月別アーカイブ: 2026年2月

第47回 前払・未払・未収・前受を「実例」で完全整理する

決算整理仕訳で多くの人がつまずく原因は、
前払・未払・未収・前受を「言葉」で覚えようとすることにあります。

しかし、実戦では言葉の暗記は役に立ちません。

必要なのは、
「何が、いつの損益か」
を実例で判断できる力です。

今回は、試験で頻出のパターンを実例ベースで整理していきます。


1.まずは超基本ルール

決算整理で考えることは、これだけです。

「この収益・費用は、今期のものか?」

YESなら → そのまま
NOなら → 決算整理仕訳で修正

これを頭に置いたまま、実例を見ていきましょう。


2.前払費用の実例

例①
7月1日に1年分の家賃120,000円を現金で支払った。
決算日は12月31日。

まず、日本語に戻します。

  • 1年分まとめて払った
  • でも使ったのは6か月分だけ

→ 払いすぎている費用がある

決算整理仕訳

前払費用 60,000 / 地代家賃 60,000

「払ったけど、まだ今期の費用じゃない」
これが前払費用です。


3.未払費用の実例

例②
12月分の水道光熱費8,000円は、翌年1月に支払う予定である。

日本語にすると、

  • もう使っている
  • でも、まだ払っていない

→ 足りない費用を追加する

決算整理仕訳

水道光熱費 8,000 / 未払費用 8,000

「使ったのに、まだ払っていない」
これが未払費用です。


4.未収収益の実例

例③
定期預金の利息5,000円は翌年に受け取る予定である。

ここでのポイントは、

  • 現金はまだ入っていない
  • でも、今期分の収益である

決算整理仕訳

未収収益 5,000 / 受取利息 5,000

「もらっていないけど、今期の収益」
これが未収収益です。


5.前受収益の実例

例④
来期分の家賃50,000円を、今期中に受け取っている。

ここでは、

  • 現金はもう受け取っている
  • でも、来期の収益である

決算整理仕訳

家賃収入 50,000 / 前受収益 50,000

「もらいすぎた収益」
これが前受収益です。


6.4つを一気に見分けるコツ

状況 処理
払ったけど、まだ費用でない 前払費用
使ったけど、まだ払っていない 未払費用
もらっていないが、今期の収益 未収収益
もらったが、来期の収益 前受収益

