第17回 簿記入門(10)引当金はなぜ「まだ起きていない費用」なのに計上するのか

1.引当金が分かりにくい理由

引当金は、減価償却と並んで、
直感に反する会計処理
の代表例です。

なぜなら引当金は、
まだ実際には発生していない費用
を、先に計上するからです。

「お金も払っていない」
「まだ問題も起きていない」
それなのに、なぜ費用になるのでしょうか。

2.引当金は「将来の支出」を見積もる処理

引当金とは、一言で言えば、


将来、高い確率で発生する支出を、あらかじめ見積もる処理

です。

代表例として、次のようなものがあります。

  • 貸倒引当金
  • 賞与引当金
  • 退職給付引当金

3.なぜ今、費用にする必要があるのか

ここで重要なのが、
「いつ費用として認識するか」
という問題です。

例えば、売上は今期に計上しているのに、
その売上に対応する費用を来期に回すと、
今期の利益は不自然に大きくなってしまいます。

そこで会計では、


収益と、それに対応する費用は、同じ期間に計上する

という考え方を取ります。

4.貸倒引当金を例に考えてみる

例:売掛金100万円のうち、5万円は回収不能になりそうだ

この時点では、まだ実際に貸倒れは起きていません。

しかし、

  • 売上はすでに計上済み
  • 回収できない可能性が高い

という状況です。

そこで、


将来の損失を見積もって、今のうちに費用として計上する

これが引当金の考え方です。

5.引当金を計上すると何が動くのか

引当金を計上すると、次の変化が起こります。

  • P/L:引当金繰入額(費用)が発生
  • B/S:引当金(負債または控除項目)が増える

そして重要なのは、


この時点で、現金は一切動いていない

という点です。

6.引当金と純資産の関係

引当金繰入額は費用ですから、

  • 利益を減らす
  • 純資産を減らす

という効果を持ちます。

つまり引当金とは、


将来の損失を、前倒しで純資産から差し引いている

処理だと言えます。

7.なぜ「予想」で会計処理してよいのか

会計は、
事実だけを記録する世界
だと思われがちです。

しかし実際には、


将来を合理的に見積もること

も、非常に重要な役割を持っています。

引当金は、

  • 利益を過大に見せない
  • 会社の実態をより正確に表す

ための仕組みなのです。

8.まとめ

  • 引当金は将来の支出を見積もる処理
  • まだ現金は動いていない
  • 費用は先に計上される
  • 結果として純資産が減る

次回は、
「前払費用・未払費用はなぜ“ズレ”を調整するのか」
を扱います。