になる「入り」

  • 売上高(商品やサービスを売って得たお金)
  • 受取利息(預金などの利息)
  • 受取配当金 など

「会社の成績にプラス方向に働く原因」が収益です。

費用:もうけを得るための「コスト」

  • 給料・賞与
  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 広告宣伝費
  • 仕入(商品を仕入れるコスト) など

「会社の成績をマイナス方向に押し下げるコスト」が費用です。

収益 − 費用 = 利益

この利益が、前の章で出てきた純資産の一部としてたまっていく
というイメージを持っておいてください。
図2で、このつながりをシンプルに図解しています。


6.図で確認:5つの箱と、P/LからB/Sへのつながり

文章だけだと分かりにくいので、
ここまでの話を2つの図にまとめました。

  • 図1: 5つのグループと代表的な中身
  • 図2: 収益・費用 → 利益 → 純資産 という流れ

どちらも、ボックス+矢印でざっくりイメージできるようにしてあります。
細かい勘定科目を全部覚えるのではなく、
「だいたいこの箱に入るんだな」という感覚を持てれば十分です。


7.今回のまとめと、次回へのつながり

今回のポイントをまとめると:

  • 簿記では、会社の状態や動きを5つのグループ(箱)で捉える
  • 資産=会社が持っているもの・お金になるもの
  • 負債=将来払う義務(借りているもの)
  • 純資産=資産 − 負債(持ち主から見た会社の価値)
  • 収益・費用は1年間の成績表(P/L)の主役で、差額が利益
  • 利益は最終的に純資産として、B/S側にたまっていく

この5つの箱は、簿記3級以降もずっと使い続ける「共通言語」です。
最初はフワッとしていて構いませんが、何度も見ているうちに、
自然とイメージが固まっていきます。

次回は、
簿記入門(3)家計簿と簿記の違いをテーマに、
「ふつうの家計簿」と「簿記の世界」での考え方の違いを見ていきます。

第7回 簿記入門(1)お金の流れと「取引」の考え方

【Part2-1】お金の流れと「取引」の考え方(会計・簿記ゼロ入門①)

ここからは、Part 2:会計・簿記ゼロ入門に入っていきます。
今回(Part2-1)のテーマは、簿記のいちばん土台になる考え方──
「お金の流れ」と「取引」です。

簿記は、かんたんに言えば
「お金やモノがどう動いたか」を、決められたルールでメモする作業
です。その「動き」の最小単位が「取引」です。


1.まずは家計のお金の流れからイメージしてみる

いきなり「会社」の話をすると難しく感じるので、
まずはふつうの家庭(家計)のお金の流れをイメージしてみましょう。

  • 毎月、給料が銀行口座に入る
  • 家賃や光熱費、スマホ代が口座から引き落とされる
  • スーパーで食材を買うときに、現金やカードで支払う
  • たまにボーナスが入る、税金が引かれる

こんなふうに、
「お金が入ってくる」「お金が出ていく」を繰り返しながら、
1か月、1年の生活が回っています。


家計簿は、この「入った」「出た」をノートやアプリに書き残したものですよね。
簿記も、基本はこれとよく似ています。


2.簿記でいう「取引」とは何か?

簿記の世界では、お金やモノが動いた出来事を
「取引」と呼びます。

たとえば、会社でこんなことが起こったとします。

  • 商品を現金で仕入れた
  • お客さんに商品を売って、代金を現金でもらった
  • 給料を従業員に支払った
  • 銀行からお金を借りた

これらはすべて、簿記でいう「取引」です。
共通しているのは、

  • 会社のお金やモノの状態が変わっている

という点です。

逆に、「社長が雑談をした」「会議をした」など、
お金やモノの状態が変わらない出来事は、
簿記の上では「取引」にはなりません


3.「お金が動けば取引」だけではない

もう少しだけ踏み込んでみましょう。
「お金が動いたら取引」と言いましたが、実はお金が動かなくても取引になるケースがあります。

たとえば、

  • 商品を「掛け」で仕入れた(今は払わない・後で払う約束)
  • お客さんにツケで売った(今はもらわない・後で払ってもらう)
  • 月末時点で、まだ払っていない給料や電気代が残っている

こうした出来事は、

  • お金そのものはまだ動いていない

のに、「あとで払う義務が増えた」「あとで受け取る権利が増えた」
という意味で、会社の状態は確実に変わっています。

簿記では、こうした「あとで払う・あとでもらう」の約束も、
きちんと取引として記録していくのが大きなポイントです。


4.1つの取引の前後を「箱」でイメージしてみる

「取引」のイメージをつかむために、
会社をいくつかの「箱」に分けて考えてみましょう。

たとえば、

  • お金の箱(現金・預金)
  • モノの箱(商品・備品など)
  • 借金の箱(銀行からの借入金など)
  • 会社の元手の箱(資本金など)