言葉ではなく、状況で判断しましょう。


まとめ

  • 前払・未払・未収・前受は暗記しない
  • 「いつの損益か」で判断する
  • 日本語に戻すと必ず正解に近づく

次回は、
👉 「減価償却を実例で完全に腹落ちさせる」
をテーマに進めると、決算整理がさらに安定します。

第46回 決算整理仕訳で一気に点を落とす人の共通点

税理士試験(特に簿記論・財務諸表論)で、
合否を大きく左右するのが「決算整理仕訳」です。

実はここ、

  • 理屈は分かっている
  • 個別論点も理解している

それでも点を落とす人が非常に多い分野です。

今回は、
「なぜ決算整理で崩れるのか」
その共通点を整理していきます。


1.決算整理仕訳は「特別」だと思ってしまう

まず一番多いのが、この思い込みです。

「決算整理仕訳は難しい」
「普段の仕訳とは別物」

しかし実際には、決算整理仕訳も通常仕訳の延長です。

違うのは、
「期間をまたぐかどうか」
それだけです。

特別扱いすると、逆に頭が混乱します。


2.「現金が動かない仕訳」が苦手

決算整理仕訳が苦手な人の多くは、

  • 現金・預金が出てこない
  • 目に見える動きがない

仕訳に不安を感じます。

代表例は、

  • 前払費用・未払費用
  • 未収収益・前受収益
  • 減価償却費

ここで大事なのは、
「現金ではなく、期間を見る」
という視点です。


3.決算整理の基本は「ズレの修正」

決算整理仕訳は、難しく考える必要はありません。

やっていることは、常にこれです。

「今期の損益と、実際の取引のズレを直す」

たとえば、

  • 払ったけど、まだ今期の費用じゃない → 前払費用
  • 使ったけど、まだ払っていない → 未払費用

すべて、ズレを元に戻しているだけです。


4.よくある失点パターン

① 前払・未払・未収・前受がごちゃごちゃ

言葉を覚えようとすると、必ず混乱します。

覚えるべきなのは、
「今期の収益・費用かどうか」
それだけです。

② 減価償却を丸暗記している

定額法・定率法の計算以前に、

  • なぜ費用になるのか
  • なぜ毎期分けるのか

ここが曖昧だと、応用で崩れます。

③ 決算整理仕訳を後回しにする

本試験では、最後に残すほど危険です。

迷いやすい論点ほど、
早めに処理する勇気が必要です。


5.決算整理を安定させる考え方

  • 現金ではなく「期間」を見る
  • 増えすぎた収益・費用を減らす
  • 足りない収益・費用を足す

この3点を意識するだけで、
決算整理仕訳は一気に整理されます


まとめ

  • 決算整理仕訳は特別ではない
  • やっているのは「ズレの修正」
  • 現金ではなく期間で考える

次回は、
👉 「前払・未払・未収・前受を一発で整理する思考法」
をテーマに進めると、かなり実戦力が上がります。

第45回 実戦で差がつく「仕訳の総合力」――売上・仕入・諸経費を一気に処理する

第45回 実戦で差がつく「仕訳の総合力」――売上・仕入・諸経費を一気に処理する

ここまで、

  • 売上の認識
  • 仕入の処理
  • 各種費用(旅費交通費・通信費・消耗品費など)

