日別アーカイブ: 2026年3月20日

第12回 簿記入門(12)商品の決算整理とは何か

前回は、決算とは何をすることなのかを全体的に見ました。

会社の活動を一定期間で区切り、その期間の成績と、決算日時点の財産状態を正しく表すために、決算整理が必要になる、という話でした。

今回は、その決算整理の中でも特に基本となる「商品の決算整理」について見ていきます。

簿記を勉強していると、ここで急に難しく感じる人が少なくありません。

しかし、考え方そのものはそれほど複雑ではありません。

大事なのは、

「仕入れた商品がすべてその期の費用になるわけではない」

という点をしっかりつかむことです。


1.なぜ商品の決算整理が必要なのか

商店や会社は、商品を仕入れて、それを売ることで利益を得ます。

このとき、仕入れた商品は、いったん「仕入」という費用のような形で記録されます。

しかし、期末までに仕入れた商品が全部売れるとは限りません。

売れ残ることもあります。

すると、その売れ残った商品まで当期の費用に入れてしまうと、費用が多すぎることになってしまいます。

まだ売れていないのですから、本来それは

「今期の費用になった部分」ではなく、「期末に残っている財産」

と考えるべきです。

そこで決算では、商品について整理を行い、当期に本当に費用となるべき金額を求めます。


2.売上原価を正しく求めるための作業

商品の決算整理で中心になるのは、売上原価を求めることです。

売上原価とは、売れた商品に対応する原価のことです。

たとえば、商品を売って売上が100万円あったとしても、その商品を仕入れるのに70万円かかっていたなら、その70万円が売上原価になります。

利益を正しく計算するには、売上と対応する費用だけを取り出さなければなりません。

つまり、

「売れた分だけを費用にする」

必要があるのです。

ここで使う基本の考え方は、次の式です。

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高

この式が商品の決算整理の中心です。


3.式の意味をゆっくり考える

この式を見たとき、最初は記号の並びのように見えるかもしれません。

しかし、意味がわかるとごく自然な式です。

まず、期首商品棚卸高とは、前期の終わりに残っていて、今期の初めに持ち越された商品の金額です。

そこに、当期中に新しく仕入れた商品の金額を足します。

すると、今期に販売できる商品全体の金額が出ます。

しかし、その全部が売れたわけではありません。

決算日時点で売れ残っている商品、つまり期末商品棚卸高があるはずです。

この売れ残りはまだ費用ではなく、次期へ繰り越される財産です。

だから最後にそれを引きます。

その結果として、当期に実際に売れた商品に対応する原価、つまり売上原価が求められるのです。


4.具体例で考える

たとえば、次のような場合を考えてみましょう。

  • 期首商品棚卸高 30万円
  • 当期商品仕入高 120万円
  • 期末商品棚卸高 20万円

このとき、売上原価は

30万円 + 120万円 - 20万円 = 130万円

になります。

つまり、今期に費用として認められるのは130万円です。

仕入れた金額そのものは120万円ですが、それだけでは足りません。

前期から持ち越した商品も売ったかもしれませんし、逆に今期仕入れたもののうち売れ残った商品もあります。

だから、単純に「今期の仕入額=今期の費用」にはならないのです。


5.期末商品は「費用」ではなく「資産」

ここは特に大事なポイントです。

期末に残っている商品は、まだ売れていません。

したがって、その商品にかかった金額は、まだ当期の費用として確定していないことになります。

むしろ、その商品は会社に残っている財産です。

だから決算では、期末商品を資産として貸借対照表に載せます。

この考え方がわかると、商品の決算整理はかなり理解しやすくなります。

つまり、商品の決算整理とは、

「売れた分だけを費用にし、売れ残りは資産として残す作業」

だということです。


6.なぜ棚卸しが必要なのか

では、期末商品棚卸高はどうやって求めるのでしょうか。

ここで必要になるのが棚卸しです。

棚卸しとは、決算日に実際に残っている商品を調べ、その数量や金額を確認する作業です。

帳簿の上ではたくさん残っていることになっていても、実際には少ないかもしれません。

逆に、記録漏れがあるかもしれません。

だから実際に確認する必要があります。

この実地の確認を通じて、期末商品棚卸高が確定します。

簿記は帳簿だけの世界のように見えますが、実際には現実の商売と強く結びついています。

その代表例のひとつが、この棚卸しです。


7.仕訳より先に考え方を押さえる

試験では商品の決算整理の仕訳も出てきます。

しかし、最初から仕訳の形だけを暗記すると、すぐに混乱しやすくなります。

それよりも先に、

  • 当期に売れた商品の原価だけを費用にする
  • 期末に残った商品は資産になる
  • そのために棚卸しを行う

という流れを理解しておくことが大切です。

仕訳は、その考え方を帳簿の形に表したものにすぎません。

意味がわかったうえで仕訳を見ると、ずっと覚えやすくなります。


8.実務でも非常に重要な考え方

商品の決算整理は、簿記の試験のためだけの知識ではありません。

実務でも、在庫がどれだけ残っているかによって、利益は大きく変わります。

もし期末商品を正しく把握しなければ、費用が多すぎたり少なすぎたりして、利益の数字がゆがんでしまいます。

その結果、経営判断を誤ることにもなりかねません。

だから、商品を扱う会社では棚卸しがとても重要になります。

簿記の学習では基本論点のひとつですが、会社にとっては非常に現実的な意味を持つ作業なのです。


9.まとめ

商品の決算整理とは、当期に本当に費用となる商品の金額、つまり売上原価を正しく求めるための作業です。

仕入れた商品がすべて当期の費用になるわけではなく、売れ残った商品は期末商品として資産に残ります。

そのために、

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高

という考え方を使います。

最初は式だけを覚えたくなりますが、大切なのは

「売れた分だけが費用になる」

という根本の考え方です。

ここがわかると、商品の決算整理はそれほど難しいものではありません。

次回は、この商品の決算整理を、実際の仕訳と結びつけながら見ていきましょう。