というイメージです。

「商品を現金で仕入れた」という取引なら、

  • お金の箱が減る(現金が出ていく)
  • モノの箱が増える(商品が手に入る)

という変化が同時に起きています。

簿記は、この「どの箱が増えて、どの箱が減ったか」を、
あとで見ても分かるように記録していく作業です。
この「箱の増減」のルールを、もう少し厳密にしたものが仕訳になります。


5.家計と会社の「取引」の違い

家計と会社の取引には、共通点と違いがあります。

共通点

  • お金が入る・出るという意味では同じ
  • 「何に使ったか」「どれくらい残っているか」を知るために、記録が必要

違い

  • 会社は「儲け(利益)」をきちんと計算する必要がある
  • 取引先や銀行、税務署など、外部に説明する責任がある
  • 「お金が動いた瞬間」だけでなく、「約束が発生した時点」で記録する

家計簿は、

  • 実際にお金が出たとき・入ったときに書く

ことが多いですが、会社の簿記では、
「約束をした時点」で取引として記録するという点が大きな違いです。


6.「取引かどうか」を判定するミニチェック

最後に、「これは取引か?」を判断する簡単なチェックを用意しておきます。

次のうち、簿記の世界で「取引」として記録しそうなものはどれでしょうか?

  1. 社長が社員とランチミーティングをした
  2. 取引先に商品を売り、代金を現金でもらった
  3. 来月の展示会の打合せをした
  4. 電気代の請求書が届いた(まだ支払っていない)

答えは…

  • 2と4が「取引」です。

2は、お金が動いて商品が出て行っているので分かりやすいですね。
4は、まだ支払っていないものの、「支払わないといけない義務」がはっきりした瞬間なので、
会社の状態が変わった=取引として記録します。

1や3は、会社にとって大事な出来事ではありますが、
(それ自体では)お金やモノの状態が変わっていないので、
簿記上の「取引」にはなりません。


7.今回のまとめと次回予告

今回は、

  • 家計のお金の流れと、会社のお金の流れの共通点・違い
  • 簿記における「取引」とは何か
  • お金が動かなくても取引になるケースがあること
  • 「箱」の増減として取引をイメージする、という考え方

を見てきました。

次回は、
【Part2-2】資産・負債・純資産・収益・費用をざっくりイメージで掴む
として、さきほど出てきた5つの「箱」それぞれの中身を、
もう少し丁寧にイメージしていきます。

第6回 いまの自分がどこから始めるべきかチェックリスト

ここまでで、
第1回〜第5回を通して

  • 税理士という仕事と試験の全体像
  • 科目選択と受験順序の考え方
  • 勉強期間の目安と人生設計
  • 予備校・通信・独学の違い

をざっくり見てきました。
そろそろ頭に浮かぶのが、
「で、結局、自分はどこから始めればいいの?」という問いだと思います。

今回は、その疑問に答えるための
「現在地チェックリスト」を用意しました。
深く考えすぎず、直感でサクサク答えてみてください。


1.このチェックリストの使い方

各質問について、もっとも近い選択肢を1つ選んでください。
選択肢は基本的に A / B / C の3パターンです。

  • A: かなり初心者寄り
  • B: 中間レベル・経験少しあり
  • C: 経験・知識が比較的ある

最後に「Aが多い人」「Bが多い人」「Cが多い人」で、
このサイトでのおすすめスタート地点を案内します。


2.会計・簿記の「現在地」チェック

Q1.貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)を見たことがありますか?

  • A: 見たことがほとんどない/言葉もよく分からない
  • B: 見たことはあるが、何となく雰囲気が分かる程度
  • C: 会社や簿記テキストでよく見ていて、おおよそ構造が分かる

Q2.「資産・負債・純資産・収益・費用」という5つの区分について

  • A: 名前もあまり聞いたことがない/すぐには説明できない
  • B: 名前は知っていて、ざっくりしたイメージなら話せる
  • C: どんな勘定科目がどの区分か、ある程度イメージできる

Q3.日商簿記の学習・資格について

  • A: まだ簿記の勉強はほぼ未経験
  • B: 3級テキストを少しやった/3級を持っているが忘れかけている
  • C: 日商簿記3級はしっかり理解済み/2級の勉強もしたことがある

3.勉強時間と生活リズムのチェック

Q4.1週間あたり、税理士関連の勉強に使えそうな時間は?

