第4回 勉強期間の目安と人生設計(学生/社会人/主婦)

第4回 勉強期間の目安と人生設計(学生/社会人/主婦)

前回は「科目選択と受験順序」の話をしました。
今回は一歩引いて、「そもそも税理士試験にどのくらい時間がかかるのか」「自分の人生のどこに、どんなふうに勉強時間を組み込むか」というテーマで整理していきます。


1.税理士試験は“長期戦”が前提

税理士試験は、5科目合格がゴールです。
一発合格というよりは、

  • 毎年1〜2科目ずつ合格を積み重ねる
  • 合計で数年〜10年前後を見ておく

という長期戦タイプの試験だと考えてください。

もちろん、

  • 大学在学中に一気に科目を取り切る人
  • 社会人で年1科目ペースでじっくり積み上げる人
  • 子育てが落ち着いてから本格スタートする人

など、ペースは人それぞれです。
大事なのは、「自分は何年くらいで、どのタイミングまでに何科目を取りたいか」を、ざっくりでもいいので決めておくことです。


2.1年サイクルのイメージを持つ

税理士試験は年1回なので、どうしても1年単位での計画になります。
1年をざっくり分けると、こんなイメージです。

  • インプット期:秋〜冬(基礎・応用を習う)
  • アウトプット期:春(問題演習中心・答練が増える)
  • 直前期:初夏〜本試験(総まとめ・模試・弱点つぶし)

予備校・通信講座を使う人も、独学で進める人も、
この「インプット → アウトプット → 直前期」の流れだけは頭に入れておくと、年間計画を立てやすくなります。


3.タイプ別モデルプラン

(1)大学生モデル:在学中〜卒業後4〜5年で完成を狙う

大学生の強みは、「時間のコントロールがしやすい」ことです。
一方で、就活や卒論など、集中しづらい時期もあります。

イメージしやすいモデルとしては:

  • 1〜2年目:日商簿記2級、簿記論・財務諸表論の基礎
  • 3年目:簿財本格受験(1〜2科目合格を狙う)
  • 4年目:就活+税法1科目(余力に応じて)
  • 卒業後〜数年:残りの税法科目を詰めていく

ポイントは、

  • 「就活の年は無理をしすぎない」
  • 「会計の基礎は早めに固めておく」

この2つです。
在学中に簿財+税法1科目=合計3科目くらいまで取れていると、その後がかなり楽になります。

(2)社会人モデル:5〜7年の中長期プラン

社会人の場合は、「勉強時間をどれだけ確保できるか」がすべてです。
残業が多い職場かどうか、繁忙期がどの時期に来るかで、設計が大きく変わります。

典型的なモデルはこんな感じです。

  • 1年目:会計科目1科目(簿記論 or 財務諸表論)に集中
  • 2年目:会計科目もう1つ+余力があれば税法1科目
  • 3〜5年目:税法科目を年1〜2科目ずつ積み上げる

「理想は毎年2科目ずつ」ですが、
繁忙期のある仕事で2科目は、正直かなりきついです。

最初の2〜3年は

  • 仕事との両立に慣れる
  • 自分の「1週間あたりの現実的な勉強可能時間」を把握する

ことを優先し、年1科目ペースでもいいから確実に合格を重ねる、くらいの気持ちでいた方が長続きします。

(3)主婦・子育てモデル:時間帯を“固定”してコツコツ型

家事・育児をしながらの受験は、時間の自由度が一見高いように見えて、実は突発的な予定で崩されやすいのが難しいところです。

おすすめは、

  • 「毎朝●時〜●時だけは自分の勉強時間」と決める
  • 昼間は「スキマ時間にテキストを眺める」「暗記カードだけ」など軽めに
  • 夜は家事・子どもの対応を優先し、無理に詰め込まない

という“時間帯固定のコツコツ型”です。

モデルとしては、

  • 1〜2年目:会計1科目+税法1科目(または会計1科目集中)
  • 3年目以降:残りの科目を、生活リズムが安定している時期に集中的に進める

というように、「無理せず3〜7年くらいの幅で考える」のが現実的です。


4.「何年で合格するか」ではなく「何年続けられるか」

ここまでいろいろなモデルを書いてきましたが、
正直なところ、想定通りにいくケースの方が少ないです。

  • 仕事が忙しくなった
  • 転職した/部署異動になった
  • 家族の事情で時間が取れなくなった

こうしたことは誰にでも起こりえます。

だからこそ、発想としては

  • 「何年で取り切るか」だけにこだわらない
  • 「どんな状況になっても、細くてもいいから続けられる形にする」

ことを意識しておくのが大事です。

例えば、

  • 忙しい年は科目数を絞る(1科目だけにする)
  • 予備校通学が厳しければ通信・Web講義に切り替える
  • 一時的に完全に休む年があってもOK、と最初から決めておく

といった「逃げ道」をあらかじめ用意しておくと、メンタル的にも楽になります。


5.自分の「税理士ロードマップ」をざっくり書き出してみよう

最後に、次の5つを書き出してみることをおすすめします。

  • (1)今の自分の立場(大学生/社会人/主婦・その他)
  • (2)1週間で現実的に取れそうな勉強時間(○時間)
  • (3)1年で頑張れば狙えそうな科目数(1科目 or 2科目)
  • (4)「何年後までに何科目」を大まかに(例:5年で5科目)
  • (5)忙しくなったときに切り替える「セーフティプラン」

この5つが紙の上に見える形になるだけでも、
「なんとなく不安」だったものが「具体的なプラン」に変わっていきます。


次回は、第5回「予備校・通信・独学のメリット・デメリット比較」をテーマに、
あなたに合った勉強スタイルを一緒に整理していきます。