第29回 簿記入門(22) キャッシュ・フローの基本

第29回 簿記入門(22)
なぜ利益が出ているのにお金がないのか
― キャッシュ・フローで会社の血流を読む ―

前回(第28回)では、
損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)をセットで読む
ことで、会社の実像が見えてくることを学びました。

そこで浮かび上がった疑問が、

「利益は出ているのに、なぜお金が足りないのか?」

です。

この疑問に答えるのが、
キャッシュ・フローという考え方です。


1. キャッシュ・フローとは何か

キャッシュ・フローとは、

一定期間における
現金の増減を表す概念

です。

ここで大事なのは、

利益とキャッシュは、
必ずしも一致しない

という点です。


2. 利益とキャッシュがズレる理由

まず、基本的なズレの原因を整理します。

原因 何が起きているか
売掛金の増加 売上は計上したが、まだ入金されていない
在庫の増加 お金を使って商品を仕入れた
借入金の返済 費用ではないが現金は出ていく
設備投資 一度に大きな現金支出が発生

これらは、

P/Lにはすぐ表れないが、
現金には直接影響する

取引です。


3. 具体例① 黒字なのに資金繰りが苦しい会社

前回と同じ、
小さな制作会社を例に考えてみます。

この会社の今年のP/Lは、次の通りでした。

項目 金額(万円)
当期純利益 150

しかし、実際の現金の動きを見ると、

現金の動き 金額(万円)
売掛金の増加 ▲200
借入金の返済 ▲100
現金の増減 ▲150

結果として、

利益は150万円出たが、
現金は150万円減った

という状態になります。


4. 具体例② 赤字でもお金が増える会社

逆の例も見てみましょう。

次の会社は、P/L上は赤字でした。

項目 金額(万円)
当期純損失 ▲50

ところが、現金は、

現金の動き 金額(万円)
借入金の増加 +200
設備投資の見送り +0
現金の増減 +150

この会社は、

赤字だが、
当面のお金には困っていない

という状態です。


5. キャッシュ・フローを見るときの実践的視点

キャッシュ・フローを見るときは、
次の点を意識すると理解しやすくなります。

視点 見る意味
利益と現金の差 ズレの原因を探る
売掛金・在庫の動き 本業の資金効率
借入金の増減 資金繰りの依存度

数字を見るというより、

「お金がどこへ行ったのか」を
想像する

感覚が大切です。


まとめ

  • 利益とキャッシュは別物
  • 黒字でも倒産はあり得る
  • 赤字でも資金が回ることはある
  • キャッシュ・フローは会社の血流

キャッシュ・フローを理解できると、
会計が「生きた情報」として見えてきます。


次回予告(第30回)

次回は、
営業・投資・財務の3つのキャッシュ・フロー
を整理します。

現金の動きを、
さらに分解して見ていきます。