  • A: 5時間未満(週末に少し触れられるかどうか)
  • B: 5〜10時間くらい(平日少し+週末まとめて)
  • C: 10時間以上(平日もコンスタントに時間を取れる)

Q5.生活リズムの安定度は?

  • A: 残業・家事などで毎日バラバラ、決まった時間を確保しにくい
  • B: 忙しい日もあるが、週に数日は決まった時間を作れる
  • C: 比較的安定していて、毎日ほぼ同じ時間帯に勉強できる

4.学習習慣・メンタル面のチェック

Q6.「ひとりでコツコツ勉強すること」についてどう感じますか?

  • A: 正直かなり苦手。誰かにペースを作ってほしい
  • B: 得意ではないが、カレンダーなどを使えば何とか管理できる
  • C: 割と得意。自分で計画を立てて勉強するのが嫌いではない

Q7.これまでの資格試験や勉強経験について

  • A: 長期的な勉強を続けた経験がほとんどない
  • B: 短期〜中期の試験勉強はやったことがある(英検・TOEICなど)
  • C: 半年以上かけて何かの試験勉強を続けた経験がある

5.お金と勉強スタイルのチェック

Q8.年間で「勉強のために使っても良い」と思える予算感は?

  • A: まずは数万円以内で始めたい(市販本+オンライン無料コンテンツ中心)
  • B: 10万〜20万円くらいまでは投資してもよい
  • C: 合格のためなら、必要に応じてもう少し投資してもよい

Q9.予備校・通信・独学のイメージで一番しっくり来るのは?

  • A: まずは独学+低コストで様子を見たい
  • B: 通信講座など「半分サポートが欲しい」スタイルが合いそう
  • C: しっかり通学 or 本格的な通信で最短ルートを狙いたい

6.結果の読み方:「あなたのスタート地点」

ざっくりでいいので、A・B・Cがそれぞれ何個くらいあったかを数えてみてください。
(きっちり数えなくても、「A多めかな」「BとCが半々くらいだな」程度でOKです)

タイプ1:Aが多い人(ほぼ初心者/これから会計の世界に入る人)

おすすめのスタート地点:
このサイトでは、

  • Part 2:会計・簿記ゼロ入門(3級前の準備)

から始めるのがおすすめです。

まずは、

  • お金の流れ・取引の考え方(2-1)
  • 5つの区分(資産・負債・純資産・収益・費用)のイメージ(2-2)
  • 利益とは何か?(2-3)
  • B/S・P/Lを「図」で読む感覚(2-4, 2-5)

といった「会計のざっくり感覚」を掴むことからスタートしましょう。
いきなり税理士試験用のテキストに飛びつくより、
まずは土台を固めた方が、結果的に早く進めます。

タイプ2:Bが多い人(簿記3級レベル・基礎はあるが不安もある人)

おすすめのスタート地点:

  • Part 3:日商簿記3級 完全マスター講座を軸にしつつ、
  • 必要に応じてPart 2の要点だけ復習

というルートが適しています。

特に、

  • 「仕訳のルールは分かるが、いざ問題になると戸惑う」
  • 「決算整理や精算表あたりがあやしい」

という方は、3級の総仕上げをきちんとやり直しておくと、
税理士試験の会計科目(簿記論・財表)に入ったときの理解のスピードが全然違ってきます。

タイプ3:Cが多い人(簿記2級レベル/実務経験あり)

おすすめのスタート地点:

  • Part 4:日商簿記2級への橋渡し&ガイドを読みつつ、
  • その先のPart 5:会計科目の入り口(簿記論・財表)の内容を視野に入れる

という流れがイメージしやすいと思います。

すでに

  • 日商簿記2級を持っている
  • 経理・会計の実務を数年以上経験している

といった方であれば、
「税理士試験独特の出題形式」「理論問題」「時間配分」などを、
早めに意識した勉強へシフトしていくことができます。


7.このあと、何をすればいいか

チェックリストの結果をふまえて、
まずは次の2つを決めてみてください。

  1. このサイトのどのパートから読み始めるか
    (Part 2 / Part 3 / Part 4〜5 のいずれか)
  2. 1週間の中で「勉強する時間帯」を1つ決める
    例:平日21:00〜22:00は、必ず簿記のテキストを開く など

