第28回 簿記入門(21)
損益計算書と貸借対照表はどうつながっているのか
― 数字の流れで会社の姿を立体的に読む ―
前回(第27回)では、
貸借対照表は会社の体力を表す書類だということを学びました。
今回は一歩進んで、
損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)をセットで読む
方法を整理します。
実務でも試験でも、
「片方だけ読む」のは不十分です。
1. なぜP/LとB/Sはセットで読むのか
まず結論から確認します。
P/Lは「動き」、B/Sは「結果」
です。
| 書類 | 役割 |
|---|---|
| 損益計算書(P/L) | 1年間で何が起きたか |
| 貸借対照表(B/S) | その結果、今どうなっているか |
P/Lだけを見ると「儲かったか」は分かりますが、
お金が残っているかは分かりません。
逆に、B/Sだけを見ると、
なぜそうなったかが見えません。
2. 具体例で見る「利益が出ている会社」
では、具体的な数字で確認してみましょう。
ある小さな制作会社の、
今年の損益計算書が次の通りだったとします。
| 項目 | 金額(万円) |
|---|---|
| 売上 | 1,200 |
| 売上原価 | 700 |
| 販売費・一般管理費 | 350 |
| 当期純利益 | 150 |
数字だけ見ると、
きちんと利益が出ている会社に見えます。
3. 同じ会社の貸借対照表を見る
では、同じ会社の
期末の貸借対照表を見てみます。
| 資産 | 金額(万円) |
|---|---|
| 現金・預金 | 100 |
| 売掛金 | 400 |
| 備品 | 300 |
| 資産合計 | 800 |
| 負債・純資産 | 金額(万円) |
|---|---|
| 借入金 | 500 |
| 純資産 | 300 |
| 合計 | 800 |
ここで、
違和感に気づくでしょうか。
利益は出ているのに、
現金があまり残っていない
という状態です。
4. なぜこのような状態になるのか
理由は、B/Sを見ると分かります。
- 売掛金が多い → まだ回収できていない売上が多い
- 借入金が多い → 設備投資や運転資金を借金でまかなっている
つまり、
P/Lでは「儲かっている」
B/Sでは「お金はまだ厳しい」
という、
よくある中小企業の姿が見えてきます。
5. P/LとB/Sをセットで読むと見えること
| 見る組み合わせ | 分かること |
|---|---|
| P/Lの利益 × B/Sの現金 | 利益が本当にお金になっているか |
| P/Lの売上 × B/Sの売掛金 | 回収が順調かどうか |
| P/Lの利益 × B/Sの借入金 | 借金に依存していないか |
このように、
「儲かっているのに苦しい」
「利益は少ないが安定している」
といった違いは、
P/LとB/Sを同時に見ないと分からない
のです。
まとめ
- P/Lは動き、B/Sは結果
- 利益=お金とは限らない
- 2つを合わせると会社の実像が見える
- 数字の背景を考えることが大切
財務諸表が読めるようになるとは、
数字の裏にある会社の姿を想像できること
です。
次回予告(第29回)
次回は、
キャッシュ・フローの考え方を扱います。
「なぜ利益が出ているのにお金がないのか」を、
さらに深く掘り下げていきます。
