第18回 簿記入門(11)
「払った」「払っていない」は関係ない?
前払費用・未払費用で完成する“期間の考え方”
第17回では、引当金を通じて、
「まだ起きていない将来の出来事」でも、費用として計上する理由を学びました。
今回は、その流れを受けてもう一歩進みます。
もう払ったのに費用じゃないもの
まだ払っていないのに費用になるもの
この「ズレ」を整理することで、
発生主義による費用計上は完成します。
1. 前払費用 ― 払ったが、まだ費用ではない
前払費用とは、
すでにお金を支払っているが、まだ使っていない部分です。
具体例
- 1年分をまとめて支払った家賃
- 前払いした保険料
お金は出ていますが、その効果はこれから発生します。
そのため、支払時点では費用ではなく「資産」として扱います。
時間の経過に応じて、少しずつ費用に振り替えていく。
これが前払費用の考え方です。
2. 未払費用 ― 費用だが、まだ払っていない
未払費用は、前払費用とは逆です。
すでに費用は発生しているが、支払いがまだのもの
を指します。
具体例
- 月末までの給与(支払いは翌月)
- まだ請求書が来ていない電気代・水道代
働いてもらった、使った。
つまり、費用は今期に属しています。
ただし支払いはこれからなので、
その分を負債(未払費用)として計上します。
3. 引当金との違いを整理する
ここで、第17回で学んだ引当金と比べてみましょう。
-
未払費用:
すでに起きた出来事。金額もほぼ確定している。 -
引当金:
将来起きる可能性のある出来事。金額は見積り。
未払費用は「時間のズレ」、
引当金は「将来リスクへの備え」。
性格は違いますが、
どちらも“期間を正しくするための処理”という点では共通しています。
4. 費用計上は「現金」ではなく「期間」で決まる
ここまで見てきた内容を整理すると、次のことが分かります。
- 減価償却:過去に払ったお金を期間配分
- 引当金:将来のリスクを今期に見積り
- 前払費用:先に払った分をこれから費用化
- 未払費用:今期の費用を後で支払う
これらはすべて、
「現金の動き」と「費用の計上時期」を切り離す仕組みです。
【図】費用計上の全体マップ(まとめ)

まとめ
- 前払費用:払ったが、まだ費用でない
- 未払費用:費用だが、まだ払っていない
- 引当金:将来リスクを見積って今期の費用に
- 減価償却:過去の支出を期間配分
すべての判断基準は、
「どの期間の活動か」です。
次回予告(第19回)
次回は、費用の反対側。
前受収益・未収収益を扱い、
発生主義を収益の側から完成させます。