「どこから始めるか」が決まれば、あとは小さく一歩を踏み出すだけです。
このサイトでは、今後も

  • 会計・簿記の入門コンテンツ
  • 簿記3級・2級へのステップ
  • 税理士試験の会計・税法科目の入り口ガイド

を順番に整えていきます。
次回からは、Part 2(会計・簿記ゼロ入門)に入っていきましょう。

第5回 予備校・通信・独学のメリット・デメリット比較

前回は「勉強期間の目安と人生設計」について、立場別にざっくりとプランを見てきました。
今回のテーマは、多くの受験生が必ず一度は悩むポイント──「予備校」「通信講座」「独学」どれで勉強するかです。

結論から言うと、絶対的に正しい選び方はありません。
大事なのは、「自分の状況」「性格」「お金と時間」のバランスを見ながら、いまの自分にとって最適なスタイルを選ぶことです。


1.なぜ勉強スタイル選びがそんなに重要なのか

税理士試験は長期戦です。
1〜2か月で終わる試験なら、「とりあえず始めてから考える」でも何とかなりますが、数年スパンで続ける試験ではそうはいきません。

勉強スタイルを間違えると、

  • 高い授業料を払ったのに通えなくなる
  • 教材だけ積み上がって、手をつけられない
  • 独学にした結果、何をどの順番でやればいいか分からず迷子になる

といった状態になりがちです。

だからこそ、最初に「自分に合いそうなスタイル」を冷静に見極めることが、合格への近道になります。


2.予備校(通学)のメリット・デメリット

メリット

  • カリキュラムが完成されているので、何をどの順番で勉強するかを考えなくてよい
  • 教室で講義を受けることで、強制的に勉強時間が確保される
  • 同じ目標の仲間がいることで、モチベーションを保ちやすい
  • 質問コーナーや講師への相談など、サポートが手厚い

デメリット

  • 授業料が高め(年間で数十万円になることも多い)
  • 決まった時間に通う必要があり、仕事や家庭との両立が難しい場合がある
  • 講義のペースが合わないと、「速すぎる・遅すぎる」と感じることも
  • 通学時間そのものが負担になりやすい(特に地方在住の場合)

向いている人の傾向としては、

  • ある程度まとまったお金を投資できる
  • 決まった時間に通う方がサボらなくて済むタイプ
  • 「ひとりで黙々と」は苦手で、周りの雰囲気がある方が頑張れる

といったイメージです。


3.通信講座(Web・DVD・オンライン)のメリット・デメリット

メリット

  • 基本的に自分のペースで講義を視聴できる
  • 通学時間が不要で、地方でも東京と同じレベルの講義を受けられる
  • 通学よりやや安い価格に設定されていることが多い
  • 倍速再生・巻き戻しなどを活用して、理解があやしい部分だけを重点的に復習できる

デメリット

  • 「いつでも見られる」がゆえに、後回しにしやすい
  • 教室ほどの「緊張感」がなく、途中でフェードアウトしやすい
  • 質問の仕方がメール・フォームに限られるなど、対面ほど気軽ではない
  • ネット環境・視聴端末にある程度慣れている必要がある

向いている人の傾向としては、

  • 仕事・子育てなどで決まった時間に通うのが難しい
  • 動画やオンライン学習に抵抗がない
  • ある程度、自分でペースを管理できる(カレンダー等で予定を組める)

といったタイプです。
「通学の強制力」と「独学の自由さ」の中間に位置するスタイル、とイメージすると分かりやすいかもしれません。


4.独学(市販テキスト・過去問中心)のメリット・デメリット

メリット

  • 何より費用が安い(テキスト・問題集中心なら数万円レベル)
  • 自分の得意・不得意に合わせて自由にカスタマイズできる
  • 「自分で勉強の組み立てをする力」がつく(これは実務でも役立つ)
  • 時間・場所に制約されにくい

デメリット

  • そもそも何から手をつければいいか分からないことが多い
  • 難所にぶつかったときに、相談相手がいない
  • 勉強計画も教材選びもすべて自分で決める必要があり、迷っているうちに時間が過ぎやすい
  • モチベーション管理をすべて自分でしなければならない

向いている人の傾向としては、

  • 日商簿記などですでにある程度の基礎がある
  • 自分で調べて勉強の道筋を立てるのが苦にならない
  • お金よりも、まずは「試しに始めてみる」ことを優先したい

