第5回 予備校・通信・独学のメリット・デメリット比較

前回は「勉強期間の目安と人生設計」について、立場別にざっくりとプランを見てきました。
今回のテーマは、多くの受験生が必ず一度は悩むポイント──「予備校」「通信講座」「独学」どれで勉強するかです。

結論から言うと、絶対的に正しい選び方はありません。
大事なのは、「自分の状況」「性格」「お金と時間」のバランスを見ながら、いまの自分にとって最適なスタイルを選ぶことです。


1.なぜ勉強スタイル選びがそんなに重要なのか

税理士試験は長期戦です。
1〜2か月で終わる試験なら、「とりあえず始めてから考える」でも何とかなりますが、数年スパンで続ける試験ではそうはいきません。

勉強スタイルを間違えると、

  • 高い授業料を払ったのに通えなくなる
  • 教材だけ積み上がって、手をつけられない
  • 独学にした結果、何をどの順番でやればいいか分からず迷子になる

といった状態になりがちです。

だからこそ、最初に「自分に合いそうなスタイル」を冷静に見極めることが、合格への近道になります。


2.予備校(通学)のメリット・デメリット

メリット

  • カリキュラムが完成されているので、何をどの順番で勉強するかを考えなくてよい
  • 教室で講義を受けることで、強制的に勉強時間が確保される
  • 同じ目標の仲間がいることで、モチベーションを保ちやすい
  • 質問コーナーや講師への相談など、サポートが手厚い

デメリット

  • 授業料が高め(年間で数十万円になることも多い)
  • 決まった時間に通う必要があり、仕事や家庭との両立が難しい場合がある
  • 講義のペースが合わないと、「速すぎる・遅すぎる」と感じることも
  • 通学時間そのものが負担になりやすい(特に地方在住の場合)

向いている人の傾向としては、

  • ある程度まとまったお金を投資できる
  • 決まった時間に通う方がサボらなくて済むタイプ
  • 「ひとりで黙々と」は苦手で、周りの雰囲気がある方が頑張れる

といったイメージです。


3.通信講座(Web・DVD・オンライン)のメリット・デメリット

メリット

  • 基本的に自分のペースで講義を視聴できる
  • 通学時間が不要で、地方でも東京と同じレベルの講義を受けられる
  • 通学よりやや安い価格に設定されていることが多い
  • 倍速再生・巻き戻しなどを活用して、理解があやしい部分だけを重点的に復習できる

デメリット

  • 「いつでも見られる」がゆえに、後回しにしやすい
  • 教室ほどの「緊張感」がなく、途中でフェードアウトしやすい
  • 質問の仕方がメール・フォームに限られるなど、対面ほど気軽ではない
  • ネット環境・視聴端末にある程度慣れている必要がある

向いている人の傾向としては、

  • 仕事・子育てなどで決まった時間に通うのが難しい
  • 動画やオンライン学習に抵抗がない
  • ある程度、自分でペースを管理できる(カレンダー等で予定を組める)

といったタイプです。
「通学の強制力」と「独学の自由さ」の中間に位置するスタイル、とイメージすると分かりやすいかもしれません。


4.独学(市販テキスト・過去問中心)のメリット・デメリット

メリット

  • 何より費用が安い(テキスト・問題集中心なら数万円レベル)
  • 自分の得意・不得意に合わせて自由にカスタマイズできる
  • 「自分で勉強の組み立てをする力」がつく(これは実務でも役立つ)
  • 時間・場所に制約されにくい

デメリット

  • そもそも何から手をつければいいか分からないことが多い
  • 難所にぶつかったときに、相談相手がいない
  • 勉強計画も教材選びもすべて自分で決める必要があり、迷っているうちに時間が過ぎやすい
  • モチベーション管理をすべて自分でしなければならない

向いている人の傾向としては、

  • 日商簿記などですでにある程度の基礎がある
  • 自分で調べて勉強の道筋を立てるのが苦にならない
  • お金よりも、まずは「試しに始めてみる」ことを優先したい

といったタイプです。
ただし、「完全独学で5科目すべて」というのはかなりハードルが高いので、どこかのタイミングで通信や部分的な講座を併用する人が多いです。


5.タイプ別・おすすめの組み合わせ

ここまでを踏まえて、ざっくりとした「タイプ別・おすすめ例」を挙げてみます。

ケースA:お金はかかってもいいから、とにかく最短で合格したい

  • 会計の基礎:予備校通学 or 通信のフルコース
  • 税法:同じ予備校のカリキュラムで一気に進める

王道中の王道です。
生活面で無理がないなら、合格可能性はもっとも高いルートと言えます。

ケースB:仕事や家庭が忙しく、通学は厳しいが、独学だけでは不安

  • 会計科目:通信講座+市販問題集で演習を補強
  • 税法:メイン税法だけは講座を使い、残りは独学も視野に

「通信+独学」のハイブリッド型です。
税理士試験受験生の中でも、かなり現実的な選択肢として選ばれています。

ケースC:まずは費用を抑えて様子を見たい(入門〜簿記レベル)

  • 入門〜日商3級・2級:市販テキスト+このサイトなどの無料コンテンツ
  • 簿財や税法に入るタイミングで、通信や予備校を検討

「まずは土台まで独学で作る」パターンです。
このサイト(zeimu.online)がまさにこのゾーンをサポートしていきます。


6.お金と時間から逆算してみる

最後に、シンプルなフレームワークをひとつ。
勉強スタイルを決めるときは、次の3つを紙に書き出してみてください。

  • ① 1年間で使えるお金(上限)
    …税理士試験のために、「ここまでは出してもいい」と決める。
  • ② 1週間あたりの勉強時間
    …現実的に、平日・休日でどのくらい確保できるかを具体的に。
  • ③ いつまでに何科目取りたいか
    …「3年で3科目」「5年で5科目」など、ざっくりでOK。

この3つを書き出したうえで、

  • 予備校通学 → お金はかかるが、時間を強制的に確保したい人向け
  • 通信講座  → お金・時間のバランスを取りたい人向け
  • 独学    → まずは低コストで土台を作りたい人向け

という位置づけで比較してみると、自分に合ったスタイルが見えやすくなります。


7.このサイト(zeimu.online)の立ち位置

このサイトは、ざっくり言えば

  • 「入門〜簿記レベルの土台作り」をしっかり固めるための教材
  • 将来的には、通信講座的に使える問題演習ゾーンも用意していく予定

というポジションをイメージしています。

予備校や大手通信にいきなり申し込む前に、

  • どんな試験なのか
  • どれくらいの期間・お金がかかりそうか
  • 自分はどのスタイルが合いそうか

を整理できる場として、うまく活用してもらえればと思います。


次回は、第6回「いまの自分がどこから始めるべきかチェックリスト」として、
あなたの「現在地」と「スタート地点」を具体的な質問形式で整理していきます。