を個別には見てきました。

しかし、試験で問われるのは「1つずつ」ではありません。
実際の問題では、これらがまとめて、連続して、しかも時間制限つきで出てきます。

今回は、「実戦で仕訳が崩れやすいポイント」を意識しながら、
仕訳の総合処理力を鍛えていきましょう。


1.実戦問題で起こりがちなミス

まず、よくある失敗から整理します。

① 勘定科目は合っているが、貸借が逆

→ 理解不足というより、スピード優先による事故が多いです。

② 消費税の扱いで迷って止まる

→ 税抜・税込の判断に時間を使いすぎるケースです。

③ 仕訳は合っているのに、金額を間違える

→ 問題文を「流し読み」しているサインです。

これらはすべて、知識の問題ではなく「処理の型」ができていないことが原因です。


2.仕訳は「3ステップ」で処理する

実戦では、次の順番を体に染み込ませるのが重要です。

ステップ① 取引の性質を一瞬で判断

  • 売上か
  • 仕入か
  • 費用か
  • 資産の増減か

ここで迷うと、すべてが崩れます。

ステップ② 現金か、掛けか

  • 現金・普通預金 → すぐ動く
  • 売掛金・買掛金 → 将来動く

まず「現金が動いたか?」を見るクセをつけましょう。

ステップ③ 費用・収益は期間対応を意識

  • 今期の費用か
  • 次期以降の費用か

ここが、後の決算整理仕訳につながります。


3.総合例題で確認してみる

例)
商品100,000円を掛けで販売した。送料3,000円を現金で支払った。
なお、送料は当社負担とする。

この場合、取引は2つあります。

① 商品の販売

売掛金 100,000 / 売上 100,000

② 送料の支払い

発送費 3,000 / 現金 3,000

ここで重要なのは、「売上と送料を無理にまとめない」ことです。

試験では、
「まとめて1仕訳にしなさい」
とは、ほぼ書かれていません。


4.仕訳を速く、正確にするコツ

✔ 勘定科目を増やしすぎない

初心者ほど細かく分けたがりますが、試験では標準的な科目で十分です。

✔ 迷ったら立ち止まらない

完璧を狙わず、7割の確信で書いて次に進む勇気も必要です。

✔ 仕訳は「文章を日本語に戻す」

一度、頭の中で「何が起きたか」を短い日本語に戻すと、ミスが激減します。


5.ここが合否を分ける

税理士試験(特に簿記論・財表)では、

  • 難問を解ける人

よりも

  • 基本を崩さない人

が合格します。

仕訳の総合力は、点数を積み上げるための土台です。


まとめ

  • 仕訳は「知識」より「型」
  • 実戦では複数取引を冷静に分解
  • 迷わず、止まらず、基本を守る

次回は、
👉 「決算整理仕訳で一気に点を落とす人の共通点」
をテーマに進めるのがおすすめです。

第44回 売却・除却が出てきたら、減価償却は「いつまで?」を考える<

前回は、期中取得と月割計算を扱いました。

今回は、減価償却で最後に大きな落とし穴になる、
固定資産の売却・除却をテーマにします。

ここを苦手にしている受験生は非常に多いですが、
理由ははっきりしています。


売却・除却で混乱する理由

売却や除却が出てくると、多くの人はこうなります。

  • 減価償却をいくらまで計上するのか分からない
  • 売却益・売却損の計算がぐちゃぐちゃになる
  • 仕訳の順序に迷う

しかし、ここでも考え方は一貫しています。


「その資産を、いつまで使ったのか」

これだけです。


まず大原則を確認する

固定資産を売却・除却した場合、


減価償却は、売却・除却した日まで

しか行いません。

当たり前のことですが、

  • もう使っていない
  • 会社に存在しない

資産について、それ以降の減価償却はあり得ません。


【具体例】期中に売却した場合

次の例で確認しましょう。

  • 取得価額:120万円
  • 耐用年数:5年
  • 定額法
  • 期首帳簿価額:72万円
  • 7月1日に売却

まず、1年分の減価償却費を確認します。


120万円 ÷ 5年 = 24万円

次に、当期に「何か月使ったか」を考えます。

7月1日売却なので、

  • 1月〜6月
  • 6か月間使用

しています。

したがって、当期の減価償却費は、


24万円 × 6か月 ÷ 12か月 = 12万円

です。


売却時点の帳簿価額を求める

期首帳簿価額は72万円でした。

そこから、当期分の減価償却費12万円を引くと、


72万円 − 12万円 = 60万円

これが、売却時点の帳簿価額です。

売却価額と比較するのは、
この60万円です。


売却損益を計算する

仮に、この固定資産を65万円で売却したとします。

  • 売却価額:65万円
  • 帳簿価額:60万円

差額は、


65万円 − 60万円 = 5万円

よって、固定資産売却益 5万円が発生します。


仕訳の流れを整理する

売却時の仕訳は、流れで考えると整理しやすくなります。

  1. 当期分の減価償却を計上する
  2. 帳簿価額を確定させる
  3. 売却損益を計算する

結果として、次のような仕訳になります。


(借方)現金 650,000
(借方)減価償却累計額 600,000
(貸方)固定資産 1,200,000
(貸方)固定資産売却益 50,000

※減価償却累計額は、売却時点までの累計額です。


除却の場合はどうなるか

除却の場合も、考え方は同じです。

違うのは、

  • 売却価額がない

という点だけです。

帳簿価額がそのまま、


固定資産除却損

になります。


よくある失点パターン

  • 売却後も1年分の減価償却をしてしまう
  • 期首帳簿価額をそのまま使ってしまう
  • 減価償却と売却損益を混ぜて考える

これらはすべて、


「いつまで使ったか」

を意識していないことが原因です。


第44回のまとめ

  • 減価償却は、売却・除却した日まで
  • まず帳簿価額を正確に出す
  • 売却損益・除却損はその後に考える

次回は、減価償却シリーズの総まとめとして、
本試験で減価償却を落とさないための整理を行います。

ここまで理解できれば、減価償却は得点源にできます。