といったタイプです。
ただし、「完全独学で5科目すべて」というのはかなりハードルが高いので、どこかのタイミングで通信や部分的な講座を併用する人が多いです。


5.タイプ別・おすすめの組み合わせ

ここまでを踏まえて、ざっくりとした「タイプ別・おすすめ例」を挙げてみます。

ケースA:お金はかかってもいいから、とにかく最短で合格したい

  • 会計の基礎:予備校通学 or 通信のフルコース
  • 税法:同じ予備校のカリキュラムで一気に進める

王道中の王道です。
生活面で無理がないなら、合格可能性はもっとも高いルートと言えます。

ケースB:仕事や家庭が忙しく、通学は厳しいが、独学だけでは不安

  • 会計科目:通信講座+市販問題集で演習を補強
  • 税法:メイン税法だけは講座を使い、残りは独学も視野に

「通信+独学」のハイブリッド型です。
税理士試験受験生の中でも、かなり現実的な選択肢として選ばれています。

ケースC:まずは費用を抑えて様子を見たい(入門〜簿記レベル)

  • 入門〜日商3級・2級:市販テキスト+このサイトなどの無料コンテンツ
  • 簿財や税法に入るタイミングで、通信や予備校を検討

「まずは土台まで独学で作る」パターンです。
このサイト(zeimu.online)がまさにこのゾーンをサポートしていきます。


6.お金と時間から逆算してみる

最後に、シンプルなフレームワークをひとつ。
勉強スタイルを決めるときは、次の3つを紙に書き出してみてください。

  • ① 1年間で使えるお金(上限)
    …税理士試験のために、「ここまでは出してもいい」と決める。
  • ② 1週間あたりの勉強時間
    …現実的に、平日・休日でどのくらい確保できるかを具体的に。
  • ③ いつまでに何科目取りたいか
    …「3年で3科目」「5年で5科目」など、ざっくりでOK。

この3つを書き出したうえで、

  • 予備校通学 → お金はかかるが、時間を強制的に確保したい人向け
  • 通信講座  → お金・時間のバランスを取りたい人向け
  • 独学    → まずは低コストで土台を作りたい人向け

という位置づけで比較してみると、自分に合ったスタイルが見えやすくなります。


7.このサイト(zeimu.online)の立ち位置

このサイトは、ざっくり言えば

  • 「入門〜簿記レベルの土台作り」をしっかり固めるための教材
  • 将来的には、通信講座的に使える問題演習ゾーンも用意していく予定

というポジションをイメージしています。

予備校や大手通信にいきなり申し込む前に、

  • どんな試験なのか
  • どれくらいの期間・お金がかかりそうか
  • 自分はどのスタイルが合いそうか

を整理できる場として、うまく活用してもらえればと思います。


次回は、第6回「いまの自分がどこから始めるべきかチェックリスト」として、
あなたの「現在地」と「スタート地点」を具体的な質問形式で整理していきます。

第4回 勉強期間の目安と人生設計(学生/社会人/主婦)

第4回 勉強期間の目安と人生設計(学生/社会人/主婦)

前回は「科目選択と受験順序」の話をしました。
今回は一歩引いて、「そもそも税理士試験にどのくらい時間がかかるのか」「自分の人生のどこに、どんなふうに勉強時間を組み込むか」というテーマで整理していきます。


1.税理士試験は“長期戦”が前提

税理士試験は、5科目合格がゴールです。
一発合格というよりは、

  • 毎年1〜2科目ずつ合格を積み重ねる
  • 合計で数年〜10年前後を見ておく

という長期戦タイプの試験だと考えてください。

もちろん、

  • 大学在学中に一気に科目を取り切る人
  • 社会人で年1科目ペースでじっくり積み上げる人
  • 子育てが落ち着いてから本格スタートする人

など、ペースは人それぞれです。
大事なのは、「自分は何年くらいで、どのタイミングまでに何科目を取りたいか」を、ざっくりでもいいので決めておくことです。


2.1年サイクルのイメージを持つ

税理士試験は年1回なので、どうしても1年単位での計画になります。
1年をざっくり分けると、こんなイメージです。

  • インプット期:秋〜冬(基礎・応用を習う)
  • アウトプット期:春(問題演習中心・答練が増える)
  • 直前期:初夏〜本試験(総まとめ・模試・弱点つぶし)

予備校・通信講座を使う人も、独学で進める人も、
この「インプット → アウトプット → 直前期」の流れだけは頭に入れておくと、年間計画を立てやすくなります。


3.タイプ別モデルプラン

(1)大学生モデル:在学中〜卒業後4〜5年で完成を狙う

大学生の強みは、「時間のコントロールがしやすい」ことです。
一方で、就活や卒論など、集中しづらい時期もあります。

イメージしやすいモデルとしては:

  • 1〜2年目:日商簿記2級、簿記論・財務諸表論の基礎
  • 3年目:簿財本格受験(1〜2科目合格を狙う)
  • 4年目:就活+税法1科目(余力に応じて)
  • 卒業後〜数年:残りの税法科目を詰めていく

