第54回は、決算整理仕訳で頻出の論点を「一気にまとめて」解ける形にします。
試験では、論点をバラで覚えていても、決算の場面で同時に出てくると混乱しがちです。ここでは典型パターンを表(考え方)→仕訳(結論)→練習問題の順で固めます。
1. 決算整理でよく出る5セット
| 論点 | 決算でやること(要点) | 典型仕訳(代表) |
|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 売掛金などの回収不能に備えて、期末に引当金残高を「必要額」に合わせる | (借)貸倒引当金繰入 xxx /(貸)貸倒引当金 xxx |
| 前払・前受 | 支払ったけど「次期の費用」→前払へ/受け取ったけど「次期の収益」→前受へ | (借)前払費用 xxx /(貸)支払家賃 xxx (借)受取家賃 xxx /(貸)前受収益 xxx |
| 減価償却 | 固定資産の価値減少分を費用化(間接法なら累計額も増やす) | (借)減価償却費 xxx /(貸)減価償却累計額 xxx |
| 未払・未収 | 発生しているのに未処理→当期に計上(費用は未払、収益は未収) | (借)支払利息 xxx /(貸)未払費用 xxx (借)未収収益 xxx /(貸)受取利息 xxx |
| 売上原価(仕入) | 期首・期末棚卸で当期の売上原価を確定(ここは別回で徹底するが頻出) | (借)仕入 期首棚卸高 /(貸)繰越商品 同額 (借)繰越商品 期末棚卸高 /(貸)仕入 同額 |
この表を見て、「決算でやる目的」が言えるようになると、仕訳が安定します。
2. 例題で一気に確認(決算整理 4本)
例題(資料)
- (1)当期末の売掛金残高は 800,000円。貸倒引当金は売掛金の2%を設定する。期首の貸倒引当金残高は10,000円(貸方残)。
- (2)12月分の家賃(毎月20,000円)を当期に12月1日に1年分前払いしており、「支払家賃」で処理している。
- (3)備品(取得原価 600,000円、残存価額 0、耐用年数 5年)を期首に取得。間接法で定額法。
- (4)当期12月分の水道光熱費 18,000円は未払いで、まだ処理していない。
考え方(手順)
| 論点 | 計算 | ゴール |
|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 必要額=800,000×2%=16,000 差額=16,000−10,000=6,000 |
貸倒引当金を「16,000」に合わせる(不足分を追加) |
| 前払家賃 | 当期の費用=20,000×1か月=20,000 前払い(次期分)=20,000×11か月=220,000 |
当期費用は1か月分だけ、残りは前払へ |
| 減価償却 | 年間償却=600,000÷5=120,000 | 当期の減価償却費を計上(累計額も増やす) |
| 未払費用 | 18,000は当期に発生している | 当期費用にして、未払を立てる |
仕訳(結論)
-
貸倒引当金:
(借)貸倒引当金繰入 6,000 /(貸)貸倒引当金 6,000 -
前払家賃:
(借)前払費用 220,000 /(貸)支払家賃 220,000 -
減価償却(間接法):
(借)減価償却費 120,000 /(貸)減価償却累計額 120,000 -
未払費用:
(借)水道光熱費 18,000 /(貸)未払費用 18,000
ポイント:決算整理は「当期の正しい利益」を出すために、
費用・収益の期間対応(当期のものは当期へ、次期のものは次期へ)を徹底する作業です。
3. 練習問題(本題)
ここからが第54回のメインです。問題 → 自力 → 解答(折りたたみ)で進めてください。
問題1(貸倒引当金:差額補充)
期末売掛金残高は 1,200,000円。貸倒引当金は売掛金の 3% を設定する。
期首の貸倒引当金残高は 25,000円(貸方残)である。決算整理仕訳をしなさい。
解答・解説(クリックで表示)
必要額=1,200,000×3%=36,000円
差額=36,000−25,000=11,000円(不足)
(借)貸倒引当金繰入 11,000 /(貸)貸倒引当金 11,000
問題2(前払費用:支払時に費用処理している)
当期10月1日に、向こう1年分の保険料 120,000円を支払い、「支払保険料」で処理した。決算日は12月31日である。決算整理仕訳をしなさい。
解答・解説(クリックで表示)
10/1〜12/31までの当期分は3か月。
月額=120,000÷12=10,000円
当期費用=10,000×3=30,000円
次期分(前払)=120,000−30,000=90,000円
(借)前払費用 90,000 /(貸)支払保険料 90,000
問題3(前受収益:受取時に収益処理している)
当期12月1日に、向こう3か月分の家賃 90,000円を受け取り、「受取家賃」で処理した。決算日は12月31日である。決算整理仕訳をしなさい。
解答・解説(クリックで表示)
3か月分のうち、当期分は12月の1か月だけ。
月額=90,000÷3=30,000円
次期分(前受)=30,000×2=60,000円
(借)受取家賃 60,000 /(貸)前受収益 60,000
問題4(減価償却:定額法・間接法)
期首に車両運搬具(取得原価 1,000,000円、残存価額 100,000円、耐用年数 9年)を取得した。定額法・間接法で決算整理仕訳をしなさい。
解答・解説(クリックで表示)
償却対象=1,000,000−100,000=900,000円
年間償却=900,000÷9=100,000円
(借)減価償却費 100,000 /(貸)減価償却累計額 100,000
問題5(未払費用:当期分が未処理)
当期12月分の給料 320,000円は、翌期1月10日に支払う予定で、当期はまだ仕訳していない。決算整理仕訳をしなさい。
解答・解説(クリックで表示)
当期に発生している費用なので当期に計上する。
(借)給料 320,000 /(貸)未払費用 320,000
問題6(未収収益:当期分が未処理)
当期12月分の受取利息 6,500円は翌期に受け取る予定で、当期はまだ仕訳していない。決算整理仕訳をしなさい。
解答・解説(クリックで表示)
当期に発生している収益なので当期に計上する。
(借)未収収益 6,500 /(貸)受取利息 6,500
4. 仕上げ:決算整理で迷わない「自問」
| 迷ったときの質問 | 答えの方向性 |
|---|---|
| これは「当期の費用/収益」? | 当期なら当期に計上。未処理なら未払・未収で拾う。 |
| 支払(受取)は済んでる? | 支払済で次期分が混ざる→前払。受取済で次期分が混ざる→前受。 |
| 残高を「必要額」に合わせる論点? | 貸倒引当金などは「期末のあるべき残高」に合わせて差額を仕訳する。 |
| 固定資産の価値減少は反映した? | 減価償却を忘れると利益が大きく見える。毎期の定番チェック。 |
次回は、この決算整理を実際の決算(試算表→整理→精算表)につなげる形で、
「どこで、何を、どう直すか」を見える化していきます。