ポイントは、

  • 「就活の年は無理をしすぎない」
  • 「会計の基礎は早めに固めておく」

この2つです。
在学中に簿財+税法1科目=合計3科目くらいまで取れていると、その後がかなり楽になります。

(2)社会人モデル:5〜7年の中長期プラン

社会人の場合は、「勉強時間をどれだけ確保できるか」がすべてです。
残業が多い職場かどうか、繁忙期がどの時期に来るかで、設計が大きく変わります。

典型的なモデルはこんな感じです。

  • 1年目:会計科目1科目(簿記論 or 財務諸表論)に集中
  • 2年目:会計科目もう1つ+余力があれば税法1科目
  • 3〜5年目:税法科目を年1〜2科目ずつ積み上げる

「理想は毎年2科目ずつ」ですが、
繁忙期のある仕事で2科目は、正直かなりきついです。

最初の2〜3年は

  • 仕事との両立に慣れる
  • 自分の「1週間あたりの現実的な勉強可能時間」を把握する

ことを優先し、年1科目ペースでもいいから確実に合格を重ねる、くらいの気持ちでいた方が長続きします。

(3)主婦・子育てモデル:時間帯を“固定”してコツコツ型

家事・育児をしながらの受験は、時間の自由度が一見高いように見えて、実は突発的な予定で崩されやすいのが難しいところです。

おすすめは、

  • 「毎朝●時〜●時だけは自分の勉強時間」と決める
  • 昼間は「スキマ時間にテキストを眺める」「暗記カードだけ」など軽めに
  • 夜は家事・子どもの対応を優先し、無理に詰め込まない

という“時間帯固定のコツコツ型”です。

モデルとしては、

  • 1〜2年目:会計1科目+税法1科目(または会計1科目集中)
  • 3年目以降:残りの科目を、生活リズムが安定している時期に集中的に進める

というように、「無理せず3〜7年くらいの幅で考える」のが現実的です。


4.「何年で合格するか」ではなく「何年続けられるか」

ここまでいろいろなモデルを書いてきましたが、
正直なところ、想定通りにいくケースの方が少ないです。

  • 仕事が忙しくなった
  • 転職した/部署異動になった
  • 家族の事情で時間が取れなくなった

こうしたことは誰にでも起こりえます。

だからこそ、発想としては

  • 「何年で取り切るか」だけにこだわらない
  • 「どんな状況になっても、細くてもいいから続けられる形にする」

ことを意識しておくのが大事です。

例えば、

  • 忙しい年は科目数を絞る(1科目だけにする)
  • 予備校通学が厳しければ通信・Web講義に切り替える
  • 一時的に完全に休む年があってもOK、と最初から決めておく

といった「逃げ道」をあらかじめ用意しておくと、メンタル的にも楽になります。


5.自分の「税理士ロードマップ」をざっくり書き出してみよう

最後に、次の5つを書き出してみることをおすすめします。

  • (1)今の自分の立場(大学生/社会人/主婦・その他)
  • (2)1週間で現実的に取れそうな勉強時間(○時間)
  • (3)1年で頑張れば狙えそうな科目数(1科目 or 2科目)
  • (4)「何年後までに何科目」を大まかに(例:5年で5科目)
  • (5)忙しくなったときに切り替える「セーフティプラン」

この5つが紙の上に見える形になるだけでも、
「なんとなく不安」だったものが「具体的なプラン」に変わっていきます。


次回は、第5回「予備校・通信・独学のメリット・デメリット比較」をテーマに、
あなたに合った勉強スタイルを一緒に整理していきます。

第3回 科目選択と受験順序の考え方

第3回 科目選択と受験順序の考え方

第2回では、「税理士試験ってどんな試験か」という全体像を見てきました。科目合格制で、年1回コツコツ積み上げていく試験――というイメージはだいぶ掴めてきたと思います。
そこで今回のテーマは、受験生の最大の関心ごとでもある「どの科目から、どんな順番で受けていくか」です。

実は、この「科目選択と受験順序」は、合否そのものと同じくらい重要です。
自分に合わない科目から始めてしまうと、最初の1〜2年をムダにしてしまうこともありますし、逆にうまくハマると、最初の数年で一気に合格まで走り抜けることもできます。


1.なぜ「科目選択」がそんなに大事なのか

税理士試験は、ざっくり言えば次のようなステップで合格を目指します。

  • 会計科目(簿記論・財務諸表論)で「計算の基礎体力」をつける
  • 税法科目で「暗記+理解+計算」をミックスして仕上げていく
  • 合計5科目に合格したら、実務経験などを経て税理士登録へ

どの科目から始めるかで、

  • 日商簿記との相性(すでに持っているか、これから取るか)
  • 仕事や生活との両立のしやすさ
  • 「得意な型」を早めに見つけられるかどうか

が大きく変わってきます。
特に、最初の1〜2年で「勝ちパターン」を作れるかが、その後の受験生活のメンタルにも直結します。


2.王道は「会計科目から」スタート

まず、大きな方向性としては

  • 会計科目(簿記論・財務諸表論)から始める
  • ある程度会計の土台ができてから税法科目に進む

という流れが王道です。理由はシンプルで、

  • 税法も結局は「儲けがいくらか」「資産がいくらか」をもとに計算する
  • 会計が分かっていると、税法の計算・理論の理解が楽になる
  • 日商簿記2級以上のレベルと重なるため、仕事にも直結しやすい

からです。

まだ日商簿記を持っていない方は、「日商3級 → 2級 → 簿財」という流れをイメージしておくと良いでしょう。
すでに2級を持っている方は、比較的スムーズに簿記論・財務諸表論に入っていけます。


3.典型的な受験順序モデル

ここから、よくある受験順序を「モデルケース」としてイメージしてみましょう。実際には人それぞれですが、まずは「基本形」を知っておくことが大切です。

モデルA:オーソドックスに積み上げるパターン

  1. 1年目:簿記論 + 財務諸表論(いわゆる「簿財同時」)
  2. 2年目:メイン税法①(法人税法 or 所得税法)
  3. 3年目:メイン税法②(上記のもう一方 or 消費税法など)
  4. 4年目以降:残りの税法1〜2科目を埋めていく

このパターンのメリットは、

  • 最初の1〜2年で会計の基礎がしっかり固まる
  • 「簿財合格」という大きな山を早めに越えられる
  • その後の税法の勉強が比較的スムーズになる

一方で、

  • 働きながらだと、初年度に簿財2科目は負担がかなり重い
  • 途中でどちらかだけ合格、というパターンも多い

という現実的なデメリットもあります。
最初から「簿財2科目同時」は不安…という方は、1年目に1科目だけという選択も十分アリです。

モデルB:会計1科目+税法1科目でバランスを取るパターン

  1. 1年目:簿記論 + 消費税法(または住民からイメージしやすい税法)
  2. 2年目:財務諸表論 + メイン税法(法人税法など)
  3. 3年目以降:残りの税法を詰めていく

このパターンは、

  • 毎年「会計+税法」で勉強に変化をつけられる
  • 得意な方でモチベーションを保ちつつ、もう一方を引き上げる

というメリットがあります。
ただし、2種類の科目を同時並行する負荷はそれなりに高くなりますので、仕事や家庭との両立を考えながら調整が必要です。


4.あえて「例外パターン」を取った方がいい人

ここまで王道パターンを紹介してきましたが、受験生全員がそれに当てはまるわけではありません。
むしろ、次のようなタイプの方は、あえて少し変則的な順序を取った方がうまくいくこともあります。

  • 法律系が得意で、条文を読むことに抵抗がない
  • 逆に、計算より暗記・読解のほうが得意
  • すでに実務で特定の税法に触れている(例:所得税メインの事務所勤務)

こうした方は、例えば

  • 最初に消費税法や相続税法など、なじみのある税法1科目から始めてみる
  • 「税法で1科目合格してから会計に戻る」という順番を検討する

といった例外パターンも選択肢になります。
ただし、その場合でもどこかのタイミングで会計科目2つはしっかりやる必要がある、という点だけは忘れずに押さえておきましょう。


5.受験順序を決めるときのチェックポイント

最後に、「自分の科目選択・受験順序をどう決めればいいか」を考えるためのチェックポイントをまとめておきます。

  • 日商簿記の経験はどこまであるか(これから3級/すでに2級済み…)
  • 仕事・家庭の状況から見て、今年どれくらい時間を使えそうか
  • 文系寄りか、理系寄りか、暗記型か、計算型か
  • 将来どんな働き方をしたいか(一般企業経理/税理士法人/独立開業…)

これらを一度紙に書き出して整理し、
「まずは1年目にこの1〜2科目をやってみよう」
というところまで落とし込むのがおすすめです。

このサイトでは、今後の回で

  • 「税法入門」編でそれぞれの税法の特徴
  • 「勉強法・ライフプラン」編で、立場別の受験プラン

も詳しく扱っていきます。
現時点では、「王道パターン」と「自分のタイプ」を頭の中で重ね合わせて、ざっくりとした受験ロードマップをイメージしておけば十分です。


次回は、「勉強期間の目安と人生設計(学生/社会人/主婦)」の視点から、
「何年くらいかけて合格を目指すのか」「その間の働き方・生活をどう組み立てるか」について考えていきます。

第2回 税理士試験ってどんな試験?

第2回 税理士試験ってどんな試験?

税理士を目指そう、と考えたときに、最初に気になるのは「そもそも税理士試験ってどんな試験なの?」という点だと思います。
ここでは、これから一緒に勉強していくうえで、最低限おさえておきたい全体像を整理しておきましょう。

1.科目合格制という少し変わったスタイル

税理士試験の一番の特徴は「科目合格制」です。
多くの資格試験は、年に1回の本試験で一発勝負、合否は「合格」か「不合格」かのどちらかですが、税理士試験は少し違います。

  • 試験は「科目ごと」に実施される
  • 1年で受ける科目数は、自分で選べる
  • 合格した科目はずっと有効(有効期限がない)

つまり、たとえば今年は2科目、来年は1科目、再来年は2科目、といったように、自分のペースで合格科目を積み上げていくことができます。
一気にすべての科目を合格しなくてはいけないわけではないので、働きながら少しずつ進めていくことも十分可能です。

2.何科目とればいいの?必須科目と選択科目

税理士になるためには、原則として5科目に合格する必要があります。
そのうち、

  • 必須科目:簿記論・財務諸表論(会計科目)
  • 選択科目:法人税法・所得税法 などの「税法」から一定数を選ぶ

という形になっています(詳しい組み合わせは、今後の回であらためて整理します)。
このサイトでは、まず会計(簿記)をしっかり固めることをスタート地点にします。
なぜなら、簿記の実力はそのまま「簿記論・財務諸表論」の得点力につながるだけでなく、税法科目を理解するうえでも土台になるからです。

3.どれくらい難しいの?合格までのイメージ

「税理士試験は難関資格」とよく言われますが、ここでは冷静にイメージしておきましょう。

  • 1科目あたりの合格率はおおよそ10〜20%前後
  • 年1回の試験なので、1年=1チャンス
  • ただし、科目合格が積み上がるので「5連勝しないとダメ」というわけではない

要するに、「一度に全部合格しないと終わり」というタイプの試験ではなく、長期戦を前提にじっくり取り組む試験です。
仕事や家庭の事情で、勉強できる時期・できない時期があっても、ペース配分さえ間違えなければ十分に合格ラインに届きます。

このサイトでは、その「長期戦」をできるだけ見通しよく、迷子にならずに進めることを目標にしています。

4.受験資格と「今どこにいるか」の確認

税理士試験には受験資格があります。
詳しい制度は公式情報を確認していただくとして、ざっくり言えば

  • 大学で一定の単位(法律・経済など)を修めている
  • 日商簿記1級などの資格を持っている
  • 税務の実務経験がある

といったケースで受験資格が認められます。
「まだ受験資格がない」という方もいると思いますが、心配はいりません。

このサイトでの学習は、

  1. まずは簿記3級レベルの基礎固め
  2. 次に簿記2級レベルで「会計の言語」をしっかり身につける
  3. 並行して、受験資格の確認・取得方法を整理する

という流れを想定しています。
「自分は今どの段階にいるのか」を意識しながら、無理なく一歩ずつ進んでいきましょう。

5.働きながら勉強することを前提に

税理士を目指す方の多くは、仕事や家庭の用事を抱えながら勉強しています。
フルタイムで勉強できる人の方が少数派でしょう。

だからこそ、

  • 1日に確保できる勉強時間は「長くて2〜3時間」
  • 平日は最低限をキープ、休日に少しだけ上乗せ
  • 長期休暇のときに一気に進めるのではなく、「細く長く」を基本にする

といった前提で、学習プランを組んでいきます。
このサイトでは、「ガッツリ予備校に通ってストイックに合格を目指す」というよりも、
「日常生活を大きく崩さず、それでも着実に前に進む」ための勉強の仕方を中心に扱います。

6.この先の流れ

次回以降は、もう少し具体的に

  • 税理士試験の「科目」ごとの特徴
  • 勉強を始める順番
  • 簿記3級〜2級レベルの勉強を、税理士試験につなげる方法

などを見ていく予定です。

今回のポイントを一言でまとめると、

税理士試験は「科目合格制の長期戦」。
一気にすべてを終わらせようとせず、科目を積み上げるマラソンだと考える。

ということです。

焦らず、でもダラダラしすぎず。
一緒に、長く走り続けられるペースを見つけていきましょう。